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cover ■「ニセ医学」に騙されないために

 ホメオパシー、デトックス、千島学説、血液型ダイエット、ワクチン有害論、酵素栄養学、オーリングテストなどなど、「ニセ医学」についての本を書きました。あらかじめニセ医学の手口を知ることで被害防止を。

2006-06-06 胎内記憶

[]胎内記憶 胎内記憶を含むブックマーク

毎日新聞が胎内記憶について好意的な記事を書いていた。横浜市の産婦人科医、池川明さんによる調査。


■胎内記憶:幼児の3割が鮮明に語り 横浜の産婦人科医が調査*1(毎日)

 調査は02〜03年、長野県諏訪市と塩尻市の36保育園と2幼稚園で、1620人の子どもを対象に行われた。平均年齢は4歳で、親の平均年齢は34歳。それによると、33%の子どもが「胎内記憶」があると答え、21%は「誕生記憶」もあった。記憶を語った時の年齢は2〜3歳が多かった。

 アンケートに寄せられた回答は「暗くてあたたかかった」(2歳、4歳男児)「水の中に浮かんでいた」(3歳女児)「ひもでつながれていた」(2歳女児)「おなかの中は暗くてきゅうくつ。ママの話し声がよく聞こえた」(4歳男児)など。

胎内記憶や誕生記憶の存在を証明する証拠にはまったくならないということを理解してさえいれば、こういった調査もそれなりに興味深く思える。記憶というものはきわめてあいまいで、「宇宙人に誘拐された」「実父に性的虐待を受けた」という偽記憶を植え付けられてしまう事例はよく知られている。胎内記憶や誕生記憶も、実際の経験を覚えているのか、それとも後から聞かされた話を実際の記憶と混同しているのかは、区別できない。以下のような事例を見るに、ある程度成長してから、周りの大人から聞いた話を自分の経験であると誤認している可能性がきわめて高そうである。

池川医師が胎内記憶に関心を持ち始めたのは7年前、助産師から小学1年の孫が書いた作文を見せられてからだ。作文には「ぼくがおかあさんのおなかにいるときに、ほうちょうがささってきて、しろいふくをきためがねのひとにあしをつかまれて、おしりをたたかれました。こんどはくちにゴムをとおしてきて、くるしかったのでないてしまいました」とあった。

池川医師は帝王切開の誕生記憶と解釈したのであろうが、明暗ぐらいならともかく、胎児もしくは出産直後の新生児の視力で、メスや眼鏡をかけた医師を認識できるわけがない。むろん、実際に胎内記憶が存在すると信じる方々は、「できるわけがない」というのは頭の固い思い込みに過ぎないと反論するのであろうが、それならば、胎児・新生児は何か超自然的な能力を持っていると仮定しなければならない。ま、かような指摘は野暮であろう。まさしく、ビリーバーは胎児は超能力を持っていると信じたいからだ。

自然分娩群と帝王切開群でランダムに新生児を分け、育ての親を含め一切周囲の大人がその赤ちゃんが自然分娩で生まれたのか帝王切開で生まれたのか知らない環境で育てるという、ダブルブラインドの条件下で実験すれば、帝王切開の誕生記憶の存在証明は可能である。本当に誕生記憶なるものが存在するならば、周囲からまったく帝王切開で生まれたと知らされないでいてもなお、「ほうちょうがささってきた」などと語る子供がいるであろう。むろん、このような実験は倫理上実行不可能である。

結局のところ、既知の科学知識からは、胎内記憶や誕生記憶はきわめてありそうにない、というところまでしか結論できない。記事にあるように、「胎内記憶の有無ということではなく、おなかにいた時のことを一緒に語り合うことで親子関係を深めてほしい」「胎内記憶が実在するかどうかは証明できないが、語り合うことで家族関係の見直しや、良いお産とは何かを見つける手掛かりにしてほしい」というスタンスであれば、別に批判の対象にはならない。ただ、実際にはトンデモであるのを、「証明できない」と批判に対して逃げ道をつくっているだけのように見える。たとえば、

出産時「痛かった、苦しかった」と話す子どもの声に、陣痛促進剤、鉗子(かんし)、吸引、予定分娩などといった今のお産のシステムでいいのか、疑問も持つようになったという。

という池川医師の疑問は、きわめて底の浅いものである。現在の出産システムに疑問を持つのはいいが、それが科学的根拠のあやふやな胎内記憶からというのは情けない。どのような出産システムが良いかというのは、安全性やコストから科学的手法によって評価されるべきものである。科学的に評価されるべきところに、ファンタジーを持ち込むとろくなことにならない。「痛かったから」陣痛促進剤が疑問だというのなら、自然分娩よりも帝王切開のほうが良いのか。陣痛が微弱であれば、長時間の分娩を強いるよりも、陣痛促進剤を使用したほうが胎児の負担は減るのではないか。

