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cover ■「ニセ医学」に騙されないために

 ホメオパシー、デトックス、千島学説、血液型ダイエット、ワクチン有害論、酵素栄養学、オーリングテストなどなど、「ニセ医学」についての本を書きました。あらかじめニセ医学の手口を知ることで被害防止を。

2009-03-10 国民皆保険制度がわりとうまくいっていた理由

[]国民皆保険制度がわりとうまくいっていた理由 国民皆保険制度がわりとうまくいっていた理由を含むブックマーク

最近では医療崩壊などと言われているが、日本の医療制度は高いコストパフォーマンスを誇っていた。いろんな要因があるけれども、その一つに国民皆保険制度があることは確かだ。読者の多くは被保険者として保険料を納め、病院を受診して自己負担分を払っているだろうが、医療従事者でないと、あまり保険者と医療機関の関係について馴染みがないと思う。レセプト審査などを中心に、簡単に国民皆保険制度を解説してみよう。図にするとこんな感じ。


f:id:NATROM:20090310202637j:image

国民皆保険制度


患者さんの立場からだと、「保険料を支払う代わりに、少ない自己負担(だいたいは3割)で診療を受けられる」という制度である。保険料ばかり支払って病院にはかからない元気な方にとっては損しているように見えるが、いざ病気になったときの「保険」である。これだけなら、民間保険でも同じ役割を果たせるのだが、民間が同じことをするとなると、利益を上げるために、医療費のかからない健康な人を優遇することになる。健康な人は安い保険料、病気がちの人は高い保険料を払うか、そもそも保険に入れなくなる。国民皆保険制度では、保険料は被保険者の健康ではなく、所得で決まる。所得の低い人は安い保険料、所得の高い人は高い保険料。国民皆保険制度は、所得の再分配という役割も果たしている。そのため、保険適応になっていない先端医療は無理だけれども、そこそこの質の医療を所得の低い人でも受けられる。医療の平等性についても日本の医療制度は高い評価を受けている。

ただ、所得の再分配を行うことは、コストパフォーマンスが良くなる理由にはならない。自己負担額割合を減らしたり、自己負担の限度額を設けたりすると競争が働きにくいので、公的に値段を決めない限りは値段が高くなりがちである。自己負担額が少なければ、「どうせ7割引きだし少々高くても受診しようか」って人も出てくるだろう。さらに、医療の分野には情報の非対称性があるので、患者側は医療の質が値段に相当するものか、なかなか判断が付き難い。これも競争原理が働きにくい理由になる。なので、日本ではざっくり政府が医療の値段を決めちゃった。これはこれで、名医の手術もヤブ医者の手術も同じ値段かよ、って問題が生じるのだが、オープン価格にしたってどうせ正当な値段はつかないので、ベストではないにせよ、現実的にはよりマシな制度と言えよう。質のよい医療を提供する施設には診療報酬が加算されるという制度が「名医もヤブも同じ値段かよ問題」を、ある程度は補っている*1

さらに、レセプト審査は情報の非対称性を緩和する。医療機関は患者さんから自己負担分の診療報酬、たとえば3割を受け取ったとして、残りの7割は保険者に請求するわけである。そのときの明細書をレセプトという。保険者は、ただ請求されるがまま支払うわけではなく、正当な請求かどうか審査する。そら、支払う金はなるべく少なくしたいから当然だな。大量のレセプトを審査するわけだから、細かいところまで見るわけではないが、医学の知識がある人のチェックが入るわけである。あまりにいい加減な診療を行っていると、レセプト審査に引っかかって、もらえるはずの診療報酬をもらえなくなる*2。すなわち、国民皆保険制度は最低限の医療の質を保つことにも役立つ。

