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cover ■「ニセ医学」に騙されないために

 ホメオパシー、デトックス、千島学説、血液型ダイエット、ワクチン有害論、酵素栄養学、オーリングテストなどなど、「ニセ医学」についての本を書きました。あらかじめニセ医学の手口を知ることで被害防止を。

0017-05-12 正誤表(提案)

[][]「疫学 -医学的研究と実践のサイエンス」の気になった点。 「疫学 -医学的研究と実践のサイエンス」の気になった点。を含むブックマーク

cover

■疫学 -医学的研究と実践のサイエンス-(メディカルサイエンスインターナショナル)は図が多くかつカラーで見やすい。また訳語が工夫されており、お勧めできる教科書である。とてもいい本だと思う。ただし、いくつか読んでいて気になった点があるのでここで指摘しておく。とくに過剰診断が偽陽性や誤診とは異なり、病理学上は確かにがんであるにも関わらず、生涯無症状であるという点がまったく記載されていないのは大きな問題である。引用はすべて2010年5月28日発行第1版第1刷から。



P329-330 過剰診断バイアスの説明。過剰診断が偽陽性・誤診と異なることが明確に書かれていない

その結果、それが子宮がんの検診であれば、陽性例の中に正常の女性(偽陽性例)が含まれてしまうことになり、検査異常群は正常の女性によって、いわば「薄められ」てしまいます。

この例では、4000人が検査で肺がん陽性と診断されていますが、このうち1000人は図18-11Aと同じ症例、つまり、本当に肺がんに罹患している症例で、3000人は本当は肺がんではないのに、スクリーニング検査で誤診された症例(偽陽性例)です。

偽陽性や誤診は結果的に過剰診断にはなるだろうが、それは本質ではない。過剰診断は、病理学的に確かにがんであると診断される事例においても起こりうる。偽陽性や誤診がまったくのゼロであっても過剰診断は生じる。この教科書が書かれた2009年には、現在広く使われている過剰診断の定義がまだ浸透していなかったのかもしれない。がんの過剰診断を扱う文献においてしばしば引用されるWelch and Blackの論文(https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/20413742)は2010年に書かれた。「過剰診断バイアス」ではなく、過剰診断そのものの問題について知りたい場合は、本書を参考にしてはいけない。



したがって、このような生存率を扱う研究では、過剰診断の問題を避けるために、診断プロセスを厳格に標準化する必要があります。

診断プロセスの標準化では過剰診断は防げない。がん検診の有効性判定において過剰診断バイアスを防ぐには、生存率ではなく、検診群と非検診群を死亡率(もしくは重要な有害アウトカム)で比較すればいい。過剰診断バイアスはリードタイムバイアスの極端な事例(寿命より長いリードタイム)と考えられるので、リードタイムバイアスを防ぐ研究デザインであれば過剰診断バイアスも防げる。ただし、過剰診断そのものは防げない。検診群において過剰診断が発生すると、生存率には影響を与えるが、死亡率(もしくは重要な有害アウトカムの発症率)には影響を与えない。



P316 ケースコントロール研究の説明

この場合、効果を評価しようとする予防もしくは保健医療プログラムを「曝露exposure」と考えればいいわけで、その曝露を受けた人をケース、受けていない人をコントロールとして分析を行います。

予防もしくは保健医療プログラムを「曝露exposure」と考えるのは正しい。しかし、曝露を受けた人をケースとするのはおかしい。疾病disease outcomeがあるのがケース、ないのがコントロールである。疾病あり(ケース)群のうちの曝露(予防もしくは保健医療プログラム)ありの割合と、疾病なし(コントロール)群のうちの曝露ありの割合を比較するのがケースコントロール研究なのではないか*1。予防もしくは保健医療プログラムが有効であれば、オッズ比が1未満になる。



P341-342、P372 演習問題の解答

Q7.疾患の早期発見を目的としたスクリーニングプログラムの利益を示す指標として、不適切なものは次のうちどれでしょうか?

a. スクリーニング群における致死率の減少

b. スクリーニング群における死亡率の減少

c. スクリーニング群における発生率の減少

d. 合併症の減少

e. スクリーニング群におけるQOLの改善

解答はc.(スクリーニング群における発生率の減少)となっている。しかしながら、子宮頸がん検診や大腸がん検診といった前がん病変を早期発見して治療介入する検診では、がんの発生率の減少は検診の利益を示す指標となりうる。P336でも、子宮頸がん検診の評価する研究デザインとして「スクリーニングの頻度の異なる集団間で、子宮がんの発生率や死亡率を比較することです」とある。

