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cover ■「ニセ医学」に騙されないために

 ホメオパシー、デトックス、千島学説、血液型ダイエット、ワクチン有害論、酵素栄養学、オーリングテストなどなど、「ニセ医学」についての本を書きました。あらかじめニセ医学の手口を知ることで被害防止を。

2009-12-29 「タミフルで死亡」は本当?

[]「タミフルで死亡」は本当? 「タミフルで死亡」は本当?を含むブックマーク

NPO法人医薬ビジランスセンターの浜六郎氏が、2009A/H1N1インフルエンザ(新型インフルエンザ)の死亡例において、受診後死亡の半数以上はタミフルが原因であった可能性がある、という説を主張している。浜六郎氏は、まず、インフルエンザによる死亡を、突然型と進行型に分類する。


■「新形インフルで死亡」は本当? 『薬のチェック』37号より

まず、死亡にいたる経過を検討すると、大きく2つのタイプがあることがわかりました。

1つは、急に呼吸異常を呈したり、意識障害に引き続き死亡した場合や、あるいは、心肺停止や死亡状態で発見されたケースです。

2つ目は、急速だけれども連続して悪化が進行したケースです。

いずれの場合も多くは悪化後は人工呼吸器などが必要となり、最終的に亡くなっていました。前者を「突然型」(速報No136、137で述べた5歳の子が典型)、後者を「進行型」に分類しました。

受診する前に急変したり突然死された場合もありますが、その場合も2つの型に分けて検討しました。

突然型が54人、進行型が20人でした。突然型54人のうち、受診後に突然急変した人が44人、受診前が10人でした。また、進行型の20人のうち受診後に進行した人が13人、受診前に進行していた人が7人でした。


突然型と進行型という分類が妥当かどうかは不明であるが、とりあえず正しいものとして受け入れよう。浜六郎氏は、続いて「疫学的に検討」し、「タミフルを使うと、進行型で死亡するより突然死する危険が11倍高まる」と計算した。


悪化する前にタミフルを服用していた割合は全体では、突然型が54人中36人(67%)、進行型では20人中3人(15%)と著しい違いがありました。この数字を用いて疫学的に検討をすると、タミフルを使うと、進行型で死亡するより突然死する危険が11倍高まると計算できます(オッズ比11.33、95%信頼区間2.68-85.91、p<0.0001)(なお、タミフルが処方された場合は、特別服用していなかったとの断りが無い限りは、タミフルを服用したものと扱いました)。


オッズ比を計算しているところからみて、「疫学的な検討」とは、症例対照研究に準じたものだと思われる。症例(たとえば肺癌)および対照のそれぞれを暴露あり(たとえば喫煙群)、暴露なし(たとえば非喫煙群)に分けて以下のような2×2の表をつくると、オッズ比ORは、OR=(a/c) / (b/d) =ad/bcとなる。


f:id:NATROM:20091228175213j:image

オッズ比


暴露が疾患のリスク因子であったら、ORは1より大きくなる。その大きさでリスクの大きさを評価することができる。浜六郎氏がやった計算を2×2表にしたのが以下である。


f:id:NATROM:20091228175214j:image

進行型を対照とみなすとオッズ比は11.33倍


計算してみると、確かにオッズ比は11.33となる。浜六郎氏は、「タミフルを服用した場合、進行型になるより、1日以内に突然死する危険度が約40倍」という計算も行い、「突然の呼吸停止や死亡とタミフル使用との間には、極めて強い関連が認められた」とし、最終的に、「受診後にタミフルを服用して突然死した場合、その93%はタミフルが関係したと推定できました。タミフルを服用していた36人中、33人はタミフルが原因であった可能性があり、受診後死亡した人の半数以上となります」と結論している。あたかも「タミフルを飲んだから死亡」したかのように浜六郎氏は書いているが、浜六郎氏の使用したデータを用いて、タミフルが死亡を抑制した可能性があるという結論も引き出せるのだ。


f:id:NATROM:20091228175215j:image

突然型を対照とみなすとオッズ比は0.088倍

悪化する前にタミフルを服用していた割合は全体では、進行型では20人中3人(15%)、突然型が54人中36人(67%)と著しい違いがありました。この数字を用いて疫学的に検討をすると、タミフルを使うと、突然死するより進行型で死亡する危険が11分の1に下がると計算できます(オッズ比0.08824、95%信頼区間0.02284-0.3409、p<0.0001)


なぜ同じデータを使用して、一方ではタミフルが死亡を増やすような結論が出て、もう一方ではタミフルが死亡を減らすような結論が出るのだろうか?それは対照群が不適切だからである。オッズ比が11倍(あるいは11分の1)というのは、あくまでもタイプの異なる死亡を対照にした場合の計算である。症例対照研究で、タミフルが死亡を増やすか減らすかを検討したいのであれば、対照は死亡しなかったインフルエンザ患者であるべきだ。

