NATROMの日記 RSSフィード

0000 | 01 | 02 | 03 | 04 |
0010 | 11 |
0011 | 01 | 02 | 03 | 04 | 05 | 06 | 07 | 08 | 11 |
0012 | 04 | 05 |
2004 | 07 | 08 | 09 | 10 | 11 | 12 |
2005 | 01 | 02 | 03 | 04 | 05 | 06 | 07 | 08 | 09 | 10 | 11 | 12 |
2006 | 01 | 02 | 03 | 04 | 05 | 06 | 07 | 08 | 09 | 10 | 11 | 12 |
2007 | 01 | 02 | 03 | 04 | 05 | 06 | 07 | 08 | 09 | 10 | 11 | 12 |
2008 | 01 | 02 | 03 | 04 | 05 | 06 | 07 | 08 | 09 | 10 | 11 | 12 |
2009 | 01 | 02 | 03 | 04 | 05 | 06 | 07 | 08 | 09 | 10 | 11 | 12 |
2010 | 01 | 02 | 03 | 04 | 05 | 06 | 07 | 08 | 09 | 10 | 11 | 12 |
2011 | 01 | 02 | 03 | 04 | 05 | 06 | 07 | 08 | 09 | 10 | 11 | 12 |
2012 | 01 | 02 | 03 | 04 | 05 |

2009-01-08 腹水穿刺後の死亡についての記事比較

[]腹水穿刺後の死亡についての記事比較 腹水穿刺後の死亡についての記事比較を含むブックマーク

35歳女性の肝硬変の患者さんが、腹水穿刺後に出血し、その後死亡したというニュース。まず、亡くなった方に哀悼の意を表します。現在のところ、ネット上では、朝日新聞社、MSN産経ニュース、神戸新聞が記事にしている。


■研修医、治療中に血管傷つけ患者死亡 兵庫・尼崎(朝日新聞)

 兵庫県尼崎市の尼崎医療生協病院は、20代の男性研修医が入院中の女性患者(当時35)の腹水を抜く際に針で血管を傷つけ、患者を死亡させたと8日発表した。同病院は「結果的に力が及ばずに極めて残念」とコメントし、遺族にも謝罪したという。

 同病院によると、患者は昨年11月27日に重度の肝硬変で入院。12月4日に主治医が立ち会って、腹部にたまった水を抜くために医療用針(外径1.7ミリ、長さ55ミリ)を腹部に刺した。1度目では水が抜けず、2度刺したという。ところがその日夜に腹部の皮下出血が確認された。その後、貧血が進み、6日から輸血したが、16日に出血性ショックで亡くなった。

■尼崎医療生協病院、医療過誤で女性死亡(MSN産経ニュース)

■腹水抜く出術後、患者死亡 尼崎医療生協病院(神戸新聞)*1



各社の記事を比較し、現在入手可能な情報から何が起こったのかを推測してみる。まず、3社共通の情報として以下があげられる。

  • 35歳女性の肝硬変患者に対して、主治医の立会いのもと、研修医が腹水を抜くために針を刺した。
  • 1度目の穿刺で水は抜けず、2回刺した。
  • 腹水穿刺を行った日の夜に皮下出血が確認された。その後、輸血を行った。
  • 穿刺の12日後に死亡した。死因は出血性ショックだった。
  • 病院側は遺族に謝罪した。

3社間の情報が異なる点で一番気になるのは、産経では『病院側は「血管を刺したことで出血が止まらず亡くなった」とミスを認め』とし、見出しにも「医療過誤で女性死亡」とある一方で、他の2社には病院側がミスを認めたという情報がないこと。朝日では、病院側のコメントとして「腹水を抜く方法、態勢に問題はなかった」と報道している。謝罪の理由は「結果的に力が及ばず」と読める。神戸新聞では、説明不足について謝罪したものの、「現時点で医療過誤とは判断していない」と院長は説明したとしている。

