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cover ■「ニセ医学」に騙されないために

 ホメオパシー、デトックス、千島学説、血液型ダイエット、ワクチン有害論、酵素栄養学、オーリングテストなどなど、「ニセ医学」についての本を書きました。あらかじめニセ医学の手口を知ることで被害防止を。

0018-03-31

[]各務裕史さんからの指摘に対する答え その2 各務裕史さんからの指摘に対する答え その2を含むブックマーク

過剰診断は医療過誤とは異なる




「謝らなければならないこともあるでしょうし、そうでないこともあるでしょう」という私のツイート*1は「脳梗塞で死亡⇒過剰診断でしたと謝らなければならない?」という各務裕史さんのツイート*2を受けてのものです。

無症状で甲状腺がんと診断された患者*3が、甲状腺がんの治療を行わず、かつ、甲状腺がんの症状が出る前に、別の原因(たとえば脳梗塞)で死亡したとき、その甲状腺がんの診断は定義上、過剰診断です。その甲状腺がんの診断をした医師は、「謝らなければならないこともあるでしょうし、そうでないこともあるでしょう」。

謝らなければならないケースはたとえば、「80歳の脳梗塞ほか死亡リスクの高い人に、本人から希望もなかったのに検診と称してわざわざ甲状腺エコーを行い、小径の甲状腺がんを見つけて細胞診を行って診断を確定した。治療を予定していたがその前に脳梗塞を起こして死亡した」ケース。これは治療しても予後は改善させない一方で、がんと診断されることで不安を喚起し、細胞診などの無用なリスクを負わせています。ヤブ医者。検査してお金儲けをしたかったか、何も考えていないのか、どちらか。

謝らなくてもよいケースはたとえば、「50歳の甲状腺機能亢進症患者に甲状腺エコーを行ったところ、偶発的に小結節が見つかった。十分なインフォームド・コンセントを行い、患者の希望もあって細胞診を行ったところ、甲状腺がんと診断が確定した。ガイドラインにしたがって手術はせずアクティブサーベイランス(監視療法)を行っていた。55歳のときに予想外の脳梗塞が起こって患者は死亡した」。これは標準的な医療です。がんは診断されると治療介入されることが一般的なので、「この症例は確かに過剰診断であった」と断定できるケースはまれですが、これはそのまれなケースです。アクティブサーベイランスや高齢者に対するがんの治療の差し控えは今後増えると予想されますので、将来はまれとは言えなくなるでしょう。

この2例の中間的なケースもいくらでもあります。「まあ謝るべきとまでは言えないものの、もうちょっとうまくやればいいのによ」という感じ。福島県の小児に対する甲状腺がん検診がまさしくそうです。ポイントは過剰診断は医療過誤とは異なることです。



ツイッターではときに曖昧な用語を使うこともある。とくに相手が使った場合は。

「甲状腺癌患者が別の原因で死亡したらそれは過剰診断だったという事」を引用した理由は、各務裕史さんがそうおっしゃったからです。「別の原因で死亡したらそれは過剰診断だったという事」になる人は、「甲状腺癌患者」ではなく*4「検査を受ければ甲状腺がんと診断されるであろう状態の人、あるいは、甲状腺がんと診断されたが治療は受けていない状態の人」ですが、面倒くさいでしょ?

それとも、いちいち厳密な言葉遣いを要求したほうがよかったですか?というか、そのほうがよさそうなのでこうして字数制限のないブログで書いています。ツイッターでは無理です。



検診の是非は過剰診断でなく検診の利益不利益で判断すべき



「検診の是非は過剰診断でなく検診の利益不利益で判断すべき」というのは正しいです。ずっと私はそう主張しています。よしんば仮に、過剰診断をゼロにできたとしても、不利益が利益を上回る検診をすべきではありません。そして福島県の小児に対する甲状腺がん検診は、おおよそ利益が不利益を上回るなんてありそうもない検診です。

