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cover ■「ニセ医学」に騙されないために

 ホメオパシー、デトックス、千島学説、血液型ダイエット、ワクチン有害論、酵素栄養学、オーリングテストなどなど、「ニセ医学」についての本を書きました。あらかじめニセ医学の手口を知ることで被害防止を。

2004-11-30 ときには経済学も

[]ときには経済学も ときには経済学もを含むブックマーク

cover

■嘘つき大統領のデタラメ経済

経済学にはずっと前から興味を持っていた。いわゆる「文系」に分類される学問で、もっとも理系的なものだろう。というわけで経済学に関してちょこちょこと本を読んでいたりするのだが、どうも経済学者(と自称している人々)の中にも「トンデモ」がいるらしい。うっかりすると、中原英臣を読んで進化論てこんなものだと勘違いする人のような誤りを犯しかねない。進化生物学だと、主流の考え方を知りたければドーキンスやメイナード=スミスやマイアを、進化生物学者の中での異論を知りたければグールドやエルドリッジやマーギュリスを読めばいい。じゃあ、経済学だと誰を読めばいいの?

一番いいのは、きちんとした教科書を読んで体系的に理解することだろう。しかし、経済学にそこまで時間は避けない。教科書(薄っぺらい奴)は買ったのだが、難しいし時間はないしほったらかしにしている。私の欲しいのは、一般人向けに書かれてなおかつ読む価値のある本だ。どれがいいのかは自分ではわからないので、誰か信頼できる人が勧めている本を読むしかない。となると、ポール・クルーグマンだろう。邦訳も何冊か出ているけど、とりあえず山形浩生のサイトで、いろいろ読める。(■Paul Krugman 論文翻訳(YAMAGATA Hiroo Official Japanese Page))

私のお勧めはこのへん。

■経済学者は進化理論家から何を学べるだろうか。

■IgNobel 章授与式におけるハイゼンベルグ不確定性講演

こうなると実際に本を買って読みたくなる。嘘つき大統領のデタラメ経済は私が読んだ三冊目。ニューヨーク・タイムズのコラム集。邦題はまああまり適切とは言えない。主にアメリカの経済についての本である。結果的に、ブッシュ大統領の悪口が多くを占めるが、それだけではない。この本の内容がどこまで正しいのか私には判断できないが、進化生物学についてあれだけきちんと理解できている人が、自分の専門分野でそれほど間違えているとはとうてい思えないのだ。


2004年12月1日付記。コメントありがとうございました。クルーグマン教授の経済入門読みたい本のリスト行きに。読みたいけどいつ読めるか。文庫のほうもう持っていました。

sheepmansheepman 2004/11/30 15:11 『嘘つき大統領のデタラメ経済』の翻訳の非公式正誤表です。

http://sheepman.parfait.ne.jp/wiki/TheGreatUnraveling

NATROMNATROM 2004/11/30 15:52 さっそくプリントアウトしました

NORTPN3rdNORTPN3rd 2004/11/30 19:18 「IgNobel章授与式におけるハイゼンベルグ不確定性講演」は大笑い。
何故、こんな風になってしまうのかは「うちゅーじん」のせいでないのは流木様のサイト「目からウロコの経済学」にも解説があります
http://members.at.infoseek.co.jp/tc_nagano/kzz_sb02.html

sheepmansheepman 2004/11/30 19:25 http://cruel.org/krugman/ig.html#dasoku

にも書いてありますが、「うちゅーじん」のせいでなくて、統計上の誤差です。

NORTON3rdNORTON3rd 2004/11/30 19:43 うー、二重投稿失礼、管理人様削除してください。ただ、関税のせいだけなんですか?常に流動的な為替レートの上で決裁をしていればある期間を取って、集計すれば大いにありうることだと思うんですけど(ちなみに小生はまるきりシロート)

山形山形 2004/11/30 23:32 どうもー。もちろんおっしゃる通り、為替レートや決済期間で誤差は出るんですが、もしそれだけなら、常に輸入が輸出を上回ることにはならないはずですよね。あるときは輸入が多いけど、別の年は輸出が多い、という具合になるはずでしょう。でもこれは、毎年必ず輸入のほうが多いんです。ですから、そういうランダムな誤差ではなく、システマチックな要因があると考えるべきなんです。

山形山形 2004/11/30 23:57 あと、経済学について大枠をまず理解するには、拙訳『クルーグマン教授の経済入門』(日経文庫)をよろしく。何がわかっているかだけでなく、何がわかってないかも教えてくれる希有な本です。

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2004-11-28 楽しい休日〜テナガエビのパスタウマー

[]うまいもの うまいものを含むブックマーク

27日(土)は病棟を回診して午前中で終わり。お昼は家でスパゲティを食べた。美味しかった。午後は主にぼんやりとトリック3のDVDを見る。「おまえらのやっていることは、すべてスリットお見通しだ!」。近所の紅茶専門店でお茶。美味かった。近所にこういう店があるのは素晴らしい。夕食は家でカキフライを食べた美味かった。タルタルソースにはタルタルではなくゆで卵が入っているんだねえ。「タルタ=ゆでた」「ル=卵」という説も。

28日(日)は私はお休み。一日中ゴロゴロして過ごした。夕食はやはり近所のイタリアンレストランカジュアルフレンチへ。最近開店したとのこと。生牡蠣のバジルソース添え。自家製イワシの燻製のサラダ。テナガエビのパスタ。鴨モモ肉のロースト。ピザ。デザートにココナッツのババロア。どれも美味かった。これで全席禁煙だったら完璧。また来よう。

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2004-11-27 遺伝と環境の微妙な色合い

[]遺伝と環境の微妙な色合い 遺伝と環境の微妙な色合いを含むブックマーク

ヒトの性行動が環境の影響を受けるなんてことはわかりきっている。だったら遺伝の影響は?異論はあるだろうが、遺伝的な影響もあるに決まっていると私は思うのだ。ヒトの形質における遺伝的影響を推定するのは、主に双生児研究(twin study)という方法による。双生児には一卵性と二卵性とがあって、一卵性双生児は遺伝的要因をほぼ完全に共有しているが、二卵性双生児は平均して半分の遺伝子を共有する(兄弟姉妹と同じ)。一卵性と二卵性の双生児における形質の一致率の差異でもって、遺伝的影響の程度を推定できる。もし、ある形質が100%遺伝的に決定されるのであれば、その形質はどの一卵性双生児も共有しているであろう。また、ある形質がまったく遺伝的影響を受けないのであれば、一卵性双生児がその形質を共有している割合は、二卵性双生児がその形質を共有している割合と同一である。たいていの形質は、この両極端の間のどこかにある。ヒトの遺伝学につきものの限界はあるものの、おおよそヒトの遺伝率は双生児研究によって推定されている。双生児研究によって、糖尿病や癌といった疾患が遺伝的な影響を受けることはよく知られている。こうした理由で大規模な双生児研究がなされているのだけれども、疾患の有無だけではなく、ついでに性行動についても調べた研究が報道されている。


■浮気は遺伝!?「女性の4割」…英調査結果(ZAKZAK)*1

 19歳から83歳の女性の双子1600組以上を対象に、過去の性的行動について聞き取り調査を実施。その結果、浮気をしたことがあるとした人のうち「遺伝的要因による」と判断されたのは41%で、これは遺伝の影響でがんなどの病気を発症する割合より高かった。

 調査を行ったティム・スペクター教授は「女性が浮気をしたり、複数のパートナーを持ったりするのに遺伝子が大きく影響していることが示された」と指摘。ただし、「実際に行動に移すかどうかは生活環境や育ち方による」とも話している。


■女性の不倫、遺伝的要因が影響=英科学者◇ロイター(日経)*2


■「浮気の虫」は遺伝する?=女性の不倫、4割が生まれつき−英研究(時事通信)*3


記事内容は似たり寄ったりだが、見出しが違う。日経は合格。ZAKZAKは微妙。時事通信は失格だ。遺伝と生まれつきは違う。癌や糖尿病の発症に「遺伝的要因が影響」するのは確かだが、けっして「生まれつき」ではない。「女性の4割」というのも誤解を招く言い方だ。これでは、浮気をした女性の100人のうち、40人は遺伝的な理由で浮気をしたかのように思えてしまう。実際には、40%という数字は遺伝率を表している。遺伝率とは表現型の分散に対する遺伝的分散の割合である。これではなんのことやらわからないよね。ある集団をとってみると、その集団に属する女性は不倫をしたりしなかったりする。いったいその違いは何に由来するものか?100%が遺伝的に決定されるのか?それとも遺伝的な影響は0%なのか?実際、その数字は0から100のどこかに位置し、今回の研究では40%という数字だったわけ。10人に4人が「生まれつき浮気性」というわけではない。

当然、男性の性行動についても調べたのであろうが、おそらくはそれほど高い遺伝率を示さなかったのであろう。じゃあ男性の浮気には遺伝要因は影響してないのかと言えばそうではない。男性の浮気の「分散」に関して遺伝的要因が少ないというだけで、男性の浮気行動に遺伝的影響があることは動物行動学的には推測できる。強い淘汰のもとにある形質は遺伝率が低い傾向にある。もしかしたら、「チャンスがあれば浮気をする」という遺伝子は男性の誰もが持っていているがゆえに、男性が浮気をするかしないかは環境のみが決定しているように見えるだけかもしれない。

*1:URL:http://www.zakzak.co.jp/top/2004_11/t2004112602.html

*2:URL:http://nikkeibp.jp/wcs/leaf/CID/onair/jp/medi/345808

*3:URL:http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20041125-00000801-jij-int

RYU_TI_SYURYU_TI_SYU 2004/11/30 00:10 >もしかしたら、「チャンスがあれば浮気をする」という遺伝子は男性の誰もが持っていているがゆえに、男性が浮気をするかしないかは環境のみが決定しているように見えるだけかもしれない。
上記の説に100リンギット
徳川家斉の例もあるしのう。いまメインで話題の「適応度」は高いじゃろうな。

EscapeFromFreedomEscapeFromFreedom 2004/11/30 19:48 いわゆる性倒錯において、男性に発現率が圧倒的に高いことと関連がありそうに思われます。進化生物学者にはフロイトは受けが悪いでしょうが、_性欲_なかんずく男性の性欲がいかに文化に加工される度合いが強いかを明らかにしたのは精神分析の功績ですね。
また、性行動の理論は権力論でもあります(これもフロイト理論の帰結であり功績でもある)。もちろん、権力論にしても進化心理学の取り扱う対象でありましょう。

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2004-11-25 Googleで20件くらい

[]「あなたは煮えるでしょう」リンク集 「あなたは煮えるでしょう」リンク集を含むブックマーク

あの看板が国内外で話題に!



