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cover ■「ニセ医学」に騙されないために

 ホメオパシー、デトックス、千島学説、血液型ダイエット、ワクチン有害論、酵素栄養学、オーリングテストなどなど、「ニセ医学」についての本を書きました。あらかじめニセ医学の手口を知ることで被害防止を。

2010-03-31 在宅酸素療法中の喫煙と火災

[]在宅酸素療法中の喫煙と火災 在宅酸素療法中の喫煙と火災を含むブックマーク

慢性呼吸不全の治療の一つが在宅酸素療法である。家庭で酸素をつくるための酸素濃縮器を作っている会社のプレゼンで、火災の延焼実験の動画を見たのだが、これがインパクトがあった。ネット上にないか探してみたのだが、以下のニュース映像の30秒目ほどにある。


D


酸素が吹き出しているカニューレ(チューブ)に火気を近づけたら当然こうなるであろう、というのは知識ではわかっているのだが、実際の映像を見るとこれがなかなか恐ろしい。なお、動画の「チューブを鼻につけ酸素を吸引しながら喫煙し髪の毛や衣服に引火し死亡→全国で26件」というキャプションは誤りである*1。動画では喫煙が原因で死亡した事例が26件であるように解釈できるが、正確には、平成15年10月から平成21年12月までに在宅酸素療法実施者の自宅において火災が発生し、患者が重篤な被害をおった27例(うち死亡26例)のうち、喫煙によるものは15例である*2。喫煙以外の原因は、不明、漏電、ストーブ、仏壇などである。

とは言え、火災の原因の半数以上が喫煙なわけだ。多くは喫煙が原因で慢性呼吸不全に陥ったであろうに、それでもなお喫煙を続けている人もいるのだ。たとえ病気を悪化させ、寿命を短くさせようとも、本人が情報を提供された上で喫煙を続けることを選択したのであれば、私はその選択を尊重したい。しかし、酸素療法中となると話は別である。なぜなら、火災を起こすと他人が巻き添えになるからだ。もちろん、喫煙を続けている人に対して在宅酸素療法を導入することは基本的にはない。しかし、一旦喫煙を止めた後に再開することだってある。在宅酸素療法中の患者の喫煙者の割合はどれくらいだろう?「在宅酸素療法患者の喫煙実態調査報告」という抄録があった*3。主治医へ申告しているとは限らないので、在宅医療メーカーの協力のもと、実際に患者宅に訪問する担当者によって調査したとのこと。


対象患者12181名中,喫煙者は290名(2.4%),喫煙疑いは269名(2.2%)であった。喫煙患者290名がHOT(引用者注:在宅酸素療法)導入に至った原疾患はCOPD 175名(喫煙患者の60.3%),結核後遺症46名(同15.8%)等である。主治医が喫煙事実を知る例は82名(28.2%)のみであった。訪間宅の同居家族が喫煙する家庭は約14%あった。


2.4%が多いか少ないかはともかくとして、在宅酸素療法中の喫煙者の存在は、臨床上のジレンマになるだろう。診療中に、患者が喫煙者であることが判明したとする。その時点で在宅酸素療法を打ち切るべきか?潜在的な火災の被害者のことを考えればそうするべきである。しかし、在宅酸素療法の中止は、患者の生活の質を著しく落とし、場合によっては命に関わる。あるいは、患者が「これからは絶対に吸いません」と約束したら?そもそも、主治医に正直に喫煙を申告したら治療を中止されるのであれば、患者は喫煙しているという事実を隠すだけである。だったら、COモニターで、患者が嘘をついていないかチェックすることを義務付けるべきか?

一番いいのは、患者が自ら喫煙を止めることである。酸素カニューレに引火する実験映像が在宅酸素療法中の喫煙者がタバコを止めるきっかけになればいいのだろうが、それでも止めない人はいるだろう。そもそも燃えない酸素カニューレというのは作れないのだろうか。これは専門外なので全くわからないのだが、作れるものならとっくに作られているはずなので、技術上だか、コスト面だかの問題があるのだろう。冒頭で紹介した酸素濃縮器を作っている会社のプレゼンは、「安全性に配慮」した新製品の紹介であったのだが、その新製品は、酸素出口のセンサーが過熱を感知したら酸素の供給を停止させる機能を持ってるのだそうだ。カニューレにはセンサーはつけられないので、仮にカニューレに引火したとしたら、実験映像にあったように患者の体に沿って導火線のように燃えつつ、炎が酸素濃縮器の酸素出口に到達した時点でやっと酸素供給が止まるわけだ。これでも火災になる危険性は少なくなる。これまでの製品では、酸素濃縮器まで燃えていたのだから。

