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cover ■「ニセ医学」に騙されないために

 ホメオパシー、デトックス、千島学説、血液型ダイエット、ワクチン有害論、酵素栄養学、オーリングテストなどなど、「ニセ医学」についての本を書きました。あらかじめニセ医学の手口を知ることで被害防止を。

2009-02-14 頚性神経筋症候群(Cervical Neuro Muscular Syndrome)

[]頚性神経筋症候群(Cervical Neuro Muscular Syndrome) 頚性神経筋症候群(Cervical Neuro Muscular Syndrome)を含むブックマーク

■医療とは病気を治すアイデア商品である!*1(IGC健康情報)というサイトを通じて、頚性神経筋症候群(CNMS:Cervical Neuro Muscular Syndrome)という耳慣れない病名を知った。このサイトの主張を要約すると、


  • 頭痛と吐き気、めまいなどの症状のため病院に受診すると、「うつ」による自律神経失調症と診断され、精神安定剤と抗うつ薬を処方された。
  • 一時的に症状は改善したものの、薬が効かなくなってきた。病院を変えても、「うつ」、「パニック障害」、「統合失調症」として対症療法をされるだけである。
  • 東京脳神経センターの松井孝嘉博士が、首の後ろにある筋肉の異常によって引き起こされる「頚性神経筋症候群(CNMS)」という病気を発見した。
  • 頚性神経筋症候群は、自律神経失調症、うつ、慢性疲労症候群、めまい、頭痛、パニック障害、ストレス障害、更年期障害を引き起こす。
  • 数多くのドクターショッピングや自己流の医学的な勉強をしていくうちに、自分の症状は「頚性神経筋症候群(CNMS)」であるという確信を得た。
  • 約半年待ちの予約の末、東京脳神経センターの診察を受け、頚性神経筋症候群と診断された。通院治療によって症状は軽減している。

というものである。なるほど、「今までの精神医学の根底を覆すような理論」である。興味深いので、文献がないか調べてみた。日本語の医学論文データベースである医中誌では、「頚性神経筋症候群」は0件。「頸性神経筋症候群」だと2件であった。2件のいずれも学会発表の抄録である。Pubmedで"Cervical Neuro Muscular Syndrome""Cervical Neuromuscular Syndrome"はいずれも"Quoted phrase not found."であった。要するに頚性神経筋症候群について、まともな医学論文は存在しない。東京脳神経センターのサイトも見てみた。別に公的な病院ではないようだ。サイトでは、慢性疲労症候群、ムチウチ症などが治ると主張されている*2


 頭痛・メマイ・ムチウチ症・自律神経失調症・ストレス症候群・うつ状態・慢性疲労症候群・難治更年期障害など、これからの病気の大部分が同じ病気であり、つまり頚部後筋群の異常から起こっていることを松井博士が発見した。

  これまではこれからの病気は薬で一時おさえの治療しかできなかったが、大部分の患者さんが完治することが分かってきた。指示通りに治療を受けた場合は改善率約95%、治癒率約70%である。


「改善率約95%、治癒率約70%」とはなかなか凄い数字であるが、残念ながら出典は書かれていない。改善率を95%としているところは巧妙である。改善しなくても、あなたは5%に入ったのだと言えばいい。医学論文はないけれども、マスコミには多く紹介されている*3


2009年2月5日 「東京スポーツ」

「首のコリ 万病の元」 慢性的なめまい、微熱、うつを発症

2009年2月号 「はつらつ元気」(芸文社

うつ、めまい、更年期ほてり、不眠が根治する「首のこりほぐし」

2009年1月27日 「北海道新聞」(生活欄)

「首の凝りは病気のもと」頭痛や原因不明の微熱・手足の冷え…

2009年1月20日 「愛媛新聞」(生活欄)

「首の凝り 病気のもと」頚性神経筋症候群 診断・治療法を開発

2009年1月16日 「日刊ゲンダイ」

「自律神経失調症が90%以上治る」

2009年1月14日 「埼玉新聞」(健康欄)

「首の凝りは病気のもと 頚性神経筋症候群を提唱」

2009年1月14日 「サンケイ エクスプレス」(健康欄)

「首の凝り」がさまざまな病気を引き起こす

2009年1月13日 「西日本新聞」(健康欄)

「首の凝りは病気のもと 頚性神経筋症候群を提唱」

(後略)