■mediatinker

14周年の結婚記念日に大分へ来た夫婦のブログ(らしい)。写真付き。写真を取らせる何かがその看板にはある。



■engrish.com

写真付き。english.comではなくengrish.comね。ネイティブからみても変な英語なのだろう。



■Warning: English in danger!

"hilarious for their misguided use of the English language"(英語の愉快な誤用)なのだそうだ。"unintentionally scatological"ですらあるそうだ。



■JAPAN BICYCLING TRIP

engrish.comの写真付き。



■Engrish - session 4: Impression

写真付き。ここも笑える誤用を集めたっぽい。



■THE WORLD'S CRAZIEST ADVICE

世界のもっともキ○ガイなアドバイス。「池に落ちると煮えるでしょう (日本の温泉)」以外にもたくさんある。「熱い飲み物は熱い (テイクアウトのコーヒーカップ)」。「ペットを乾かすために使うべからず (電子レンジ)」。「このホウキは実際には飛びません (ハリーポッターの魔法のホウキ)」。「ルームサービスを呼ぶには、ドアを開けてルームサービスを呼んでください (イスタンブールのホテル)」。アチコチでコピペされている模様。



■パリ倉庫番雑記

むかし別府の温泉に行ったとき(別府は地獄めぐりでもまた有名です),熱泉の近くに立て札があり,そこに「熱湯に注意,柵の中に入らないで下さい」とあったのですが,そこに外国人観光客向けの英訳が付記されており,その訳が

if you fall in the pond, you will be boiled.(池に落ちるとゆでられますよ)

となっておりました.いえ,仰りたいことはよーくわかるのですが,boiledは如何か.

2004年10月9日(土)の日記。遠くフランスからあの看板を思い出す。



■2003年03月の日記

金龍地獄もかまど地獄と一緒で、別に地獄としての特色があるわけでもなく、ただ龍の像が置いてあって、そして地獄の池があるだけやった。まぁとりあえず龍の前で写真を撮ったりしたんやけど、順路にしたがって進んで行ったらありえへん注意書きを見つけた!日本語では

「高温注意」

とか普通のことが書いてあるんやけど、英語では

「If you fall in the pond,you will be boiled.」

って書かれててん!何!?もし…あなたがこの池に落ちると…ゆであがってしまうでしょう!?

なななんて物騒な!!

そのあまりにも衝撃的すぎる看板に驚いたり爆笑したり。とりあえずその看板は激写しといたからな。

私も激写いたしました。

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2004-11-24 9割方は冗談です

NATROM2004-11-24

[]インチキ自己責任論 インチキ自己責任論を含むブックマーク

こないだの別府の地獄めぐりのときの看板(写真)から、日本の問題点を指摘しる!みたいな。

日本語だとこう。

危険 ■熱湯に注意 柵の中に入らないで下さい。

英語だとこう。おお、潔い。

DANGER ■If you fall in the pond、you will be boiled

まったく日本ときたら禁止禁止で自由も責任もないヨ。一方、欧米では自分で判断する自由と、結果に対する責任を認めているネ。決して禁止しない。池に落ちる自由も認めているんダ。この看板一つとっても、日本人のお子様的な性格と、欧米人の自己責任を受け入れる大人の態度が表れているネ。

RYU_TI_SYURYU_TI_SYU 2004/11/24 22:18 煮えたい人は入ってもいいんだ・・・

Since the ingredient of the hot water in a pond changes, it is troubled.

せめて、上記の文くらいは追加せんとな。
#上記の文は英訳サイトで作った文章なのでオカシイかもしれん。

いどいど 2004/11/24 22:54 you will be boiled あなたは煮えるでしょう いい味出してますね

あがたしあがたし 2004/11/29 22:08 D.A.Thayne,小池信孝著「その英語,ネイティブにはこう聞こえます」(主婦の友社,2003年)には,「九州にある温泉」でみたこんな例が紹介されていました.

Beware, you will be boiled.

ただしこれは,露天風呂の「熱い湯に注意」という,人が入ることを前提とした看板なので,より真意と違う捉えられ方をされたかもしれません.

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2004-11-23 楽しい休日〜八木山バイパスドライブ

NATROM2004-11-23

[]八木山へドライブ 八木山へドライブを含むブックマーク

天気もいいし八木山までドライブに。紅葉が第一目的だったが、まあまあ。八木山峠は大学院生時代に、週に1回のアルバイトの際に通っていた。あの美味しいレストランはどうなったのであろうと、(多分)二年ぶりくらいによってみたら、ランチバイキングになっていた。自然食がウリとのことで、野菜のメニューが多く、美味であった。隣のパン屋も高いけど美味しいのだ。

ここで半額券をゲットしたので、ピクニカ共和国へ。規模の小さいどんぐり村のようなものだ。ホームページはフレームが多くて失敗しているうえにリンク切れが多いぞ。基本的に動物。チビはヒヨコを触れて大喜び。なんか一時間ぐらい触っていた。ウサギやヤギに混じって、なぜかカメもいた(写真)。冬眠しなくても大丈夫なのか。

「カカシ相撲」なるイベントも行なわれていた。腕組みして片足で立って土俵から押し出すと勝ちというルールらしいが、この寒いのに上半身裸の人物発見。参加者ではなく、国王だった(参考:燃える!! 裸の王様「これが私の正装ですから」)。共和国だけど国王。要するに社長だ。いくら正装とはいえ、寒いのに国王もたいへんだ。チビが警戒して、私が近寄ろうとしただけで半泣き。

NikiNiki 2004/11/24 00:46 亜熱帯や熱帯のリクガメなら冬眠しないんじゃなかったかしら。でも夜とかはおうちを加温してるのでしょうね。

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2004-11-22 ブッシュの進化論

[][]ブッシュの進化論 ブッシュの進化論を含むブックマーク

■ブッシュの進化論マッド・アマノの「今週のパロディ」)

ブッシュはキリスト教右派、つまりアメリカ合衆国で「進化論を教育から追放しろ!」とか言っている人たちの支持を受けているのだ。最初は、そうした観点からのパロディかとも思ったけど、全然違った。いろいろな意味で萎え。いまどき、猿から人への進化図かあ。グールドがさんざん批判していたね。そうした直線的・梯子的な進化観を正しいと思っている進化生物学者はもはやいないけど、一般の人には進化といえばあの「進化図」なんだろうなあ。また、「進化=進歩」の誤謬も見られる。

サル年にちなんで類人猿から人間へと変化をとげている進化論について考えてみようと思う。結論を急ぐなら確実に"人類は退化している"と言えそうだ。たしかに科学や医学などあらゆる分野の技術は進歩しているけれど、「人間、いかに生きるべきか」という哲学がどうしようもないほど遅れている。

技術が進歩していようといまいと、「いかに生きるべきか」という哲学が遅れていようといまいと、それは進化とも退化とも関係ない。要するにマッド・アマノ氏は「ブッシュは馬鹿だ」と言いたいわけだ。それには同意するけれども、プレゼンの仕方があまり良くないわけ。あと、気になったのが、劣化ウラン問題。

「ショックと畏怖作戦」と名づけたイラク戦争では2万発もの誘導爆弾が雨あられと投下され、大量の劣化ウラン弾が使用された。すでに米軍帰還兵にも劣化ウラン弾の被害が出ているが、その何十倍も深刻なのがイラク市民の被害だと言われている。イラク南部のバスラを中心とした諸都市では、癌・白血病が3-7倍に増加したと報告されている。

私もちょいと調べてみたんだけど、劣化ウランの害についてのネット上のサイトの情報は玉石混交だ。私が調べた限りでは、劣化ウランの放射能の害は限定的なものだ(参考)。ある程度の科学的・医学的知識を持っている人なら、概ね賛同してもらえると思う。劣化ウランにわずか数年で白血病を引き起こすほどの害があるとは考えにくい。可能性はないとは断言できないが、劣化ウランが白血病の原因となるという主張にはそれに見合うだけの証拠が必要であり、そして現時点では証拠はない。癌・白血病の増加(増加が事実であるとして)が劣化ウラン弾の被害であると現時点では断定はできない。イラク侵攻が死亡を増やしているのは事実である。しかし、安易で非科学的な主張がかえって反戦運動の目的を損なっているのではないか。内科開業医のお勉強日記より。

■イラク侵攻:10万人の戦争による死亡

反戦団体が劣化ウランに執着する理由が私にはちっともわからないのだが、ここで紹介の内容の方が事実らしく思え、・・・わたしは彼らの意見に反感すらわいてくる。化学毒性ならともかく放射線被害というのは納得できないので・・・

共感を得たいのなら因果関係不明な写真を多数掲載したビラを配るより、背景のしっかりしたできるだけ押さえた科学的根拠を示した方がしっかりとした共感をうることができると思う。

私もまったく同意見である。ちなみに、マッド・アマノの「今週のパロディ」が掲載されているサイト(Web雑誌「憎まれ愚痴」)の編集長は、木村愛二氏だそうだ。(参考:木村愛二氏とのガス室論争

