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cover ■「ニセ医学」に騙されないために

 ホメオパシー、デトックス、千島学説、血液型ダイエット、ワクチン有害論、酵素栄養学、オーリングテストなどなど、「ニセ医学」についての本を書きました。あらかじめニセ医学の手口を知ることで被害防止を。

2009-02-24 衛生仮説〜不潔な環境がアレルギー性疾患を予防する

[]衛生仮説〜不潔な環境がアレルギー性疾患を予防する 衛生仮説〜不潔な環境がアレルギー性疾患を予防するを含むブックマーク

先進諸国において、気管支喘息や花粉症などのアレルギー性疾患が増えているのは、まぎれもない事実である。アレルギー疾患の発症そのものに遺伝的な要因が関与しているのは確かだが、疾患の「増加」については、遺伝では説明できない。複合的な環境要因が関与していると思われるが、衛生仮説といって、「環境が衛生的になり子供のころに感染する機会が減ったことがアレルギー性疾患の増加の原因である」という学説がある。以下で紹介する子供を花粉症にしないための方策は、衛生仮説に基づく。


■子どもを花粉症にしないための9か条(医療介護CBニュース)

2月23日に横浜市の理研横浜研究所で報道関係者を対象に開かれた「製薬協プレスツアー」(主催=日本製薬工業協会)で、谷口センター長は「スギ花粉症ワクチン開発」と題して講演。この中で、▽生後早期にBCGを接種させる▽幼児期からヨーグルトなど乳酸菌飲食物を摂取させる▽小児期にはなるべく抗生物質を使わない▽猫、犬を家の中で飼育する▽早期に託児所などに預け、細菌感染の機会を増やす▽適度に不衛生な環境を維持する▽狭い家で、子だくさんの状態で育てる▽農家で育てる▽手や顔を洗う回数を少なくする―の9か条を紹介した。


衛生仮説そのものは、記事でも紹介されているように多くの状況証拠によって支えられており、「ほとんど確か」と言っていいレベルである。それはそれとして、具体的な方策が有効かどうかはまた別の話。生後早期のBCGを接種については、定まった評価はないようだ。堀口茂俊*1によれば、

ヒトでの幼少期のBCGワクチンがその後のアレルギー疾患の発症を予防するかどうかについては報告が少なく、また意見も割れている。

とある。「生後早期にBCGを接種させる」ことを挙げた理由には、開発しているスギ花粉症ワクチンと関連するからであろう。同じく堀口によれば、


 以上の結果をふまえて理化学研究所と千葉大学免疫学教室ではBCG接種と血清IgE変動について小規模臨床試験を行った。スギ花粉症ボランティア6名に対し、乾燥BCGワクチンを初回40mg/mL、2回目以降8mg/mLの濃度で3か月ごとに皮下注射した。血清IgE値、スギ特異的IgE値をモニターしたところ、いずれの患者からも2回目接種以降に血清総IgE値あるいはスギ特異的IgE値の低下をみた。

 そこで、BCG接種が花粉症に効果があるかどうか、大規模検証に入った。千葉大学免疫学講座と理化学研究所、および私たち千葉大学耳鼻咽喉科で1年間150名規模のプラセボ対照ランダム化試験を2004年度から2年間行っている。現在臨床症状および資料の解析の集計を行っている最中であり、結論が待たれる。


理化学研究所がBCG接種と花粉症の臨床試験に関与しているんだね。プラセボ対照ランダム化試験の結果は、探したけれど見つからなかった。個人的には、小児のアレルギー性疾患の予防と、成人になって発症したアレルギーの制御は異なり、BCG接種でそう簡単に花粉症が治るとは思えない。「農家で育てる」のが9カ条の一つに入っているのは、農家で育てたらアレルギー性疾患が減るという疫学調査によるのだろうけど、Riedlerら*2によると、その効果は1歳以下のときの暴露に限られるようだし。ただ、BCG接種が大人の花粉症に効くかどうかは、やってみないとわからないので、早いとこ結果を発表して欲しい。

「幼児期からヨーグルトなど乳酸菌飲食物を摂取させる」については、それほど荒唐無稽な話ではなく、いくつか効果があったとする無作為対照試験があり*3、「あまり意味ない」とは一概に言えない。「小児期にはなるべく抗生物質を使わない」は、花粉症のなりやすさとは無関係にその通り。ただし、必要なときは使うべきであるのは言うまでもない。

「猫、犬を家の中で飼育する」「早期に託児所などに預け、細菌感染の機会を増やす」「適度に不衛生な環境を維持する」「狭い家で、子だくさんの状態で育てる」は、そういう疫学調査があるのは確か。介入試験があるかどうかは知らない。「手や顔を洗う回数を少なくする」というのは、わからない。個人的には、手洗いはしたほうがよいと思う。現実的には、「過度に衛生的にならないよう、ほどほどに」というところに落ち着くだろう。



関連記事

■衛生仮説はガセネタではない

■トンデモに効くクスリ

*1:堀口茂俊(千葉大学 医学部耳鼻咽喉科・頭頸部外科)、【花粉症 根本的治療への期待】 花粉症へのBCGワクチン療法、治療学(0386-8109)41巻1号 Page37-39(2007.01)

*2:Riedler et.al, Exposure to farming in early life and development of asthma and allergy: a cross-sectional survey. Lancet. 2002 Feb 16;359(9306):623-4.

