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cover ■「ニセ医学」に騙されないために

 ホメオパシー、デトックス、千島学説、血液型ダイエット、ワクチン有害論、酵素栄養学、オーリングテストなどなど、「ニセ医学」についての本を書きました。あらかじめニセ医学の手口を知ることで被害防止を。

2016-05-29 サンデー毎日での丸山ワクチンの記事について

[]サンデー毎日での丸山ワクチンの記事について サンデー毎日での丸山ワクチンの記事についてを含むブックマーク

サンデー毎日2016年6月5日号にて『丸山ワクチンはやはり「がん患者」に光明』という記事が掲載された。ジャーナリストの森省歩(もり・せいほ)氏による。プロフィールによると、もともとは政界ものに定評があり、2012年に自身が大腸がんの手術を受けて以降は医療ものも手掛けているそうである。週刊文春に『乳製品をやめたらがんが治った』という記事や、文藝春秋に『川島なお美氏さんはもっと生きられた』という近藤誠氏のインタビュー記事を書いている。

森氏は2012年にstage IIIAの大腸がんと診断され、手術後に再発予防のための経口抗がん剤の服用を勧められるも辞退し、丸山ワクチンを選択したそうである。stage IIIの大腸がんの術後補助化学療法は現在の標準的な治療法である。大雑把には、術後補助化学療法によって再発やがんによる死亡を3分の1から4分の1減らすことができる*1。おおむね、日本の大腸がんの術後成績は海外と比較すれば良好でstage IIIAだと5年生存率は70%ぐらいである。術後補助化学療法をしなくても100人中70人ぐらいは再発しないところに、術後補助化学療法を加えることで100人中75〜80人が再発しないようにになる、という感じである。

「抗がん剤を使わないと高い確率で死ぬ」というならともかく、大腸がん術後補助化学療法であれば、副作用とのトレードオフを考えて治療を受けないという選択肢もありだ*2。丸山ワクチンが大腸がんに効くというエビデンスは皆無と言ってよいが、それでも害はなさそうで、かつ、比較的安価であるので、丸山ワクチンを受けるのも悪くない。というわけで、森氏自身の治療法の選択に異論を唱えたいわけではない。丸山ワクチンの歴史的経緯や効果についての補足である。



効果の証明されていない治療法を受けられないことは理不尽なのか

森氏は、日本医科大学の丸山ワクチン外来を受診するが、患者本人が受診したことを受付係に驚かれる。



聞けば、患者本人が手続きのために来院するケースは少なく、実際にやって来るののはほとんどが患者の家族や身内などの代理人なのだという。私はこの事実にハッとさせられるとともに、あらためて丸山ワクチンを取り巻く現状の厳しさを痛感させられた。

一言で言えば、手術、放射線、抗がん剤などの標準がん治療をやり尽くし、歩くこともままならない打つ手なしの最末期にならない限り、事実上、がん治療医は丸山ワクチンの使用を認めようともせず、患者やその家族らも使用したい旨を医師に言い出せない、という悲しい現実が、いまだに存在しているのである。

言うまでもなく、治療選択の決定権は患者にある。にもかかわらず、このような理不尽な状況がなぜ続いているのか。その構造的理由を知るには、丸山ワクチンをめぐる「受難の歴史」に迫る必要がある。


現時点では、丸山ワクチンががんに効くというエビデンスはない。にも関わらず、有償治験薬という例外的な制度によって使用可能である。代替医療としては優遇されているほうである。治療選択の決定権は患者にあるので、丸山ワクチンを使用してくれる医師を選ぶ自由はある。しかしながら、標準的医療を行っている医師が同時にエビデンスのない治療法も併せて行ってくれないからといって、理不尽であるとは私は思わない。丸山ワクチンを併用してくれる医師もいるだろうが、書類書きや薬剤の管理という手間を好意で負担してくれているのである。

丸山ワクチンが使いづらい状況が理不尽である言うなら、他の代替医療、たとえば、細胞免疫療法や高濃度ビタミンC療法が使いづらい状況も理不尽であるというのだろうか。これらの治療を他の医療機関で受けるのは患者の自由である。基幹病院でこうした治療を受けられない状況が続いている理由は単純である。効果が証明されていないからである。

森氏は、丸山ワクチンによって「利権が脅やかされる」ことを恐れた「厚生省ムラ」との闘争の歴史が影響していると考えているようだ。1970年台から1980年台にかけては、もしかしたらそういうこともあったかもしれないが、現在ではそんな昔のことは無関係である。



最初の障壁は、患者が丸山ワクチンの6文字を口にした瞬間に立ち現れる。おそらくは厚生省ムラとの闘争の過去が暗い影を落としているのだろう。標準治療の現場では主治医から次のように冷たく突き放されるケースも少なくない。

「あんなもの、『ただの水』なんだから、効くはずがない。どうしてもやりたいと言うのなら、ウチの病院ではもう診ない」



患者さんに対する言い方や態度に問題はあるだろうが、こういう医師は「高濃度ビタミンC療法を受けたい」と言っても、同じ反応をするであろう。「厚生省ムラとの闘争」ではなく、エビデンスの有無の問題である。



歴史的ニューエビデンスって何だろう?

