U+2015 HORIZONTAL BARとは何か

  • 前回のエントリで見たように、Adobe-Japan1フォントでは、欧文約物形状のダッシュ(CID+138)がU+2014 EM DASHに、和文約物形状のダッシュ(CID+661)がU+2015 HORIZONTAL BARに対応している(下図)。しかし、U+2015 HORIZONTAL BARがもともと「日本語組版のための全角ダッシュ」としてUnicodeに収録されたものだとは考えにくい。では、これは何なのか。わかっているいることを以下にメモするが、あらかじめ言っておくと、あまりまとまりはない。


  • Unicode Standardの「6.1 Writing Systems」には、「U+2015 HORIZONTAL BARは、ある種のタイポグラフィのスタイルで、引用文の導入に用いられる」と記されている。

U+2015 HORIZONTAL BAR is used to introduce quoted text in some typographic styles.

  • また、符号表の文字名リストにも同様の説明があり、別名「quotation dash」とある(下図)。


  • この用例を『The Chicago Manual of Style』から探して抜き出したのが、下図。ただし、シカゴ本におけるquotation dashは、文字としてはemダッシュと区別されていない。


  • そこで、欧文フォントにおける実装を見てみた(下図)。いずれもU+2014とU+2015には別のグリフを置いているが、U+2014のほうが若干長いかなという程度の共通点しか見出せない。RegularとBoldの関係などは、フォントによってバラバラだ。


  • ちなみにUnicode Standard 4.0以降の符号表ではU+2014のほうがU+2015より若干長いが(最初の図を参照)、Unicode 3.2までは逆にU+2015のほうが長かった(下図)。


  • そのようなわけで、U+2014 EM DASHとU+2015 HORIZONTAL BARは、Unicode的には用法の区別が想定されているものの、タイポグラフィ的にはグリフ形状の区別は確立されていないと考えてよさそうだ。
  • U+2014とU+2015にはマッピングのブレの問題もある。表にしたものを載せておく。