温泉カワセミ温泉カワセミ 2004/11/22 19:21 日本人というのは、「戦争=悪=タブー」と考えて、軍事に関する知識が恐ろしく貧弱ですからね。(悪いとは言わんが、私みたいなマニアを白眼視するのは止めて欲しいなぁ)知識がないから、ちょっとしたことが針小棒大になって、なんでも大げさに恐怖感だけが先走りますね。
「参考」のトコにあるように肺ガンリスクの増大に「グラム単位」の吸入が必要とすれば、おそらく劣化ウラン弾に攻撃された装甲車両の乗員以外には考えられんし、しかもそう言う人たちの死因は、おそらく「癌」ではなさそうですしね。

遠藤遠藤 2004/11/22 22:33 全く同感。なぜ左側と呼ばれる方々に杜撰な論調が多いのだろうか。私は十分左側の人間と思っているが、この程度の論理で中道派を説得できるとは思えない。彼らは劣化ウラン弾と癌とのと因果をもっと詰めるべきだろうし、そうしなければならない。中身のない宣伝は、その意図(例えばイラク戦争非難)が共感できるものであっても、結局は邪魔になるだろう。「騙された」と受け取った読者が味方になることはないのだ。
私は週刊金曜日の創刊号からの購読者であるが、購読を辞めようかと真剣に考えたこともある。読者は事実に飢えているし、ある程度の裏をとることは現在難しくない。あやふやな伝聞よりも、イラクの人民にたったルポの方が、彼らにとってどれほど力になることか。

RYU_TI_SYURYU_TI_SYU 2004/11/23 23:39 劣化ウランについては、反対派は引っ込みがつかない状態になっとるんじゃなかろうか?ちょうどブッシュの「大量破壊兵器」と同じようにな。
こういう連中は実は、ブッシュと同じ思考回路の持ち主であるきがしてならないな。

遠藤遠藤 2004/11/24 02:07 といって、水俣病と有機水銀みたいに後で因果関係がわかることもあるので、この種の判断は難しいですけどね。でも、いくらなんでもブッシュの「大量破壊兵器」と比べちゃ、左側の人が可哀想です。
結局、ブッシュやポルポトは善意の塊ということかにゃー(←あれっ?)

温泉カワセミ温泉カワセミ 2004/11/24 10:24 そりゃあ、もちろんブッシュもポルポトも「善意の塊」ですよ。だって、「自分が悪いことしてる」って言う「自覚」がないんですもん。余計に始末が悪い訳ですな。(まさに十字軍ですね)世の中で一番タチが悪いのは、「自分の正義」を全く疑わず、かつ「物理的に強い」単細胞連中ですなぁ。

HiroHiro 2004/11/25 01:16 わたしも劣化ウランのことがわからなくなり、いろいろと調べてみたのですが、プルトニウム混入の疑いもあるし、化学毒性もあるし、いずれにせよ肯定はできんなぁ、というものでした。
http://homepage.mac.com/travellers/blog/C1038363525/E2015648311/index.html

いずみやいずみや 2004/11/26 01:42 91年の湾岸戦争(ブッシュ父が大統領の時)で使用した劣化ウラン弾の影響が10数年経った今出ていると思ってましたが、間違いでしょうか?

NATROMNATROM 2004/11/26 10:55 本当に劣化ウラン弾の影響かどうかわからないってことです。反対派の人たちは、数年で白血病が増えたと主張しています。
「10数年で肺癌が増えた」ってなら、「ああそうだろうねえ、そういうことも十分あり得るねえ」と思います。
「数年で白血病やさまざまな癌が増えた!」となると、「ちょっと待て、それってホントなの?」と思うのです。
もしかしたら本当なのかもしれません。しかし、現時点では十分な証拠はありません。「疑わしいから反対」「十分な調査が必要」という主張ならいいのですが、根拠なしに断定的なことを主張すると信頼されません。少なくとも私は、劣化ウラン研究会とか美浜・大飯・高浜原発に反対する大阪の会とかを信頼できません。ゆえに、劣化ウランの害を過大に宣伝する事ははたして反戦運動の目的にかなうことなのかと言っているのです。

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2004-11-21 ダーウィン医学

[][]低下しているから補給しよう 低下しているから補給しようを含むブックマーク

やあ諸君。コエンザイムQ10(CoQ10)って知っているかな?いま流行のサプリメントなんだ。加齢とともに体内のCoQ10は低下していくんだ。それに、さまざまな疾患の罹患者におけるCoQ10濃度は低下してるんだそうだ。怖いね。健康のため、不足しがちなCoQ10を補給して元気になろう、ていうかサプリメント買え。ってなサイトはいっぱいある↓

■「コエンザイム 不足 補給」でGoogle検索

低下分を補うというアイデアは正しいときもあるのは確かだ。インスリン分泌量が低下している1型糖尿病にインスリンを補給するのは合理的な考え方だ。しかし、いつでも正しいとは限らない。たとえば、甲状腺機能亢進症である、Graves病(グレーブス病=バセドウ病)について考えてみよう。甲状腺てのは、首のところにある甲状腺ホルモンを産生する器官だ。

甲状腺ホルモンは代謝に関わるホルモンで、多すぎても少なすぎてもいけない。ヒトの体というものはうまくできていて、ちょうどよいホルモン濃度になるようにきちんと調節されている。その調節をするのが、脳下垂体から分泌されている甲状腺刺激ホルモン(TSH:thyroid-stimulating hormone)だ。甲状腺ホルモンが少なすぎるときは、甲状腺刺激ホルモンがより多く分泌される。「コラ甲状腺さぼってんじゃねえ」てな感じ。逆に、甲状腺ホルモンが多すぎるときは、甲状腺刺激ホルモンはより少なく分泌される。負のフィードバックって奴ですな*1。Graves病では負のフィードバックを受けない甲状腺ホルモンの過剰が起こってしまう*2。その場合、甲状腺刺激ホルモンは低下する。「オイオイ、甲状腺、そんなに頑張らなくてもいいよ」てな感じだね。Graves病は、甲状腺ホルモンの上昇と、甲状腺刺激ホルモンの低下*3が見られる。

さてと本題。Graves病において、甲状腺刺激ホルモンが低下しているからといって、補給したらどうなるであろうか?Graves病は改善するだろうか?するわけないね。ただでさえ甲状腺ホルモンが過剰なのに、さらに甲状腺を刺激してどうするんだ。病態が改善するどころか、悪化させることにもなりかねない。教訓としては、「疾患に関連して何かが低下しているからといって、それを補えばいいとは限らない」ってことだ。加齢に伴ってCoQ10の血中濃度は低下しているのが事実だとして、補えばよいとは限らないのだ。「補給したらどうなるか」、つまり、CoQ10を補給した群としない群を比較して、補給した群の方が加齢が抑制されたとかいうデータが必要だ。

もう一つ、「低下即補給」が危険な例を挙げておこう。慢性炎症(たとえば結核)が血清鉄の低下と軽度の貧血をもたらすことはよく知られている。一見、鉄欠乏性貧血のパターンに見え、鉄剤を投与したくなる。Graves病に対して甲状腺刺激ホルモンを補給する医師は世界中のどこを探してもいないだろうが、慢性の感染症に伴う貧血に鉄剤を投与する医師はいると思う。しかし、鉄剤の投与が感染に悪影響を及ぼすことがあるのだ。慢性の感染症における血清鉄の低下には適応的意義があると考えられている。鉄分は細菌の増殖に必要な資源である。血清鉄の低下は細菌の増殖を抑制しうる。感染時に血清鉄を低下させるメリット(細菌の増殖抑制)がデメリット(軽度の貧血)を上回るがゆえに、慢性炎症時に血清鉄を低下させるという形質がダーウィン的な進化を遂げたのであろう。(参考:病気はなぜ、あるのか 進化医学による新しい理解

もしかしたら、CoQ10低下は、加齢に対する適応的な意義があるかもしれんぞ。その場合、CoQ10の積極的な補給は、加齢を早めることになってしまう。私の個人的な意見では、CoQ10低下は加齢の原因ではなく結果だというのがもっともありそう。この場合、CoQ10を補給しても加齢を遅くすることはできず、お金をドブに捨ててるだけということになる。また業者の言うようにCoQ10が加齢を抑制するという可能性もある。いずれにしろ、比較実験によるデータが必要なのであって、現段階でCoQ10を積極的に摂る理由はない。抗加齢効果を期待してCoQ10を買って摂取している人は、業者の宣伝に踊らされているだけだ。

*1:甲状腺刺激ホルモンは、さらに上位の甲状腺刺激ホルモン放出ホルモン(TRH:TSH releasing hormone)の支配を受ける。論点には影響しないしややこしいから割愛。

*2:自己抗体(TSHレセプター抗体)が原因。TSHレセプター抗体は甲状腺にある甲状腺刺激ホルモン受容体に結合・刺激し、甲状腺ホルモンの合成・分泌を促進する。TSHレセプター抗体は負のフィードバックを受けないから、甲状腺ホルモンが過剰になってもおかまいなく甲状腺ホルモン分泌を促進するのだ。悪い奴だね。

*3:それとTSHレセプター抗体陽性も見られる

2004-11-19 進化の証明 ダーウィンは間違っていたか?