そもそも、丸山ワクチンを製造しているゼリア新薬は、エビデンスの構築に消極的である。記事の見出しには「治験患者延べ40万人超!」とあるが、「そんだけ治験患者がいて、いまだにまともなエビデンスが存在しないってどういうことよ?」と私は考える。積極的に臨床試験を行って効果を証明できれば日本だけでなく海外にも売ることができるし、なによりも患者さんのためになるのに、なぜゼリア新薬は臨床試験を行わないのか。現在でも有償治験薬として年間1万人前後の患者さんが丸山ワクチンを使用しているという。ゼリア新薬としては、別に臨床試験をしなくても現在の売り上げを維持できればよい、ということなのではないか。

しかし、森氏によれば、「歴史的ニューエビデンス」が登場したそうである。



実は、例の政治的決着以降も、丸山ワクチンの新たな製造承認申請に向け、多くの医師や研究者らが、「著効例」や「どのように効くのか」「なぜ効くのか」などについての研究報告を精力的に続けてきている。



「著効例」については、治験患者が「延べ40万人超!」もいるのであるから、丸山ワクチンにまったく効果がないと仮定しても、著効したように見える事例は出てくる。2006年に日本医事新報に、進行胃がんと進行大腸がんについてのケースシリーズが発表されている*3。何も発表しないよりはましであるが、丸山ワクチンの効果については何もわからない。

「どのように効くのか」「なぜ効くのか」については、まず「効くのかどうか」をはっきりさせてからにしたほうがいいだろう。

森氏もこれらの研究報告がエビデンスが弱いことを認めている。実は、がんに対する効果を丸山ワクチンとプラセボとで比較した、質の高いランダム化比較試験が1件だけある*4。これは「効くのかどうか」を評価した研究である。おそらくこれが森氏のいう「歴史的ニューエビデンス」の一つであろう。

stage IIBからIVAの子宮頸がん患者(計249人)をランダムに丸山ワクチン群(論文では"the lower dose (0.2 µg) of immunomodulator Z-100"で、丸山ワクチンB液と同じ)とプラセボ群に分けた。どちらの患者さんも放射線療法を受けた。つまり、「放射線療法+丸山ワクチン」対「放射線療法+プラセボ」を比較した。主要エンドポイントは全生存、二次エンドポイントは無再発生存および毒性。

結果は、丸山ワクチン群の5年生存率が良い傾向はあったものの、有意差なし。つまり、丸山ワクチンに効果があるとは言えない。まともな比較試験が行われてこなかった丸山ワクチンにしてみれば、これでも「歴史的ともいうべきニューエビデンス」であるのかもしれない。

ゼリア新薬によれば、新たにフェーズIII(アジア共同治験)の途中である*5。数を増やしたり、試験対象を絞ったりすると*6、今度は有意差が出るかもしれないし、出ないかもしれない。私の知る限り、他に丸山ワクチンの臨床試験は行われていない。ゼリア新薬としては、もしこの臨床試験で有意差が出なくても、「子宮頸がんに対する放射線療法+丸山ワクチンの効果が証明できなかっただけで、他のがんに対する効果が否定されたわけではない」「そもそも丸山ワクチンはA液とB液を交互に皮下注射するのが一般的な使い方であって、B液のみを使用した臨床試験で結果が出なくても、効果が否定されたわけではない」などという言い訳ができる。

私がもし「丸山ワクチンの有効性を検証することは、公私にわたる大命題」だと考えるジャーナリストであったら、ゼリア新薬に取材する。「どうして、丸山ワクチンの効果を証明する臨床試験をもっと積極的に行わないのですか?本当に御社は、丸山ワクチンに効果があるとお考えなのでしょうか?」と。



関連記事

■丸山ワクチンに期待できない理由

■進行胃癌に対する丸山ワクチンの比較試験

■丸山ワクチンをおとしめる週刊ポストの記事

*1http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/11596588 , "For patients with node-positive (stage III) disease, adjuvant treatment with fluorouracil and levamisole reduces the risk of death by one third, as compared with surgery alone." 海外の研究。日本人集団に対する手術単独vs手術+術後補助化学療法の比較試験は見つけることができなかった

*2:ただし、読者らが抗がん剤を使うかどうかの選択肢を迫られたときは、必ず専門家による説明を受けること。副作用対策が不十分であったころに抗がん剤治療を受けた知り合いの体験、ドラマや小説の描写、ニセ医学本による不適切な主張などにより、実際よりも副作用の程度を過大評価していることが多い。私ならstage IIIAの大腸がんの術後補助化学療法は迷わず受ける。やってみて副作用がきつければ薬剤を変更したり、化学療法を止めたりすればいい

*3■論文・資料 アーカイブス│丸山ワクチンとがんを考える会(NPO)から全文が読める。「専門性の高い資料」だそうで

*4http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/24569914

*5http://www.zeria.co.jp/deve/de02.html

*6:死亡のイベントが生じやすい進行した患者を対象する、など

2016-05-01 「熊本済生会病院からSOS」は事実だったのか?

[]「熊本済生会病院からSOS」は事実だったのか? 「熊本済生会病院からSOS」は事実だったのか?を含むブックマーク

「医療ジャーナリスト」の伊藤隼也氏が、2016年4月16日付のツイートにて、「熊本済生会病院」にて物品や水などの不足があるとの情報の拡散を促す主張を行った。



しかしながら、日経メディカルに掲載された済生会熊本病院循環器内科部長坂本知浩医師のインタビューでは、



■徹夜でトリアージ、2日ぶりの帰宅でくつろいでいたときに本震が…(3ページ目):日経メディカル

幸いなことに地震発生直後も現時点(引用者注:4月21日)でも、院内の食糧や医療用品は枯渇していない。なぜなら、当院は災害拠点病院のため、孤立しても1週間は医療を続けられるように、日頃から食糧や医療品を備蓄しているためだ。途中、外傷患者に最初に使用する細胞外補充液の「1号輸液」が枯渇しかけたときがあったが、物流が回復したことや同じ済生会グループからの支援などもあり、月曜の夕方には全て揃った印象で、問題なく医療を提供できた。