請求する診療報酬が高額になれば、病名以外に病状を書かなくてはならない場合がある。たとえば、わりと高価な薬であるアルブミン製剤を使用するときには、血清アルブミン値をレセプトに併記する。「確かにこの患者にはアルブミン製剤が必要ですよ」ということを示すためだ。儲けるために医学的に必要性の薄い高価な薬剤をバンバン使おうとしても、保険診療の範囲内では難しい。総医療費が高額になった場合は、さらに詳しい病状を書く必要がある(病状詳記)。病状や検査値や行った治療・処置を書いて、「以上のような経過にて、高額とはなりましたが、医学的に必要な医療でありました。ご配慮ください」などと締めくくる。書類仕事が増えて面倒なので、医師にとってはイヤでたまらないのだが、面倒だからこそ、安易に高額な医療を行うことへの抑制力になる。

もちろん、国民皆保険制度のデメリットもたくさんある。よく言われているのが、新しい医療への対応。政府が保険診療の範囲を決めるものだから、十分なエビデンスがあり、海外では普通になされている医療が日本の保険診療ではできなかったりする。医療の値段のつけようによって全体の医療を誘導することができるのも、うまく使えばメリットにはなるが、いまのところデメリットのほうが大きいかもしれない。小児科医や産科医が足りなくなることを予測できれば、小児科や産科領域に手厚く診療報酬を配分することである程度の効果は見込めただろうが、後手に回っているのが実情である。いろいろ挙げればきりがないが、そこそこうまくできている制度だということはご理解いただけただろうか。



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*1:詳しく知りたければ「入院基本料等加算」等で検索せよ。わけのわからないナントカ加算に現場が振り回されるというデメリットもある。

*2:適切な医療であっても、慣例や審査者の気まぐれで切られてしまうこともあるのがデメリット。例はいっぱいあるがたとえば、■肝移植後に「保険不適用」判断

tomtomtomtom 2009/03/11 00:16 国民皆保険だと、保険者の価格交渉力が抜群に強くなるってのもコストパフォーマンスが良くなる大きな原因じゃないでしょうか。
ただ調子に乗って価格を下げすぎると病院自体がなくなってしまいますが。

old manold man 2009/03/11 20:12 そうか・・。今まで問題点しか聞かされなかったけど、確かにいい制度ですね。
勉強になりました。ありがとうございます。

ssd666ssd666 2009/03/12 09:49 国民皆保険制度は最悪の医療制度である。
ただし、かつて様々な国で試みられた他の医療制度を除いてだが。

SLEEPSLEEP 2009/03/12 16:57 元々はロイド・ジョージが導入したイギリスのシステムがモデルですね。
ちなみに先に崩壊したのもイギリス。ERにもイギリスから来た医師が出ますね。
診療するのに数ヶ月先とか馬鹿げた状況が出現して、今は少しマシになったとか聞きますが。

Med_LawMed_Law 2009/03/13 21:51 最近、良く語られる三極の構図であるけれど、本当は根本的に間違い。
一番大事な、ステーク・ホールダーが意図的に省かれている。

そう、勤務医!!!

病院が勤務医(大学病院の医局員も含む)を違法に働かせているからこそ成り立つ三点の構図です。

エネルギー保存、エントロピー保存、質量保存・・・
日本のアクセス・コスト・クオリティーの矛盾を解決するエネルギー・エントロピー、質量を提供してきたのは、勤務医であり、その供与で3点が浮き上がっていただけです。

保険者、医療機関、患者が「三方一両損」なんて言っている時には、勤務医にはペンペン草も生えない惨状が待っています。
五公五民どころか、いまは八公二民くらいの搾取ぶりじゃないでしょうか???

為政者の分かりやすい説明は、疑わなければなりません。
為政者の代弁者たるマスコミも同様です。マスコミには伝達はできても理解力はありません。
いつの時代も御用学者の声が一番大きく聞こえるものです。

ちょっとまてちょっとまて 2009/06/03 08:30 Med_Law さんと同意見です。

加えて言うならば。

今は、未だ保てている保険制度。
だけど、
国民のモラルを悪くしている要因の一つです。
理由は判る人に判って貰えれば良いです。

そのうちに非保険の医療が増えて、
皆保険制度で施行できる医療は、
かなり下の水準のものに限られる様になるでしょう。

アメリカが皆保険制度をしようとしておりますが、
私にはパンドラの箱を開けようとしている様に見えます。
そもそも財源はあるのかな?
ワザワザ自分の首を絞めなくても良いものを。

pikapika 2009/06/11 22:24 NATROMさん、こんばんは。
化学物質過敏症が、「次回10/1リリースの、V2.81で採択予定」とのことで、「MEDIS-DC 標準病名マスター」に、疾病名「化学物質過敏症」として登録される見通しで、保険診療で受診できることに対し、患者間で期待が膨らんでいます。