医学論文を書く暇はないけれども、マスコミの取材を受ける余裕はあるようだ。実際には、論文に書けるような医学的根拠がないというところだろう。マスコミや素人を相手にするなら騙せるが、専門家を騙すことはできない。「頚性神経筋症候群」の症状は、安静にて改善しうる。あるいは、「病名」が付くことで不安が取れるという効果もあるのだろう。不定愁訴を訴えるが諸検査で異常の見つからない患者さんに対して、普通の医療機関でなかなか満足してもらえる対応をするのが難しい場合もあるので、自己責任でこういう病院にかかれる選択肢はあってもいいか。ただ、


当センターは保険診療(保険証)で行っています。

頚性神経筋症候群の診断・治療も、もちろん保険診療ですから、

お気軽にご相談、ご予約ください。


と明示しているのはどうなの?アウトじゃないの?(適当な保険病名をつけているんだろうけど)



関連記事

■日本新型ウツ病学会(松井孝嘉学会理事長)が提唱する「頸筋症うつ」

*1:URL:http://www.idea-goods-club.com/health/info-1.html

*2:URL:http://www.tokyo-neurological-center.com/topics/index.html

*3:URL:http://www.tokyo-neurological-center.com/publication/index.html

匿名希望匿名希望 2009/02/14 20:40 「社会保険診療報酬支払基金法」違反ですかね


保医発第0 3 2 8 0 0 2 号「診療報酬請求書等の記載要領等について」から

「療養の給付、老人医療及び公費負担医療に関する費用の請求に関する省令(昭和
51年厚生省令第36号)」の第三条第一項及び附則第四条第二項の規定に基づき、
光ディスク等を用いた費用の請求に関して厚生労働大臣が定める方式及び規格並びに
電子情報処理組織の使用による費用の請求に関して厚生労働大臣が定める事項及び
方式



別添資料3に規定された病名
「診療報酬情報提供サービス」サイトの資料
http://202.214.127.149/spec/20bt3_b_code.pdf

にはないみたいですが

totsuantotsuan 2009/02/14 23:04 「頚性神経筋症候群」なる疾患概念は以前もどこかで聞いた記憶があります。紹介されていたサイトを確認しましたが、疾患概念における”着目点”については必ずしも間違ってはいないと思います。実際、うつ症状を呈している人に自覚していない肩こりを認めたりしますし、よく落ち込んでいる人の肩を後ろから揉んで「リラックス、リラックス♪」と慰めるシーンは、まさしくその人達が潜在的に関連性を知っているからではないかと思うのです。
ただ、これらはあくまでタイトル通りに「症候群」として緩やかにまとめられるべきで、「病気の発見」というほど仰々しいものでは無い様(※同サイトでは偉く祭り上げておられるようですが)に思いました。しかも、肩こりと気分変調のどちらが先かはまだ確証もない上に、CT/MRIで見つかるような異常が実際に見えるわけでもない(※と予想)のにやたら画像検査の充実ぶりを見せ付けているのが何とも。「頚筋」という表現もちょっと素人臭いですしね。更に、実際の治療内容についても殆ど記載されていないのは、エキセントリックな謳い文句を宣伝とする一方でこの疾患概念を広く普及させるつもりがないことを示しているように思われます。研究に必要な貴重な症例を取られたくないからでしょうか?
こういった症状に悩まされる患者さんは必ず一定数いる一方で、診療に比較的時間がかかる・生命への危険を来たす疾患へつながるリスクが少ないなどの点においては、隙間産業的に良いポジションを見つけたのだろうと思います。最悪、従来通りの治療をしておけば問題ないし、仮に適当な保険病名で治療していたとしても、実際の診療においてもやむなく別の保険病名を使って治療している内情がある事を知っている人達はストレートに糾弾しづらいでしょうし。まぁそれでも論文発表を行っていないとはいえ、2回学会発表しているという点では某なんちゃらパシーよりはまだはるかにましかもしれませんね。ある疾患群の患者さん達に接した際に一般には知られていない特徴を感じ取る経験というのはどの医療従事者にもあるはずです。ただ、それらについて論文にする程の価値があるかどうかは本人のみぞ知る部分でしょうし、もしかすると執筆中なのかもしれません。今回のテーマにおいては、個々の症例における過去の診断の妥当性や診断された疾患概念の定義まで再検証する必要があることを考えると、単に症例報告として論文にする事は出来ても、そこから先は難しいかもしれません。
いずれにせよ、もうちょっと控えめに宣伝しておけばまだそこまで打たれずに済んだのかもしれませんねぇ。
コメント欄汚しで失礼致しました。