とあり、伊藤氏の主張と食い違っている。伊藤氏の主張の情報源は「済生会病院の関係者」だそうである。その関係者が誰なのかは不明である。一方で、日経メディカルの記事の情報源は所属も氏名も明らかだ。

ジャーナリストの仕事の価値は、ネット上の「拡散!○○病院からSOS 」というような真偽不明の情報について、取材に基づいて事実かどうかを検証し報じることにあると私は考える。百歩譲って、緊急時に情報が錯綜するのは仕方がないとして、状況が落ち着いたら、いったいなぜこのような主張の食い違いが生じたのか、伊藤氏にはきちんと検証していただきたい。

ジャーナリストが情報源を秘匿する意義は十分に理解できる(今回は内部告発とかではないから情報源を秘匿する必要はないと思うが、一般的な話として)。しかしながら、不用意なジャーナリストが、「関係者」を名乗った者から不正確な情報を吹き込まれることもあるだろう。あるいは、信頼できないジャーナリストが、「関係者の話」として不正確な情報を捏造することもできる。

伊藤隼也氏が今回の済生会熊本病院の件について検証しないままであるのなら、伊藤氏の「医療ジャーナリスト」としての信頼性について疑問が生じる。伊藤氏がこれから報じる、あるいはこれまで報じた情報源としての「関係者」の話が、伊藤氏によって正確に伝えられているかどうか、あるいは、その「関係者」が本当に実在するかどうか、懐疑的に見ておいたほうがよい、ということになりかねない。




外部リンク

■「熊本済生会病院からのSOS」とは何だったのか - Togetterまとめ

じょんじょん 2016/05/02 11:24 ネタ元は院長だったそうで。
https://twitter.com/itoshunya/status/726601555307167744

NATROMNATROM 2016/05/02 14:38 院長先生が、いつ、どのような情報を伊藤氏に伝えたのか。「地震発生直後も現時点でも、院内の食糧や医療用品は枯渇していない」という循環器内科部長の主張と食い違っているのはなぜか。院長先生から伝えられた情報が事実だとして、それをSNSで拡散したのは適切な方法だったのか、といった点について検証が必要でしょうね。

トラックバック - http://d.hatena.ne.jp/NATROM/20160501

2016-04-01 Ingressと健康

[]Ingressと健康 Ingressと健康を含むブックマーク

Ingress(イングレス)は位置情報を利用したゲームである。プレイヤーは青:Resistance(レジスタンス)緑:Enlightened(エンライテンド)のどちらかの陣営に属し、現実世界の中を動き、ポータルと呼ばれる陣地を取り合う。神社、寺院、公園、郵便局、記念碑、彫像などの、宗教的・歴史的・芸術的に重要な場所がポータルとなっている。

Ingressをプレイするには外へ出てポータルの近くまで行かなくてはならない。車や自転車を使うプレーヤーもいるが、歩いてプレイするのが面白い。Ingressをプレイするようになってから近所にお地蔵さんや庚申塔があることをはじめて知った。Ingressをプレイしなければおそらく一生知らなかったであろう。いつも通る道から路地を一本入り込んだだけで、まるで旅先にいるような奇妙な感覚を覚える。これまでにない体験だ。

町の歴史を考えることも多くなった。当たり前のことであるが、宅地造成されてできた新しい町には神社や地蔵などはなく、主なポータルは公園と郵便局である。逆に古い町並みには、Ingressをプレイしていなければ見落としてしまいそうな、刻まれた文字も読めなくなった石碑があったりする。ビルとビルの隙間にある小さな神社の由来に思いを馳せながら散歩するのは楽しい。



f:id:NATROM:20160401010944j:image

博多駅近くの猿田彦の石碑。猿田彦神社は知っていたが石碑は知らなかった。思いのほかたくさんある。



Ingressをプレイすることで、確実に歩く機会が増えた。健康によいのではないか、という指摘は何度もされてきた。たとえば、■ゲームをしながらウォーキング・ダイエット! 全世界を席巻する「Ingress」の魅力|健康・医療情報でQOLを高める〜ヘルスプレス/HEALTH PRESS■うつ病の治療にIngressが効く10の理由 | 岡山の心療内科HIKARI CLINICなど。ありえない話ではないと思う。少なくとも、座って画面に向かい合っているだけというタイプのゲームと比較すればずっと健康に良い。海外には、"ingress-health.com"というサイトすらある。



f:id:NATROM:20160401010942j:image

ingress-health.comのトップページ。争いが起きないよう青でも緑でもない配色。



これはもう医学論文も書かれているのではないかと思い、Pubmedで調べてみた。2016年4月1日時点で"Ingress"をタイトルに含む医学論文は78本だった。けっこうある。



f:id:NATROM:20160401010943j:image

"Ingress"をタイトルに含む論文の一例。Resistance(青陣営)について述べてあるようだ。



どのようなゲームもそうだが、根を詰めすぎるのもよくない。また、端末を見ながら歩くと事故に遭うおそれがある。ゲームであるから、健康によいというのは副次的なものであり、楽しむことが第一である。プレイスタイルは人それぞれ。楽しくプレイしていただきたい。



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■ドラクエが医療を崩壊させた

■閾値とかホルミシス効果とかをバナナで説明してみる

jkgh33jkgh33 2016/04/01 23:57 うつ病治療には、ピップエレキバン。

FFFF 2016/04/02 01:41 例示されたPubMedの論文はゲームのIngressとは関係ないようですが。エイプリルフールネタでしたらごめんなさい。(新種の歯根管シーラーのバクテリア侵襲耐性について)