そこでお尋ねしたいのですが、現在、厚生労働省においては、「シックハウス症候群と化学物質過敏症は医学的知見が違う」という見解である、と私は認識しております。「シックハウス症候群」においては、既に疾病名が「MEDIS-DC 標準病名マスター」に登録されているのでは? と私は思っておりますが、この認識で間違いなかったでしょうか?

NATROMNATROM 2009/06/12 08:25 私も詳しいわけではありませんが、「ICD10対応電子カルテ用標準病名マスター V2.80 2009年6月1日改訂」の「病名基本テーブル」には、「シックハウス症候群」は含まれているようです。「化学物質過敏症」は含まれていません。

ICD10対応電子カルテ用標準病名マスター
http://www2.medis.or.jp/stdcd/byomei/index.html

pikapika 2009/06/12 10:00 お返事ありがとうございました! 助かりました。
レセプトの件では、自分のことでどうしてもお尋ねしたいことがあります。
東京から戻りましたら、またお尋ねしいたいと思いますので、よろしくお願いします。

pikapika 2009/08/04 13:43 こんにちは。もうずーっと以前から、いつかご意見を伺いたいと思うことがありました。私が東京の某専門病院の医師の私の診断に対し、疑問を感じ始めたきっかけでもあります。今回お尋ねすることは、私の主治医には既にこの事実を知った平成16年12月頃に意見を伺っておりますが、セカンドオピニオンとして参考までにNATROMさんのご意見も伺いたいです。

労災申請をすると、労基署は請求者の過去5年間の既往歴を調べるために、社会保険事務所から過去5年間のレセプトの写しを取り、そのレセプトに記載されている内容に沿って各病院のそれぞれの医師に、SBS発症と既往歴の因果関係等に関する意見を求め、その意見書に沿って審査します。私が、これら自分のレセプトと各医師の意見書を目にしたのは平成16年12月で、労災申請から約2年後のことです。過去5年間に5件ほど病院を受診していてそれぞれの医師の意見書がありますが、特に関係のありそうな2件だけに絞ってお尋ねします。

私は、SBS発症約3年前の平成11年2・6・10月に近所の病院で診てもらい、いずれも「風邪」と診断を受けお薬の処方を受けました。その3回の受診についてレセプトには、「急性気管支炎、アレルギー性鼻炎」と書かれてあります。
労基署がその医師に求めた意見書には、「2月、6月、10月ともいわゆるかぜにかかったものと思われます」とかかれ、さらに、意見書の主訴及び自覚症状については、「鼻汁、急性気管支炎、鼻炎、咽頭痛、頭痛軽度訴え、せき、たん」などと書かれています。

その3回目の風邪の時はなかなか治らず血痰が出たため、同じく10月に総合病院を受診して血液検査や尿検査を受けました。その最初の血液検査で自己免疫反応が陽性となったため、糖を点滴しながら血糖値を検査するなど、他にもいろいろ詳しく検査を受けました。その結果は全て陰性で、軽い貧血があり咳発作型喘息と診断を受けました。そのときの一連の受診や検査について、レセプトには、10月「気管支喘息、結核疑い、糖尿病疑い、甲状線機能亢進症疑い」11月「気管支喘息」12月「貧血疑い、多発性関節リュウマチ疑、全身性エリテマトーデス疑、甲状腺機能亢進症疑い」と書かれています。
このとこは、平成14年12月、東京の某専門病院を受診した際、医師には口頭で、上記の検査を受けたが全て陰性だった、と伝えました。このとき先生は、カルテに何やら記入され、私には「化学物質の影響を受けると、甲状腺がやられるんですよ」と説明されました。

