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2008-09-04 素数ゼミの秘密
■[本][科学]素数ゼミの秘密

■17年と13年だけ大発生?素数ゼミの秘密に迫る! (サイエンス・アイ新書 72) 吉村仁(著)。
素数ゼミとは、北アメリカ大陸において13年もしくは17年ごとに大発生するセミである。素数ゼミナールのことではない。なぜ周期が素数なのか?以前どこかで、寄生虫との軍拡競争の結果だと読んだ*1。2年おきとか3年おきとか5年おきとかに発生する寄生虫を避けるためにどんどん周期が長く、しかも周期が素数になったという説だ。この説にはなんとなく納得できなかった。寄生虫が素数サイクルの原因だとしたら、他の地域でも素数ゼミがいてもよさそうだし、大量発生するほうが寄生虫に弱そうな気がする。本書では、寄生虫説ではなく、近縁種との交雑を避けるためという説を挙げている。私には、こちらの説のほうが説得力がありそうに思える。詳しくは本書を読んでいただくとして、だいたいこんな感じ。
素数ゼミの祖先は、氷河期に絶滅しかけた。気温が低くなったため幼虫の成長速度が遅くなり、成虫になるために10年以上かかるようになった。厳しい環境のため個体数が減り、交尾相手を確保するため周期を合わせるようになった。特定の周期から外れて発生した個体は、個体群密度が低すぎて繁殖に成功できず、淘汰される。ここまでが、長い周期性を獲得した理由。では、なぜその周期が12年とか15年とかではダメで、素数でなければならないのか?本書によれば、交雑を避けるためとのこと。たとえば、10年周期のセミ(遺伝子型AA)と14年周期のセミ(遺伝子型aa)が同時発生して交雑したとする。その子孫の遺伝子型の頻度比はAA:Aa:aa=1:2:1となる。10年周期が優性と仮定すると、交雑の10年後には遺伝子型AAとAaの混在した個体群が生じるわけである。この個体群からは遺伝子型aaの個体(14年周期)が生まれるため、次世代の個体群密度が小さくなり絶滅する可能性が高くなる。交雑の14年後は遺伝子型aaのみの個体群が生じて、こちらのほうは純系であるが、交雑の年と比較して個体群密度は4分の1になってしまい、やはり絶滅しやすい。
言葉で書いたからわかりにくいが、要するに交雑によってロスが生じると理解してもらえばよい。うまいこと条件を合わせればシミュレーションで再現できると思われるが、すでに「学生がやってくれた」のだそうだ*2。なるべく交雑が起らない周期が素数である。素数ならば11年でも良いような気がするが、幼虫が成長するのに11年では足りなかったのだろう。17年周期のセミは北部に、13年周期のセミは南部に分布していることからも、交雑を避け、かつ、気温が低くても幼虫が成長できるだけの長い周期が必要であったことが推測できる。寄生虫説では17年ゼミが北部に分布する理由が説明できないように思われる。また、北アメリカ大陸だけに素数ゼミが進化した理由も寄生虫説では説明できない。本書の説によれば、熱帯地域との移動を制限するカリブ海やメキシコ湾の存在という北アメリカ大陸の地理的条件が素数ゼミの進化に関係している。氷河期に南に逃れることのできる地理的条件の地域では、周期性は進化しない。
いくつか別の疑問も湧いてくる。周期が単純なメンデル遺伝に従うと仮定されているが、検証されているのだろうか(ただ、単純なメンデル遺伝に従わないとしても、交雑が不利であることには変わりないだろう)。交配実験で検証可能だけれども長い年月がかかる。F1世代の表現型を調べるだけで17年かかるのだ。しかし、DNAを比較することで、間接的な証明ならば可能かもしれない。周期は13年であるが、「酵素などのいろいろな遺伝子」が17年ゼミ*3と同じものを持つ新種*4が発見されたそうである。著者の吉村は、13年ゼミと17年ゼミの交雑によって周期遺伝子以外の17年ゼミの遺伝子が個体群に広がって新種が生じたという「遺伝子浸透仮説」を提唱している。力技で全ゲノムを調べれば検証できるかも。
そのほか、フィールド調査やメイトチョイスの話が載っていた。誤植や、メンデルの法則の説明におかしな部分はあるが、ご愛嬌。
*1:ネットで検索したら、 サイモン・シンの 『フェルマーの最終定理』に素数ゼミについての記述があるそうだ→■ 『素数ゼミの謎』 著:吉村仁 絵:石森愛彦 (文藝春秋) (Untidy Bookshelves)
*3:セプテンデシム
*4:ネオトレデシム










必死になってページをめくりましたよ(笑)
寄生虫説でした。本が本だけに、単純に素数に関する内容。17の倍数に何百年もつきあうのは、寄生虫にとっては難しかっただろう、という話。
ということで、
> 以前どこかで、寄生虫との軍拡競争の結果だと読んだ*1。2年おきとか3年おきとか5年おきとかに発生する寄生虫を避けるためにどんどん周期が長く、しかも周期が素数になったという説だ。
の事ですねきっと。
内容に異論があるわけではないのですが、
>近縁種との交雑を避けるため
とか
>寄生虫を避けるために
とかの言い方が気になって仕方ありません。まるで誰かが目的を持って遺伝子操作しているような・・・
「(たまたま発生した)17年周期の種は近縁種との交雑が避けられたので繁殖している」と言うような書き方の方がスッキリ受け入れられると思います。
ところで、
>交雑の年と比較して個体群密度は4分の1になってしまい、やはり絶滅しやすい。
と言うのは本当でしょうか?
