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cover ■「ニセ医学」に騙されないために

 ホメオパシー、デトックス、千島学説、血液型ダイエット、ワクチン有害論、酵素栄養学、オーリングテストなどなど、「ニセ医学」についての本を書きました。あらかじめニセ医学の手口を知ることで被害防止を。

2008-10-18 「癌が治った」という体験談はどこまで信頼できるか

[]「癌が治った」という体験談はどこまで信頼できるか 「癌が治った」という体験談はどこまで信頼できるかを含むブックマーク

■ニセ科学を見抜く練習問題(世界医学気功学会の論文集から) では、前立腺癌・膀胱癌が気功によって治ったかのような体験談は、実は初めから癌ではなかったと思われることを示した。癌でなかったとしたら、「医師が癌だと告知したのはどういうことよ?」という疑問が生じるのはもっともなことである。大雑把に言って可能性は二通りある。


1. 医師が、実際には癌ではないのに癌だと誤診した。

2. 医師は癌だとは告知していないが、患者側が誤解した。


1.については説明不要だろう。医師もいろいろなので、中にはとんでもないヤブもいるかもしれない。しかし、今回のケースは2.である可能性が高いと考える。医師の説明不足もあるだろうし、患者側の理解力不足もあるだろうが、いずれにせよ、「体験談」を解釈するときには、「患者側は医師の説明を100%理解できているわけではない」という点に留意せねばならない。

通常、医師はよほど強い根拠がない限り断定的な説明をしない。99%の確率で癌だと推測できるときに癌だと断定的に説明して、もし1%のケースに当たった場合、「説明が間違っていた」などと後で訴えられるかもしれない。「癌の可能性はきわめて高い」とか、歯切れの悪い説明になる。一方、患者側は、ただでさえ医学的知識の乏しいところに、癌かもしれないなどと言われるわけで、冷静に医師の言うことを理解しろと言っても無理な話だろう。癌の治療となったら長い付き合いになるために、時間をかけて少しずつ理解してもらうことになるのだが、「癌じゃなかったです」てなことになったら、誤解されたままということは十分ありうる。

あなたが医師だったと想像してみよう。「癌の可能性が高いので検査しましょう」と患者に説明し、検査をしたら癌じゃなかった。患者の息子が真顔で、「癌を治す気功を習って、必死で父に施術しました。そのお陰で癌が治ったんですね」など言ったとしたら、どう答えるか。私なら「気功は関係ないっす」とは説明しない。「お父様を思うあなたの気持ちが通じたのでしょうね。良かったですね」などと笑顔で答えて、次の患者を診る。

気功で癌を「治した」症例はまだ診たことはないが、ミキプルーンで脳梗塞を「治した」症例なら経験がある(■ミキプルーン、代替療法、善意の素人)。通常の経過での回復を、家族はミキプルーンのお陰だと誤認したが、いちいち指摘しなかった。もちろん、回復がミキプルーンによるものかどうか、医学的な見解を聞かれたら正直に答えただろうが、実際には「びっくりされたでしょう?」としか聞かれなかった。私は、びっくりしたと答えた。許可なくミキプルーンを勝手に食べさせた行動にびっくりしたのは事実だからだ。今頃、家族は、ミキプルーンのお陰で医師もびっくりするほど回復した「体験談」を話しているかもしれない。

ついでながら、医師はより厳しめの説明をしてしまいがちなことも、こうした「体験談」の温床になることも指摘しておこう。予後の説明が典型的でわかりやすいだろう。癌の末期の患者さんがいたとして、あと何ヶ月生きるのか、経験や統計などで推測はできるが、正確に予測するのは困難である。しかし患者側が知りたいのはまさしくそのことであって、説明しないわけにはいかない。「半年は持つと思います」と説明して、3ヶ月で亡くなったら印象が悪い。「3ヶ月でしょう」と説明して半年生きたら「良かったですね」となる。なので、やや短めの予後を説明することになる。「3ヶ月」と説明した患者が半年生きることは医師側にはそれほど珍しくないことだが、患者側にとってみたら、予後が伸びたのは○○療法のお陰であると誤認しうる*1