*3:Kalliomaki et.al. Probiotics in primary prevention of atopic disease: a randomised placebo-controlled trial. Lancet. 2001 Apr 7;357(9262):1076-9. あるいはMarschan et.al. Probiotics in infancy induce protective immune profiles that are characteristic for chronic low-grade inflammation. Clin Exp Allergy. 2008 Apr;38(4):611-8 サマリーしか読んでいません

luke_randomwalkerluke_randomwalker 2009/02/24 13:57 寄生虫の減少とアトピーや花粉症の増加の関係を主張していた人もいたような。

930.jp930.jp 2009/02/24 15:09 >感想BCGワクチンを初回40mg

乾燥BCGワクチンの誤変換ではありませんでしょうか?

NATROMNATROM 2009/02/24 15:33 訂正しました。ご指摘ありがとうございました。>乾燥BCG

e10goe10go 2009/02/24 17:13 >個人的には、手洗いはしたほうがよいと思う。現実的には、「過度に衛生的にならないよう、ほどほどに」というところに落ち着くだろう。

これは賛成。ただし、手洗いに薬用石鹸は使わない方がいいと思う。

lets_skepticlets_skeptic 2009/02/24 17:21  疫学調査の結果は、小児の時に適度に不衛生な環境であれば、「大人になってからも」花粉症にかかりにくいということなのでしょうか?(そういうことだと理解しているのですが)
 いやぁ、私はそれなりに不潔な環境だったと思うのですが花粉症なもので、確率的に必ず生じる当てはまらなかった例なのか、大人になってからはまた別の話なのかが気になりまして。

青島青島 2009/02/24 18:27 農家で育てるというのは、単に、土をさわって、そこから乳酸菌がということでしょうね。別に、井戸水を飲むでもいいです。体内が殺菌された環境は、人間の身体を維持することに対して不自然すぎるわけです。母乳で育てると丈夫になるのは、母乳の栄養成分ではありません。乳首には雑菌があるわけです。だいたい、アダルトビデオとかご覧になったことはないのですか。あそこにでている人たちは、ほとんどが健康です。身体を舐めあっていたりするわけでしょ。それも、不潔といわれるところも。ただ、天才になりたい人は、徹底的に清潔にするのも手でしょうね。映画「アビエータ」が参考になります。手から出血するまで石鹸でごしごしするし。ただ、生活習慣を医学的に証明するなんて、西洋医学では不可能です。病気でないことは学問にならないからです。なるとしたら、医学ではない別の学問です。

KosukeKosuke 2009/02/24 20:11 考えてみれば、どんだけ神経質になろうが、大腸の中は大腸菌で一杯なわけで。あれらは抗体形成には役に立たないんですかね?

wadjawadja 2009/02/25 00:12 これこれ。母乳には、ちゃんと抗体が含まれてますよ。
http://www.crn.or.jp/LIBRARY/KOBY/MIRAI/cbs0122.html
大体、授乳する時には乳首の周りを消毒することは、一般的にに行われていることだと思いますが。

そうか、wadjaが未だ花粉症に悩まずにすむのは、幼少のころ不潔だったからか。妙になとくできますなw。

びじうびじう 2009/02/25 05:52 皆さんの疑問への答えになると良いのですが、参考までに。

衛生仮説は原理的にはリンパ球(免疫を担当する細胞)の系統分化とHomeostatic expansion(恒常性維持のための増殖)という話しだと考えられます。
細菌感染と戦うリンパ球(Th1)とアレルギーの原因になるリンパ球(Th2)は別系統で、どちらも余剰スペースがあると増殖します。Th1が刺激を受けない(細菌感染しない)状態だとTh1の増殖が弱くなり、その分だけTh2が増殖する余地ができる、というわけです。
実際にはTh17とかThfとか様々な系統があり(現在も新しい系統が発見され続けている)必ずしもTh2が圧倒的に優位になるというわけではありませんし、Th2が優位になったとしてもアレルギーが発症するとは限りません(Th2の中でもスギ花粉を記憶しているメモリー細胞が特に増殖しやすい条件というのもあるでしょう)。
大抵の大人の場合には、リンパ球の増殖の余地が少ない(勢力図が出来上がっている)ので、違う話になるわけです。

 もちろん、こういう理屈をすべて見て確かめた人はいないわけですが。

三国志の地図とかに例えるとわかりやすいかも?
 清潔な環境で花粉症になったって言うのは、周囲に敵がいない土地の統治を任せといたら勝手に空き地に進軍した武将が軍備して反乱した、みたいな状況です・・・って、逆にわかりにくいか。