*1:細かいとこまで言わせてもらえば、「酸素を吸引」ってのもおかしい。「酸素を吸入」が正しい。冒頭の「酸素に引火」ってのも不正確。酸素じゃなくてカニューレに引火したのだろう

*2■在宅酸素療法における火気の取扱いについて(厚生労働省)、一般社団法人 日本産業・医療ガス協会の■在宅酸素療法における 火気の取扱いについて(PDFファイル)

*3:大林浩幸、日本呼吸器学会雑誌、45巻P124

mimonmimon 2010/03/31 23:00 NATROMさん、
> そもそも燃えない酸素カニューレというのは作れないのだろうか。

私は、火を燃やすのが商売ですから、その裏返しの「燃えないもの」も、ある程度存じています。
空気中の酸素濃度では、燃えないものの場合、酸素濃度を上昇させて、燃えるようになる濃度を「酸素指数」と呼びます。さすがに、酸素指数100の樹脂は、思い当たりませんが、テフロンとも呼ばれるPTFE樹脂の場合、95くらいですので、「酸素濃縮器」の用途に使えると思います。
少々硬めの樹脂ですから、顔に触れる部分は、少量の「難燃材」を使うか、セラミックや耐熱鋼の不燃性繊維を使うこともできるでしょう。
着衣も、一番上だけは、ガラスウールで織れば、アルミニウムのコーティングまでは不要だと思います(消防士さんではないのですから)。
そこまでして、喫煙するのも、どうかと思いますけれど。

NATROMNATROM 2010/03/31 23:50 喫煙しないとしても、「ついうっかり」の事故はあるものです。実際、死亡事例の半数近くが、喫煙以外の事故でした。mimonさんのアイディアがもし実用化されれば、年間で4-5例ある死亡事故が減らせるでしょう。報告に上がっていない、「重篤な事故」とならないまでも熱傷等のケースもあったでしょうから、恩恵を受ける人はさらに多くなります。「不燃性だから喫煙しても大丈夫」てなことにならないようにする必要はあるでしょうけどね。

AH1AH1 2010/04/01 00:43 より安全な機器の開発は不慮の事故(半数弱)を防ぐために有効、とのNATROMさんの意見に同意しますが、喫煙者としては「・・・・orz」としか言い様がないです。やはりこういう事故はありましたか。父親が在宅で酸素吸入をしていた時は本人も私も家族に火気厳禁を言い渡しましたが・・・

wadjawadja 2010/04/02 00:48 カチューレを難燃せいの材質に変えるとか、患者の衣服を不燃性繊維に変えるだけでも、事故の大半は防げるような気がします。だって、酸素だけなら燃焼(酸化反応)は起きないから。

wadjawadja 2010/04/02 00:48 カチューレを難燃せいの材質に変えるとか、患者の衣服を不燃性繊維に変えるだけでも、事故の大半は防げるような気がします。だって、酸素だけなら燃焼(酸化反応)は起きないから。

wadjawadja 2010/04/02 00:50 カニューレでしたorz

たるたる 2010/04/02 08:27 近くに100℃以上の熱源を関知したら酸素を停止させる赤外線センサーみたいなものは無理でしょうかね?
そうすれば喫煙→即酸素供給停止と出来ますけど。

BB 2010/04/02 09:05 肝臓医は飲酒自己申告量を頭から疑ってかかるという風の噂(ソースは●●)
在宅酸素処方医が禁煙申告をどれくらい信じてどれくらい疑うのかと比較した統計調査には若干の興味が

>在宅酸素療法の中止は、患者の生活の質を著しく落とし、場合によっては命に関わる。
 酸素の有無で自覚的なQOLの改善、予後改善、医療費、消防関連コストはどの程度で喫煙の継続との損得勘定(個人的・社会的)やいかに?

>主治医に正直に喫煙を申告したら治療を中止されるのであれば、患者は喫煙しているという事実を隠すだけである。
 完全に推測ですがそこまで単純でないもうちょっと機微かけひきがありそうですね。一種の共犯関係的な。(まあその辺も含めてお分かりの上かかれているのでしょうけれど)

しんじゃえしんじゃえ 2010/04/02 09:14 COPDでHOT療法を導入する前に禁煙を徹底するのは当然。
アルコール性肝硬変の人に肝移植する前に、その患者がアルコール依存でないことを確認するでしょう。
HOTが必要なのにたばこ吸う時点で、もうしんじゃえ〜って思います。

