NATROMのブログ

ニセ医学への注意喚起を中心に内科医が医療情報を発信します。

「真性糖尿病」って何よ

Yahoo!翻訳で"diabetes mellitus"が「真性糖尿病」と翻訳される。





ぶっちゃけ、「真性糖尿病」とはあまり言わない。ただ、用語の揺れはあるものなので必ずしも間違いとは言えない。予想だが、「腎性糖尿病」ではなく、実際に血糖値が上昇するタイプの糖尿病という意味ではなかろうか。現在では「腎性糖尿病」という病名をあまり使わないので、対比される「真性糖尿病」という用語も使わなくなってきたのではないか。

どれぐらい「真性糖尿病」という言葉がポピュラーなのか、医中誌先生に聞いてみた。





糖尿病全体では18万7301本の論文がある一方で、「真性糖尿病」という用語で検索できる論文は72本。かなりマイナーな部類に入る用語とみなしていいだろう。しかもこの72本も、「真性糖尿病性白内障」や英語の論文の自動翻訳と思われるものが含まれており、真に「真性糖尿病」という用語を使用した論文はさらに少ない。それから、牛や猫やチャイニーズハムスターの論文も引っ掛かってきた。獣医学分野で比較的よく使われる用語なのかもしれない。

「真性糖尿病として治療されその経過中に褐色細胞腫と診断のついた3例」というタイトルの論文があったから、もしかしたら二次性ではない糖尿病という意味かもしれない。別の論文には「妊娠性糖尿病からひきつづき真性糖尿病に移行すれば,その妊娠時における糖尿病は,糖尿業の発症とみなされ…」という記載があることも、「二次性ではない糖尿病」説を裏付ける。

ブドウ糖負荷試験について、「本テストは尿糖陽性あるいは空腹時血糖高値の患者に対して、真性糖尿病か否かを断定するために行う」という記載のあるウェブサイトもあった。個人のサイトだが、おそらく成書をそのまま引用している。「境界型糖尿病ではない糖尿病」説もありうる。

現在、論文の本文を読める環境にないから、これ以上の探索は行わない。気が向いたら、古い教科書等を調べてみよう。