[][]進化の証明 ダーウィンは間違っていたか? 進化の証明 ダーウィンは間違っていたか?を含むブックマーク

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■ナショナル ジオグラフィック 日本版 11月号 [雑誌]。買っちゃった。「ダーウィンは間違っていたか?」という問いの答えはもちろんNoだ。「いや、ダーウィンが唱えた生物の進化を裏付ける事実は次々に見つかっている。」

この雑誌のウリは写真だろう。ハダカデバネズミ、キリンの骨格、ダーウィンが描いた「生命の樹」、クジラの祖先の化石等々が見事な写真で提示されている。記事は、創造論者を転向させるほどのものではなく、あくまでもより広い層に対してのものだ。日本版編集部が、木村資生の記事を載せているのはグッジョブ。木村の写真を見て、妻は「インチキな手品師みたいだ」と言いやがった。蝶ネクタイしててこんな感じ

進化論関係だけでなく、サンゴ礁の写真はとても美しかった。巻末にギフト購読の広告がついていたけど、なるほどなと思った。自分で金出して買うほどのものではないかもしれないけれど、贈り物としては気が利いている。きれいだし、教育的だし、そう邪魔にもならない。

[][]進化と創造主義特集号 進化と創造主義特集号を含むブックマーク

■生物科学Volume 56,No.1。買っちゃった。昨年の12月に、アメリカの公教育における進化論教育について考える研究会が行われたのだが(参考)、そのときのEugenie C. Scott(ユージニー・C・スコット)博士による講演の翻訳が読める。ある程度の知識がある人たち相手なので、そもそも創造科学は科学か?という話はほとんどなく(そんなことはみんな分かっている)、創造科学やインテリジェント・デザイン説といった説がいったいどうしてアメリカ合衆国で問題になっているのかという視点から話がなされている。自然科学上の問題ではなく、社会的・政治的な問題なのだ。

日本語でアメリカ合衆国における進化論論争について書かれた本は、「進化論を拒む人々―現代カリフォルニアの創造論運動」、鵜浦裕著がある。やや内容が古くなっていると思うが、この問題に関して興味があれば読んでおくべきだろう。今回、スコット博士を招聘したのが鵜浦裕(文京学院大教授)とのこと。鵜浦裕は「スコット講演の補足」として、「創造論運動の時期区分,戦略,人口統計,要因」を書いている。

進化論と創造論の掲示板で研究会の告知をしていただいた佐倉統も、「創造論・進化論・科学コミュニケーション―スコット講演へのコメント―」を書いている。「社会と専門研究とのコミュニケーション」の重要性を考えるうえで、日本の現況はやや遅れていると前置きした上で、

このような状況下で、「何も言わなくても社会が注目してくれる」進化論は、むしろきわめて好都合な条件を兼ね備えていると考えてもいいのではないだろうか。もちろんこの特徴は諸刃の剣で、科学的にねじれた反応が社会から返ってくれば、創造論のような科学的に不正確な運動が増幅してしまうことになる。しかし、中学生や高校生、その他専門家ではない人々に簡単にコミュニケーションできる材料をもちながら、安易な社会化は害が大きいとして、みすみすその回路を閉じてしまうのは、なんとももったいないと思うのだ。

と書いている。なるほど。佐倉統はNHKの番組(サイエンスアイ)でコメンテイターをしていたりするのだ。瀬戸口明久が「日本における進化論の導入―「受容」vs.「抵抗」モデルを超えて―」を書いている。たとえば、進化論と皇国史観の対立(天皇は天照大神の子孫なの?それともサルの子孫?)については面白く読めた。

1400円+送料60円(リンク先には値段が書いていないのはなぜ?)。進化論と創造論関係の記事は30ページくらい。あとは「世界のザリガニ類の系統と進化」などのマニアックな記事。三中信宏による書評は面白かったけど、内容が難しいです。いったい何冊ぐらい売れているんだろう、こういう雑誌。

NATROMNATROM 2004/11/19 18:31 佐倉統はキーワード登録されていて、木村資生はされていないのだな。

ハッターハッター 2004/11/19 21:36 ナショナルジオグラフィック実は父にギフト購読をプレゼントたことがあります^^。写真は本当に美しいですね。

nobuotakahashinobuotakahashi 2004/11/25 11:26 遅れたコメントですが、スコットさんの書いた物を一時期読みあさってまして、”Skeptic”誌に書かれた記事についてJapan Skepticsのニュースレターに紹介記事を書いたことがあります。
「創造論にもいろいろな程度があるので、教室ではそれに応じた対応を」というような話をスコットさんがしていました。理路整然とはしているのですが、「現場ではそうはいかない」みたいなコメントも寄せられていました。
 去年スコットさんが来日されていた時には、このあたりのことは全く知らなかったので行けなくて残念でした。

音と言葉のアンテナ音と言葉のアンテナ 2005/06/10 18:30 進化論に関する書籍の紹介ありがとうございます。わたしは大学でカントを専攻していたので、と言ってもかじった程度ですが、「疑似科学と科学の哲学」が今の関心とマッチしそうです。早速、読んで見ることにします。

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2004-11-18 DNA鑑定はどこまで許されるのか?

[]DNA鑑定はどこまで許されるのか? DNA鑑定はどこまで許されるのか?を含むブックマーク

■46歳の子「実子じゃない」…産院で取り違えと提訴

 訴状によると、男性は1958年4月に都立墨田産院(88年に閉鎖)で生まれ、この夫婦の長男として育てられた。男性は「両親と顔や体格が似ていない」と思っていたが、約20年前に子供が生まれたのを機に、夫婦に持ちかけて血液検査を受けた際、「親子としては血液型が合わない」と指摘された。

 さらに今年5月、男性と夫婦が血液によるDNA鑑定を受けたところ、夫婦の子供ではないとの結果が出たため、「生まれた時に産院で取り違えられたとしか考えられない」として、提訴した。代理人弁護士によると、男性は「本当の親を知りたい」と話しているという。

都側の答弁書の「この産院で過去に取り違えはなく、あり得ない」って論理もどうかと思うが、男性側が勝つのは難しいように私には思える。しかし、たとえば、この産院で同日に生まれた人が夫婦の実の子どもと鑑定できれば、取り違えが証明できる。そんなことをして、誰かがハッピーになれるかどうかは疑問だが。

今後、同様の問題が生じてくるだろう。取り違えはきわめて稀であろうが、不貞による子というのはいるものだ。不貞の子かもしれないと疑う父親も。本人に無断でDNA鑑定を行うことはプライバシーの侵害として問題外だが、疑い深い夫が、妻と子にDNA鑑定を要求するのは、どこまで許されるのだろうか。妻は拒否するかもしれないが、拒否したという事実そのものが、疑いをより深くしてしまう。また、本人(夫)と子のDNAがあれば鑑定は可能だが、妻の承諾なしに子のDNAを鑑定するのは許されるのか。

異常死した遺体の身元を特定するためにDNAを鑑定することは今でも行われているが、本人の承諾は当然とれない。家族(と思われる人々)の承諾があればいいのか。A男とB子の夫婦の息子であるC男のものと思われる遺体のDNAを鑑定した結果、実は、B子の息子ではあってもA男の息子じゃなかったなんてことがわかってしまうかもしれない。B子はDNAを鑑定を拒否できるのか。



関連記事

■日本における「寝取られ男」の割合は?

いどいど 2004/11/18 17:37 こちらにコメントするのは初めてでドキドキ。「男性側が勝つのは難しいように私には思える」ってのはどうしてなんでしょうか?DNAで親子関係がないと判明しているのであれば取替え子以外考えられないわけで(片親とだけ違うならともかく)いくら都側が強弁しても駄目なような気がするんですが…。(いどがDNA鑑定に関して誤解しているからかな?)

NATROMNATROM 2004/11/18 18:21 鑑定の問題ではなく、「取替え子以外考えられない」ことを男性側が証明するのは難しいと思います。

ゲラッチゲラッチ 2004/11/18 20:50 はじめまして。ちょっとずれた話になりますが、ポーランドでは女性が自分の子どもの父親である証明のために男性にDNA鑑定を要求する権利があります。男性に拒否権はありますが、拒否すると自動的に父親と認定されます。何だそりゃ。

ゆんゆん 2004/11/18 23:05 つまり、「そいつが俺の子供であるという証拠でもあるのか」としらばっくれる男に、「自分のしたことには責任をとれ」と迫る制度というわけですね。

nobuotakahashinobuotakahashi 2004/11/19 10:04 >「この産院で過去に取り違えはなく、あり得ない」って論理もどうかと思うが
これは全くもってどうしようもないひどさですね。でも、こういうのが多そう。

「そんなことをして誰がハッピーになれるか」という考えに賛成です。ご当人の苦しみは察しますが、どうすることもできないのではないでしょうか。
今のところDNA鑑定はまだまだ面倒で時間がかかるのが幸いしている気がします。血液型判定くらい簡単になっちゃったら、あちこちで不幸が起きそうです。(DNA人間学もでてくるだろうな)

たんぽぽたんぽぽ 2004/11/21 09:26 「取り違え」なら、取り違えられた子が、
くだんの男性の実の夫婦に、育てられたことになりそうだけど...
(もし、名乗りを挙げないなら、もしかすると、
すでに亡くなっている可能性もなくもない。)

DNA鑑定というと、「父権の推定」のために、
いまだに、女子の再婚禁止期間を設けているのが、
納得できないものがありますが。
きょうび婚前交渉なんてめずらしくないし、
再婚禁止期間なんて、かえって不確実だと思うのだが...

法医学のほうからは、こうした批判は出てこないのかな...?
(DNA鑑定は、まだまだ検査に時間がかかるので、
積極的になれないということ...?)

