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cover ■「ニセ医学」に騙されないために

 ホメオパシー、デトックス、千島学説、血液型ダイエット、ワクチン有害論、酵素栄養学、オーリングテストなどなど、「ニセ医学」についての本を書きました。あらかじめニセ医学の手口を知ることで被害防止を。

2006-06-20 愛国心の遺伝子

[][]愛国心の遺伝子 愛国心の遺伝子を含むブックマーク

教育基本法を改正して、子供たちに愛国心を身につけさせたい人たちの中に、ドーキンスもびっくりの主張をしている人がいたよ。


■「今こそ教育基本法の改正を!」 緊急集会を開催

の中の、「愛国心―国家的に物事を考えること」 岡崎久彦(博報堂岡崎研究所所長・本会代表委員)より引用。

国家的にものを考えるというのは、本来これは言う必要がないことなんですね。これは全部我々のDNAに入っているんです。『利己的な遺伝子』という本があるように、遺伝子というのは極めて利己的で、自分だけ生き残るために全部できている。ところが、自分の属するある団体を守ることが自分の生存に意味があるとなってくると、自己を犠牲にしてもその団体を守るという遺伝子が埋め込まれているらしい。それでは、その団体が何であるかという、その単位が問題なんですけれども、結局は人類数千年の歴史では国家しかないんです。それは一人一人に聞いて見れば分かることで、「おまえ、何のために死ねるか」と。「東京都のために死ねるか」と言っても、おそらく死ねる人はいないですよね。地球人類のために死ねるかというと、口先だけそういうことを言っている人はいるけれども、命を賭けてないですね。やっぱり単位は国であって、これは放っておけば自ずから出てくるものです。ただそれを今までの偏向教育で抑えこんでいた。ですから、教育基本法に「国家的にものを考えること」「国を愛すること」ということを書けば、日本人というのは遵法精神がありますから、自ずから解決するんじゃないかと思います。

国家的にものを考えることは、我々のDNAに入っているんだそうだ。しかもその根拠が「利己的な遺伝子」ときたもんだ。本当に岡崎氏は「利己的な遺伝子」を読んだのだろうか。竹内久美子しか読んでいないということはいかにもありそうだが、読んだとしても理解はしていない。仮に「自己を犠牲にしてもその団体を守るという遺伝子」が存在するとして、自己を犠牲にして守られるべき団体の単位が「国家」だなどということはありえない。「人類数千年の歴史」って、そんな短期間では進化は起こりませんがな。岡崎氏は進化が起こるタイムスケールをまったくご存知でない。ヒトが進化した数百万年の歴史のほとんどの期間において「国家」など存在しなかった。

集団が比較的小さく、集団のメンバーが血縁関係にあれば、「集団を守る遺伝子」は有利になりうる。要するに、血縁淘汰である。集団が大きくなれば、フリーライダー、つまり自己犠牲は行なわず守られることによって利益だけ得る利己的な個体が有利になる*1。集団のサイズは家族か、せいぜい「一族」ぐらいまでだろう。むろん、「国家」のために自己犠牲を行なう行動は実際に存在する。「利己的な遺伝子」の著者であるドーキンスは、こうした行動を遺伝子ではなく、ミームによって説明する。

どんな対象であれ信仰は人々を強く帰依させ、極端な場合にはそのためにそれ以上の正当化の必要なしに人を殺し、自らも死ぬ覚悟をさせてしまうのだ。「ミームに取りつかれて自分の生存も危うくするにいたった犠牲者」を呼ぶのにキース・ヘンソンは「ミーメオイド」という新語を作った。「ベルファストやベイルート発の夕方のニュースにはそのような人々がたくさん登場する」。信仰はきわめて強力で、同情や、寛大さや、上品な人間的な感情へのあらゆる訴えかけにも人々は動じなくなる。「利己的な遺伝子 増補新装版」(P506)