桂馬桂馬 2016/04/02 08:23 ingress-health.comを覗いてニヤリとしました。

G.FoyleG.Foyle 2016/04/22 21:55 (すいません 全く筋違いの話ですが TwitterよりダイレクトにNATROMさんに伝わると考えまして(__; )
今日実家のポストで「遺伝子検査、身近になりました。」というチラシを見つけました
DeNA life Science とか
第一印象として、「引っ掛かったカモ」に
 「貴方は将来高確率で発症するからこの療法を」 とする類かと思いましたが
「挑戦者」
>http://bokeboke-chan.hatenadiary.jp/entry/2015/02/16/MYCODE_%E7%B5%90%E6%9E%9C_%E4%BF%A1%E6%86%91%E6%80%A7_%E3%83%AC%E3%83%93%E3%83%A5%E3%83%BC_%E4%B8%80%E4%BE%8B%E3%82%92%E3%81%94%E7%B4%B9%E4%BB%8B_%E9%81%BA%E4%BC%9D%E5%AD%90%E6%A4%9C%E6%9F%BB
の感想を読ませていただいた限りでは「神社仏閣のおみくじレベル」との感を持ちました
万が一御気が向きましたら感想をお伺いしたく(__

NATROMNATROM 2016/04/23 00:19 G.Foyleさん、コメントありがとうございました。

遺伝子多型を調べて特定の疾患のオッズ比を算出しているようですね。おみくじよりはましですが、将来はともかく、現時点では信頼できる結果は出ません。高いわりに有用性はほとんどありません。お金に余裕があって、話のタネにでもしようかという人以外にはお勧めしません。

日本医学会が「拡がる遺伝子検査市場への重大な懸念表明」をしています。
http://jams.med.or.jp/rinshobukai_ghs/pressconf_0301.html

G.FoyleG.Foyle 2016/04/23 11:50 >お金に余裕があって、話のタネにでもしようかという人以外にはお勧めしません。
ですよねぇ お付き合いいただき感謝いたします(__

2016-03-22 コレステロールを下げると危険なのか?

[][]コレステロールを下げると危険なのか? コレステロールを下げると危険なのか?を含むブックマーク

相関関係が因果関係を示すとは限らないことは、みなさまよくご存知であろう。有名な例は朝食と成績の関係である。朝食摂取と良好な成績に相関関係があることは、朝食をきちんと食べる学生ほど学校の成績が良いというデータからわかる(こういう研究を観察研究という)。しかしながら、朝食をきちんと食べることが良い成績の原因かどうかはなんとも言えない。因果関係がなくても、朝食と成績の相関関係が生じることはありうるからだ。たとえば、教育に熱心な家庭環境が朝食摂取と良好な成績の両方に影響を与えている場合は、朝食摂取と良好な成績に因果関係はないが相関関係は生じる*1。だとすると、家庭環境をそのままにして、ただ朝食だけ食べるようにしても成績は上がらない。

「朝食を食べれば成績が上がる」と言いたいのであれば、もともと朝食を食べていなかった生徒集団を、朝食を食べさせる群(介入群)と朝食を食べさせない群(対照群)の二つに分け、成績に差が生じるかどうかを比較すればよい。こうした研究を介入研究と呼ぶ*2。介入群と対照群とをランダムに分けるとなおよい。これをランダム化比較試験という

さて、コレステロールの話である。いわゆる「悪玉コレステロール」であるLDLコレステロールの血液中の数値が高いと心筋梗塞などの心血管疾患の発症や死亡が多い。現在の医学的コンセンサスでは、LDLコレステロールが心血管疾患の原因であり、LDLコレステロールを低下させることで疾患を予防できると考えられている。一方で、LDLコレステロールが低いほど総死亡が多いことから、「コレステロールが高いほど長生きなので下げるほうが危険」という主張もある*3。どちらが正しいのであろうか。林衛氏による『コレステロール大論争:「動脈硬化学会VS脂質栄養学会」論点の腑分け』*4からグラフを引用しよう。



f:id:NATROM:20160322105422j:image

林衛、Medical Bio 2011年3月号 Page73-78、コレステロール大論争:「動脈硬化学会VS脂質栄養学会」論点の腑分け より引用



引用したグラフからは「コレステロールが高いほど長生き」とは言えるが、「下げるほうが危険」とは必ずしも言えない。「朝食を食べている学生ほど成績が良い」からといって、「朝食を食べれば成績が上がる」とは言えないのと同じである。これはLDLコレステロールと心血管疾患の関係についても同様で、このグラフだけからは「LDLコレステロールを下げたほうが心血管疾患を抑制できる」とはいえない。この観察研究だけからはLDLコレステロールと総死亡、あるいは、LDLコレステロールと心血管疾患の相関関係はわかっても、因果関係についてはわからない。

因果関係を知るには介入試験をしてみればよい。LDLコレステロールを低下させる薬剤であるスタチンの効果について複数のランダム化比較試験が施行されている。「製薬会社からの独立性が高いコクランコラボレーション」による、14のランダム化比較試験を組み入れた2011年のメタアナリシス*5によれば、スタチンは総死亡の相対リスクを0.83(95% CI 0.73 to 0.95)に、心血管疾患の相対リスクを0.70(95% CI 0.61 to 0.79)に下げる。