2004-11-15 私たちの知らない科学

[][]私たちの知らない科学 私たちの知らない科学を含むブックマーク

発掘!あるある大事典2

ttp://www.ktv.co.jp/ARUARU/search2/aruketuekigata_sp/ketuekigata_1.html

4つの血液型を統計学的に捉えた「血液型と性格」の関係実は今、科学の分野から、それを裏付けるかの様な驚くべき研究成果が発表され始めているのです。

へー、ふーん。いったいどうしてその「驚くべき研究成果」とやらは、テレビからしか聞こえて来ないのだろう?どっかで聞いたことのあるようなフレーズだと思ったら、


■創造科学 進化論に代わる新しい科学

ttp://www.ne.jp/asahi/seven/angels/kagaku.htm

「創造論」(創造科学)は、これまで科学的に無理が多いと言われながら長く信じられてきた「進化論」 に代わり、世界と生命の起源を的確に説明する科学上の新たな理論である。 現在では科学者や知識人の間に、進化論の欠陥を認め、進化論を捨て去る人々が増えている。

だった。きっと、私たちのよく知っている科学とはまた別の、「科学’」がどこかにあるに違いない。

tematema 2004/11/17 22:15 きっと、消火器売りの「消防署の方から」というセリフと同じようなモノだと思います。惑星物理学とか地震学の研究者(注:適当に出しただけです)が、「A型には真面目な人が多いんだ」「オレもA型だから、君との事は真剣に考えてるよ」とか言ったものと想像します。

杉山真大杉山真大 2007/08/26 20:38 あ、これ「火の玉教授」氏の著作にもありまつたね。

「『科学でわからないことがあった』のではなく、『あなたがわからない科学があった』のですよ」

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2004-11-13 天才数学者、株にハマる

[]「天才数学者、株にハマる「天才数学者、株にハマる」を含むブックマーク

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副題が「数字オンチのための投資の考え方」。ジョン・アレン・パウロス著。原著は、2003年。原題は"A Mathematician Plays the Stock Market"。「天才」数学者なんて書いていない。まあ自分では書かないわな。数学者が書いた本だが、とくに難しい数式が出てくるわけでもなく、普通に面白く読める。この方法で儲けたという本ではない。その逆、著者はワールドコムの株で大損こいている。その経験をネタにこの本を書いたのだ。あちこちに出てくるちょっと自虐的なギャグが私は好きだ。

また、この本には数学に関係した話がたくさん出てくる。聞いたことのあるものもたくさんあるが(最後通牒ゲーム、ドル・オークション、株式ニューズレター詐欺、サンクト・ペテルブルグのパラドックス、囚人のジレンマ)、初めて聞いたものもある。「平均的な推測の80%の値を推測するという問題」について紹介しよう(P10)。

人を集めてそれぞれ0から100の間の数字を一つ、皆同時に選んでもらうとしよう。その際、皆が選んだ数字の平均の80%に一番近いと思う数字を選んでもらう。一番近い数字を選んだ人は、賞金として100ドルもらえる。自分がどんな数字を選ぶか、ここでしばらく考えて見てほしい。

人によっては、選ばれた数字の平均は50になるだろうと考え、その80%にあたる40を選ぶだろう。人によっては、他の人たちは40を選ぶだろうと先読みして、その80%の32を選ぶかもしれない。さらに、他の人たちはそういう考えに沿って32を選ぶだろうから、自分は32の80%である25.6を選ぶという人もいるかもしれない。

参加者がすべて十分に先読みできるほど賢く、また、参加者が他の参加者の賢さを信頼することができるのであれば、全員がゼロを選ぶだろう。「0を選ぶという行動はこのゲームのナッシュ均衡と呼ばれるものになっている」。しかし、現実にはそんなに簡単にはいかない。

このゲームをするのが1回か2回だけならば、参加者全員の推測の平均値を推測するのは、論理的にはどの数字であるべきかと考えることであると同時に、他の人の考えや心理状態を読むということでもある。投資家について推測するのが、投資対象について推測するのと同じぐらい、重要である場合がある。そして、投資家について推測することのほうがずっと難しいのだ。

平均的な推測の80%の値を推測するという、きわめて簡単な状況であっても、実際の推測は困難である。いわんや、実際の株式市場のおいてをや。こうしたちょっとした面白い話をタネにして説明されると、わかったような気にさせられる。だからと言って儲けることはできないだろうけど、読んで面白いからいいのだ。

nobuotakahashinobuotakahashi 2004/11/15 09:06 ぼくも読みました、面白かったなぁ。「これを読んでも株で儲けられないではないか」というようなことをブログに書いている人がいたけど、ギャグかな。
 「推測の80%を推測する」話、いいですね。株式市場を動かす原理はいろいろあるんだろうけど、もっともらしいことを言って予測しても当たるわけなくて、「当たったように見える」のは単なる「統計のゆらぎ」でしょう、というと乱暴だけど、野球の打率にしても会社の業積にしても「ゆらぎ」を軽視しすぎてると思います。
 そうそう野球に統計に関しては、この本↓
http://nob.cocolog-nifty.com/regelation/2004/09/_.html
が面白いけど、値段高すぎ。

パウロスさんの『数字オンチの諸君』も面白かったです。
”A Mathematitian Reads the Newspaper”という本もあるのですが、これは『数学者が新聞を読むと』と素直な訳の題名になっていて「天才数学者」ではありません。

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2004-11-09 アメリカ合衆国での進化論論争の現状

[]アメリカ合衆国での進化論論争の現状 アメリカ合衆国での進化論論争の現状を含むブックマーク

ブッシュが勝ったりケリーが負けたりしている今日この頃、アメリカ合衆国の進化論教育はどうなっているのだろう。以下の記事は紹介する価値があると考える。*1

■カンザス州教委で進化論論争が再燃している

   今、カンザス州では公立学校で、進化論の学習を薄め創造論を強化しようとする動きが再び

   強くなってきている。 この問題についての州教育委員会は1月まで開かれないが、しかし

   理科教育での進化論の取り扱いについて論争は既に始められている。

   それは1999年に州教委は進化論を軽視し、神による創造論に拠ってカリキュラムや州の

   学力標準テストを作成したので、世界中の人から嘲り笑われるような状態になった。 その

   後、改正して今日に至っているが、今回さらに検討して元に戻そうとする動きになっている。

   すなわち、この夏に25名による特別委員会が創られて理科教育の基準を見直すことになり、

   その草案は12月には教委に提出されよう。 またそれは州教委のホームページでも広く見る

   ことができるようになる筈であるが、その後、公聴会が開かれて来年3月には最終決定を

   採決によってなされる。 州議会でも意見が分かれているが、改正を推進する人々の

   根拠は「いろいろな証拠がダーウィンの自然的経過説の進化論だけでは説明できない」、

   「知的なデザインによって人間は造られている」とするのである。

1999年のカンサス州の決定は、「神による創造論に拠ってカリキュラムや州の学力標準テストを作成した」というよりは、正確には「進化論と ビッグバン理論を教育課程の科学の課目から外した」ということだと私は理解している。この件については、グールドがタイム誌でエッセイを一つ書いている(参考:タイム (米国版) 8月23日号 VIEWPOINT ”Dorothy, It's Really Oz”の和訳(要点のみ))。教育委員会のメンバーは選挙で選ばれるわけだが、キリスト教右派の多い州だとこういうことも起こり得る。科学者及び科学教師の努力によって翌年には科学者側が勝利したが、創造論者がまた手法を変えて進化論を攻撃してきたというわけだ。

■The Crusade Against Evolution(Wired)も参考になる。新世代の「創造科学」としてのインテリジェントデザイナー説(知的な創造者説)がアメリカ合衆国の教室に侵入してきていることを報じている。インテリジェントデザイナー説は、科学者には受け入れられていない。にも関わらず、論争が存在するのはなぜか?科学的証拠によらず、信仰的な理由でダーウィン説を受け入れたくない人たちがいるからだ。論争が起こっているのはいつでも、アメリカ合衆国の中南部の州である。Nature誌やScience誌といった科学雑誌上ではない。

きちんとした科学の手続きに従うのなら、新しい説を提案するときには、論文を書いたり学会で発表したりして、他の多くの科学者による検証を経なければならない。インテリジェントデザイナー説は、そうした手続きを一切無視している。その代わり、一般人たちを相手にする(日本でも、「トンデモ医学」は科学者を相手にせず、テレビや一般書といったメディアを通して一般人を相手にしている)。科学者による検証には耐えられないからだ。少なからぬ人たちが影響を受けるとなれば、科学者も論争に参加せざるを得ないけれども、論争の勝敗はともかくとして、論争が存在したという時点で、創造論者の勝利は確定する。「論争が存在することを公平に子どもたちに教えるべきだ」と言えばいい。このような手法は正当なものと言えるだろうか。

進化をめぐる科学と信仰」大谷順彦著より。

たとえば1999年のカンサス州の科学者や教育者による専門委員会は、州内実力テストの範囲を設定するための「カンサス州科学教育基準案」を作成しました。ところが州教育委員会(選挙で選出される委員で構成)が専門委員会の基準案を修正し「進化」や「ビッグバン」を教育基準から削除したのです。各地域の教育委員会が教科書の選定、カリキュラム、教育基準などの許可権をもち、しかも教育委員会の委員は選挙によって選出されるので、科学教育が政治的係争に発展するのです。科学を支持する市民運動によって、翌年の予備選挙で創造科学支持の教育委員3名が敗北し、2001年2月に科学教育標準の再修正が承認され、この係争は落着しました(National Center for Science Education, July/Aug, 1999 and May/Jun, 2000; "Kansas Puts Evolution Back Into Public Schools," New York Times, Feb. 15 2001.)。しかし今後も、さまざまな州で姿を変えた同種の係争がつづくのは必至と予想されます。

こうした問題の底流にあるのは、米国における大衆レベルでの科学的素養の低さということでしょう。生物学、哲学、社会学、歴史学、神学等の多くの分野における研究者が、創造科学の主張が正しい科学の探求にとって障害であることを認識し、学会において議論し、多くの刊行物によって反論を進めてきました。こうした努力にもかかわらず、世界のトップレベルの研究者社会と大衆レベルにおける科学知識のギャップは、改善されそうにありません。1920年代の反進化論運動以降、米国の科学教育はその影響のもとで一般大衆レベルの科学的素養の低下をまねきました。この科学的素養の低さが、つぎに反進化論運動になるという悪循環をうむのです。(P198-199)

上記引用した文章を書いた大谷順彦はキリスト教徒である。創造科学と進化論の対立は、自然科学上の仮説の対立でもなく、宗教と科学の対立でもない。それは政治的な問題なのだ。

[]ウィスコンシン州でも ウィスコンシン州でもを含むブックマーク

acanthopanaxさんがコメント欄で教えてくれました。タイムリー。

■「創造説」の授業許可し議論噴出、米ウィスコンシン州

ウィスコンシンの州法では進化論を教えることが必須だが、カリキュラムの内容は各区の教育委員会が独自に決めることが出来る。そのため、グランツバーグ教育委員会のメンバーは先月、科学教育のカリキュラムに「ヒトの起源については『様々な種類の原理や理論』を含めるべき」とする文言を追加。州法が定める進化論についての現在の授業内容は、余りに限定的すぎると主張している。