労基署はこの医師に対し、過去5年間のレセプトを見せ、「請求人は、発症以前、約5年間に別紙『保険診療記録一覧表(レセプトのこと)』のとおり診療機関への受診歴がありますが、治療を要した傷病名の内、今回発症した傷病名との因果関係あると思われる傷病名及びその理由について。」と質問しました。
それに対し医師の回答は、「この疾患は、アレルギー歴を有する人に発症しやすく、また内分泌異常とも連動してくる傾向が認められます。その意味で、下地が以前から準備されていた可能性が十分あります。」と回答されました。

私は、この回答に対しとても疑問を感じています。なぜなら、レセプトは治療や検査に対しての保険請求であって、レセプトに記載されている内容が私の既往歴ではない、と認識しているからです。
例えば、最初の病院では、アレルギー性鼻炎とレセプトに記載されていますが、それは風邪で鼻汁や鼻炎が認められたため、医師がそれに効くお薬を処方するために請求した疾病名が「アレルギー性鼻炎」であって、私の疾病名がアレルギー性鼻炎ではないと思っています。「風邪」と診断されていますし、意見書も「風邪」です。

また、総合病院での検査でも、医師は1度目の血液検査で、自己免疫反応が陽性と出たため、さらに詳しく検査を受けることになりましたが、その全てにおいて陰性であることから、私は、某専門病院の医師が私の既往疾病と因果関係対して回答された、「・・・、また内分泌異常とも連動してくる傾向が認められます。その意味で、下地が以前から準備されていた可能性が十分あります。」との意見は、間違っている、との想いが強いです。
実際のところ、アレルギー歴あるのかどうか、内分泌異常があるのかどうかということは別にして、レセプトの記載内容で既往歴を断定して因果関係を見る、という行為自体にそもそも問題があり、また、そのレセプトを見て医師が患者の既往歴を断定してしまうことは間違っている、と私は感じるのですが、NATROMさんは私の話をお聞きになって、どのようにお感じになりますか?

NATROMNATROM 2009/08/04 16:25 レセプトから既往歴を推定することの妥当性についてですね。今回は、レセプト病名だけでなく、治療・検査の内容も含めての情報があったものと思われます。アレルギー性鼻炎の病名は、おそらく抗アレルギー剤を処方するための保険病名でしょうが、純粋な感染による上気道炎症状と、基礎にアレルギー性鼻炎があって感染によって悪化した病態と、臨床的には鑑別困難です。というか、通常は鑑別する必要はありません。まあ、アレルギー性鼻炎は保険病名であって、実際の病態とはアレルギーではなかったとしても、気管支喘息については、やはりアレルギー素因の存在を示唆します。疑い病名ならともかく、実際の病態が気管支喘息でないのにレセプトに気管支喘息と記載する状況はあまりないように思われます。また、関節リウマチ疑い、全身性エリテマトーデス疑いの病名がついていることから、自己免疫疾患の素因があると推測するのは妥当と思われます。諸検査で陰性であったとのことですが、「自己免疫反応が陽性」であったとのことで(リウマチ因子もしくは抗核抗体でしょうか)、実際の病態としても自己免疫疾患の素因があるという推測は妥当であり、「下地が以前から準備されていた可能性が十分あります」という判断に大きな問題はないように思われます。一般的に言いましても、診断書なりカルテなりがあったほうがもちろん正確ではありますが、レセプトだけで大まかな病態を推測することは可能です。

pikaさんの病態が不明なのに推測で物を言うのは失礼かもしれませんが、労基署は、「SBS発症は、アレルギー素因があったためであり、労災に当たらない」と主張したいのかな、と思えます。しかし、気管支喘息や、あるいは確定診断に至らない程度の「自己免疫反応が陽性」である人はざらにいるのであり、そのような人がSBSを発症する環境はやはり問題であると考えます。「下地が以前から準備されていた可能性が十分ある」としてもです。

pikapika 2009/08/06 15:24 お返事ありがとうございます。

>実際の病態としても自己免疫疾患の素因があるという推測は妥当であり、「下地が以前から準備されていた可能性が十分あります」という判断に大きな問題はないように思われます。