過剰診断が多く含まれているならそれだけで不利益は甚大です。よしんば過剰診断が(ゼロではないであろうが)少ないとしても、かなり長いリードタイム(「診断」から「治療介入しなかったときの発症」までの期間)があるわけです。各務裕史さんは、死亡まで「60〜70年の長期間」を見込んでいましたよね。

前倒しでがんの診断をしてしまうのは、過剰診断ほどではないにせよ、かなりの不利益なんです。子供のころにがんと診断され、場合によっては手術され、あるいはアクティブサーベイランスされるとしても定期的に検査を受け、進行や再発や転移はしていないかと不安に悩まされるわけです。

それで小児に対する甲状腺がん検診の利益はどれだけですか?「60年後の甲状腺がん死亡を減らすかもしれないし、減らさないかもしれない」というぐらいですか。検診の不利益に見合うだけの利益ですかね。一人の甲状腺がん死亡を減らすために必要な検診数はどれぐらいですか?もともと甲状腺がんは予後がよい疾患なので、仮に死亡を減らすとしても検診介入の利益は小さいのです。

「検診を受けることによる安心感」を利益とみなす場合もありますが、一般的には検診の不利益に見合うものではないし、そもそも安心感を利益をみなすこと自体に大きな問題があります。気が向けば後日言及するかもしれません。



「甲状腺がん発見は全て過剰診断によるもの」と誰が主張しているの?



誤解に基づいて誰も言っていないことに反論するのはなんら議論に貢献しません。「なとろむ語録」を「捏造」したのと同じく、各務裕史さんが勝手に「甲状腺癌発見は全て過剰診断によるものとの様な状態」だと誤解しているだけではないですか?「どなたか「甲状腺癌は全て過剰診断」などという説を主張したのでしょうか?」*5と2018年1月にお尋ねしましたが、各務裕史さんからは問いに対するお答えはありませんでした。その代わりに「全てが過剰診断でないなら死亡率が低減しないなどとデマツイをするのでしょうか」という的外れなお返事がありました。「過剰診断が仮にゼロであっても、がん検診による死亡率が減少しないこともありえます」*6とお返事したのですがそれにはリプライがありませんでした。現在では、「検診の是非は過剰診断でなく検診の利益不利益で判断すべき」ということがご理解できているようで何よりです。

*1https://twitter.com/NATROM/status/978406994020200448

*2https://twitter.com/kuninosaiseiwo/status/978211877363712000

*3:この場合は診断されてしまったから患者です

*4:なぜなら甲状腺がん患者の中には治療を受ける人もおり、治療を受けた以上は、甲状腺がんの症状が生じる前に別の原因で死亡しても、過剰診断だったのか、治療のおかげで症状が出なかったのか区別がつかないから

*5https://twitter.com/NATROM/status/957163033402290176

*6https://twitter.com/NATROM/status/957173560031592448

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0018-03-29 各務裕史さんからの指摘に対する答え

[]各務裕史さんからの指摘に対する答え 各務裕史さんからの指摘に対する答えを含むブックマーク

がん検診における過剰診断について、ツイッターで各務裕史さんという方とやり取りしています。私の立場は2015年に■「過剰診断」とは何かで説明した通りです。過剰診断についてはしばしば誤解されていることがあり、ツイッターでやり取りすることで誤解を解消したり、どのような誤解が起きやすいか情報を収集できたりします。ただ、ツイッターでは文字制限がありますので、ここで文字制限なく説明を試みたいと考えます。



なとろむ語録として、「甲状腺癌患者が別の原因で死亡したらそれは過剰診断だったという事」とありますが、私はそのような表現はしていません。一般的に、がんと診断されると治療介入されてしまうので、「治療介入前に別の原因で死亡したがゆえに過剰診断であることがわかる」がん患者はかなりレアケースです*1。「別の原因で死亡したらそれは過剰診断だった」というのは、主にがんと診断されないままの人を指します。成人では人口の0.5〜2%ぐらいが「がんと診断はされていないが検診をすると甲状腺がんと診断されてしまう人」です。そういう人は「がん患者」ではありません。