この決定に、300人を超える生物学者や宗教学者から、カリキュラムを元に戻すよう求める意見書が殺到した。ウィスコンシン州内にある公立大学の学長43人からも、同様の手紙が送られている。

1999年のNature誌の記事に「あざ笑ったり、悲しんだりすることは簡単だ。しかし、科学者のすべきことは、公的生活に積極的な役割をになうことだ」とありました*2

*1:ただし、杉田荘治氏は、イオンド大學から教育学名誉博士号を授与されるような人であることには留意したい。

*2:Nature. 1999 Aug 26;400(6747):810. The difference between science and dogma.

acanthopanaxacanthopanax 2004/11/09 18:50 ちょうど、CNN.co.jpで、『「創造説」の授業許可し議論噴出、米ウィスコンシン州』という記事が出てますね。
http://www.cnn.co.jp/science/CNN200411090016.html

温泉カワセミ温泉カワセミ 2004/11/09 19:09 *1に関連して、Wikipediaのイオンド大学の記事( http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A4%E3%82%AA%E3%83%B3%E3%83%89%E5%A4%A7%E5%AD%A6 )とそのリンク記事を信用すると、なんか表彰されても嬉しくないですねぇ

ハッターハッター 2004/11/10 15:33 東部や西海岸は日本人がよくイメージするソフィスティケイトされたアメリカなのでしょうがウィスコンシンのような中部こそディープなアメリカなのかもしれないですね。数パーセントのエリートが国を動かしている。知的レベルの分散が日本人には計り知れない程大きいのかもしれません。

杉田荘治本人杉田荘治本人 2005/03/02 08:03 157. 進化論論争(再)http://www.aba.ne.jp/~sugita/157j.htm
はじめに記したように今、アメリカは「内なるアメリカ」に向かっているといわれるが、正しくこの問題はその一つの現れであろう。メディアの論調もその当惑を示している。
、イオンド大學から教育学名誉博士号を授与されるような人であることには留意したい人物その者の杉田から。

杉田荘治本人杉田荘治本人 2005/10/24 23:09 杉田の次ぎも参照されたほうが良いでしょう。
http://www.aba.ne.jp/~sugita/147j.htm の追記分。
追記(2005年10月1日)   進化論論争の最近の動き
追記(2005年10月1日)   進化論論争の最近の動き
すでに本文(2004年10月記載)で述べたように、今やインテリジェント・デザイン:知的計画者生命は「計画する者: designer」によってつくられ、発展させられているということが論点になっているのである。 しかも裁判では、そのことも進化論とともに生徒に教える必要があるかどうかが争点である。

2004-11-07 遺伝情報データベース

[][]遺伝情報のデータベース 遺伝情報のデータベースを含むブックマーク

逮捕された人は全員指紋を採られ、データベース化されている。遺伝子型で同じことをやるときの問題点について。

■DNA捜査――ルールを定めて活用を(朝日新聞 社説 2004年11月5日)

 指紋が残っていなくても、犯人の血痕や毛髪があれば、DNA型がわかる。ただ、過去に逮捕された人たちのデータベースがないと、それと突き合わせて犯人を割り出すことはできない。

 逮捕者から採血してDNA型を鑑定し、犯罪現場から採ったDNA型と照合することは今も行われている。採血にはそのつど裁判所の許可が必要で、昨年は、千件余りの事件でDNA型の鑑定が捜査に使われた。

 そうしたDNA型は各県の警察本部によって個別に管理されている。その垣根をなくし、指紋と同じように全国的なデータベースをつくれば、もっと捜査に役立つ。とくに、現場に血液や体液が残りやすい殺人や強姦(ごうかん)事件では、容疑者の割り出しに威力を発揮するだろう。

 問題は、逮捕者のうち、誰から採血してデータベースをつくるかだ。

 指紋と同じように扱えばいい。そう考える人がいる一方で、軽犯罪や過失の交通事故で逮捕された人からまで採血するのは行き過ぎだという人もいる。

 慎重論が出るのは、DNAが個人情報のかたまりだからだ。

 鑑定するのはDNAまるごとではなく、遺伝に関係ないとされる部分に限る。型の数字だけを記録し、血液は廃棄する。そう警察庁は説明する。個人情報の秘密を侵すことはないというのだ。

 しかし、データベースに入れる対象者の範囲は法律できちんと定めるべきである。「捜査に必要な場合」というようなあいまいなことでは、不安がぬぐえない。そもそもDNA型の利用は犯罪捜査に限るべきことは、言うまでもない。

社説というものはたいがいはそうなんだけど、ごもっともなことだけ言って、あまりたいそうなことは述べていない。まあ、こういう問題に関しては、唯一の正解などというものはなく、どこかで妥協点を見つけるしかないのだから、しょうがない。どのような犯罪者に関しても一切DNA情報を記録してはならないという極端の一方の端と、あらゆる国民のDNA情報を管理するというもう一方の端の間の、どこかに妥協点を見つけるべきだ。個人的には指紋やDNAの情報を知られたって平気だけど、慎重論が出る理由はよくわかる。ドーキンスは「虹の解体」の第5章、「法の世界のバーコード」で、この問題に触れ、DNAデータベースの不正利用の危険性について三点ほど述べている。

一つ目は、血縁関係に関するプライバシーが損なわれるという点。「たとえば、実際にはそうではないのに、自分がある子どもの父親であると信じ込んでいる男性が、相当数存在する。同様に、実際には父親ではない人を、自分の父親だと信じている子どももかなりいる。国家的DNAデータベースにアクセスすれば、誰でも、ことの真相を知ることができてしまうようになるかもしれない。しかし、それは甚大な精神的苦痛、結婚生活の破綻、神経の混乱、ゆすり、さらにはもっと悪い結果をもたらしかねない。(P155-156)」

二つ目は、医療・生命保険や、就職に利用される危険。さまざまな疾患が、程度の差こそあれ、遺伝的な影響を受けている。生命保険会社が、DNAデータベースから疾患のリスクを予測して、掛け金を高くしたり、加入を断ったりするかもしれない。これは実は微妙な問題で、一概に悪いと言えない部分もあるのだが、議論抜きに正当化することはできない。

三つ目は、民族・人種差別に利用される危険性。ヒトラーのような人物に悪用される危険はないのか?「DNAからユダヤ人を特定することができるわけではない。しかし、たとえば中央ヨーロッパだとか、特定の地域に祖先をもつ人々は、ある特別な遺伝子を共有していることがある。そして、ある種の遺伝子をもつことと、その人がユダヤ人であることは、統計的な相関がある。もし、ヒトラーの時代に国家的なDNAデータベースが存在して、彼の政権がそれを自由に用いることができていたとしたら、それを濫用する恐ろしい方法を発見していたかもしれないのだ。(P157)」

二つ目の問題は、ドーキンスが指摘しているように、データベースに入れる情報を表現型と無関係な部分に限るということでほぼ解決できる。朝日の記事にある「鑑定するのはDNAまるごとではなく、遺伝に関係ないとされる部分に限る」というわけのわからない文章は、このことを言いたかったのであろう。「表現型に関係のないとされる部分」もしくは「遺伝病に関係ないとされる部分」がより正確だろう。正直言えば、この辺のことはあまり気にしなくてもいい。そもそもが、中立説の予測するように、遺伝子多型の大半は表現型と無関係である。莫大な数の遺伝子多型から、疾患と関係のあるものを見つけるのはものすごく大変だ。三つ目の問題も、日本に限れば、それほど心配する必要はないだろう。

一つ目の問題も、国家的なDNAベータベースならともかく、犯罪者のDNAデータベースに関しては大きな問題にはならないだろう。ただ、管理が甘いと悪用される危険は常にある。たとえばの話、かつて犯罪を犯したが社会に復帰した人、あるいは、犯罪者の血縁者がゆすりにあうという可能性はある。ただ、こうした現実的な問題点以上に、日本では感情的・生理的な嫌悪感が問題になるのではないか。しかし、きちんと説明すれば、必ず納得が得られるだろう。たとえば、レイプの前科者のDNAデータベースがあるだけで、新たな犯罪の抑制になるのは明らかだと私には思える。

tematema 2004/11/09 18:41  レイプの前科者のDNAデータベースがあることが、新たな犯罪の抑制にそれほど効果的でしょうか? temaには、それほど効果があると思えないのです。つまり、レイプの被害者が、遺伝子サンプルを提出する可能性は低い、と思うのです。
 かえって、被害者の子供を迫害するネタにされる気がします。

NATROMNATROM 2004/11/09 18:50 被害者の遺伝子サンプルは不要です。レイプ犯の精液等から遺伝子情報を得ます。クレバーな犯罪者ならコンドームを使用すると思いますが。

tematema 2004/11/09 22:09  いえそうではなく、精液等を保管する事など考えずに、まずは死ぬほどシャワーを浴びるのが女心ではないかと....

tematema 2004/11/09 22:11 ちなみに被害者の子供は、DNA判定でレイプ犯の子供で無いことを確認させられるのではないか、と思うのです。周りから強制されて。

NATROMNATROM 2004/11/09 22:48 精液が証拠になりうると周知されていればよいのではないかと。すべての女性が遺伝子サンプルを提出する必要はなく、そうする女性もいるというだけで、犯罪の抑制になりうると思います。「子どもにDNA鑑定を強制」はまた別問題。

とれまとれま 2004/11/10 02:23 >DNA判定でレイプ犯の子供で無いことを確認させられる
普通の状況だと子供の両親が誰かはわかっているわけで、犯人のDNAデータがなくてもレイプ犯の子供で無いことを確認できるでしょう。(べつに、確認すべきだといってるわけでなく、今でも確認できるのだからDNAデータベースを構築してはいけない理由にはならないということですが。)

tematema 2004/11/10 22:44 確かにその通りです。なぜ気づかなかったのだろう?

