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cover ■「ニセ医学」に騙されないために

 ホメオパシー、デトックス、千島学説、血液型ダイエット、ワクチン有害論、酵素栄養学、オーリングテストなどなど、「ニセ医学」についての本を書きました。あらかじめニセ医学の手口を知ることで被害防止を。

2006-09-01 電気ストーブで化学物質過敏症

[]電気ストーブで化学物質過敏症 電気ストーブで化学物質過敏症を含むブックマーク

■化学物質過敏症についての掲示板および■東京高裁が化学物質過敏症を認定?(Do you think for the future?)経由。


■電気ストーブで化学物質過敏症 ヨーカ堂に賠償命令*1(産経)

 東京都内の男子大学生(22)らが「電気ストーブが原因で化学物質過敏症になった」として、販売したイトーヨーカ堂(東京)に約1億円の損害賠償を求めた訴訟の控訴審判決が31日、東京高裁であった。横山匡輝裁判長は同社の責任を認め、原告敗訴の1審判決を変更、約555万円の支払いを命じた。原告代理人によると、電気製品による化学物質過敏症の被害が確認されるのは珍しく、製造会社でなく販売会社の責任を認めた判断も異例という。

 このストーブは台湾メーカー製の「ユーパ TSK−5302LG」。平成12年9月〜15年3月に国内で約30万台販売され、ヨーカ堂はこのうち約5300台を12年度中に販売した。

 原告の男子大学生は平成13年1月、都内のヨーカ堂店舗でこのストーブを購入。約1カ月使ったところで体調が悪くなり、化学物質過敏症と診断された。

 ストーブ前面の網目カバーに使われた樹脂から、過熱によって化学物質が発生したのが原因と主張。ヨーカ堂側は、化学物質と健康被害の因果関係を争っていた。

 横山裁判長は、ストーブに構造上の問題があり、使用中に高濃度の化学物質が発生することや、化学物質と健康被害との因果関係を認めた。


情報が限定されているのであまり確定的なことは言えない。概ね、私は、以下に引用するtf2さんと同じ意見である。

■東京高裁が化学物質過敏症を認定?(Do you think for the future?)

この判決が確定すると「化学物質過敏症」という病気の存在や、その原因を公式に認めたってことになるのだろうか? 単に、出来の悪い電気ストーブから使用中に高濃度のホルムアルデヒドが発生し、それによって有機溶剤中毒になったという判断なら良かったのだろうけど。。 判決を見ないとわからないが、もしかすると、原告は「化学物質過敏症」になったと訴えているが、判決はストーブが原因で健康被害が発生したという因果関係を認めているだけで「化学物質過敏症」と認定したわけではないかもしれない。。


「化学物質過敏症」という疾患概念は、日本でも国際的にも、公的に認められたものではない*2。ときに「化学物質過敏症のことをよく知らない医師がいる。不勉強でケシカラン」という意見を散見するが、医師がホメオパシーや波動療法といった根拠のない医療についてまで詳しい知識を持つことは不可能である。まともな医師であれば、自分の専門分野はもちろんのこと、診療機会のある可能性のある疾患については常に知識をアップデートしているが、そうした情報を提供する雑誌に化学物質過敏症に肯定的な記事が載ることはない。しかし、マスコミでは、化学物質過敏症の疾患概念に懐疑的な立場から報じられることはほとんどない。せめて、「国際的には、化学物質過敏症は議論の余地のある疾患概念であると考えられている」という情報をつけるというのが公正であろう。

さて、今回の報道だが、tf2さんが指摘しているように、あたかも東京高裁が化学物質過敏症を認めたかのように読める。電気ストーブから化学物質が発生して健康被害を生じることは十分ありえるのだから、なにもわざわざ「化学物質過敏症」のような怪しい疾患概念を持ち出さなくてもよさそうに思うのだが、原告側の法廷戦略があるのだろうか。シックハウス症候群は概ね「住宅環境での汚染物質などによる健康障害」と定義されるのだが、電気ストーブ由来の化学物質曝露による健康障害は十分にこの定義にあてはまる。「化学物質過敏症」ではなく、シックハウス症候群ではいけなかったのか。

掲示板で「安易に『化学物質過敏症』の診断を下すお医者さんは多いか」という質問があったが、多いか少ないかは別として、化学物質過敏症の診断を下し、診断書を書いてくれる医師はいる。臨床環境医学(Clinical ecology)*3という分野の医師たちは「化学物質過敏症」に肯定的なのであるが、日本にも多数というわけではないが臨床環境医はいる。有名どころでは「買ってはいけない」の三好基晴が臨床環境医を称している。

診断書が欲しい患者は、こうした医師達に書いてもらえる。化学物質過敏症の診断は、厳密にはクリーンルーム下のダブルブラインド下による負荷試験でなされるべきであるが、現状では病歴聴取を中心になされている。というか、ダブルブラインドテストでは、原因物質を負荷しても症状は誘発されたりされなかったりである。診断はけっこういい加減だ。それでも、患者さんは満足するのであまり問題にならない。マスコミが「化学物質過敏症」を記事にするとき、聞きにいくのも臨床環境医にである。記事の内容が偏るのも当然であろう。



関連記事

■臨床環境医学と環境医学は異なる

*1:URL:http://www.sankei.co.jp/news/060831/sha087.htm

*2:"Until such accurate, reproducible, and well-controlled studies are available, the American Medical Association Council on Scientific Affairs believes that multiple chemical sensitivity should not be considered a recognized clinical syndrome." American Medical Association Council on Scientific Affairs. Clinical ecology. JAMA 1992;268:3465-7より引用

*3:臨床環境医学が通常の医学者にどのように評価されているかは、注2のJAMAの論文にあたってみてほしい

physicianphysician 2006/09/01 20:08 ストーブがあって、化学物質過敏症があるのなら、ストーブから出てくる化学物質を最低でも同定してもらわないとなんとも...と思うのは私だけでしょうか?

