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2009-02-03 同意書をとったことにした豪腕〜万波病腎移植
■[医学]同意書をとったことにした豪腕・万波病腎移植

宇和島徳洲会病院の万波誠医師が行った病腎移植の問題の一つに、文書化されたインフォームドコンセントを取ったか否かという点がある。ヒトを対象とする医学研究に関わる医師に対する指針を示す倫理的原則であるヘルシンキ宣言には、「医師は対象者の自由意志によるインフォームド・コンセントを、望ましくは文書で得なければならない。文書による同意を得ることができない場合には、その同意は正式な文書に記録され、証人によって証明されることを要する」とある*1。万波移植については、当初から、同意書をとっていないと報道されてきた。
同意書はとっていないけど、口頭で同意はとった
■生体腎移植、全82例で文書同意なし…宇和島徳洲会(読売新聞)
愛媛県宇和島市の宇和島徳洲会病院で行われた生体腎移植にからむ臓器売買事件で、移植手術を担当した泌尿器科部長の万波(まんなみ)誠医師(65)は2日、記者会見し、これまでに実施した82例の生体腎移植すべてで、臓器提供者や移植希望者への説明や同意を口頭だけで行い、文書による同意がないことを明らかにした。
臓器提供者や移植希望者が納得して手術を受けたかどうか、記録で検証できない状態。4日に83例目の生体腎移植手術が予定されており、文書での同意について問われた貞島博通院長は「早急に対応する。できない場合、手術の延期もあり得る」としたが、万波医師は「必要ない」と主張している。
万波医師が同意書をとっていなかったことは、万波医師側も否定していない。徳洲会グループのサイトでも、「今回の調査は、腎臓の摘出、移植について同意書がなかった*2」「同意書を取らないことについては『そういう習慣』*3」とある。万波支持者の言い分は、確かに同意書はとっていなかったが、口頭で十分に説明し、同意を得られれば文書は不要であるという主張である。「医師と患者の間に信頼関係があれば文書の取り交わしなど、どうでもよい*4」という声を徳洲新聞では紹介している。これはこれで一つの見識である。実験的医療を、文書化されたインフォームドコンセントなしで行うのは、ある意味、漢(おとこ)である。「有名なメイヨークリニックをはじめ、同意書に患者さんのサインを求めない病院は少なくない*5」という主張まであった。もしかしたら一般的な手術あればそうなのもかもしれないが、Mayo Clinicのページ*6によると、少なくともclinical trialのときは文書化されたインフォームドコンセントをとるとある。まともな医療機関で、実験的医療を行うときに、文書化されたインフォームドコンセントをとらないところはないと思う。なぜなら、レベルの高い雑誌に発表するには、倫理的にも高い水準をクリアする必要があるからだ。
論文では同意書をとったことになっている
そんなわけで、万波医師らの業績は、学会で口頭発表されても、論文にはならないか、なってもあまり良い雑誌には載らないだろうと考えていた。ところが、万波医師らの論文*7が、American Journal of Transplantationという良い雑誌(Impact Factor 6.423)に掲載されたので、とてもびっくりした。早速、読んでみたところ、さらに驚愕した。
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赤線は引用者による
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"In all recipients and doners, written consent forms with the patient signature of the operative procedure were obtained."「全てのレシピエントおよびドナーにおいて、手術方法に関して患者のサイン付きの同意書をとった」とある。いつのまにか、書面によるインフォームドコンセントをとったことになっていたのだ。同様の疑問をもった人もいたようだ→■病気腎移植ってそうだったっけ?(清水準一のWeb Site)。下手したら、虚偽記載である。
現場の看護師が同意書をとった
どういうことだったのか?「2007年9月に調査委員会の一員として選ばれ、詳細な資料を見る機会を得た」「片田舎の外科医」さんのコメント*8によると。
ちなみに、万波先生はご存じなかったようですが、実は現場の看護婦さんが、手術に関する承諾書をすべてのドナーさん、レシピエントさんから全例取り付けていることが分かりました。
