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cover ■「ニセ医学」に騙されないために

 ホメオパシー、デトックス、千島学説、血液型ダイエット、ワクチン有害論、酵素栄養学、オーリングテストなどなど、「ニセ医学」についての本を書きました。あらかじめニセ医学の手口を知ることで被害防止を。

0016-10-21 高リスク者に対する低線量CTによる肺がん検診は肺がん死を減らさない

[]高リスク者に対する低線量CTによる肺がん検診は肺がん死を減らさない 高リスク者に対する低線量CTによる肺がん検診は肺がん死を減らさないを含むブックマーク

Results of the Randomized Danish Lung Cancer Screening Trial with Focus on High-Risk Profiling.

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/26485620

50歳〜70歳の喫煙者を対象としたCTによる肺がん検診は肺がん死を減らさない。オランダ。RCT。4104人が対象。肺がん死亡のハザード比は1.03(95%C.I. 0.66-1.6)、総死亡のハザード比は1.02(95%C.I. 0.82-1.27)。肺がんの診断は有意に検診群で多い(つまり過剰診断)。対象群53例に対し検診群で100例。肺腺がんに限ると18例対58例に。

早期がん(stage IおよびII)は検診群54例対対照群10例と検診群に多い。stage IIIaも検診群15例対対照群3例と検診群に多い。stage IVは検診群23例対対照群32例で有意差なし。最も進行したT4N3M1だと、検診群8例対対照群21例で、絶対ステージシフト"absolute stage shift"が示される。サブグループ解析で高リスク者に限ると有意差がないもののNLSTと一致した傾向がみられる。

アメリカ合衆国では似たようなデザインで、低線量CT群において、肺がん死どころか総死亡すら減少した(NLST)。「対象は、年齢55〜74歳で、30 pack-years以上の喫煙者および禁煙後15年以内の元喫煙者」。対象は約5万人(各群約2万5000人ずつ)。肺がん死を20%、総死亡を6.7%減らす。総死亡を減らしたがん検診のRCTは私が知る限り唯一。

メタアナリシスすると(していいのかどうかはわからないが)、検診群が勝つ(検診は肺がん死亡を減らすという結果になる)と思う。NLSTのほうがずっとサンプルサイズが大きいから。

日本でもCTによる肺がん検診の臨床試験が進行中(JECS Study)。「CT併用の検診(CT群)、もう半分の方にX線のみの検診(X線群)」。対象は「50歳以上70歳以下、かつ喫煙指数600未満」。未満かよ。なんで未満なんだよ。差が出ない可能性が高いと思うぞ。

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0016-10-17 過剰診断に関する誤解

[]過剰診断に関する誤解 過剰診断に関する誤解を含むブックマーク

過剰診断に関する誤解は広く見られる。誤解の実例の収集、および、誤解の訂正を試みることは無駄ではないだろう。とりあえず仮の置き場であって、誤解している人たちに向けた詳細な説明ではない。

  • 誤解:ガイドラインに照らせば手術適応である。よって過剰診断ではない
  • 事実:手術適応だからといって過剰診断ではない、とは言えない。無症状で発見されたがんにおいて手術適応の症例の中には一定の割合で過剰診断が含まれる。
  • 誤解:病理診断や進行度など症例を詳しく検討しなければ過剰診断かどうか判断できない。
  • 事実:症例を詳しく検討しなくても疫学データより過剰診断かどうか判断は可能である。一方、症例を詳しく検討しても過剰診断かどうかは判断できない。

  • 誤解:韓国の成人の甲状腺がん検診で過剰診断が起こったのは、小さくて手術適応でないものまで手術してしまったからである。
  • 事実:韓国の成人の甲状腺がん検診において、小さいものまでも手術してしまったことは過剰診断を増やした一因に過ぎない。リンパ節転移や腫瘍径が大きいものも検診で発見され治療介入されたが、甲状腺がんによる死亡率は変化しなかった。

  • 誤解:腫瘍径1 cm以下でリンパ節転移のないものを診断することが過剰診断である。
  • 事実:腫瘍径1 cm以下でリンパ節転移がなくても、将来症状を引き起こしたり、死亡の原因になったりするものは過剰診断ではない。

  • 誤解:遠隔転移があるものは過剰診断ではない
  • 事実:遠隔転移があっても、将来症状を引き起こしたり、死亡の原因になったりしないものは過剰診断である。

[]検診の有効性に関する誤解 検診の有効性に関する誤解を含むブックマーク

過剰診断に関する誤解と別にしておいたほうがいいだろう。

  • 誤解:検診によって5年生存率が改善すれば、検診は有効だ。
  • 事実:リードタイムバイアスやレングスバイアスがあるので、5年生存率の改善は検診の有効性の判定には使えない。
  • 誤解:検診によって早期がんを多く発見することができれば、検診は有効だ。
  • 事実:リードタイムバイアスやレングスバイアスがあるので、早期がんの発見数の増加は検診の有効性の判定には使えない。
  • 誤解:エコーのような侵襲性のないがん検診なら害はない
  • 事実:がん検診の害のうち、検査に伴うものは一部である。偽陽性、過剰診断に伴う害は侵襲性のない検査であっても防げない。

