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cover ■「ニセ医学」に騙されないために

 ホメオパシー、デトックス、千島学説、血液型ダイエット、ワクチン有害論、酵素栄養学、オーリングテストなどなど、「ニセ医学」についての本を書きました。あらかじめニセ医学の手口を知ることで被害防止を。

2009-08-01 蚊取り線香のリスク

[]蚊取り線香のリスク 蚊取り線香のリスクを含むブックマーク

■殺虫剤と小児白血病に関連か 米研究(AFPBB News)を読んで、「そういや蚊取り線香の害って調べられているのかなあ」と疑問に思ったので、医中誌先生に聞いてみた。「放火時に時限装置として用いられた蚊取り線香についての検討」(犯罪学雑誌)などという論文に混じって、"Exposure to mosquito coil smoke may be a risk factor for lung cancer in Taiwan.(台湾において蚊取り線香の煙への曝露は肺癌の危険因子となりうる)"という論文*1を発見した。蚊取り線香って、"mosquito coil"って言うんだ。以下、サマリーを引用して訳した。

BACKGROUND: About 50% of lung cancer deaths in Taiwan are not related to cigarette smoking. Environmental exposure may play a role in lung cancer risk. Taiwanese households frequently burn mosquito coil at home to repel mosquitoes. The aim of this hospital-based case-control study was to determine whether exposure to mosquito coil smoke is a risk for lung cancer.

METHODS: Questionnaires were administered to 147 primary lung cancer patients and 400 potential controls to ascertain demographic data, occupation, lifestyle data, indoor environmental exposures (including habits of cigarette smoking, cooking methods, incense burning at home, and exposure to mosquito coil smoke ), as well as family history of cancer and detailed medical history.

RESULTS: Mosquito coil smoke exposure was more frequent in lung cancer patients than controls (38.1% vs.17.8%; p<0.01). Risk of lung cancer was significantly higher in frequent burners of mosquito coils (more than 3 times [days] per week) than nonburners (adjusted odds ratio = 3.78; 95% confidence interval: 1.55-6.90). Those who seldom burned mosquito coils (less than 3 times per week) also had a significantly higher risk of lung cancer (adjusted odds ratio = 2.67; 95% confidence interval: 1.60-4.50).

CONCLUSION: Exposure to mosquito coil smoke may be a risk factor for development of lung cancer.



背景: 台湾の肺癌による死亡のうち、約50%は喫煙と関係しない。環境曝露が肺癌のリスクにおいて役割を果たしているかもしれない。台湾の家庭では、蚊を避けるために、しばしば蚊取り線香を燃やす。この病院ベースの症例・対照研究の目的は、蚊取り線香の煙への暴露が肺癌のリスクかどうかを決定することであった。

方法: 原発性肺癌147人および対照群400人に対して、癌の家族歴および詳細な病歴と同様に、人口統計データ、職業、生活習慣、室内環境暴露(喫煙習慣、料理法、家庭でのお香、蚊取り線香の煙江の暴露)を確認するためにアンケート調査が行われた。

結果: 肺癌患者における蚊取り線香への暴露は対照群と比較して頻度が高かった(38.1%対17.8%;P<0.0.1)。肺癌のリスクは、蚊取り線香を焚かない群より頻繁に焚く群(週に3回 [日] 以上)で有意に高かった(調整後オッズ比=3.78、95%信頼区間: 1.55-6.90)。あまり蚊取り線香を焚かない群(週に3回以下)においても肺癌のリスクは有意に高かった(調整後オッズ比=2.67、95%信頼区間: 1.60-4.50)。

結論: 蚊取り線香の煙への暴露は肺癌を引き起こすリスク要因である可能性がある。

調整後オッズ比の表はこんな感じ。

f:id:NATROM:20090804171743j:image

台湾人の蚊取り線香の煙の暴露と肺癌に関する調整後オッズ比および95%信頼区間(ChenShu-Chen, 2008)

MCS(mosquito coil smoke)は鼻咽頭癌や子供の喘息を引き起こすかもしれないという先行研究もあるそうだ。多環芳香族炭化水素やらホルムアルデヒドやらも含まれている。一つの蚊取り線香を燃やすと、タバコ75〜137本と同量の粒子状物質(PM2.5)、51本分のホルムアルデヒドの排出がある。意外と多い。感覚としては、「蚊取り線香の煙は、そりゃあ害がないとは言えないけど、害の大きさとしてはたいしたことないんじゃね?」と思っていた。オッズ比3.78て。もし本当だとしたら、受動喫煙なんか目じゃないぐらいのリスクの大きさだ。ただし、Pubmedも引いてみたが、肺癌と蚊取り線香の関係を調べた研究はこれひとつだけ。著者らも述べているがさまざまなバイアスがありうるので、この研究だけで蚊取り線香のリスクが大きいと決まったわけではない。少数の研究だけであれやこれや心配しないほうがよかろう。でもまあ、少なくとも、寝室で一晩中蚊取り線香を焚くのは避けたほうがよさそうだ。

防虫成分のみを発生させる電気式蚊取り器だと、余計な汚染物質を出さないだけ蚊取り線香よりも安全と思われる。しかし、臭いがなく、あるいは煙を視認できないため、高濃度になっても気付かないというデメリットがあるという指摘があった*2。「天然だから安全!」と謳った蚊取り線香は案の定存在した。「弊社商品は100%化学物質不含有*3」だそうだ。言わんとすることはわかるが、何かこう、霊的な物質で出来ているかのように読んでしまう。「哺乳類、鳥類にはまったく影響はございません」「小さなお子様のいらっしゃるご家庭をはじめ、すべての方々に安心してご使用いただけるかとり線香です」なのだそうだ。天然由来の成分だと安全であるという根拠のない思い込みの典型的な例であろう。