とのこと。きっと、病腎移植のメリット・デメリットについて説明できるスーパーナースだったのだ、ではなく、手術を行う全例にルーチンで形式的に承諾書をとっていただけであろう。「海外では同意文書にサインを求めないことも少なくない。文書によるインフォームド・コンセントは形式的なものが多く、患者のためではない、医師の防衛のためだ」などと言っておきながら、論文には、形式的にとった承諾書を盾に「全例に書名付き同意書をとった」と書いたわけだ。まあそう書かないと論文が掲載されないわけで、私は呆れるよりかは、その「豪腕」に感心した。
なお、万波移植の問題点としては、書面同意の有無よりも、不必要な腎臓摘出を行ったこと、説明が不十分であったことが重要だと私は考える。B型肝炎についての知識に乏しく、レシピエントに感染させたことも問題だ。万波医師が行った移植と、病腎移植移植の是非は、独立した問題であることも再確認しておきたい。
関連記事
*2:URL:http://www.tokushukai.jp/media/rt/548.html
*3:URL:http://www.tokushukai.jp/media/rt/550.html
*4:URL:http://www.tokushukai.jp/media/rt/546.html
*5:URL:http://www.tokushukai.jp/media/shinbun567.html
*6:URL:http://clinicaltrials.mayo.edu/faq.cfm
*7:Mannami M et al., Last resort for renal transplant recipients, 'restored kidneys' from living donors/patients., Am J Transplant. 8(4):811-8(2008)
*8:URL:http://community.m3.com/doctor/showMessageDetail.do?boardId=3&messageId=1049104&messageRecommendationMessageId=1049104&topicListBoardTopicId=106178











せっかくですので、アピール度が高いほうが良いのではないでしょうか?
chirin2さんへ。後ろから勤務医を撃つような病院幹部のいる一方で、「勤務医を見捨てない」という意味では、徳洲会は信用できるとも言えます。この点においては感心しています。組織防衛の一面もあるのでしょうが。
万波医師らの病腎移植の手順において、日本の学会側が問題あり
と指摘した事柄には、NARTOMさんがこのブログで取り上げられた
書面によるインフォームドコンセントの件だけではなく、
倫理委員会や院内審査委員会(Internal Review Boards)での承諾
を行っていなかったということもあります。
下の読売新聞の報道が正しいとすれば(1)、万波医師らが病気腎移植を
行っている頃には、すでに市立宇和島病院には倫理委員会があり
ましたが、万波医師らの論文ではNARTOMさんがこのブログで取り上げた
論文の引用部分にもありますが、行わなかった理由については誤魔化して
書いてあります。
この倫理委員会や院内審査委員会での承諾ですが、海外のまともな医療機関
では、医療行為を行ってからしばらく経った後の患者さんの経過を論文
として発表する場合でさえ、倫理委員会や院内審査委員会での承諾を行う
必要があるようです(たとえば、下のMayo clinicのグループの論文(2)にも、
承諾を受けた後に再調査したとあります)。
(1) URL: http://osaka.yomiuri.co.jp/tokusyu/jinzo/tj70319b.htm
(2) URL: http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/18076931
「野戦病院」の研究室ブログ(有名)でも
http://blog.m3.com/LFH/20070610/2
>日本では、検査の説明や手術の説明は、担当医がします。ところが、ここでは、何と、インフォームドコンセント専門のムンテラ係りのおばさんがいて、書類にサインをもらってくれるのです。
>ドクターは、ほとんど説明しないのです。
だそうで。これはまだましな方で
http://nnariai.cocolog-nifty.com/blog/2007/04/post_e46a.html
とか
http://www.keicho.com/washington/200211.html