稀ながら癌の自然治癒はありうるし、症例報告もなされている。その場合、医学的な見地からみて、癌と診断した根拠、治癒と診断した根拠が述べられている。レベルとしては高くないが、症例報告もエビデンスとなりうる。しかし、上記した理由から、患者側のみからの情報による「体験談」の信頼性は極めて限定的である。



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■体験談は証拠にならない〜浄霊による体験〜

*1:医師の説明が正確であっても、患者の半分は中央値よりも長生きすることを考えると、同様の誤認は起きうる

質問させてください質問させてください 2008/10/19 02:06 前回の記事のコメントにあったページhttp://cat.zero.ad.jp/kawase/sub7.htmの例についてもよかったら解説をお願いしたいのですがどうでしょうか。

NATROMNATROM 2008/10/19 09:54 患者側のみからの情報による「体験談」ですので、信頼性は限定的ですね。信じたい人は自己責任でどうぞ。私は信じません。

質問させてください 質問させてください 2008/10/19 10:30 ではあのページに書かれている医師に問い合わせて嘘でなければ正しいのですね。ありがとうございました。

正味の話正味の話 2008/10/19 12:28 医学以外で治ったことを公言したらここみたいに医学界から叩かれちゃいますから、普通の医師は黙ってますよ。

ゆんゆん探偵ゆんゆん探偵 2008/10/19 12:39 「質問させてください」さん。
> ではあのページに書かれている医師に問い合わせて嘘でなければ正しいのですね。ありがとうございました。
なりませんよ。「医者がヤブだ」という可能性もあります。またNATROMさんがすでにこの記事で言っているように医者が患者の問い合わせに対しては波風を起こさないような回答をするものであれば、患者からの電話問い合わせでに対しての「嘘でない」という回答は何の保障にもならないかと思います。
結局、個々の体験談をいくらたくさん集めても何かの証拠には成り得なくて、きちんとデザインされた大規模対照実験が必要だということです。

damdamdamdam 2008/10/19 12:57 正味の話さんへ

通常の医療でも、患者の体験談に基づいて、治った例などと発表したら、叩かれますよ。
ちゃんとした症例報告でも、証拠能力は最低ランク扱いですからね。
治ること、を証明するには比較実験しないとだめです。

正味の話正味の話 2008/10/19 18:04 医薬品として一般的に証明することと、その人の技術が効くかどうかということは別ですよねえ。こないだ有名な砲丸職人の話を見たんだけど、この人のカンの技能は真似できないんだって。そういうのをわざわざ治験に持っていける医者はいないよね。別に擁護するわけじゃないけどね。理屈として。

NATROMNATROM 2008/10/19 18:38 「あのページに書かれている医師に問い合わせて嘘でなければ正しい」ということにはなりません。このエントリーのどこをどう読んだらそんな解釈になるのやら(質問させてくださいさんに十分な医学的知識があれば別の話ですが)。

患者側の「体験談」ではなく、医師による「症例報告」を信頼すればよろしい。体験談ではなく症例報告の集積は、レベルとしては低くはなりますが、エビデンスとなります。「医学以外で治ったことを公言したらここみたいに医学界から叩かれちゃいます」というのは、インチキ医療を行なう詐欺師の妄想です。エントリーにも書いていますが、自然治癒症例もあるわけですので、きちんとした症例報告ならば別に叩かれません。

「○○療法で治った」と書いたら、「本当に○○療法で治ったのか」と批判されるのは当然ですね。「○○療法を併用して治癒した症例を経験した」ならば、「そういう例もあるかもね」で済みます。まあ、○○療法関係ないだろ、と最初は信用されあにでしょうが。しかし、そういう症例を積み重ねることで、比較試験を行なう価値がありそうだということを示せます。

「有名な砲丸職人」については、カンの技能は真似できないとして、他の砲丸職人の作品と客観的に区別できないってことはないでしょう。「その人の技術が効く」のであれば、技能を真似できなくとも、客観的に区別できます。でも、インチキ医療は、客観的にプラセボと区別できません(もしくは区別する努力をしない、区別する必要性について理解できない)。インチキ医療と砲丸職人の技術を混同するのは、砲丸職人に失礼です。