shin-naishin-nai 2009/02/15 09:07 昨年の自律神経学会で発表されていました。演題の中で提示されていた症例の印象は
「うつ病の診断でなぜいけない? 治療までいっしょなのに…」でした。
Barre-Lieou症候群という概念も以前からありますが、1万歩譲っても
>ただ、これらはあくまでタイトル通りに「症候群」として緩やかにまとめられるべきで、「病気の発見」というほど仰々しいものでは無い
に同意です。ただ上に書いたように、
>単に症例報告として論文にする事は出来ても
これは困難だと考えます。査読を通るとは思えません。だから、
>要するに頚性神経筋症候群について、まともな医学論文は存在しない。
のだと思います。
ちなみに、後輩と一緒に聞いてたのですが、反面教師としては指導に役に立ちましたね

totsuantotsuan 2009/02/15 10:12 >shin-naiさん
お返事コメント有難うございます。当方は自律神経学会に参加していないのですが、そもそもこれらの症例群をどこの学会で報告するか(=どの分野の症候群と捉えるべきか)で聴衆の反応がもうちょっと変わっていたのではないかと考えます。先のコメントでも述べましたが、「頚筋」の異常と気分変調の関係性次第では整形外科や疼痛関連分野の学会での発表も可能だったのではないかと推測します。つまり、「頚筋」の過緊張による慢性痛の発生が気分変調や精神症状を来たすという仮説に基づく症例報告になりますが。残念ながら直接発表を聞いたうえでの意見ではないのでshin-naiさんが持った印象と著しく異なっていると思いますが、治療法が従来の精神疾患と同一だったのであれば、わざわざ別分類にして取り上げたメリットはないでしょうね。別角度からのアプローチということで「頚筋」の過緊張やしこりを治療する目的でトリガーポイントブロックなどを併用されていたのであれば、もう少し系統立てた説明で聴衆や査読者を納得させることができたかもしれませんね、というかそれこそ”Barre-Lieou症候群扱い”になるんでしょうけど。

shin-naishin-nai 2009/02/16 23:02 totsuan さま
>疼痛関連分野の学会での発表も可能だったのではないかと推測します
そうですね。それならばあり得ると思います。
>別角度からのアプローチということで「頚筋」の過緊張やしこりを治療する目的でトリガーポイントブロックなどを併用されていたのであれば
こうだったような記憶は無いのですが、
Barre-Lieou症候群との異同を含め、別視点での分類や症例の選択ができれば論文にする余地はあるかもしれません。
繊維筋痛症のように存在するか否かまで含めて議論されるものもありますので。

catsnratscatsnrats 2009/02/18 23:02 こういう概念は私の中にもあります。デパス著効例が多い。あと、症状が耳鳴の人もいた。でもデータを取ってはいないから、私の中だけであり、それはそれで怠慢だと思っています。結果だけみたら、このインチキくさい宣伝が救う人のほうが多いかもしれない…

tositosi 2009/07/24 22:42 第12回日本病院脳紳外科学会 2009年7月18日(土)・ 19日(日)
ホテルニューオータニ大阪

特別講演 7月18日(土)
「医学の盲点 頚筋の重要性―頚性神経筋症候群―」
日本脳神経研究所・松井病院 理事長・院長 松井 孝嘉
http://jansc12.jtbcom.co.jp/program.html
この講演の情報求む!

qq 2010/03/09 17:26 U all R
wasting time
just claiming nothing valuable :) U've done what?

tadano--rytadano--ry 2012/02/24 20:49 論文が1件だけヒット

Treatment for Depression with Chronic Neck Pain Completely Cured in 94.2% of Patients Following Neck Muscle Treatment

http://www.scirp.org/Journal/PaperInformation.aspx?paperID=5500

1. Two types of special low-frequency therapy equip-ment were used
1) Trimix Linus TM-5502 low-frequency SSP therapy equipment from Nihon Medix Co., Ltd., and
2) Topra LCA-204 W.E.S low-frequency therapy equipment from Celcom Medico, Inc.
2. Far-infrared radiation
Therapia 3300 infrared therapeutic device from Nihon Medix Co., Ltd.
3. Acupuncture
Nobel Pulse RP-4 electric acupuncture device from Riken Iryo Denki,
4. Drug therapy
Fursultiamine (50 mg/day), thiamine disulfide (100 m/day), pyridoxine hydrochloride (10 mg/day), and cyanocobalamin (1,000 g/day) were used.

ふむふむ。ビタミンB12を1日「1000g」投与するそうで…。まあ間違いでしょうが、これを指摘できないなんて雑誌の質の低さが分かろうものです。

で、7ページに及ぶ論文の結論は

3. Results
Of the 138 patients treated at our hospital for neck mus-cle disorders between January 6, 2006 and August 4, 2008, 130 were cured, with a cure rate of 94.2%. Three typical cases are described.

いやあ、むしろ清々しい。ただ「治った。」だけ。