二次検査の全てにおいて陰性だったので、「私は自己免疫疾患について心配する必要はない」と、勝手にそう思っていましたが、「自己免疫疾患の素因がある」と気を付けて生活したほうが良さそうですね。

>レセプトから既往歴を推定することの妥当性についてですね。

はい、そうです。そのことについてご意見を伺いたかったです。
しかし、前回私の説明の仕方が悪く、もしかしたらNATROMさんに誤解を与えてしまったかもしれません。

>今回は、レセプト病名だけでなく、治療・検査の内容も含めての情報があったものと思われます。

SBS発症以前過去5年間に受診した各病院の医師・大学病院の主治医・東京の某専門病院の医師が、労基署から郵送され直接目にされた資料は、「保険診療記録一覧表」で、別途「治療・検査の内容も含めての情報」はないと思われます。医師らは、この「保険診療記録一覧表」だけを見て、労基署の質問に回答(意見)されていると思われます。

と言うのは、私の手元にも労災申請から約2年後、労災保険の不支給決定(行政処分)の取り消しを求めて再審査請求した際、東京での審理に備えて、労働審査会から審理に係る「全ての資料」が郵送されてきましたが、その中に、労基署が医師らに郵送した「保険診療記録一覧表」のコピーと、また、それを見て回答した医師らの回答書(意見書)のコピーが記載されており、その結果私がいろいろ知る処となりました。しかしその「全ての資料」の中には、「保険診療記録一覧表」以外の資料の記載や他の情報があったような記述は一切ありません。
私がこちらにコメントさせていただいた疾病名や検査内容も、「保険診療記録一覧表」に記載されている内容に基づくものです。

私自身は、レセプト(電子カルテ)がどのような書式・記入内容になっているのか
など、実際に実物を目にしたことがないのではっきりは解りませんが、多分、「保険診療記録一覧表」は、社会保険事務所から取り寄せたレセプトを元に、労基署が作成した資料だと思います。

私が、それらの事実を知った再審査の審理直前の平成16年12月頃、主治医に尋ねたところ、主治医からは、「結核疑い、糖尿病疑い、甲状線機能亢進症疑い、貧血疑い、多発性関節リュウマチ疑、全身性エリテマトーデス疑、甲状腺機能亢進症疑いなど、「疑い」と書かれているものは、検査をするために何かしらの疾病名を付けて検査依頼?しないと駄目なので、とりあえず「疑い」と付けて検査依頼しているが、検査をして陰性だったものについては、1ヶ月以内?(1ヶ月以後かもしれません)に削除することになっている」と、説明を受けました。そして実際に主治医は、私がSBS発症後検査していただいた項目についてPCでチェックされて、「ちゃんと削除してある」と説明してくださいました。

私は、もし主治医が説明されたことが本当であるなら、私のレセプトの総合病院での診療記録は、「気管支喘息と貧血」のみが記載されており、他の「結核疑い、糖尿病疑い、甲状線機能亢進症疑い、多発性関節リュウマチ疑、全身性エリテマトーデス疑、甲状腺機能亢進症疑い」に関しは、削除されていなければならなかったのではないかと思っています。
もしそうであったなら、某専門機関の医師の私に対する労基署の回答書(意見書)の内容も、また違った内容になったのではないかとの疑念を払拭出来ずにいます。

>自己免疫反応が陽性」であったとのことで(リウマチ因子もしくは抗核抗体でしょうか)、実際の病態としてもしても自己免疫疾患の素因があるという推測は妥当であり、「下地が以前から準備されていた可能性が十分あります」という判断に大きな問題はないように思われます。一般的に言いましても、診断書なりカルテなりがあったほうがもちろん正確ではありますが、レセプトだけで大まかな病態を推測することは可能です。

NATROMさんの説明を伺って、仮にレセプトから「疑い」の病名が削除されていたとしても、「実際の病態としても自己免疫疾患の素因がある」のであれば、労基署の決定に不服はありませんが、しかしそうであったとしても、レセプトの記載内容で、もしかしたら某専門病院の医師の回答書(意見書)の内容も変わっていたのかもしれない、と考えたとき、「う〜ん」と何とも釈然としないんです。
主治医が私に説明されたことは本当でしょうか?