メンチメンチ 2008/10/19 23:11 理論化されていない“職人の技術”とプラシーボ効果との質の違いっていうのは一般にはあまり知られていない事なのでしょうか…。

あと、“職人の技術”を理論化する試みは医療に限らず色々な分野で行われていますよ。
有名な所だと、ストラディバリウスは何故いい音色なのかについての研究とかあった気がします。

すみませんすみません 2008/10/20 00:16 お話の途中失礼しますが、医者がやぶかどうかとか、嘘をついているかどうかはどのように区別すればよいのでしょうか。

NATROMNATROM 2008/10/20 08:36 医学について知識がない人が、ある医師がヤブかどうかを100%区別するのは不可能です。医学的な知識あれば、あまりにも常識はずれなことを言っている医師についてはヤブであると判断できます。微妙なところを判断するのは、医師同士であっても専門外なら困難です。一般の人ならば、ごく基本的な医学的常識を身につけた上で、話をよく聞いてくれるとか、説明をきちんとしてくれるとか、そういうところで判断するしかないと思います。話を聞かない・説明しない名医もおりますが、率としては少ないでしょう。重大な病気であれば、セカンドオピニオンをとってください。

ふむふむふむふむ 2008/10/20 10:13 >他の砲丸職人の作品と客観的に区別できないってことはない

ということは、特定の人の治療暦をちゃんと追えば本物がいるかもしれませんね。でもそれだと大規模実験にならないから認められないか。

NATROMNATROM 2008/10/20 10:44 だから最初は症例報告でよいと何度も。「本物かもしれない」と言いはじめたら、オウムの麻原だって、シャクティパッドだって、「本物かもしれない」。自己責任で選択するのはご自由ですが、私はなら、エビデンスのない治療を選択するとしても、せめてこれまでの知見からありそうなものを選択しますが。たとえば、レイキなんかは既存の科学知識から考えるときわめてありそうもないものですから、私はインチキとみなします。

lilislilis 2008/10/20 12:55 正味の話さん、

その人の技術が効くかどうかということは、その人が手を出さない場合と比較しないとわかりませんよ。その砲丸の職人さんの技術が真似できるかどうかと、その人の砲丸が優れていることを知るすべは無関係です。
その人が作った砲丸と、それ以外の砲丸で比較テストすればいいだけの話です。

diamonds8888xdiamonds8888x 2008/10/21 06:13 鉄の塊が砲丸に変化したら、職人さんの手が加わったとしか考えられませんが、病気の人が健康になった場合は、必ずしも人の手が加わったことが主な原因ではない可能性も考えられます。砲丸の出来映えの大きな部分は職人さんの手と考えるのは妥当な推定ですが、病気治癒はそうとも言えません。

正味の話正味の話 2008/10/21 12:49 リリスさん。ダイヤモンドさん。だから最初は症例報告でいいそうですよ。

att460att460 2008/10/21 16:05 >だから最初は症例報告でいいそうですよ。

少なくとも、検証に耐えるだけのものは欲しいですね。検証に耐えられない体験談ばかり集めても、砂上の楼閣ですから。


おまけ

オッカムの剃刀 - Wikipedia
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%AA%E3%83%83%E3%82%AB%E3%83%A0%E3%81%AE%E5%89%83%E5%88%80

刃物で怪我をしないように。

のいのいのいのい 2008/10/24 17:23 エントリーの気功云々とは関係ないのですが、なかなかに芳ばしい香りを発するサイトを見つけてしまいましたので、ご紹介いたします。ひょっとして既出でしたらすいません。
http://www.nrt.ne.jp/top5.htm (自然医学総合研究所)
中身を見ると整体と千島学説の見事なコラボレーションといった感じです。

整体と遠赤外線治療や光線療法の組み合わせで癌や白血病(曰く白血病は癌ではないそうです)、てんかん、糖尿病、アトピーなどが治ったそうです。

いやー、すごいですね〜♪

むうむうむうむう 2008/10/25 13:44 エントリーの気功云々とは関係ないのですが、なかなかに芳ばしい香りを発するサイトを見つけてしまいましたので、ご紹介いたします。ひょっとして既出でしたらすいません。
http://gigazine.net/index.php?/news/comments/20081024_meiji_psychic/
いやー、すごいですね〜♪