NATROMのブログ

ニセ医学への注意喚起を中心に内科医が医療情報を発信します。

どうするタミフル

インフルエンザが多くなってきた。昨日の当直では11人に検査して9人が陽性であった。発症から48時間以上経っている患者さんは検査をしなかったから、実数はもっと多い。インフルエンザに効果のあるタミフルについては、浜六郎が絡んで副作用が大々的に報道されたのは記憶に新しい。計画的な人体実験などというトンデモ説もあって、陰謀論大好きな人たちがころっと騙されていて愉快であった。医学的には、■「タミフル服用で行動異常死」学会報告(内科開業医のお勉強日記)を参考にして欲しい。

ただ、タミフルの消費量が日本で多いのは確かである。もっと適応を厳格にするべきではないか、つまり、基本的に健康な人がインフルエンザにかかったとして、寝てりゃ治るんだからタミフルは使わないという考え方もあるんじゃないかと思った。MR(製薬会社の営業)にそう言ったら、「先生がインフルエンザにかかったらどうしますか?」と尋ねられた。そりゃまあ、自分がインフルエンザにかかったら、タミフル飲んで一日でも早く治りたいわな。さすが営業のプロなだけあって、うまいことを言う。

患者に対して「自分や家族に対するのと同様にすべし」というのが、良い医師だとされている。夜中に発熱で来院して、寝てりゃ治ると言われるよりかは、一日でも早く治る薬をもらいたかろう。副作用については説明したが、患者さんはみなタミフルを希望された。日本のタミフルの消費量については、薬好きという国民性のほかに、自己負担の安さや医療機関へのアクセスのよさも影響しているのであろう。それがいいことか悪いことはわからないけれども。