介入試験は、LDLコレステロールが心血管疾患の原因であることを示している*6。そのメカニズムもある程度解明されつつある。観察研究だけでLDLコレステロールが心血管疾患の原因であることを否定するのはトンデモである。一方、観察研究が「コレステロールが高いほど長生き」ことを示している理由の一部は、肝疾患やがんといった疾患でコレステロール値が下がることで説明可能である。つまり、コレステロール値が低いから死にやすいのではなく、死にやすい人のコレステロール値が下がっているのである*7。相関関係が因果関係を示すとは限らないことを思い出そう。

林(2011)で挙げられている参考文献13のうち、日本語の文献が11、ロイター通信社によるニュースが一つ、医学的に信頼のおける英語の文献はたった一つである。その唯一の文献が2011年のコクランのメタアナリシスである。スタチンの効果を示す新しい研究も複数あるのだが、2011年のコクランを私が選んだのはそのためである。『(コクランの)結論には、既往症のない人への「一次予防のためのスタチン投与が効果的だという証拠は限定的」と述べられている』と林衛氏は書いたが誤りである。すでに述べた通り、2011年のコクランでは、一次予防のためのスタチン投与が総死亡や心血管イベントを減少させることが示されている。証拠が限定的なのは、コスト対効果と生活の質についてである*8。ちなみに新しい研究を組み入れアップデートされた現時点でのコクランでは「現在までに入手可能な臨床的証拠によれば、スタチンによる一次予防はコスト対効果が高そうで、患者の生活の質を改善する可能性がある」とある*9

林衛氏による『コレステロール大論争:「動脈硬化学会VS脂質栄養学会」論点の腑分け』には他にも誤りが散見される。医学部の学生によるレポートの水準にも達していないように私には思われるが、富山大学学術情報リポジトリでは「学術雑誌掲載論文」として分類されている。分野によってはこのような論文でも業績になるのだろうか。

LDLコレステロールが心血管疾患のリスク因子であること、スタチンが心血管疾患を抑制することについて、アカデミックの場ではほとんど論争はない。論争は、もっと微妙なところにある。たとえば、ある患者さんが、今後10年間に心血管疾患で死亡する確率が1%であるところを、治療介入によって0.7%に減らせるかもしれないとして、治療は正当化できるだろうか?副作用や通院のコスト、公的医療費の観点などから、リスクがもともと十分に低い脂質異常症の患者さんに対する治療介入は正当化できないと個人的には考える。

しかしながら一方で、「10年間での1%から0.7%へのリスク減少は治療に値しない」と、医師が一方的に決めつけてよいのだろうか、とも考える。わずか0.1%でも病気になる確率が減るのであれば治療して欲しい、という患者さんもいるであろう。そういう患者さんの希望を無視してもよいのだろうか。目安となるガイドラインは必要だろう。だが、治療介入を行う線引きはどうやって決める?現在の日本の医療現場では、脂質異常症に対する治療介入が過剰気味であり、おそらくは製薬会社の宣伝活動は無関係ではないと感じる。この辺りのことは臨床的証拠だけでは決めることができない。患者さんの価値感や社会情勢も考慮しなければならないだろう。医師だけで決めるのは荷が重い。こういう場合にこそ、「科学コミュニケーション」の専門家の出番であるはずなのに。



関連記事

■林衛さんにお尋ねして、いまのところお返事がもらえていない質問のリスト

*1:「交絡因子とは、暴露と疾病発生の関係に影響を与え、真の関係とは異なった観察結果をもたらす第3の因子のことをいう」(中村好一著、『基礎から学ぶ楽しい疫学 第3版』、P97)。「朝食摂取」が暴露、「良好な成績」が疾病発生、「教育に熱心な家庭環境」が交絡因子に相当する。良好な成績が疾病というのは変だが、"outcome"の訳語としてこうした表現が残っているらしい

*2:因果関係を示すために介入研究が必須というわけではない。喫煙と肺がんの因果関係を示すのには介入研究を行う必要はない。交絡因子を制御する必要はある

*3https://twitter.com/SciCom_hayashi/status/708289929667739648

*4http://utomir.lib.u-toyama.ac.jp/dspace/handle/10110/9282

*5http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/21249663

*6:細かいことを言えば、LDLコレステロールと心血管疾患には因果関係はなく、未知の交絡因子AがLDLコレステロール上昇と心血管疾患の両方の原因であり、スタチンは交絡因子Aを阻害することによってLDLコレステロールを低下させ、かつ、心血管疾患を抑制する、としても説明可能である。実際のところはすごく複雑である。LDLコレステロール以外にも心血管疾患の原因は複数あるし、スタチンによる心血管疾患抑制効果もLDLコレステロール低下以外の経路がおそらく存在する

*7:介入試験の対象にならない程度の低いコレステロール値をさらに低下させれば危険かもしれない。多変量解析などで交絡因子の影響を取り除けば観察研究でも因果関係を論じることはある程度は可能である。しかし、林(2011)には交絡について言及はない

*8:"Only limited evidence showed that primary prevention with statins may be cost effective and improve patient quality of life."