ゴミクズ管理人さんへゴミクズ管理人さんへ 2016/10/28 04:40 久々にみたが相変わらず論拠が思い込みなのに相手だけは批判して
あまりにクズなのでわらってしまった
いいかげん人殺しだってことを反省してほしいもんだ

NATROMNATROM 2016/10/28 08:43 「論拠が思い込み」というのはゴミクズ管理人さんの思い込みです。文献だって提示できますよ。私の主張のどこが間違っているのか、具体的に指摘してくださるのは歓迎です。「過剰診断に関する誤解のリスト」が充実しますので。

NATROMNATROM 2016/10/28 08:47 私のブログの読者でも、過剰診断についてモヤモヤしている人もいるかもしれません。どしどしご質問を。「いまさらこんなこと聞けない」なんて質問なんて大歓迎です。匿名でいいです。

sagarasagara 2016/10/28 22:38 はーい( ´・ω・`)ノ

わたくし、理解力が足らずムラムラしております。
失敬、モヤモヤしております。

過剰診断とは結果論であり、少なくとも診察している瞬間では過剰か否かは判別できないものだ、という認識でおります。
しかし、わたくしめのような「なんちゃって」な理解度ですと、ちこっとばかり利口な目暗から「それって偽陽性とどう違うの?」などとツッコミが入ると、言葉に詰まるんですな。

どうか、ご助言くだされ(´・ω・`)

NATROMNATROM 2016/10/28 23:53 sagara さん、コメントありがとうございました。

偽陽性と過剰診断。確かにまぎらわしいです。わかりやすく言うと、

偽陽性は、一次検査で「がんの疑い」だったけど、精密検査で「がんじゃなかった」ものです。たとえば、乳がん検診のマンモグラフィー(乳房X線撮影)でしこりが見つかり、細胞を採ったりする検査などの精密検査を受けたところ、乳がんではなく良性のものだったとわかった、というのが偽陽性です。

一方で、過剰診断は精密検査でもがんと診断されます。手術して切り取った組織を顕微鏡で見てもがんの組織を確認できます。精密検査でがんと診断され治療された人の中には、過剰診断だけではなく、治療していなかったら将来症状が生じていたはずのものもあります。しかし、診察している瞬間も、それどころか治療した後も、過剰診断か否かは判別できません。

sagarasagara 2016/10/29 11:17 NATROM様、さっそくのご返事、ありがとうございます。

偽陽性=がんじゃなかった
過剰診断=がん
であったのですな。少々勘違いしておりました。

つまり、過剰診断は疫学的な計算をしなければ現れないもの、ということですかな?
(こう言うと「現医アレルギー」が発生しそうですな)
そうすると、早期発見と過剰診断は程度の差ではなくセットであると考えてよろしいのでしょうか?
(´・ω・`)

NATROMNATROM 2016/10/29 11:44 偽陽性は、「一次検診で陽性で、精密検査で陰性だったから、この人は偽陽性です」と実例を出せます。一方で、過剰診断は、どの人が過剰診断だったのか、生きている人で実例を出すことはできません(別の原因で死亡した人を解剖してがんが発見されたら、過剰診断の実例となります)。

なので、「過剰診断は疫学的な計算をしなければ現れないもの」というご理解で正しいです。

「疫学的な計算をしなければ現れないもの」というと、なんだか根拠が不明確のように感じる人もいるかもしれません。ですが、たとえば、「タバコが原因で肺がんになった人」というのは、「疫学的な計算をしなければ現れないもの」です。

タバコを吸っていて肺がんになった人はごまんといます。タバコを吸うと肺がんになりやすいのもきわめて確かです。しかし、タバコを吸っていて肺がんになったある個人が、タバコが原因で肺がんになったかどうかを特定することできません。もしかしたらその人は、タバコを吸わなくても肺がんになったのかもしれないからです。

タバコを吸っていて肺がんになった日本人男性が100人いたら、そのうち80人ぐらいが「タバコが原因で肺がんになった人」で、20人ぐらいが「タバコを吸わなくても肺がんになった人」です。でも、誰がそうなのかは特定できません。「タバコが原因で肺がんになった人」というのは、「疫学的な計算をしなければ現れないもの」です。

過剰診断も同じようなもんです。乳がん検診を受けて乳がんと診断された人が100人いたら、そのうち30人ぐらいが過剰診断で、70人ぐらいが「検診で発見されなくてもそのうち症状がでて乳がんと診断されるはずだった人」です。でも、誰がそうなのかはわかりません(わかる方法を発見すればノーベル賞級です)。過剰診断は「疫学的な計算をしなければ現れないもの」です。

いまの検診技術では、早期発見と過剰診断はほぼセットです。早期発見をしようとすると、必ず過剰診断が生じます。がん腫や検診方法によってその割合はまちまちですが、大雑把に乳がんや肺がんは30%くらい。前立腺がんや子宮頸がんや大腸がんはもっと多い。大人の甲状腺がんにいたっては検診で発見されたがんのほとんど(99%とかいう数字もある)が過剰診断です。

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