一般的に言えば、腹水穿刺そのものはそれほど難しくない。手術というよりも、「処置」「手技」である。腹水の量が少ないときは、誤って腹腔内臓器を傷つける可能性があるが、腹水が多量ならその心配はほとんどない。採血よりも簡単だ。研修医にさせることもよくある。概ね安全であるとされているが、進行した肝硬変の場合、血が止まりにくいので出血のリスクはある。ただし、皮下にある血管は見えないので避けて刺すことは不可能である。腹水穿刺の必要性については、腹水を認めたときには、診断的腹水穿刺を行うべきだとされている。神戸新聞の記事によれば、腹水穿刺の目的は細菌感染を疑い検査するためだったとのこと。直径1.7ミリの針*2(なぜか産経では1.2ミリとなっている)は、検査目的の腹水穿刺に使うにしては太いように思われる。しかし、腹水が粘調だと細い針では抜けない。最初に細い針で試みて、水が抜けなかったら太い針に代えて刺しなおすことはある。

腹水穿刺の手技自体にミスがあったと強いて考えるとしたら、出血傾向があるのにも関わらず最初から太い針を使った、というケースだろう。最初は細い針を使い、水が抜けないために太い針に代えて刺したのであれば、血管を傷つけたことそのものは、不可避な合併症であり、ミスではない。研修医がやろうが、ベテランがやろうが、運が悪ければ起こる。少なくとも、本症例では、「研修医にさせたせい」ではないと考える。皮下出血が確認された後の対応も、単に放置していたのか、あるいは圧迫止血などを試みたのかを知りたいところである。圧迫止血をしても、止まらないときは止まらない。輸血までして、12日後に死亡した死因が「出血性ショック」というのは、よく理解できない。経過をみると、穿刺部位からの出血はゆっくりだったと思われるからだ。

いずれにせよ、この研修医が不当に責められるようなことがないように願う。教訓としては、今後、腹水穿刺を行うときには、「死ぬこともあります」と十分な説明を行うこと。



追記(1月9日)

腹水穿刺の目的についても報道に乖離がある。

  • 「水を検査するため腹腔内に針を刺す手術を実施した」(神戸新聞)
  • 「2度目でおよそ1.5リットルの水を排出しました」(MBS近畿)*3

大雑把に腹水穿刺には診断目的と治療目的と二種類ある。診断目的だったら30ccもあれば十分だし、水が引けるなら細い針でもよい。治療目的であれば、ある程度は太い針が望ましい。

*1:「出術」は原文ママ

*2:調べてみたら直径1.7ミリは16〜17Gの針に相当するようだ。私は22G(だいたい0.8ミリ)か20G(だいたい1.0ミリ)をまず使うように習った。

*3:URL:http://headlines.yahoo.co.jp/videonews/mbs/20090109/20090109-00000005-mbs-loc_all.html

実弟実弟 2009/01/08 20:29 病院側と話た時ちゃんと医療ミスは認めているし、会見の内容が違います。証拠もあります。死亡後の処置もめちゃくちゃで遺体を家に運ばび寝かしていたら気付くと布団1面血の海でした。詳しくはmakimakiunco@ezweb.ne.jp

NATROMNATROM 2009/01/08 21:19 仮にご家族が「病院側はちゃんと医療ミスを認めた」と認識していたとして、病院側としては医療ミスを認めたつもりはなかったという可能性もあるのがやっかいなところです。ご家族は仕方が無いですが、マスコミはプロなんですから、医療過誤だと報道するのであれば、その根拠まできちんと報道して欲しいものです。

ssd666ssd666 2009/01/09 11:22 医療関係者としては、純粋に何が起きたのか知りたいという願望があります。

実弟実弟 2009/01/09 13:00 ミスを認めたテープレコーダーがあります。何が起きたのかは腹水を抜くのに失敗しその後も止血もしないまま安静にとゆう指示もないまま普通の入院生活で、深夜お腹が痛いとゆうと安定剤、痛み止めを一時間に三回投与し姉がトイレ行く時倒れて意識不明。以下省略。詳しくはメールください