たんぽぽたんぽぽ 2004/11/21 09:24 衣服とか、ふとんとか、まわりに精液が付着していて、
それを採集できることもあるのでは...?
あるいは、精液がなくても、抜けた髪の毛とかからでも、
DNA鑑定ができるでしょうし...

2004-11-05 限定された形での群淘汰

[]限定された形での群淘汰 限定された形での群淘汰を含むブックマーク

植物プランクトンは、自分たちの必要に合わせて天候を変えられるというお話。

■雲を作って紫外線対策をする植物プランクトン(Wired News)

 両博士はバミューダ沖で収集した測定記録を分析し、海水に含まれるジメチルスルホニオプロピオン酸(DMSP)と呼ばれる化合物の濃度と、その海域の海水面近くに生息している植物プランクトンに到達する紫外線のレベルとのあいだに直接的な相関関係があることを突き止めた。

 DMSPは、プランクトンが雲を生み出すサイクルにおいて、重要な仲介役の働きをしている。DMSPは植物プランクトンの細胞から出て水中に入ると、細菌によって硫化ジメチルに分解される。硫化ジメチルは、海水が蒸発するときに一緒に大気中に運ばれ、酸素と反応してさまざまな硫黄化合物を形成する。これらの硫黄化合物が結合して小さな塵となり、水分の凝縮を促して、最終的に雲が形成される。

 このプロセス全体が非常に短時間のうちに起こるため、プランクトンは長時間太陽光線にさらされることがない。今回の研究で、大気中の硫化ジメチルの上層部は、わずか数日で入れ替わることがわかった。

こういう記事を読んで「へえ〜」「自然って素晴らしいね」ではなく、「植物プランクトンは本当に自分たちの必要に合わせて天候を変えているのかよ?」という疑問を持ってしまう。ようく記事を読んでみると、「[植物プランクトンは]自分たちの必要に合わせて天候を変えられる」と書いているのは、Wired Newsの記者であって、研究者は植物プランクトンが気候に影響を与えている可能性について述べただけのようだ。植物プランクトンが気候に影響を与えているのが確かだとしても、「必要だから」そうしているのかどうかという点には慎重になったほうがいい。

「種の保存」にのっとって考えてみると、必要に応じて気候を変える種という考え方はできなくもない。しかし、「種に属するメンバーは『種の保存』のために行動する」というアイデアは、現在では間違っているとされている。個体のそれぞれが(遺伝子を単位にするほうが私は好きだが今回は個体を単位と考えても支障はない)自らの繁殖成功を最大化させようとしていると考えるのが、現在の進化生物学の主流である。この考え方でいくと、植物プランクトンは、気候を変更させる目的でわざわざコストをかけてDMSPを作っているわけではないと予測できる。

「種の保存」のために、植物プランクトンの個体のそれぞれがコストをかけてDMSPを作っていると仮定しよう。集団のメンバーがすべてキッチリDMSPを作っているうちはうまくいく。しかし、突然変異もしくは移入によって、DMSPを作るコストをかけない個体が生じたら、この気のいいグループは失われてしまう。他のメンバーがコストをかけた結果の気候のメリットは享受できる一方で、コストをかけないぶん「利己的な」個体は繁殖に成功する。しだいに、集団は「利己的な」個体でいっぱいになってしまうであろう。おそらく、DMSPはコストをかけて作られたものではなく、単なる排泄物のたぐいだ。実際に可能かどうかはわからないが、原理的には以下のような実験でこの仮説は検証可能である。DMSPを作らない植物プランクトンと野生型の植物プランクトンを、太陽光線が過度に当たらない条件下で競争させてみる。もし、植物プランクトンが、気候を変えるためにコストをかけてDMSPを作っているとしたら、コストをかけない分だけ野生型の繁殖が遅いはずであるが、おそらくはそうはならないとダーウィン進化論は予測する。

話はここでは終わらず、もうちょっと微妙な形での群淘汰についても、いろいろ考えてみよう。単純な群淘汰、つまり、「個体それぞれが群れのメンバーのために利他的に働く群れは、そうしない群れよりも生存に有利であるがゆえに生き残るだろう」といった類の話は間違いである。フリーライダーが集団を食い物にするからだ。個体は「種の保存」「群れの利益」よりも自らの繁殖成功を優先させるのだ。しかしながら、限定された形での群淘汰ならありうる。お互いに隔離されたA海とB海にはそれぞれ以下のような植物プランクトンがいたと仮定しよう。

A海 ― プランクトンA ― 通常の生命活動の排泄物として、物質Aを排泄する

B海 ― プランクトンB ― プランクトンAとは少しだけ代謝経路が違って、物質Bを排泄する

同じ環境下では、プランクトンAもBもさほど違いはない。しかし、たまたま、物質Aと物質Bとで、気候に対する影響がかなり異なっているのだ。物質Aは(DMSPのように)、環境で変化を受けて最終的には雲を作るように働く。一方、物質Bは、たまたま、物質Aとは逆に、雲を作るのを妨げるように働く。紫外線の害が植物プランクトンの絶滅しやすさに関係しているなら、長い目で見れば、プランクトンAのほうが絶滅を免れやすい。「単純な群淘汰」と異なるのは、プランクトンAのメンバーのそれぞれは群れのために物質Aを排泄しているのではなく、個体の利益のためにそうしているに過ぎないことだ。こうした限定された形での群淘汰はありうると私は考えている。個体間淘汰(あるいは遺伝子間淘汰)との大きな違いは、こうした群淘汰は非常にゆっくりとしか働かないので、個体間淘汰に反する場合には働かないし、個体間淘汰で作られるような累積した結果の適応的な形質は見られないだろう。

diamonds8888xdiamonds8888x 2004/11/06 21:10  紫外線が強くなるとDMSP排泄が増えるという生理機構は示唆されますからそれがあるとして、その生理機構を進化させた淘汰圧は何かということですよね。DMSP排泄で紫外線自体が弱くなり生存に有利になるので、と説明するとおかしいでしょうね。紫外線に対するストレス応答の結果としてDMSP排泄が増えるというのがたぶん最も可能性が高いでしょう。他の淘汰圧であるとしても、DMSPを作らない植物プランクトンは紫外線環境下では元々淘汰されやすいことは確実だと思います。
 dimethylsulfoniopropionic acid は普通の人にはちょっと構造がわかりにくいと思います。硫黄原子に炭素原子3個が結合して陽イオンになっていて、プロピオン酸部分が陰イオンになっていて分子全体ではバランスが取れているという、ちとなじみ薄い構造です。
  (Me)2S(+)CH2CH2COO(-)

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2004-11-03 ダーウィンの大冒険

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■超歴史スペクタクル 地球の夢!生命の夢!!ダーウィンの大冒険〜僕たちはみな進化という名の旅をしている〜(TBS)

荒俣宏出演/監修。もう1人の出演者の雨宮塔子は誰だか知らない。タイトルからはそこはかとない不安を覚えたが、内容はまあまとも。間違いがあったら突っ込んでやろうと思ってビデオに撮ったのだが、とりあえずツッコミどころはさほどなし(系統樹の頂点にヒトがいるようにも見えるところと、ウォレスの出番がないとこくらいか)。イギリスBBCによる再現映像が素敵。もうこれだけ放送すればどうよ、って感じだった。俳優は良く似ていた。荒俣宏の最後の締め「ミミズは下等ではなく人よりも上かもしれん、うんぬん」は別に不要だったけど、あれがないと番組にならないのであろうなあ。



2004年11月6日付記 ダーウィンの伝記を読まないといけないという気になってきた。

■進化論と創造論についての掲示板ログの安賀須若人さんより引用。

どのような伝記であれ、ハクスリーとウィルバーフォースの討論でハクスリーがウィルバーフォースを負かしたという話は科学史的には全く支持できないものらしいので、この話がどう扱われているかをチェックしてハクスリーが勝ったとしているような伝記は参考にしない方が良いと思います。

なのだそうで、その点に関して注意して番組を見ていたのだが、その辺は微妙。ハクスリーの演説後に拍手して立ち上がる聴衆が描かれており印象としてはハクスリーの勝ちであるように見えるけど、別に全員総立ちでハクスリーマンセーというわけでもない。フィツロイ元船長の自殺についても、「この[論争の]数年後、フィツロイは自殺してしまいます」というナレーションがかぶるだけだが、印象としては、確かに論争と自殺が関係しているように見える。ああ、やはり伝記を読まないといけないなあ。

たまごちゃん (^-^)ノたまごちゃん (^-^)ノ 2004/11/04 01:38 私、観てない。とか、誰も訊いてもいないことを書き込んでおくと何か良いことがあるだろうか。オフ会が近いことだし。

チーズチーズ 2004/11/04 08:36 ダーウィンの奥さんは自分の理解からも宗教心からもかけはなれた夫の主張を受け入れ、支え続けたという点で偉大だと思いました。

谷庵谷庵 2004/11/04 11:21 雨宮塔子については↓をご覧ください。私、結構ファンでした。
http://www.apres.jp/amemiya.html
肉親の事件をきっかけに、パリに行ったんですよね。

ところで、私もたまごちゃん (^-^)ノ と同様、放送は見ていません。
ビデオには撮ってあるので後で見ます。
オフ会には行けないけれど。

クハ72クハ72 2004/11/05 00:08 裏番組の「新幹線をつくった男たち」を見たため録画しましたがまだ見ていません。
荒俣宏はオカルトビリーバーの気があるのですが、結構まともなようですね。近いうちに見ます。ちなみに三國連太郎も十河国鉄総裁に良く似ていました。

RYU_TI_SYURYU_TI_SYU 2004/11/05 20:57 わしは、見たんじゃが、進化論云々より、ダーウィンの伝記みたいな番組じゃったな。
 ビーグル号の舳先にビーグル犬の彫り物があった
 ダーウィンが思いのほか大きな男だった
この二点が11へぇ位