>基署は、「SBS発症は、アレルギー素因があったためであり、労災に当たらない」と主張したいのかな、と思えます。

仰るとおりです。SBSの発症と職場の室内環境との因果関係を立証するためには、アレルギー歴が過去5年間にないことが必須で、あれば職場の室内環境が原因ではなく本人の体質によるもの、との判断がなされることが多いです。

説明が長くなってすみません。よろしくお願いいたします。

NATROMNATROM 2009/08/06 16:43 「保険診療記録一覧表」を実際に見たわけではありませんが、『私がこちらにコメントさせていただいた疾病名や検査内容も、「保険診療記録一覧表」に記載されている内容に基づくもの』とpikaさんがコメントされたように、治療・検査の内容も含めての情報はあったと考えます。たとえば、「保険診療記録一覧表」に、胃癌疑い、慢性胃炎という病名があり、検査として上部消化管内視鏡、胃の病理組織検査がなされ、薬としてセルベックスが処方されていたとしましょう。胃カメラや病理組織の結果は「保険診療記録一覧表」には記載されていないでしょうが、「胃カメラしたらちょっと怪しいところがあって、念のため生検したけど癌じゃなくって、結局は胃炎として胃薬出したんだろうな」と推測することは妥当です。いやもしかしたら、癌だったけど本人が強く手術を拒否した結果、胃薬で経過を見ざるを得なかった、なんて可能性もゼロではないのですが、まあ概ねのところ、「レセプトを見れば、完全に正確ではないにせよ、当時の病状について妥当な推測は可能である」と思ってください。


>「結核疑い、糖尿病疑い、甲状線機能亢進症疑い、多発性関節リュウマチ疑、全身性エリテマトーデス疑、甲状腺機能亢進症疑い」に関しは、削除されていなければならなかったのではないかと思っています

疑い病名を削除しても、レセプトの記録には残ります。「削除された」というのは、毎月、保険者に提出するレセプトから病名が削られたってことです。平成11年12月のレセプトに「貧血疑い、多発性関節リュウマチ疑、全身性エリテマトーデス疑、甲状腺機能亢進症疑い」とあったのが、(たとえば)平成12年1月のレセプトでは疑い病名が削られた、ということです。労基署が平成11年12月のレセプトの写しを得たのなら、それには「貧血疑い、多発性関節リュウマチ疑、全身性エリテマトーデス疑、甲状腺機能亢進症疑い」との記載があって当然です。


>SBSの発症と職場の室内環境との因果関係を立証するためには、アレルギー歴が過去5年間にないことが必須で、あれば職場の室内環境が原因ではなく本人の体質によるもの、との判断がなされることが多いです

これはおかしい。レセプトから病名が削られていないとか、レセプトから既往歴を推測する妥当性とかより、こっちのほうが問題だと感じます。法律的にはどうだか私は詳しくありませんが、医学的にはとんでもない主張です。花粉に曝露してアレルギー症状が出たとして、「花粉症の発症と花粉の曝露の因果関係を立証するためにアレルギー歴がないことが必須。あれば花粉が原因ではなく本人の体質によるもの」と言っているようなものですよ。室内汚染物質への感受性は個人で差がありますので、「(たとえば)10000人に1人程度の強い感受性を持つ人がSBSを発症したとして、たとえ室内環境との因果関係があったとしても管理者の責任を問えない」という判断ならまだ理解できます。現実的には、どこかに妥協点を設ける必要がありますから。だけど、「因果関係を立証するためには、アレルギー歴が過去5年間にないことが必須」というのは論外です。因果関係の有無を判断するには、アレルギー歴の有無よりも、室内環境の程度と、症状の経時的変化のほうが重要だと考えます。