*9:"Evidence available to date showed that primary prevention with statins is likely to be cost-effective and may improve patient quality of life.", http://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1002/14651858.CD004816.pub5/abstract

ublftboublftbo 2016/03/22 10:26 今日は。

引用画像キャプション中、“MedicalBio” であろう箇所が 「MedicalBil」になっているようです。

NATROMNATROM 2016/03/22 10:55 ご指摘ありがとうございました。訂正いたしました。

kubotakubota 2016/03/22 11:29 いつも勉強になる記事をありがとうございます。
細かいところですが、
2011年のコクランを私が選んだのそのためである。 → 私が選んだのはそのためである。
でしょうか。

NATROMNATROM 2016/03/22 12:23 ご指摘の通りですので訂正しました。ありがとうございます。コクランは予防医療に点が辛い傾向にあるんですが、さすがにスタチンについては明確に効果を認めていました。林衛氏は、コクランには触れないか、「コクランも製薬会社に買収されている」という論法を展開するほうがよかったはずなんですが。

トリストリス 2016/03/25 16:19 巷でよく言われている、小太りが一番長寿というのも観察研究による相関関係ということでしょうか?
BMI値が低い人が寿命が短くなるのは、死にやすい人のBMI値が低くなってる可能性があるのでしょうか?

nn 2016/03/26 00:26 >トリスさん
そもそも「ダイスを振って痩せさせる群と太らせる群に分ける」というデザインで介入研究をするのは不可能ですので、基本的にそういうのは観察研究です。一応「BMI=22が最も死亡率が低い」というのが伝統的な教科書の教えですが、実際のところは「ぶっちゃけ20〜27くらいまで死亡リスクは殆ど変わらない」というのが正確かな、と。研究によっては25〜27くらいの小太りが一番死亡率が低いというものもあります。
ダイエットなどで痩せすぎたのが原因で死亡リスクが高い人もいれば、病気が原因で痩せており死亡リスクが高い人もいますので、どちらが原因で結果かは一概には言えないです。

nn 2016/03/26 00:39 ちなみに「朝食と成績」の例ですらよく分からない人は、もっと簡単な以下の例で考えるといいと思います。こんな例なら流石に騙される人は少ないと思いますが、「コレステロールと死亡」の話も本質的に全く同じです。

「スカートを穿いている日本人は、スカートを穿いていない日本人より胸が遥かに大きい。スカートを穿けば胸が大きくなる。」(ヒント:性別による交絡)
「日曜日の朝に仮面ライダーを見ている日本人は、同じ時間帯に園芸番組を見ている日本人より、遥かに脳卒中の頻度が少ない。仮面ライダーを見れば脳卒中が予防できる。」(ヒント:年齢による交絡)

NATROMNATROM 2016/03/26 09:41 観察研究は常に交絡要因の影響を否定できません。「BMI値が低い人が寿命が短くなるのは、死にやすい人のBMI値が低くなってる可能性」はもちろんあります。nさんのご指摘のように、軽度の肥満ぐらいだとさほど悪影響はない(もしかしたらまったくない?)というのが本当のところだと思います。ただしこれは、糖尿病や脂質異常症などの併存疾患がない場合の話です。

トリストリス 2016/03/26 14:49 nさん、NATROMさん、回答ありがとうございました。

2016-02-24 肝臓洗浄(レバーフラッシュ/肝臓デトックス)は本当か?

[][]肝臓洗浄(レバーフラッシュ/肝臓デトックス)は本当か? 肝臓洗浄(レバーフラッシュ/肝臓デトックス)は本当か?を含むブックマーク

「肝臓洗浄」とは肝臓や胆のうにある胆石を排出させ、肝機能の改善など効果をうたう民間療法です。「レバーフラッシュ」とか「肝臓デトックス」とか呼ばれることもあります。肝臓洗浄にはいろんなやり方があるようですが、典型的には空腹時にオリーブオイル、グレープフルーツジュース、エプソムソルト(硫酸マグネシウム)、水を特定の手順で飲みます。その後体から出てきた排泄物(要するにウンコ)をザルで濾すと、大小さまざまな緑色の「胆石」が大量に得られるというのです。"liver flush"(レバーフラッシュ)で画像検索すると写真を見ることができます。

残念ながら肝臓洗浄はインチキです。確かに胆道は十二指腸に開口していますので、小さな胆石であれば胆道から腸管を通って排泄されることはあります。しかし、肝臓洗浄で出てくるような2-3 cmもの「胆石」は通常は胆道を通りません。また、一度にこれほど大量の「胆石」が排泄されることはありません。もし肝臓洗浄がインチキでないとしたら、それを医学的に証明するのは簡単です。肝臓洗浄によって出てきた「胆石」を調べて、本当に胆石であると示せばよいのです。あるいは、肝臓洗浄前後で腹部エコーで胆石が減るかどうかを比較すればいいのです。しかし、肝臓洗浄にはそのような医学的証拠はありません。

肝臓洗浄が神話に過ぎないことを証明した論文もありますのでご紹介します*1。ニュージーランドのワイカト病院に、脂っこいものを食べた後に右上腹部が痛む40歳の女性が紹介されてきました。腹部エコー検査を行ったところ、径1-2 mmの胆のう内胆石が認められました。症状も年齢性別も胆石症としては典型的です。ただ、この患者さんには一つだけ特別な点がありました。この患者さんは最近「肝臓洗浄」を行ったのです。そして直腸を通過した(要するにウンコに混じっていた)緑色の「胆石」を持参して医師に見せました。

医師たちがその「胆石」を調べたところ、本物の胆石にはあるはずの結晶構造がなく、また、本物の胆石の構成成分であるコレステロールやビリルビンやカルシウムを含みませんでした。また、この患者さんが肝臓洗浄に使ったのと等量のオレイン酸(オリーブオイルの主成分)とレモンジュースに少量の水酸化カリウムを加えると、「胆石」と似たような白い球状の物体ができました。つまり、肝臓洗浄後に排泄物に混じって出てきた「胆石」は、本物の胆石ではなく、肝臓洗浄に使ったオリーブオイルとレモンジュースがお腹の中で消化液と混じって固まってできたのです。緑色だけは胆汁由来なのでしょう。この患者さんの本物の胆石は、普通に手術で除去されました。論文には、肝臓洗浄による「胆石」と、本物の胆石(コレステロール胆石)の写真が載っています。

f:id:NATROM:20160224174101j:image

上が肝臓洗浄後に排泄された「胆石」

下が外科的に切除された胆のうに入っていたコレステロール胆石

Sies CW and Brooker J, Could these be gallstones?, Lancet. 2005 Apr 16-22;365(9468):1388. より引用

