NATROMのブログ

ニセ医学への注意喚起を中心に内科医が医療情報を発信します。

ホメオパシーが靱帯断裂を悪化させたと思われる事例

ホメオパシーで使用されるレメディは薬理学的にはただの砂糖玉であり、薬効もなければ副作用もない。しかし、ホメオパシーは標準医療否定と強く結びついており、ときに問題となる。ホメオパシーに頼り、結果的に外傷を悪化させたと思われる実例を紹介する。この例では、ホメオパシーの単なるユーザーではなくブログ上で他人に勧めており、ホメオパシーの被害者であると同時に加害者にもなりうるという点が考えさせられる。

9月3日 受傷




http://plaza.rakuten.co.jp/yochanhyogo/diary/201209030000/より引用

受傷機転は転倒。「レメディで一旦回復」とあるが、プラセボ効果もしくは自然経過と思われる。


9月4日 整形外科受診/ホメオパシー屋さんにも相談




http://plaza.rakuten.co.jp/yochanhyogo/diary/201209040000/より引用




http://plaza.rakuten.co.jp/yochanhyogo/diary/201209040000/より引用

さすがに整形外科には受診するようである。ブログの他の記述を見ても医療機関への受診はしているようである。自分では「ホメオパシーと現代医学の両立」のつもりのようであるが、「頂いて使わなかったお薬は、貯まるから家で捨てます」*1、「お医者さまに頼り(頼るふりをし)ながら、頂いたお薬を捨てて、ホメオパシーを使っています」*2だそうである。これは「ホメオパシーと現代医学の両立」ではないと私は考える。

「ホメオパシー屋さん」に「靱帯損傷に良さそうなレメディー」を教えてもらうが、結果的にこれは全く効いていないどころか、悪化させる要因になったと思われる。


9月5日 一旦は改善




http://plaza.rakuten.co.jp/yochanhyogo/diary/201209050001/より引用

靱帯の腫れが引いたのはレメディの効果ではなく自然経過だと思われる。また、この後の経過で明らかになるのだが、靱帯損傷は別に治っていなかった。よしんばレメディが効いたのだとしても、腫れだけ引かせて靱帯損傷はそのままである。だとすると、現代医学は「対症療法に過ぎない」と批判しているが、ホメオパシーも同様である。


9月5日 MRI拒否




http://plaza.rakuten.co.jp/yochanhyogo/diary/201209050001/より引用

このあたりから現代医学否定の弊害が出始めている。現代医学との両立というのであれば、整形外科医が勧めた検査を拒否するのはいただけない。しかも、誓約書にサインを求められるほどであることから、かなり強く勧められたと思われる。MRIを拒否した理由は、何か体に有害であるかのように思ってるからであるようだ。


9月6日 ギプスなしで歩く




http://plaza.rakuten.co.jp/yochanhyogo/diary/201209060000/より引用

いったいどういうわけだか、ギプス無しで歩くのだ。処方された薬を捨てたり、検査を拒否したりすることから推測するに、ギプスも「現代医学」の一環であり、必要性をあまり認めていないのかもしれない。あるいはレメディで治ると思い込んでいるのかもしれない。


9月9日 ギプスの意味




http://plaza.rakuten.co.jp/yochanhyogo/diary/201209090000/より引用

9月9日の時点で、ギプスを着ける意味について理解できたように見えるが、この後の記述をみるとあまり理解できていなかったようである。


9月12日 ギプス延長決定




http://plaza.rakuten.co.jp/yochanhyogo/diary/201209120000/より引用

当然のことであるが、まだギプスを外すことはできない。

9月26日 無駄だった息子のギプス




http://plaza.rakuten.co.jp/yochanhyogo/diary/201209260001/より引用

ギプスを着ける意味について理解していたら、「無駄だった」などとは書かないであろう。実は、この小学生の息子は7月ごろにもギプスを着けていたのである。


7月19日 ギプスしなくちゃいけないかしら




http://plaza.rakuten.co.jp/yochanhyogo/diary/201207190000/より引用

親が「ギプスしなくちゃいけないかしら」などという認識であるから、子は勝手にギプスを外したりするのだ。たまたま悪い結果にならなかっただけで、この事例は医療ネグレクトであるように思う。


9月19日 MRI拒否するからでしょ




http://plaza.rakuten.co.jp/yochanhyogo/diary/201209190001/より引用

整形外科医もたいへんである。結局はMRI撮影に同意した。


10月2日 靱帯1本ほぼ断絶




http://plaza.rakuten.co.jp/yochanhyogo/diary/201210020000/より引用

受傷から1ヶ月経っているのに、靱帯断裂、距骨損傷、他いろいろ。経過から考えるに、ただの砂糖玉に頼り、医師が勧める検査を拒否し、ギプスの必要性を十分に理解できなかった本人のせいだと思われる。

また、整形外科医が触診して損傷部位を確認するのは当たり前である。触らずに診察しろとでも?


10月3日 薬よりも早く治る




http://plaza.rakuten.co.jp/yochanhyogo/diary/201210030002/より引用

レメディに頼って靱帯断裂を悪化させたことは都合よくお忘れなのだろう。

*1:URL:http://plaza.rakuten.co.jp/yochanhyogo/diary/201103260002/

*2:URL:http://plaza.rakuten.co.jp/yochanhyogo/diary/200911300002/