記者がファンタジーとして胎内記憶を扱った記事を書くのは、まあ、かまわないと思うけれども、科学的根拠がほとんどないってことは常に気に留めておくべき。ましてや、根拠のあやふやな経皮毒といった恐怖で妊婦を脅しておいてデトックスといったエビデンスの無い治療法を勧めるような医師の片棒を担ぐことは行うべきではない。個人的には、胎内記憶のようなトンデモ一歩手前の概念を使わなくったって家族関係を見直したり、良いお産を考えたりすることはできると思う。



関連記事

■毎日新聞の石田宗久記者が良質な記事を書いている件

■マクロビオティックでオーガニック

*1:URL:http://www.mainichi-msn.co.jp/science/medical/news/20060605ddm013100065000c.html

KosukeKosuke 2006/06/06 22:41 鉗子分娩が駄目なら、我が家の長男はこの世に存在していないでしょうな。
その医師はそういう子どもは産まれなければ良いとでも考えているんでしょうかねぇ。

InoueInoue 2006/06/07 09:04 子供の視力の発達プロセスぐらい産科医なら知ってて当然じゃないですか。なぜそんな基本的な知識を無視してしまうんだろう。

NATROMNATROM 2006/06/07 09:25 この産婦人科の先生は、帝王切開も吸引分娩も鉗子分娩もやっているんですよ。新生児の視力についても多分知っています。この先生は代替療法を手広くやってらっしゃるようで、マタニティー・ヨーガ、カラーセラピー、レイキ、未来世療法まで。私が思うに、この先生は、商売のため分かっててやってます。胎内記憶を素敵と思うような妊婦さんを集めたら、それはそれはいろんな商売が成り立つでしょう。

いきなりレイキや未来世療法だと、引く妊婦さんでも、胎内記憶ぐらいなら本当かもしれないと思うでしょうから、入り口としては最適。必要なときはちゃんと帝王切開などの介入もできるようだし、無責任に自然分娩を賞賛している人たちよりかはずっとマシです。胎内記憶といったトンデモでしか家族関係を見直せないような人もいるかもしれませんので、こういう産科医がいてもいいでしょう。ただ、記事にするなら懐疑的な視点からの考察も必要だと思います。毎日新聞の記事はご丁寧に著作の紹介までして、単なる宣伝です。

InoueInoue 2006/06/07 10:35 胎児記憶の話のうさんくささをダメ押ししておきたい。
 人は言語で認識し、考え、記憶します。胎児や新生児が思考しないということはないでしょうが、我々の思考とは全く異なるものでしょう。それらは互いに翻訳不可能です。自閉症児は言語発達に障害が出た結果、思考プロセスが全く違う発達を遂げている。
 胎児記憶があったとしても、それを言語に翻訳して表出することは、たぶん不可能ではないでしょうか。胎児期の体験を、「ほうちょうで・・・」なんて言語に翻訳できるはずがない。それは動物の思考を言語化するようなものです。

K.JK.J 2006/06/07 13:27 初めまして。

私が小学生くらいのときに、死んだ祖父(二歳のときに死んだらしい)のことを憶えている。と言ったら周りでよってかたって「それは写真を見た記憶だ。」「周りが話ているのを聞いて自分で憶えている気になっている」だの散々言われました。
難しいことを言わなくても、それが普通の感覚だと思うのですけど。ましては生まれる前なんて...。

ちなみに、中学生くらいになったときに(そのときは祖父の記憶はすでになかったが「小さい頃には記憶があった」ということを記憶していた)改めて計算しなおしたら、実は祖父が死んだのは私が3歳のときで「それならひょっとすると憶えていたかも」ということになりました。

桃っち桃っち 2006/06/16 01:10 はじめまして。
胎内記憶の話はいろんなところでよく耳にします。
良しにつけ悪しきにつけうちの息子(3歳)は感受性が強いので、「この子なら。。。」と思ってためしに聞いてみました。
結果は。。。サッパリでした(笑)
ちなみに帝王切開で産まれてます。
親子のコミュニケーションとか、ちょっとした親のお楽しみでいろいろ聞いてみるのはまったく差し支えないと思いますが、盲信しすぎて出産方法うんぬんに結びつけるのは明らかに行き過ぎと思うし、ヘタすると帝王切開や鉗子分娩なんかに対する偏見につながるよ、と思います。

もも子もも子 2014/07/16 17:10 ???
水商売をしております。生理がストレスで止まり、婦人科に行ったら本があり読みました。
で、お客様に子供って親を選んで生まれてくるらしいね~と言ったら、『なに!!うちの子が、パパとママを選んで生まれてきたんだよ!』と4歳の時に言い、こいつ気持ち悪いな!!(゜ロ゜;と思ったそうです。あと、まわりにそんな方2人いますが…(´ω`)
そんなこと、あるんじゃない?って思います。