>こんなことがあったので、日本も見習うべきだと思っていたアメリカの「インフォームド・コンセント」に対する僕の印象はかなり変わりました。まず、あれは治療前の単なる儀式になってしまっているのではないか。その証拠に、あの歯医者さんでは、書類を渡されてサインしてくれと言われただけで、医師からの説明は全くなかった。
・・・など。
まあピンきりなんでしょうね。だからこそガイドラインを通じてクォリティをコントロールすることが現実問題として必要とされると。
オフトピ失礼いたしました。
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20090211-00000507-san-soci
徳州会の病腎移植が再開されるそうで。これまでの問題点がきちんとクリアーされた上での実施検討に期待します。
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米国の医療現場で発達していそうで、日本よりも遅れているものは「ムンテラ」だと思います。インフォームド・コンセントとは格好いい言葉ですが、これ自体は医療訴訟の対策にしか過ぎないと感じているわけです。
もちろんインフォームド・コンセントには深い意味があります。
その言葉の本来の意味通りに患者に「インフォームド・コンセント」を取っていれば問題ないはずなのですが、実際の医療現場においてはその言葉の使われ方と本来の意味に大きなdiscrepancyがあるように思えて仕方ないのです。
Mundtherapieというドイツ語が語源の「ムンテラ」。
日本のお医者さんは患者さんとその家族によく病状を説明していると思います。
実際に、個室に患者やその家族を招き、レントゲン写真などを掲げ説明している姿はごく当たり前の事だと思います。
米国の病院でこのような「ムンテラ」はほとんど見た事がありません。
患者にレントゲン写真を見せるという文化がないのです。
(そもそも読影自体が放射線診断医に依存しているので患者やその家族に解説できない医者も多いのではないだろうか?)
多くの患者がワケわからないまま入院し、ワケわからない投薬や検査をされ、ワケわからないうちに退院させられる、、、
検査や必要な手技のうち、リスクを伴う場合は患者のサインが必要だから「インフォームド・コンセント」を取ってきて、といわれる始末。この時以外はほとんどお話していないインターン・レジデントもいます。
患者や患者の家族に「ムンテラ」する事に慣れていないので、話をしなければならない時に専門用語を頻用してしまい、理解できない患者やその家族をますます混乱させている医師も残念ながら多く見かけます。
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米国の医療現場で発達していそうで、日本よりも遅れているものは「ムンテラ」だと思います。インフォームド・コンセントとは格好いい言葉ですが、これ自体は医療訴訟の対策にしか過ぎないと感じているわけです。
もちろんインフォームド・コンセントには深い意味があります。
その言葉の本来の意味通りに患者に「インフォームド・コンセント」を取っていれば問題ないはずなのですが、実際の医療現場においてはその言葉の使われ方と本来の意味に大きなdiscrepancyがあるように思えて仕方ないのです。
Mundtherapieというドイツ語が語源の「ムンテラ」。
日本のお医者さんは患者さんとその家族によく病状を説明していると思います。
実際に、個室に患者やその家族を招き、レントゲン写真などを掲げ説明している姿はごく当たり前の事だと思います。
米国の病院でこのような「ムンテラ」はほとんど見た事がありません。
患者にレントゲン写真を見せるという文化がないのです。
(そもそも読影自体が放射線診断医に依存しているので患者やその家族に解説できない医者も多いのではないだろうか?)
多くの患者がワケわからないまま入院し、ワケわからない投薬や検査をされ、ワケわからないうちに退院させられる、、、
検査や必要な手技のうち、リスクを伴う場合は患者のサインが必要だから「インフォームド・コンセント」を取ってきて、といわれる始末。この時以外はほとんどお話していないインターン・レジデントもいます。
患者や患者の家族に「ムンテラ」する事に慣れていないので、話をしなければならない時に専門用語を頻用してしまい、理解できない患者やその家族をますます混乱させている医師も残念ながら多く見かけます。
腎移植や肝移植についてブログをリサーチしていたところ、貴サイトへたどり着きました。
臓器移植に関して様々なブログを読み歩いて勉強をしています。
助かる命がそこにあるのなら、少しでもお役に立ちたいと日々考えています。
こちらのサイトにありました意見や情報は色々参考になりました。
ありがとうございました。