よって、「(1)を何度もツイされ、定義間違いに気づいて(5)に変えられた」というのも各務裕史さんの勘違いです。勘違いというか言いがかりです。「何度もツイ」したのなら、そのツイートを具体的に引用すべきでしょう。



「(4)に至っては今回が初めてのツイ」という主張は誤りです。たとえば、2018年3月18日に「手術とは関係ありません。というか手術してしまうと過剰診断かどうかわからなくなります」とご説明しています*2



「発現」の意味がわかりかねますが、高野説に限らず「検診で診断された癌の中に将来症状を呈するものとしないものがある」というのは正しいです。「50年後に発現する癌の診断も過剰診断?」については、「50年後に症状を呈する癌の診断」は定義上、過剰診断ではありません。「そもそも別原因で死亡云々は過剰診断論議に無関係」というのは誤りです。というのも、症状を呈する前に別の原因で死亡するような病気を診断することは過剰診断だからです。そもそも、「別原因で死亡」した人を病理解剖すると前立腺がんや甲状腺がんが多く見つかる、という事実が過剰診断の根拠の一つであることを思い出せば、「別原因で死亡云々は過剰診断論議に無関係」という各務裕史さんの主張が明確に誤っていることがわかります。

がん検診における過剰診断についてよく引用されるキーとなる論文がWelch and Black(2010)*3です。この論文の図に「がんが症状を引き起こすサイズ」になる前に「他の原因で死亡」するような場合が示されています。



「別原因で死亡云々は過剰診断論議に無関係」だとしたら、いったいなぜ、Welch and Blackはわざわざこの図を掲載し、多くの専門家が引用したんでしょうか?各務裕史さんに対して「Welch and Black(2010)の内容をご理解していますか?」と複数回おたずねしましたがお答えがありません。もしかしたら英語がわからないのではないかとも考え、「"Death from other causes"の意味はわかりますか?」とも複数回おたずねしましたがお答えがありません。


「その基となったなとろむツイは消されたのか見つからず」とありますが、各務裕史さんとのやり取りのツイートを消したことはありません。というかごく些細な誤字訂正以外では私は原則としてツイートは消しません。訂正する場合は、リプライか引用RTで、「私は××と主張していたがそれは誤りで、正しくは○○でした」などと書きます*4

理由の第一には議論に対して誠実でありたいからですが、そうでなくても、ツイッターに限らずネットで発言したものは記録されるものです。都合が悪いから過去の発言を断りなく削除するという態度はいつかばれます。そのようなみっともないことになりたくありません。



というわけで、「甲状腺癌患者が別の原因で死亡したらそれは過剰診断だったという事」とは私は発言しておりません。各務裕史さんによる捏造もしくは誤解であると思われます。たぶん後者です。「捏造」は意図的な意味合いがありますが、各務裕史さんは過剰診断について十分な理解をしておらず、よって、私が言ってもいないことを言ったと勘違いしたのではないかろうかと。自分がよくわかっていない分野については、安易に「相手は××と言った」などと主張してはいけません。相手の言っていることを自分が正確に理解しているとは限らないからです。




老衰まで症状が出ないがんを診断することが無益であるのは正しいです。「症状が出る前に別原因で死亡」も過剰診断なので無益です。「検診後発症⇒有益な検診」というのも誤りです。「検診をしなければそのうち症状を呈するようながんを診断すること」は、定義上、過剰診断ではありません*5が、それと検診が有益であるかどうかは別問題です。検診が有益であるためには、予後をいいほうに変えることが必要です。「検診をしなければそのうち症状を呈するようながんを診断」したところで、甲状腺全摘に至ったり、甲状腺がん死したりする例を減らせなければ、有益ではありません。

*1:甲状腺がんや前立腺がんはアクティブサーベイランス/監視療法という選択肢があるので例外も生じる

*2https://twitter.com/NATROM/status/974796833506512896

*3https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/20413742

*4:誤ったツイートだけが拡散するのが問題になる場合があるので、今後はスクリーンショットを取って訂正の過程を明示した上で、もとのツイートは削除するという方法をとるかもしれません

*5:いわゆる「狭義のスクリーニング効果」ということなる

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