InoueInoue 2006/09/02 07:08 元有機合成屋である私としては、「化学物質」という言葉そのものにうさんくささを感じる。化学物質でない物質とは何だ?

GONRYOGONRYO 2006/09/03 18:21 至言ですな>化学物質でない物質とは何だ?

wadjawadja 2006/09/03 18:46 この記事読んだ時はwadjaも驚きました。被告は多分上告するでしょう。

>なにもわざわざ「化学物質過敏症」のような怪しい疾患概念を持ち出さなくてもよさそうに思うのだが、原告側の法廷戦略があるのだろうか。

一過性の健康被害より、慢性化した症状の方が、賠償額算定に有利なのかもしれませんね。

通りすがり通りすがり 2006/09/04 13:12 これは産経の記事が不親切というか、判ってない人が書いたと思われます。
他紙を読むと、争点は加熱によって発生したホルムアルデヒドなどの有害物質に被曝したこと
で「中枢神経機能障害」が引き起こされたどうかについて。
つまり、認定されたのは「シックハウス症候群」であって「化学物質過敏症」ではありません。
そして、ヨーカ堂には「異臭がする」などの苦情が届いていたのに販売中止や原因究明などの措置を
とる義務があったとして賠償責任を認めたものです。

決して裁判所が「化学物質過敏症」を認めたものではありません。
政治的に動きたい弁護士が記者会見で勝手な解釈をして、それをマスコミがそのまま記事にしただけです。

SekizukaSekizuka 2006/09/04 15:46 asahi.comの記事もなかなか(環境ホルモンがお好きなようで)
http://www.asahi.com/national/update/0831/TKY200608310328.html

東京新聞がさらっと良く書けているのかな?
http://www.tokyo-np.co.jp/00/sya/20060901/mng_____sya_____007.shtml

しかし、実際のソースをネット上で読みたいところですね。
最高裁と下級栽は最新の判例が出るんだが、高裁は出ないんだよな。他にあるのかな?
http://www.courts.go.jp/

ナンジーナンジー 2008/02/16 10:46 厚顔無恥とはまさにこのこと。「あたかも東京高裁が化学物質過敏症を認めたかのように読める。」ではなくて、高裁が認めたんだよ。ちなみに、これより以前2005年11月21日の千葉地裁の別の事例の判決で、化学物質過敏症が認められたことが、後の裁判の判決に大きく影響を及ぼすようになったんだよ。まっ、せいぜいyesマンしか集まらない裸の王様の君の所には、正しい情報も伝えられないか。

NATROMNATROM 2008/02/16 10:52 裁判所が医学的常識を超越した判決を出すこともたまにありますので、「東京高裁が化学物質過敏症を認めた」可能性は否定できませんね。東京高裁や千葉地裁の判決については興味がありますので、よろしければ教えてください。経験的に、化学物質過敏症の疾患概念に好意的な人は、根拠を求められると遁走する傾向がありますので、期待しないで待っています。

att460att460 2008/02/17 02:19 横から失礼

>高裁が認めたんだよ

皆さん、何か勘違いをしているようですが、裁判所は、科学的な事実を認定する機関ではないのですが。

原告、被告等の主張を聞いて、どちらが正しいか判断を下すだけです。

適切かどうか不明ですが、

民事訴訟法 - Wikipedia
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%87%A6%E5%88%86%E6%A8%A9%E4%B8%BB%E7%BE%A9#.E5.BC.81.E8.AB.96.E4.B8.BB.E7.BE.A9

自由心証主義 - Wikipedia
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E8%87%AA%E7%94%B1%E5%BF%83%E8%A8%BC%E4%B8%BB%E7%BE%A9

例えば、原告が「化学物質過敏症は存在する」と主張した場合、被告が「化学物質過敏症は存在しない」と主張しない限り、前提として「化学物質過敏症は存在する」と扱われます。

当事者が「正しい」主張をしなかったばかりに、可笑しな判決が出た例は山ほどあるようです。

補足

一応「化学物質過敏症に罹患した」と認定した判決はありますが、
http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20070117134257.pdf

あくまでも、原告・被告の主張を元に結論を出しただけです。

ポイントは、原告が病気になったことに関して被告に過失があるかということであって、原告の病気が「化学物質過敏症」であるかそれとも他の「シックハウス症候」のような病気なのかどうかはあまり問題にならないでしょう。


科学に関しては素人である裁判官に(絶対的に正しい)科学的事実の認定など求められても、裁判官としては困るだけでしょうね。

ついでにいえば、裁判の目的は当事者間の紛争の解決であって、科学的事実の究明ではありません。

att460att460 2008/02/17 02:33 ちょこっと訂正

>原告の病気が「化学物質過敏症」であるかそれとも他の「シックハウス症候」のような病気なのかどうかはあまり問題にならないでしょう。

問題にならないではなく、問題にしないですね。被告にとって、原告の病状と病因の間に因果関係があるかが問題であって、病名が何であるかは裁判上は関係のないことです。

#被告に原因はあるが、別の〜病である、等という弁論など行うはずがないでしょう。

att460att460 2008/02/17 02:45 ↑「弁論」とは、被告の弁論のことです。

#お恥ずかしいです。