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*1:ChenShu-Chen et.al., Journal of Epidemiology 18巻1号 Page19-25, (2008)

*2:URL:http://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_detail/q1228190197

*3:URL:http://www.binchoutan.com/kaeru/senko/index.html

koumekoume 2009/08/01 22:21 確か、蚊取り線香に農薬の基準を当てはめると1日あたり5センチしか使えなくなると聞いたことがあります。

itokinitokin 2009/08/02 00:06 いつも楽しく拝見しています。肺がんの因子となっている物質は殺虫成分(蚊取り線香の場合ピレスロイド)よりも、むしろ煙に含まれる別の成分であるような気がします。タバコの場合、鉄が原因ではないかと話題になっているようですがどうなのでしょう。
http://www.47news.jp/CN/200907/CN2009072701000777.html

煙そのものが原因ならば、タバコより暴露時間が長い蚊取り線香の方がリスクが高いというのは妥当かもしれません。暴露時間の観点から考えると、夏の数ヶ月しか使わない日本は台湾よりも影響は少ないかもしれません。

言うまでもなく、熱帯ではマラリアやデング熱などのリスクもあります。仮に肺がんのリスクが明らかでも、電源のいらない蚊取り線香は便利なので、地域によってはそれだけで直ちに使用中止とするわけにはいかないでしょう。

sioyasioya 2009/08/02 21:43 蚊取り線香で小児白血病や肺ガンのリスクがあるかもなんですね?
私は蚊取り線香で頭痛がひどく、寝込みます。
煙そのものを吸わなくても、線香を焚いた部屋の匂いでもアウト。カーテンを洗って、部屋を一週間くらい開け放って換気しないとダメだし。
病院で見てもらうほうがいいのかなー?

koumekoume 2009/08/03 20:33 ブクマコメを見ていると、私が書いたコメントの5cmが気になっている方が少しいらっしゃるようですが、長さについてはただの伝聞で資料など出せないので間違っているかもしれません。
が、あれを書いた意図は「農薬の基準は異様に厳しい」と言うトリビアを紹介するだけでして、蚊取り線香は「あの」農薬以上に危険なのだ!という話を広めるためではありません。
もう一ついうと、農薬がそれほど厳しいのは食品の最終消費者に対する直接的なメリットが存在しないために、それに対応してリスクの方も相当厳しく見ているからで、家庭用殺虫剤のように消費者に直接メリットを与えるものはリスクについてもやや甘く見られます。
追加トリビア:
蚊取り線香の殺虫成分は燃えているところから出ているのではなく、まだ燃えていない、燃える直前のところから揮発して蒸散しています。ちなみに成分含有量は全体の1%以下。
除虫菊から作られた「天然だから安全」蚊取り線香(笑)は助剤が入ってないならもっと揮発性が高く、保管しておくだけで蒸散すると思うのでさっさと使いましょう。殺虫効果は今どきの合ピレより低く、そのわりにリスクはもちろんあり、良い所が見当たりません。
フマキラーの蚊取り線香は右巻き、金鳥のは左巻きだそうです。

猫めん猫めん 2009/08/03 22:25 NATROM先生、みなさんこんばんは。はじめて書き込みさせていただきます。
猫めんと申します。よろしくお願いいたします。
さて、蚊取り線香のリスクの件ですが、「やはり出てきたのかな」という感じがします。
なぜ、「出てきた」と感じるのか?それは、日頃「無農薬、無農薬」と主張している人たちが、夏場はいつもどうしているのかな、と感じていたからです。
農薬がだめなら、蚊の季節はどうしてんのかなこの人たち、という疑問がかねてあったものですから。
どう考えてもこっちのほうがリスクがありそうです。まさか夏は蚊に食われ放題なのかな。
もっとも、火災のリスクのほうがよほどありそうですが。

ろ 2009/08/04 06:48 「蚊取り」だけが問題ですかね?
アジアの多くの国では、蚊取り以外にもじゃんじゃん線香を灰にする習慣がありますけど。

dancing_infobiodancing_infobio 2009/08/04 08:11 初めて拝見させて頂きました。 精力的な活動に恐れ入ります。
本題から外れて恐縮ですが、図表の引用はインパクトが大きいので、その都度文献情報を入れた方が良いように感じます。

mit33mit33 2009/08/04 10:03 >天然由来の成分だと安全であるという根拠のない思い込みの典型的な例であろう。

「天然物なら安全」なら毒キノコもフグの肝も安全という話になるじゃない、という単純なことすら理解できない人が沢山いるってことですよね…

NATROMNATROM 2009/08/04 16:46 文献情報についてのご指摘ありがとうございました。とりあえず表のタイトルに文献情報をつけました。画像データについても、他の人に利用されることがあるかもしれませんので、適宜文献情報を入れるようにします。

nomitorinomitori 2009/08/06 18:54 タイムリー(といっていいのかわかりませんが)、台湾の蚊取り線香(ワニ印)から高濃度ダイオキシン検出で、製品回収というニュースがでてましたので、お知らせしておきます。
体感的にも台湾の蚊取り線香は日本のよりきつい気はします。
原料のベトナム産おがくずが原因とされていますが、もしかしてベトナム戦争時の負の遺産??

以下ご参考(中国語ですが…)

http://udn.com/NEWS/NATIONAL/NATS4/5040025.shtml

aaaa 2011/08/14 20:45 馬鹿が高説垂れて悦に浸るブログってたまに見かけますね。

tmtm 2011/08/15 12:17 「悦に浸る」ってなんじゃらほい?