本物の胆石を見たことがなくても、ちょっとだけ頭を使えば肝臓洗浄がインチキであることがわかります。そんなに簡単に胆石を取り除くことができるのなら、なぜ病院で肝臓洗浄をしないのでしょうか?手術せずに胆石を取り除ける可能性が少しでもあるなら、多くの医師が試してみるはずです。実際のところ、肝臓洗浄はインチキであることが明白過ぎるので、まともな医療従事者は相手にしていません。



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*1:Sies CW and Brooker J, Could these be gallstones?, Lancet. 2005 Apr 16-22;365(9468):1388. http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/15836886

てすとてすと 2016/02/24 22:42 こういう民間療法を医師の観点から説明してくださるととても勉強になります。
ところで、今やっている医療ドラマではガンが疑われる患者の治療方針を医師が集まる場で決めるシーンをやっていました。そこで、ガンかどうかを確定するために他の検査をしてから治療する派と転移のリスクが考えられるため追加検査はせず投薬治療を開始する派と意見が2つに分かれていましたが、転移だった場合の責任を考え投薬治療を開始するという方針に決まっていました。
私が患者の立場なら検査をしてからガン治療に移っていただきたい。それが本当にガンだとして転移してしまったとしても自身の責任として受け入れたいと思うのです。
そこで、質問なのですが、現在このような治療方針が分岐しうる場合、患者が方針を決定することは難しいのでしょうか?お時間に余裕がある時にでもお返事いただけると幸いです。

NATROMNATROM 2016/02/25 00:11 >現在このような治療方針が分岐しうる場合、患者が方針を決定することは難しいのでしょうか?

難しくありません。普通は、医師から説明を受け、患者さんが方針を決定します。患者さんに説明しなかったり、患者さんの意思を無視した治療をしたりしたて結果が思わしくなかったら、医師は責任を追及されます。訴訟になることもあります。医療機関によっては説明に十分な時間を取れなかったりすることもあり、必ずしも理想通りとはいきませんが、たいていはまあまあそこそこの説明はされるはずです。

その医療ドラマの例で行くと、「ガンかどうかを確定するために他の検査をしてから治療する」方針のメリットとデメリット、および、「転移のリスクが考えられるため追加検査はせず投薬治療を開始する」方針のメリットとデメリットをそれぞれ患者さんにご説明し、患者さんの意思決定を支援します。インフォームドコンセントというやつです。

実際には「私にはようわからんから先生に全部お任せします」という患者さんもいらっしゃいますので、医師が集まる場(「カンファレンス」と言います)で治療方針が決まってしまうこともありますが、それでも普通は説明および治療方針への同意を取ります。

岩井岩井 2016/02/25 01:44 はじめまして。
先生のご本の、「愛」の字がつくほどではないけれど、それでも、わりと真剣な読者です。分からないことがありまして、質問させていただきます。

かなり昔ですが、背中に激痛の発作があり、胆石(ビー玉大だったとか)ということで手術した親族がおりました。なので、その時から、胆石と聞くと激痛があるのだろうと理解していて、どんなものかと疑問に思っていました。本記事で示された胆石の写真を拝見すると、わりと小さいものもあるのですね。

そこで質問なのですが、激痛発作を起こす胆石の、大きさの目安といったものはあるのでしょうか?  それから、胆石を見つけるいい方法といいますか、簡便な方法はありますでしょうか?

といいますのは、胆管が詰まってパンクしそうになって痛む、ということなら機序が分かりやすいのですが、記事で示された画像を見る限り、胆管を塞いでしまうほどの大きさではない胆石もあるように思えてなりません(いえ、胆管の太さなんて、ぜんぜん知らないのですけれど)。実際には、胆石が単体で胆管を塞いでしまうこともあるでしょうし、大小こき混ぜた胆石がひとかたまりになって胆管の流れを阻害することも、可能性としてはあると思います。

で、そういう現象を引き起こす胆石の大きさが知りたくなった、というわけです。もちろん、それを教えていただいたからといって、自分で胆石の大きさをコントロールなんて、きっとできないのですけれど、もし、胆石をなにかの検査のついでにでも、早期に見つけられれば、激痛発作を起こさないで済むのかな? とも思いましたもので…。

以上です。
ご教示くだされば、幸いです。

NATROMNATROM 2016/02/25 17:16 岩井さん、コメントありがとうございました(言い忘れていましたが、てすとさんも、コメントありがとうございました)。臨床の現場では医師は忙しいし、患者さんは遠慮して聞きたいことを聞けないということがあります。こうして質問していただければ、時間があるときにゆっくり回答できますし、お答えするにあたって知識を再確認するきっかけにもなります。


>激痛発作を起こす胆石の、大きさの目安といったものはあるのでしょうか?

どのような大きさの胆石であっても、腹痛を起こすことがあります。数ミリ程度の石で、最終的には十二指腸へ自然に落ちるとしても、胆管内を引っかかりながら通過していくときに痛みが生じるのでしょう。むしろ、ある程度の大きさがあったほうが、胆のうから胆管へ入り込まず症状を起こしにくいかもしれません。


>それから、胆石を見つけるいい方法といいますか、簡便な方法はありますでしょうか?