NATROMNATROM 2009/02/25 17:13 lets_skepticさん
>疫学調査の結果は、小児の時に適度に不衛生な環境であれば、「大人になってからも」花粉症にかかりにくいということなのでしょうか?(そういうことだと理解しているのですが)

「大人になってから」のアレルギー性疾患発症を直接観察した疫学調査は少ないと思います。長期の観察を要する or 昔の生育環境を調査するとなると不正確になる、という理由からでしょう。「農家で育てる(Riedler et.al,)」については、6歳〜13歳の小児が対象です。「幼児期からヨーグルトなど乳酸菌飲食物を摂取させる(Marschan et.al)」については、2歳の時点でのアレルギー性疾患の発症を見ています。


Kosukeさん
>考えてみれば、どんだけ神経質になろうが、大腸の中は大腸菌で一杯なわけで。あれらは抗体形成には役に立たないんですかね?

「腸内細菌叢がアレルギー性疾患の発症/防御に関与している」という主張もあるようです。乳児の便中の細菌を調べておいて、前向き調査をしたところ、アトピー性皮膚炎になった乳児と健康な乳児では差があったとのこと(Björkstén B et.al., Allergy development and the intestinal microflora during the first year of life., J Allergy Clin Immunol. 2001 Oct;108(4):516-20.)。

att460att460 2009/02/25 23:28 枝葉の話ですが、腸内細菌に大腸菌の占める割合は、ほんの僅かです。私が解説しようとすると、勉強不足がばれるので下記をどうぞ。

腸内細菌科 - Wikipedia
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E8%85%B8%E5%86%85%E7%B4%B0%E8%8F%8C%E7%A7%91

バクテロイデス門 - Wikipedia
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%90%E3%82%AF%E3%83%86%E3%83%AD%E3%82%A4%E3%83%87%E3%82%B9%E9%96%80

リンゴ摂取による血液中の中性脂肪減少、ビタミンC増加、腸内細菌叢改善
http://www.nfri.affrc.go.jp/research/seika/seikah13/18.html


腸内細菌等と免疫の関係とか、表題の話とかを聞くと、化学物質がアレルギーの原因だと騒いでいる方々でなく、地道に研究を積み重ねてきた方々のほうが成果を上げているようで。

touhou_huhaitouhou_huhai 2009/03/07 15:43 >アレルギー疾患の発症そのものに遺伝的な要因が関与しているのは確かだが、疾患の「増加」については、遺伝では説明できない。

とあるのは、国内で遺伝的にアレルギー素因を持った人の数について推移をみる統計があり、それが大きな変化をしていないという意味でしょうか。

>先進諸国において、気管支喘息や花粉症などのアレルギー性疾患が増えているのは、まぎれもない事実である。

と先進諸国に対象を限定したのは、単に先進諸国については確かな患者数の推移データが手元にあるという意味なのか、それとも先進諸国と発展途上国の衛生状態の改善の進ちょく、および患者数(割合)の推移をみた場合に、より衛生状態が早く改善した先進諸国で急速に患者が増加していることを意味ているのでしょうか。
その場合、例えばアフリカ諸国などのぜんそく患者の統計データなどはまだまだ十分といえないようですが、具体的な比較対象はどことどこになるのでしょうか。

touhou_huhaitouhou_huhai 2009/03/07 20:21 もう一点、Th1細胞が優位だと、リウマチや乾癬(身内がかかってます)などの自己免疫疾患になる恐れがある、という主張があるようですが(そうではないという説もある)、アレルギー性疾患とこれらの自己免疫疾患に目立った相関はあるのでしょうか?

NATROMNATROM 2009/03/07 22:56 >>アレルギー疾患の発症そのものに遺伝的な要因が関与しているのは確かだが、疾患の「増加」については、遺伝では説明できない。
>とあるのは、国内で遺伝的にアレルギー素因を持った人の数について推移をみる統計があり、それが大きな変化をしていないという意味でしょうか。

いいえ。数十年のスパンでは日本人集団の遺伝子頻度はほとんど変化しないという意味です。


>先進諸国に対象を限定したのは、単に先進諸国については確かな患者数の推移データが手元にあるという意味なのか、それとも先進諸国と発展途上国の衛生状態の改善の進ちょく、および患者数(割合)の推移をみた場合に、より衛生状態が早く改善した先進諸国で急速に患者が増加していることを意味ているのでしょうか。

先進諸国については確かな患者数の推移データが手元にあるという意味ですが、東西ドイツの比較ならあります。


>Th1細胞が優位だと、リウマチや乾癬(身内がかかってます)などの自己免疫疾患になる恐れがある、という主張があるようですが(そうではないという説もある)、アレルギー性疾患とこれらの自己免疫疾患に目立った相関はあるのでしょうか?

調べられてはいるとは思いますが、詳しくは知りません。