普通に生活できない体
確か昨日はK司祭の誕生日だったのではないだろうか。▼Kさんと学生さんと共に水俣を訪ねた。1年目は20日間。2年目は14日間。合計ひと月に渡って私は水俣で暮らした。水俣は日本高度経済成長がズタズタにしてしまった街だ。水俣病として政府が公式認定してから50年も経つというのに、未だに苦しみと怒りの中に生きる人は絶えない。▼東京にいるとこのような方々に直に会わずに済む。想像力を奪うには出会いを与えなければいい。子どもや若者の生活、果てはサラリーマンの生活に至るまで、彼らは出会いを与えられない環境で生きている。▼そして、私は出会ってしまった。出会った現実に目をつぶるのは簡単なようで難しい。同行のK司祭が言った。「みんなはもう普通に生きていけない体になってしまった」と。今、その通りになっている。苦しみと怒りの現場には時代のひずみが渦巻く。同時に、次世代の先進性も宿っている。▼次世代の先進性に出会うには、こうした現場に足を運ぶことだ。そして、全うな神経の持ち主ならば、この時代に対して「普通に」適応して生きていけなくなる。しかし、これでいいのだ。
- 作者: 吉田司
- 出版社/メーカー: 文藝春秋
- 発売日: 1991/09/01
- メディア: 文庫
- 購入: 3人 クリック: 42回
- この商品を含むブログ (14件) を見る
- 作者: 砂田明
- 出版社/メーカー: 樹心社
- 発売日: 1983/01/01
- メディア: 単行本
- この商品を含むブログ (1件) を見る