検査機器を使わずに胆石があるかどうかを判断するのは難しいと思います。「脂っこいものを食べた後に右上腹部が痛む」という症状があれば、胆石がある可能性が高いとは言えます。医療機関に受診していただければ、腹部エコー検査を行えば胆石の有無は比較的簡単にわかります。

胆石を持っているけれども症状がない人はけっこうたくさんいます(人口の数%〜十数%)。「無症候性胆石」と言います。無症候性胆石のうち、将来なにか症状を引き起こすのは20%ぐらいだと言われています。つまり、症状がないけれどもエコーで胆石があると診断された人の80%は「過剰診断」ということになります。

無症候性胆石に対しては治療をしないほうがいい、というのが現在のコンセンサスです。がんのように放っておいたら進行して手遅れになるような病気ではなく、何か症状が出てから治療すればいい、というわけです。よって、症状がないのに胆石を心配してエコー検査を受ける必要はありません。もちろん、気になる症状があれば医療機関に相談してください。

てすとてすと 2016/02/25 23:51 やはり創作物だからこその展開だったのですね。安心しました。
最近では元銀行員が銀行を舞台にした物語を書くなど、ストーリーを作る方も現場の事情に詳しい可能性があるのでモヤモヤしていました。
こちらこそ、お忙しい中お返事いただけて嬉しいです。ありがとうございます。

あ 2016/02/28 01:33 このような事実が明白ではなかったから論文が出たのでは?
はてなブックマークのように大多数が否定したから真実みたいな思い込みは第二のSTAPの始まりと思う。三人市虎を成す
ともあれデマの確率が高いと分かり参考になりました
もともと試す気なかったけど

NATROMNATROM 2016/02/28 14:11 >このような事実が明白ではなかったから論文が出たのでは?

いいえ、違います。肝臓洗浄がインチキであることは明白なのは、著者らも査読者も編集者も論文を読む人たちもわかった上でのことです。


>はてなブックマークのように大多数が否定したから真実みたいな思い込みは第二のSTAPの始まりと思う。

もちろん、「大多数が否定したから(「肝臓洗浄はインチキだ」という主張は)真実みたいな思い込み」は危険です。しかしながら、肝臓洗浄については、大多数が否定しなくても、というかこれまで誰一人として否定しなくても、ある程度の医学知識がある人が見ればインチキであることは明白なのです。この点が、STAP細胞の話とはまったく異なります。

uchitode2014uchitode2014 2016/02/28 16:55 >「胆石」と似たような白い球状の物体
消化器を通るときに、傷つけてしまいそうです。

岩井岩井 2016/03/09 20:09 痛みなどの症状がないときは心配せず、「無症候性胆石に対しては治療をしないほうがいい」とのこと。分かりやすいご説明を、ありがとうございました。

6年前の深夜、左の腕から上行して胸にまで、正座したあとのようなじんじんする痺れを感じ、救急車で病院に行きましたら、時間外でCTやMRIは撮れないものの、脳梗塞だとの診断。発症からは3時間以内でしたが、t-PAは副作用が心配だと言われ、結局、浮腫を抑えるだけの治療を選択しました。現在も左半身に運動・感覚とも、ラクナ梗塞による軽い麻痺が残っていまして、あのときt-PAを使っておれば或いは…と考えることもありますが、「一病息災」というか、後遺症のおかげですこし健康に留意するようになったのも事実です。

今後とも、体調変化に敏感でありたいと思いました。重ねてお礼申し上げます。

かっちゃんかっちゃん 2016/05/06 23:13 胆石の痛みについては、物凄く痛くても本人が「胃の痛み」として訴えたら、胃薬をくれてそれで悪化させる場合だってありますよ。僕は最終的に、血液検査の数字が非常に悪くなって、とにかく抗生剤の点滴投与と、腹部CTスキャンで胆嚢炎とわかり、胆嚢の摘出手術をした結果、ウズラの卵より一回り大きなもの一個と真珠大二個の胆石を取り出しました。胆石の存在自体は三十代後半からわかっていました。しかし、「無症状」ですから、痛くなるまで放っていたのです。けれど、しょっちゅう胃が痛くなるのでブスコバンを、ほぼ常用に近いくらい医師から貰っていました。
胆石胆嚢炎の痛みは最後は耐え難いくらい酷くなるので、結局はわかるのでしょうが、胆石を取ってから長年の喉の痛み、下痢症状が消えて、声まででかくなりました。どんな痛みでも緩和する時があるのです。その時は痛み止めを服用しているのでそれが効いたと思い込むのです。
後で調べたら、ちゃんと胆石特有の痛みでした。僕は「胃が痛い」とは言いましたが、場所は正確にみぞおちをしめして、そこは胃の位置ではないと言ったのに、なんで胆石を医師は見抜けなかったんでしょうね。風邪を引いたと言えば喉が腫れているから抗生剤もくれて、腹が痛いと言えば腹痛止め下痢止めを医師はくれます。僕の腹部エコーには毎年胆石が順調に成長している事が映し出されていましたが、その間30年間、胃痛と下痢に悩まされて仕事にも影響して家庭も崩壊しましたよ。
今は手術は内視鏡で一週間の入院で済みます。開腹も二週間あれば良いらしい。僕は、石が大きかったので取り出すとき、少し余計に穴を5ミリ左右に余計切ったそうですが、縫い合わせることもなく4時間足らずで終わりました。
腹部エコーでは胆石の大きさは分からないようです。CTスキャンでは炎症は分かるようですが、大きさまでは分からないようです。「無症状」とは簡単には言えないようですよ。

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