「突然型」と「進行型」の差は、浜六郎氏が示唆した「タミフルが突然型の死亡を増やす」という可能性以外に、「タミフルが進行型の死亡を抑制する」ことでも説明可能である。ウイルス粒子が細胞膜から分離するのを阻害するというタミフルの作用機序から考えると、タミフルが効果を発揮するまでには若干の時間がかかると思われる。そのため、急速に病状が悪化する「突然型」の死亡を抑制することはできないが、一方で「進行型」の死亡は抑制できるという可能性は十分にある。実際に、季節性のインフルエンザについては、タミフルが死亡を抑制するとするエビデンスは存在する*1。「進行型」の死亡において、悪化する前にタミフルを服用していた割合が20人中3人(15%)という数字は、日本の現状を考えるにきわめて低く、新型インフルエンザにおいても「進行型」の死亡を防ぐにはタミフルの早期投与が必要であることを示唆している。

WHOは、重症肺炎や致死的な合併症を避けるため、ハイリスク患者に対してはタミフルやリレンザなどの抗ウイルス薬の早期投与を推奨している*2。日本感染症学会は、ハイリスク患者に限らず、「可能な限り全例に対する発病早期からの抗インフルエンザ薬による治療開始が最も重要である」としている*3。タミフルが健康成人の死亡を減らすかどうかについては議論の余地はあるが、タミフルでかえって死亡が増えるなどと主張しているのは、私の知る限り浜六郎氏のグループだけである。薬害の可能性について警鐘を鳴らすという役割を担う人も必要ではあるが、浜六郎氏の主張にはあまりにも杜撰なものが多い。狼少年になっていないか。これでは本当に狼が襲ってきたときに信じてもらえないだろう。



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アマデウス龍彦アマデウス龍彦 2009/12/29 18:45 いつもに増して、このエントリーは勉強になりました。

私は化学物質過敏症だし、薬の副作用で亡くなった方を研修医として直接診たことも
あるし、精神科といえば、薬の副作用で悩んでいる患者さんは多かったのです。
そういうわけで、いざと言うときの薬の絶大な効果はわかりつつも、
薬やワクチンから、なるべく遠ざかりたい派なのです。
だから、タミフルなんて飲まなくていいと思っています。
でも、今回のNATROMさんのお話は、なるほどと思いました。

NATROMさんはお仕事もお忙しいのに、いつも質の高いブログを書かれているので、
すごいなと思っています。今年はNATROMさんのおかげで、実りの多い年でした。
ありがとうございました。NATROMさんも御体ご自愛ください。よいお年を!

tontontonton 2009/12/29 23:58  なかなかいい話ですが、画竜点睛を欠くというか。他人の欠点には目が向くが、自分の欠点には目が行かないというか。

> タミフルが健康成人の死亡を減らすかどうかについては議論の余地はあるが、

 これについてもきちんとオッズを示してみましょう。
 「タミフルを飲んで死んだ健康成人」
 「タミフルを飲まないで死んだ健康成人」
 実は、オッズを示すまでもなく、「新型インフルエンザで死んだ健康成人」はほとんどいません。死亡率はゼロ同然。では、タミフルは、死亡率を(ゼロよりも)引き下げる効果がどのくらいあるか? 
 こんなことを議論している人がいるんでしょうか? 

 日本感染症学会には逆らえない(間違いがあっても指摘できない)、というお気持ちはわかりますがね。

NATROMNATROM 2009/12/30 00:06 tontonさん、久しぶりですね。あまり久しぶりでないような気がしますが気のせいでしょう。今回のtontonさんの発言は、間違いを見抜く練習問題とするにはほどよい具合です。

nn 2009/12/30 20:44 「オッズ比」とかまで持ち出さず、この解析の何が問題なのかを日本語で補足。
浜氏はインフルエンザで死亡した数十人のデータ「のみ」を細かく解析して(したふりをして)、死亡率との関連を印象づけていますが、その時点で、そんなことできるわけがありません。
「数十人の犯罪者を解析したら、犯罪者の大多数は犯罪前の24時間以内にパンを食べていた」といった情報をいくら集めても、「パンによって犯罪が増える」という結論は導けるわけがありません。その結論を導くためには、絶対に「非犯罪者」との比較が必要です。
これだけでは有名なコピペレベルなので流石に小学生でも騙せませんが、浜氏はここで(マジなのかどうか分かりませんが)、「犯罪者を日本人と米国人に分けて解析するとパンの食べ方に違いがあった」という計算をして、米国の犯罪率が高いのはパンのせいだ、みたいなことを言おうと試みています。が、結局、犯罪者だけしか見てないことに変わりはないので、そんな解析で「パンで犯罪が増えるかどうか」についての結論は絶対に出てきません。それだけ理解していれば、あとは数式を持ち出す必要すらありません。

にしても、浜氏の書き方はあくまで「タミフルを使うと、進行型で死亡するより突然死する危険が11倍高まる」ですね。そこまで間違ってないような(笑) もちろん実際は「タミフルは進行型(肺炎合併例などのことと解釈)での死亡を劇的に低める効果があるから、相対的に突然死(心筋炎などのことと解釈)のリスクの方が高く見える」ということでしょうが。

__ 2009/12/31 19:51 俺今飲んでるけど死んでないよー

wadjawadja 2010/01/01 01:12 >tontonさん

対照群二つで何を調べるつもりなのですか?

おかだおかだ 2010/01/03 08:59 >>対照群二つで何を調べるつもりなのですか?

「tontonさんは正しい」と「NATROMさんは間違っている」の“比較対照”かも(^_^;)。

うましかうましか 2010/01/09 22:26 聖マリ辺りを卒業したうだつの上がらぬ暇な医者かな?