pikapika 2009/08/12 16:01 こんにちは。

>「レセプトを見れば、完全に正確ではないにせよ、当時の病状について妥当な推測は可能である」と思ってください。

>疑い病名を削除しても、レセプトの記録には残ります。「削除された」というのは、毎月、保険者に提出するレセプトから病名が削られたってことです。

上記2点の件、理解しました。説明ありがとうございました。

それにしても、「胃癌疑い」と「慢性胃炎」の例えを読んで、笑っちゃいました。
実は、東京労働審査会で開かれた、労災保険の不支給決定(行政処分)の取り消しを求める審理に出席した際、私は、「胃癌疑い」と「胃潰瘍」を例にとって反論したんです。(笑)しかしそれは、NATROMさんの「完全に正確ではないにせよ、当時の病状について妥当な推測は可能である」との説明とは全く逆の主張です。

胃が痛くて病院を受診した。医師は胃癌を疑い、胃カメラの検査をした。「胃カメラしたらちょっと怪しいところがあって、念のため生検したけど癌じゃなくって、結局は胃潰瘍」だった。その場合、レセプトには、「胃潰瘍」ではなく「胃癌疑い」と記載される。しかし、実際の病態は「胃潰瘍」。
私の場合もそれと同じで、1次検査で「自己免疫反応」が「陽性」と出て、医師はそれに関連する病気を疑い2時検査をした。検査依頼するために、「貧血疑い、多発性関節リュウマチ疑、全身性エリテマトーデス疑、甲状腺機能亢進症疑い」としたものが、レセプト上に「○○疑い」で病名が記載されているだけで、検査の結果は全て陰性なのだから、私はそれらの病気ではない。
従って、某専門病院の医師は、私の既往歴を正しく示したものではない「保険診療記録一覧表」を見て私の既往歴を判断された訳で、医師の回答書(意見書)の内容、「下地が以前から準備されていた可能性が十分ある」とした回答書(意見書)は誤りだ。胃潰瘍の私を胃癌と判断して書かれたようなものだ。
と、反論しました。

>これはおかしい。

>だけど、「因果関係を立証するためには、アレルギー歴が過去5年間にないことが必須」というのは論外です。因果関係の有無を判断するには、アレルギー歴の有無よりも、室内環境の程度と、症状の経時的変化のほうが重要だと考えます。

そうなんです。仰るとおりなんです。おかしいんです!
その前に、私が書いた、「因果関係を立証するためには、アレルギー歴が過去5年間にないことが必須」の「必須」は、私の主観的表現だったかもしれません。
しかしそうであっても、アレルギーの既往歴があると労災認定は難しいです。

全国で初めてSHS/SBSによる労災を認定したのは、平成14年6月初旬、大阪の天満労基署です。また、それに次いで同じく6月初旬、大阪の堺労基署が認定しました。大阪労働基準局は、当時労災を認定した根拠として下記のような理由を挙げています。以下、「平成14年6月11日北海道新聞夕刊」から引用です。(道新は朝日新聞系列なので、朝日新聞にも同様の記事が掲載されたと思います)

「1 4人の症状がいずれもホルムアルデヒド特有の症状
2 4人とも同様の既往歴がなかった
3 仮設保育所以外でホルムアルデヒドに触れておらず、保育所から離れると症状が治まった−などを認定の根拠にしたという。」(引用終わり)

新聞では「など」となっているので、正確には3つ以外にも理由があるのかもしれません。
「室内環境の程度」は、厚生労働省が策定した室内環境化学物質の13項目+TVOC(総VOC)において基準値を超えている化学物質があり、さらにその基準値を超えている化学物質と被災者に出た症状に相関があれば、因果関係を立証することができます。