一方、致死率の分母は「その疾患にかかっている人の数」である(P65)。検診にまったく利益がなくても、過剰診断の数が増えれば「その疾患にかかっている人の数」は増えるため、致死率は減少する。正しい回答は「a. スクリーニング群における致死率の減少」だと考える。



細かい点

P103 表5-10の左上 「感度」とあるが「特異度」が正しい。

P251 右中央あたり 「II型糖尿病」→「2型糖尿病」

P284 右下あたり 「表16-3や表16-4のようなデータを調べる時には」→「表16-4や表16-5のようなデータを調べる時には」

P359 左中央あたり 「また、ヒトパピローマウイルス、特その16型と18型は」→「また、ヒトパピローマウイルス、特その16型と18型は」

「子宮がん」ではなく「子宮頸がん」もしくは「子宮体がん」と明確に区別をしてほしい。



2017年5月13日追記 。ublftboさんによれば、2016年第三版では、「現在の用法になっていて、「偽疾患」の語も充てられています。また、検診の記述も、旧版より更に詳しくなっていて、参照する価値があります」とのことである*2コメント欄にあるように、2016年三版を参照したのは、『疫学 -医学的研究と実践のサイエンス』では無くて、『臨床疫学』とのことです。

*1:正確には割合ではなくオッズを比較すると言った方がいいか

*2http://b.hatena.ne.jp/entry/b.hatena.ne.jp/entry/b.hatena.ne.jp/entry/twitter.com/NATROM/status/863024828621570048

ublftboublftbo 2017/05/14 17:28 今晩は。

今日追記に気づいたのですが、2016年三版を参照したのは、こちらの本では無くて、『臨床疫学』です。http://b.hatena.ne.jp/entry/b.hatena.ne.jp/entry/twitter.com/NATROM/status/863024828621570048 こちらにブクマしたものだったのですが、解りにくくてすみません。

『疫学 -医学的研究と実践のサイエンス』に言及したブクマはこちらで、http://b.hatena.ne.jp/entry/337378111/comment/ublftbo どうやら、2013年の改訂版では直っていないようです。

ublftboublftbo 2017/05/14 17:32 それで、ブクマに書いたように、『臨床疫学』は、かなり記述が詳しくて、良い本だと思います。私が以前に、検診について記事を書く際に、書店で見かけて良いと思った本だったのですが、後から購入して手許にあるのは旧版で、新しい版とは結構内容が変わっていたのでした(多色刷りになっていて、図も少し違っていたり)。

NATROMNATROM 2017/05/14 17:36 コメントありがとうございました。『臨床疫学』もそのうちに読んでみます。いまは『看護疫学入門』を読み進め中です。

読まなければならない本、書かなければならない原稿、助けなければならない姫が山積みです。

ublftboublftbo 2017/05/16 20:40 今晩は。

『臨床疫学』の第二版を手に入れたのですが、二版で既に、現在の用法でした。

参考までに、引用してみます(P164-165)。

▼ 引  用 ▼
 いくつかの癌はその進展が遅かったり,一部には退縮を示すものもあり,患者にはなんら影響をおよぼさない。そのような癌がスクリーニングで発見された場合,偽疾患(pseudodisease)といわれ,その検索行為は過剰診断(overdiagnosis)といわれる。というのも,その発見が患者の助けになっていないからである。こういった癌を発見することにより,みかけ上の癌発生率が増加をきたす。過剰診断は図9-8(引用者註:がんの進行を矢印で表した、過剰診断の文脈でよく使われる図)に示したとおり,レングスタイムバイアスの極端な例である。スクリーニングの技術がなければ,予後のよい病変は決して発見されることはなかった。
▲ 引用終了 ▲

例示として、神経芽腫(日本、ドイツ、カナダ)が出ており、前立腺がん・乳がん・子宮頸がん・肺がん、などでも過剰診断があると紹介されています。そして、

▼ 引  用 ▼
(略)スクリーニング検査の結果としての偽疾患は,スクリーニングを行う根拠となっている浸潤癌へと進展する病変と明確に区別ができないため,特に難しい問題である。スクリーニングは,そのような早期病変を,罹患や死亡の原因となるものと,生涯にわたってあらわれることのないものとに区別する試みであるが,これまでの技術ではそれは不可能である。過剰診断の発生程度を判定するためには,それぞれの疾患ごとの(生存率ではなく)死亡率を明確にし,スクリーニング群と非スクリーニング群とで比較する必要がある。
▲ 引用終了 ▲

と結ばれています(P165-166)。