>ウォレスの出番がないとこくらいか
わしは、マルサスを出してもらいたかったな。

あと、塔子たんは相変わらず(;´Д`)…ハァハァ

ハッターハッター 2004/11/06 13:25 確かにダーウィンの伝記って感じでしたね。

wadjawadja 2004/11/06 20:49 子供からチャンネル取り上げて見てた。死の床で、「進化論は間違いだった」なんて懺悔しなかったのでホッとした。一番感動したのは、
>ビーグル号の舳先にビーグル犬の彫り物があった
ことかな。

diamonds8888xdiamonds8888x 2004/11/06 21:12  11/06やっと録画を見ました。伝記物とは想像してましたがやはりそう。感動したなあウルウル。ピッツロイ元艦長の自殺が進化論争と関係あるかのような述べ方は大いにミスリーディングなのではあるまいか? 26才の若さで73名の集団を5年間率いて任務を成し遂げた信心深い好青年。ちょっとその生涯に興味がでてしまいました。

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2004-11-02 ワクチン接種 チメロサール入り

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そろそろ季節なので、インフルエンザワクチンを接種した。ちなみに今日私が接種したワクチンは水銀(チメロサール)入り。ワクチンの害もちょいとネットで検索してみると、あるわあるわ、これではよく知らない人が混乱するのも仕方がない。もののわかった人ならば、喧伝されているほどワクチンの害があるわけではないことを理解している。うちの病院では医療従事者は軒並み接種している。「農家は自家用の農作物には農薬を使っていない」のと似たレベルの話で、「医療従事者は自分たちには薬を使っていない」とか言う人もたまにいるけど、ウソッパチだ。

自己申告だけではあまり情報価値にもなんないので、JAMA日本語版、2003年10月号、P57-61より引用。「ワクチン接種における現在の論点 ワクチンの安全性」という記事。JAMA(The Journal of the American Medical Association)の記事なので、基本的に米国における状況。

ワクチンで予防可能な疾患に罹患した小児患者数は史上最も低い値となった。ワクチン接種プログラムが成功するにつれて、ワクチンで予防可能な疾患よりもワクチンの有害事象に関する関心が大きくなってしまい、ワクチン接種プログラムを続けないということにもなりかねない。少数の有害事象例が科学的根拠に裏打ちされずに大きく取り上げられることによって、ワクチンのいくつかあるいは全部が受け入れがたい有害事象を引き起こすのではないかという疑念をさらに大きくしてしまっている。このような疑念は、数年前には死亡や傷害の大きな原因であったジフテリア、麻疹、破傷風、ポリオ、インフルエンザ菌関連疾患に罹患したり、見かける機会がなくなったことによってより大きくなってしまった。

囚人のジレンマと関連しそう。要するに自分以外のすべての人が予防接種を受けて病気にならないとしたら、自分だけ予防接種を受けずにデメリットなしにメリットのみを享受できる。しかし、そう考え予防接種を受けない人が一定以上いれば、感染のリスクを負う。モラルの問題を別にすれば、予防接種を受けない人が一定以下で感染のリスクがきわめて小さいならば、利己的な人間は予防接種を受けないだろう。ただ、少なくとも米国ではそこまでの状況にはなっていない(多分、日本も)。

米国など先進国においてはこのようなワクチンで予防可能な疾患がまれにしか起こらないという状況にあり、一般の人々はワクチン接種の継続に関していくつか誤解をしている。このような地域ではこれらの病原体に感染したり、それによって病気になるというリスクが依然として存在するという認識が低い。そのため、公衆衛生行政にたずさわる人々や医療従事者が、一般の人々にワクチンは受けなければならないという認識を持たせることが難しくなってきている。しかし、ワクチンを接種していない人がこのような感染症に罹患するリスクは依然として存在している。

アレルギー等で予防接種を受けられない人もいるし、予防接種していても病気になる人も一定の割合でいるし、他の国から病気を持ち込む人もいる。米国では2001年に麻疹は108人発症し、そのうち半数以上が他国で感染したか輸入患者から感染したとのこと*1。完全に利己的な人でも、アレルギー等の要因がなければ、予防接種を受けるべきと判断するだろう。



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■新型インフルエンザワクチンを打ったよ

■シートベルトは死亡を防がない? ニセ科学を見抜く練習問題シリーズ

[][]pixivから来られた読者のために(2012年10月29日追記) pixivから来られた読者のために(2012年10月29日追記)を含むブックマーク

■「トゥルーと、まったいようの講義録01 「ワクチンって何?」」/「シーチキン=まったいよう」の漫画 [pixiv]から、「こんな記事も紹介してくださいました」として、当記事にリンクが張ってありました。「トゥルーと、まったいようの講義録01 「ワクチンって何?」」は、全体としては反ワクチンの記事ですが、こうしてワクチンに肯定的な当記事にもリンクを張るのは読者に対して誠実で公正な態度だと思います。

pixivから来ていただいた方の中には、いったいワクチンを打った方がいいのかどうか、よくわからなくなっている方もいらっしゃると思います。 「ワクチンって何?」にはいくつか問題点があるように私は考えますので、それを指摘いたします。

6Pに「生ワクチン、不活性ワクチンは軽い感染症状が起きるんだけど知ってた?」「え゛、副作用あんの!?」という会話があります。生ワクチンで感染症状が起きうるというのは事実ですが、不活化ワクチン(不活性ではなく不活化のことでしょう)にはそのような副作用はありません。定義上、不活化ワクチンに使用する病原体は死んでいますのでワクチンから感染することはありません。おそらく、この記述は、「インフルエンザの予防接種によりインフルエンザにかかり」などと書いてある医学的に不正確なサイトを作者の方が信用してしまったためだと思われます。

感染症状はなくとも不活化ワクチンで「副作用」が起こることはあります。きわめて稀ですが重篤な「副作用」も報告されています。そうしたデメリットとメリットを勘案して、ワクチンを接種するかどうかを決めてください。インフルエンザに罹って死ぬことも稀ですがあるのです。一般的には健康成人に対しては季節性インフルエンザワクチンの接種は推奨されていません。私は医療従事者であり、インフルエンザの患者さんに接する機会が多いこと、また私自身がインフルエンザに罹ってしまうと患者さんに感染させてしまう恐れがあることから、毎年ワクチンを接種しています。

また、8Pに「過去で効果がない事から、定期予防接種から外されたよ?インフル」とありますが、不正確です。おそらくは前橋レポートのことを指しているのだろうと思われます。私の知る限りにおいて、前橋レポートは海外の医学雑誌では発表されていません。前橋レポートにはさまざまな問題点があり、質の高い研究とは言えません。現在においてもインフルエンザワクチンの有効性については議論があるところですが、前橋レポートのような質の低い研究は海外では言及されていません。

一方、「学童へのインフルエンザワクチン接種は,高齢者をインフルエンザから守り,インフルエンザによる死亡を減少させる」と結論した論文もあります( http://www.nankodo.co.jp/yosyo/xforeign/nejm/344/344mar/xf3440889.htm )。The New England Journal of Medecineという、臨床領域ではトップレベルの雑誌に掲載されました。この論文では「日本の小児への予防接種は,1 年間に約 37,000 〜 49,000 人の死亡を防止した」と推計されています。つまり、前橋レポートのような質の低い報告のために定期接種を中止したことによって、年当たり数万人の死亡が増えたことになります。

厳密なことを言えば、定期接種前後の比較となりますので、定期接種以外の要因を完全には排除できません。超過死亡者数の数え方などへの批判もあります。しかしながら、研究の質となりますと、「前橋レポート」などとは比較になりません。いまどき、「前橋レポート」を根拠にして反ワクチンの主張を行うのは、不勉強と言わざるを得ません。読者のみなさんは、そのような不正確なサイトの情報に惑わされないように願います。

9Pに「はしか、天然痘は、ワクチンによって根絶したのではない!住環境・衛生環境の改善によるものなのだ!!」とあります。はしか(麻疹)は根絶していません。その気になれば、人類ははしかを根絶できたはずなのに根絶できていません。先進国であるはずの日本に限ってすら、毎年数十人は麻疹で亡くなっています。なぜでしょうか。根拠の乏しい反ワクチン的な主張に一因があるのではないでしょうか。

住環境・衛生環境の改善が、はしかの死亡数の減少や天然痘の根絶の要因の一つであるのは確かです。しかしながら、住環境・衛生環境の改善によるものだけでありワクチンが寄与していないという根拠はありますか?住環境・衛生環境の改善だけでなく、ワクチンも病気の減少に寄与しているという証拠なら複数あります(たとえば、■再掲:「予防接種についての6つのよくある誤解」 - warblerの日記の1を参照)。

10P「ワクチン接種は、まさに狂気の沙汰と言うしかない。これは純粋な殺人である」 1876/by ジェームズ・ウィルキンソン博士」。なぜ130年以上も前の発言を引用するのかよくわかりません。現代に生きるまともな医学者で、このような発言をする人が皆無であるからでしょうか。個々のワクチンについてのまともな批判はあります。典型的な例では、つい最近まで日本で行われていたポリオ生ワクチンに対する批判です。

しかしながら、ワクチン全体に対する批判は、適切な医学的知識に基づいたものではありません。反ワクチン的な主張を広める前に、その根拠を吟味してみましょう。もし、反ワクチン的な主張についてご質問があれば、ここのコメント欄で尋ねてください。私の能力の及ぶ範囲内において、質問にお答えすることをお約束します。

*1:ちなみに日本は麻疹輸出国。■はしか:対米輸出は日本が最多、活発な交流原因 米調査(毎日新聞)(URL:http://www.mainichi-msn.co.jp/kagaku/medical/news/20040920k0000m040064000c.html)

comcom 2004/11/04 00:31 こちらへの書き込みは初めてですね。どうぞよろしく。
さて、農家の件についてちとコメントを。農家の方にとって、農薬の使用量が増大することはコストアップに繋がります。従って、自消分には農薬を散布する意味がないと考えられます。先日の、医師のと救急車の誤解と同様、知られざる側面かと思います。
まぁ、僕の親戚に限った話かもしれませんが、とりあえず、農家がこれ以上悪モノにならないよう、フォローをさせて頂きました。

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