一世代のメスが生む卵の数はどの程度なんでしょう?
例えば1000000個産卵すれば、次世代の「個体群密度」が下がるとはいえないのではないでしょうか?
すみません、「一匹の」が抜けてました。
ここで言う密度は「交雑した場合としない場合を比較して、どっちが密度が低いか」でしょう。
なお、セミ1個体はそんなにたくさん産卵しません。せいぜい100のオーダーだと思います。
ご指摘の通り、不正確な言い方です。ただ、ダーウィン進化を説明するときに目的論的な言い方は、進化生物学の専門家の間でさえ、慣用的に使用されています。正確なダーウィン進化をご理解されている方は、適宜、目的論的な説明を正確なダーウィン的な説明に変換させて読んでいただければ幸いです。
>例えば1000000個産卵すれば、次世代の「個体群密度」が下がるとはいえないのではないでしょうか?
メスの産む卵の数よりも、長い幼虫時代を経て成虫にいたる個体の数のほうが重要だと考えます。
クマゼミとミンミンゼミの交雑によって、・・・と、同じくらいの衝撃を覚える説、と思っていろいろ調べたら
http://homepage2.nifty.com/saisho/Perio.Cic.html
3種のセミのそれぞれに、17年周期と13年周期の個体群がいるわけですか・・・17年ゼミ、13年ゼミという種はないと。では、生じたという新種とは何?
>素数ゼミの祖先は、氷河期に絶滅しかけた。気温が低くなったため幼虫の成長速度が遅くなり、成虫になるために10年以上かかるようになった。厳しい環境のため個体数が減り、交尾相手を確保するため周期を合わせるようになった。特定の周期から外れて発生した個体は、個体群密度が低すぎて繁殖に成功できず、淘汰される。
えーっと、周期という意味が二重で使われていると思います。 ひとつは、卵から成虫になるまでの期間で、もうひとつは、同一地域での発現周期です。
ここでいっている周期は、後者ですね。 後者の周期を合わせるように進化していった結果、前者が17年、13年になった、ということですか。
>なぜその周期が12年とか15年とかではダメで、素数でなければならないのか?本書によれば、交雑を避けるためとのこと。
種の異なる昆虫はちょっとやそっとのことでは交雑しませんから、これは、同種の周期の異なる個体群ということでしょう。
さて、素数ゼミが発生すると、地域がセミで埋め尽くされるという表現が決して誇張でないような状態になります。そこまでの超高密度を維持しないと、繁殖が成功できず淘汰される、というのは、セミ一般を見る限り、???です。 少なくとも他のセミなら、あの個体数の17分の1でも十分な密度だと思います(データの裏づけはありませんが)。また、多数の年次集団がいて、毎年発生するほうが、土中に、17年分、13年分の幼虫をストックできるわけで、リスク分散ができて有利な気がします。
ということで、疑問噴出です。
http://www.geocities.jp/kodomobunnkodayori/drtomaru3.htm
の下のほうに、簡単ではありますが解説がありました。
>後者の周期を合わせるように進化していった結果、前者が17年、13年になった、ということですか
寒いので「卵から成虫になるまでの期間」が延びた→交配相手を見つけるために「卵から成虫になるまでの期間」を周囲に合わせると有利→それぞれの個体群で13年周期とか14年周期とか15年周期とか16年周期とかになった→交雑が起ると個体群が絶滅しやすい→13年周期と17年周期が残った、という感じだったと理解しています。
>地域がセミで埋め尽くされるという
周期性が進化したのは氷河期の話ですので、現在とはずいぶん様相が違うと思います。
えーっと、卵から成虫になる期間が同じになるように進化していくと、異なった時期に産み付けられた卵同士が出会える機会がどんどん小さくなりますから、出現する時期を周囲に合わせるように進化したと考えるほうが、腑に落ちますね。セミ一般を考えると、成虫になるまで6年かかる場合、その地域で6年ごとに発生するわけではなく、異なった年次集団が沢山いるため、毎年発生するというのが自然な姿です。 厳しい環境で、たまたま個体数の多かった年次集団が生き残って、それらの幼虫期間が伸びていき、というストーリーのほうが私的には納得しやすいです。
この説、実質的には、17年、13年だけが生き残った理由を説明するのに、同一地域で、異なった周期で発生する、それぞれたった一つの年次集団がいて、というところから始めているように見えますが、そこまでが結構ミステリーです。
>周期性が進化したのは氷河期の話ですので、現在とはずいぶん様相が違うと思います。
環境の淘汰圧? が緩んでも、一旦獲得した性質というのは、なかなか変化しないものなんですね。 現在の状況を考えると、一つの町で、50億匹も発生するという話ですから、おそらく、幼虫の生息密度は、セミ一般に比べてもべらぼうに多いと思います。 餌にされる植物にとっては脅威ですが、ゆっくり成長することで、インパクトを小さくしているのかもしれません。
この本は知らなかったので、説明を見て、思わず「すげーっ」と叫んでしまいました(笑)
ところで、この記事を読む限りでは、遺伝子の中に13とか17とかいう年の情報が書かれている、ということが前提になっていますよね。
では、セミは、具体的にどうやって年を計測しているのでしょう?そのメカニズムって、もう、解明されているのでしょうか?
素人考えだと、平均気温が高い日がxx日以上続くと分解されるような物質があって、その生成物が毎年蓄積されて、ある一定量以上になると羽化のトリガーになるとか・・・なんでしょうかね。
メンデル遺伝をすることの再現実験は、直接的には確かに17年かかりますが、何か他の手がかりから簡単に13年か17年かを判別できないかなぁ、と思い、このような疑問にいたりました。