「日本のために死ねる」と堅く信じる人は、「ミームに取りつかれて自分の生存も危うくするにいたった犠牲者」すなわちミーメオイドである。教育によってミーメオイドをつくることはできるだろうが、ドーキンスはそうした自らの生命を軽視させる教育に批判的である。国を愛することはまことに結構であるが、「命を賭ける」のはやりすぎである。いったいどちらが偏向教育なのだ。

教育改革をするならば、自分のよく知らない分野について知ったかぶりをするような大人が少しでも減るように改革していただきたい。ちなみに岡崎久彦氏の自然科学に対する理解については、どうも「竹内久美子を読みかじってちょっと知ったかぶりしちゃったエヘヘ」というレベルではないようだ。「なぜ気功は効くのか」や、船井幸雄と組んで「気の力」という本を書いている。岡崎氏がどういう本を書こうと自由であるが、そういう人に利己的な遺伝子を語ってほしくない。



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■ローレンツと体罰

■利己的な遺伝子と集団選択

*1:自分は犠牲になるつもりはないくせに、やたらと集団のための自己犠牲を賛美して、他の個体に自己犠牲を強いるような利己的な個体はさぞや成功するであろう(皮肉)。

tomatoma 2006/06/20 23:48 はじめまして。既にご存知かもしれませんが、今回のエントリーにもちょっと関連する
ドーキンス出演のドキュメンタリー、

http://video.google.com/videoplay?docid=6193866746249268230

で全編(前・後編とも)観られますよ。

InoueInoue 2006/06/21 01:36 岡崎氏の発言は論理矛盾してますよ。愛国心が遺伝的に保存されているなら、法で規定なんかしなくたって、自然と生まれてくるはずでしょう。偏向教育なんかでは押さえつけられない。
人為的に愛国心を受け付けようという行為は明治期において「日本」という主権国家を無理矢理でっち上げるために行われ、かつ、その必要もある程度あったと考えられますが、今更それを言うのはアナクロニズムでしかないと思うなー。

shimoohrishimoohri 2006/06/21 07:40 安易な利己的な遺伝子論を振りかざせば「逃げる」とか命を助けてもらう代わりに「降伏する」とか「裏切る」とかいう選択もありそうです。
岡崎氏的にはそういうのもアリなんでしょうか?

くだんくだん 2006/06/21 09:19 こんにちは。
ナショナリズムと進化論の関連では最近、下記の本が気になっています。
未読ですが、何かやらかしていそうな悪寒…。
是非ともNATROMさんに書評をお願いしたいのですが。

「遺伝子が解く!万世一系のひみつ」 竹内久美子 http://www.amazon.co.jp/gp/product/4163681701/250-5852375-0676265?v=glance&n=465392

「天皇の遺伝子 男にしか伝わらない神武天皇のY染色体」蔵琢也http://www.amazon.co.jp/gp/product/4331511502/250-5852375-0676265?v=glance&n=465392

NATROMNATROM 2006/06/21 09:28 竹内久美子に蔵琢也ですか。竹内はあいかわず商売がうまい。蔵琢也はマジっぽいので寒い。金出して買うのは嫌なので、図書館にでもあったら読んでみます。

クハ72クハ72 2006/06/22 00:49 どうせ遺伝子を持ち出すのなら国家よりも人種の方が説得力ある。
本土日本人から見ればアイヌや琉球よりも朝鮮半島や中国大陸の方が近いだろう。
つまりアジア全体に広げないと日本をカバーできないのだ。
早い話が大東亜共栄(ry

ほるほるほるほる 2006/07/02 16:35 >、ドーキンスはそうした自らの生命を軽視させる教育に批判的である。国を愛することはまことに結構であるが

偏向教育を批判するのにドーキンスの尻馬にのったり、実在の不確かなミームを持ち出すのはねえ・・・

NATROMNATROM 2006/07/02 21:29 いやあまったく、偏向教育(と岡崎久彦が思っているもの)を批判するのにドーキンスの尻馬にのったりするのは滑稽ですね。ていうか尻馬にも乗れていないから滑稽以上に哀れですが。ミームの実在については不確かじゃないと思います。