しかし、「症状の経時的変化」については、「既往のアレルギーが悪化した、このような症状は今までに経験したことはない」と、医師の診断書とともに申立書で主張したり職員との面談の際口頭で説明をしても、大阪労働局の認定の根拠でも示されているように、まずもって認定は難しいです。
私の喘息治療は、平成11年以来2ヶ月に1度、総合病院を受診しフルタイドを処方してもらっていました。当時フルタイドは1日1回使用していましたが、平成14年7月初旬に受診したときは、このまま咳が出ず秋にも症状が出なかったら、フルタイドの使用を止めて治療を終了することになっていました。それぐらい病状も回復していましたし、状態も安定し良かったです。しかし、その月の7月下旬に新築の職場に異動した直後から、SHS/SBSによく見られる症状が出始め、9月初旬にはとうとう喘息の発作が出てしまって、フルタイドの使用も1回から2回、2回から3回へと増えました。(平成14年12月からは使用しておらず、現在も何も治療していません)
私の場合、労基署や労働基準局の書類の中で、某専門病院の医師が書かれた、「この疾患は、アレルギー歴を有する人に発症しやすく、また内分泌異常とも連動してくる傾向が認められます。その意味で、下地が以前から準備されていた可能性が十分あります。」の箇所にはアンダーラインが引かれ、後にも先にも、書類の中でアンダーラインを引いている箇所はここだけで、労基署や労働局が、それだけこの意見を重要視したんだ、ということを伺い知る事が出来ます。
しかし、私の不支給決定については、このことが理由の全てではなく、「室内環境の程度」についても大きな争点になり、自分達の主張を立証することができなかった結果だと思っています。

NATROMNATROM 2009/08/13 10:23 労災認定のハードルの高さが問題のようですね。そういや、激務であった小児科医が自殺した事件があったのですが、そのときもなかなか労災認定されませんでした(最終的には裁判で勝って労災認定された)。労働基準監督署の言い分には、「同じ位の勤務状況の医師もいるが、彼らは自殺していない」というものがあったように記憶しています。まさしく、「4人の症状がいずれもホルムアルデヒド特有の症状」が生じてやっと労災が認定されたように、同じような勤務状況の医師が次々と過労死しないと労災認定しないつもりだったのでしょう。

人は個人個人で感受性が異なります。ホルムアルデヒドによるシックビルディング症候群も、激務に伴ううつ病も、ある人には耐えられても、別の人には耐えられないという状況は十分あります。こうした状況に労災認定が十分に対応できていないのでしょう。

hodahoda 2011/11/15 13:36 レセプトという監査制度や政府が医療の値段を決めているということが、そこそこ安価でそこそこ質の良い医療が実現している理由であるというのは納得ですが、それが国民皆保険制度と必ずしも不可分だものだとは思われません。確かに現在の制度ではお互いにそれぞれを前提として組まれていますが、仮に国民皆保険がなくなっても政府による価格の規制とその監査としてのレセプトは実現可能なように制度を組むことは出来ます。
国民皆保険制度はやはり、クリームスキミングや自己の健康に対するバイアスへの対処、および再分配政策の一環としての意義が重要なのであり、安くて良質な医療の実現要因ではないと考えられます。

NATROMNATROM 2011/11/15 17:11 保険者(米国のように民間保険会社も含む)のチェックが入れば、情報の非対称性を緩和するという役割を果たせます。が、米国式があまりうまくないのはご承知の通りです。国民皆保険を無くして、なおかつ、政府による価格の規制とその監査としてのレセプトが存在する状態というのが、具体的にどのようなものかよくわかりません。日本は保険者が乱立しており、カナダのようにSingle Payer Systemではありません。しかし、政府による価格の規制があるため、実質的にSingle Payer Systemと違いがないというように私は理解しています(http://d.hatena.ne.jp/NATROM/20060109#c1136815253)。

「安くて良質な医療の実現要因」については、海外でも日本の皆保険制度は高く評価されていると理解していましたが、違うのでしょうか?こないだのLancetの特集でも、「日本の保健アウトカムが卓越しているのは,それほど高くない疾患の危険因子,保健システムの実績,そして国民皆保険のおかげとされている」(http://download.thelancet.com/flatcontentassets/series/japan/comment2.pdf)とありました。国民皆保険制度は、「安くて良質な医療の実現要因」の一つ、とぐらいは言えるのではないでしょうか。