NATROMNATROM 2009/01/09 13:12 手技そのもののミスは考えにくいというのはエントリーに書きました。腹水穿刺後の安静指示は、普通はあまりしません。報道されている経過からも、腹水穿刺終了時には出血はわからなかったものと思われます。問題があるとしたら、腹痛を訴えたときの対応でしょうね。

bamboobamboo 2009/01/09 15:18  私は毎日新聞と共同通信の記事を読んでブログを書きましたが、貧血のデータのことや輸血のことには触れていませんでしたので、穿刺当日にショックになり、その後亡くなったのかと思っていました。そのため、腹水を急激に抜いたためのショックが原因ではないかと想像しました。
 いくら出血傾向があるとはいえ、皮下出血で亡くなるものでしょうか。しかも輸血までしているのでしたら、皮下出血による出血性ショックでの死亡というのは疑問を感じます。死因は別にあるのではないでしょうか。
 ところで「実弟」さん、メアドが「巻き巻きウンコ」では、誰も真面目に問い合わせはしないと思いますよ。

ssd666ssd666 2009/01/09 15:28 実際のところ、主治医自身なぜお亡くなりになったのかわかっていないのではないでしょうか。
司法解剖、せめて病理解剖がなされていればわかったのかもしれませんが、単に時間的因果関係で、責任を認めるような発言をしたのなら、やはり真相は永遠に藪の中でしょう。

Med_LawMed_Law 2009/01/09 16:19 ありがちなのは、
診断されてなかったHCCの破裂→出血性ショック、急激な肝不全の進行→DIC→死亡

深夜の腹痛やショックによる気絶というのも完全合致
「実弟」さんが言われるような”痛み”なんて、腹腔穿刺じゃあありえません

山火事の現場検証で残ったタバコの吸い殻が原因と推定されていたが、実は山火事でタバコが燃えただけだった。。。。。これ位のオチを想像してしまいます

皮下出血は死亡原因ではなく、死亡原因から引き続いて起こった結果に過ぎない
因果の流れが逆になっていることを病院がもっともっと主張しないでどうする!?

実弟さんの証言が事実だとすると、ますます実弟さんの主張する『医療過誤』から遠ざかり、賠償請求もありえなくなることでしょう。

自己に不利な証言を行うことを自白といいますが、真実というのは時に残酷であり、病が残酷だったという結論を私は考えざるをえません

NATROMNATROM 2009/01/09 18:39 穿刺→皮下出血→出血性ショック→肝不全→12日後に死亡というストーリーはありうると思います。死因については、どの報道でも一貫していますので、死亡診断書に「出血性ショック」と書かれていた可能性は高いと思います(アの原因とか、経過に影響を及ぼした傷病名とかで)。そう考えると、皮下出血まではしょうがなくても、出血性ショックをどれだけ早く気づけるかという部分が争点でしょうか。腹水穿刺のときにも、ルート確保および頻回のバイタルチェックが必要な時代なのかもしれません。

JA50JA50 2009/01/09 21:34 家族ならば(本当に家族ならば)、そして本当に「真相を知りたい」と思っているのなら、カルテを公開すべきです。
病院にカルテ開示を請求し(もうしているのかな?)、それを公開するんです。
そうすれば、日本中の医者が検討してくれる。

もちろん、それで家族にとって「不都合な」真相が明らかになる可能性もあるけど、本当に「真相を知りたい」を言うのなら、公開したらどうでしょう?

まぁ、それだけの覚悟がある「遺族」ってのは、たぶんどこにもいないでしょう。
特に、「真相を知りたい」とか、マスコミに公言しているような「遺族」は。

ブーバーブーバー 2009/01/10 00:05 実弟さんへ
記事およびこのブログのやり取りを拝見いたしました。
お姉様のご冥福をお祈りいたします。
もしよろしければ、詳細をお伺いしたいのですが、掲載している実弟さんのアドレスに直接MAILしてよろしいでしょうか?

トラックバック - http://d.hatena.ne.jp/NATROM/20090108