むかし、研修医時代に血圧180のおっちゃんが入院してきて、教科書通り塩分制限食にしたら毎食梅干し3個食べてたことが発覚し、しんじゃえ〜と叫ぶ直前にオーベンに口をふさがれたことを思い出しました。

NATROMNATROM 2010/04/02 09:46 他にも糖尿病の先生は、患者さんの食事量・間食の有無の自己申告をどこまで信用しているのか、という問題が。診療のためには患者さんから正しい情報が提供されるのが望ましい一方で、患者さんのためを思って厳しい指導を行ったら虚偽申告が増えてしまうのはジレンマですね。

dimitrygorodokdimitrygorodok 2010/04/02 13:48 煙草と言う点に反応してあの様なブックマークコメントをおつけしましたが、やはり他のケースも有る訳でベストは周囲の変化に応じて自動的に供給を止められる機種の開発ではないかと思う様になりました。
禁煙治療にしても時間がかかる訳ですし、それを待っていては間に合わない場合も多いでしょうし・・・

bjectbject 2010/04/02 16:59 タバコに、失火保険をもれなく付けて、補償を厚くするのはどうでしょうか?
カニューレを難燃せいの材質に変える 材料費負担を、喫煙者本人がするのなら良いですが、健保加入者全体が負担するなら、ちょっと待って、と思います。

mimonmimon 2010/04/02 23:30 本文のリンク先を見ますと、NATROMさんのおっしゃる「ついうっかり」もありますね。火元に仏壇(マッチ、ろうそく、線香でしょう)や台所(たぶんコンロ)もありますから、直接、酸素カニューレに火が移ったとは限りません。
酸素濃度が高まった雰囲気で、着衣に着火した可能性があります。
そういったケースには、防炎の衣類が有効だと思います。
http://www.kokusen.go.jp/news/data/n-20081204_1.html
防炎製品といっても、何のことはない、アクリルの混紡です。
意外に知らない人もいますが、羊毛は、酸素指数が25近くの難燃材です。防炎加工されたものでしたら、酸素指数が30を超える、不燃材も珍しくありません。
あまり不燃性の衣類にこだわって酸素指数50超えですと、こんな物になりますので、お薦めしません。
http://ec.midori-anzen.com/shop/g/g4061000103/

西西 2010/04/03 01:07 カニューレに細い導線を埋め込み、火がついてカニューレ内の導線がが焼き切れたら酸素の供給を停止する機能を付ければ
もし火がついても軽いやけどで済むようにできるかもしれません

読者読者 2010/04/03 01:33 動画中のマネキンによるシュミレーションを見る限りでは、
鼻に挿入する部分も含めたチューブ類を不燃にするだけでは
(内部可塑塩ビで必要十分だと思われるのに、環境原理主義の悪癖か)
根本的対策にはならないような

QOLは下がってしまうとは思いますが、高濃度酸素=危険物を扱う限り
密閉型マスクを義務付けるしかないかと
内緒でたばこを吸おうと思ったら外さざるを得ないような もちろん着脱による安全装置付きで

503503 2010/04/05 09:11 HOTやってるのに、こっそり吸っていたじーさんがいました。
家中のタバコを捨てても、動けないはずなのに吸っている。
その後高校生の孫に小遣いやって、買ってこさせたのが判明。
目的のためには手段を選びませんな。
幸い、半年ほどで昇天されましたが。

PochiPochi 2010/04/05 13:27 すみません、エントリー5日目にしていまだヘリオックスへの言及がないのはなぜなんでしょう。液体酸素ならオン・デマンドですから極端な話、使用しながらタバコ吸っても安全ではないかと。これは冗談ですが、火気の心配はほとんどないのでは。身内が在宅酸素になるとき、液酸を指定したのに医師からの抵抗がずいぶんありました。労作時吸引という診断でしたので、外出時の負担の大きい酸素ボンベは断固お断りしました。こんなわたしはモンツキ(モンスター付き添い)ですか?

(oミ ̄∇ ̄ミ)o(oミ ̄∇ ̄ミ)o 2010/04/06 02:26 液体酸素システム「ヘリオス」ならエントリ中の動画に出てますね。画面左端の機械がそうでしょう。
オンデマンドならタバコを吸っても安全てのは後で書かれているように冗談なのでしょうね。
「ヘリオス」でも極普通に火気厳禁、煙草ロウソクもってのほかのようです。

ところで在宅でヘリオックスなんか使うんですか?
設備が整った施設での救急救命事例しか見つからなかったが…

それにしてもHOT喫煙者の方々は、当にヘビィですねぇ。
我がオヤジも「ヘビースモーカー」だと思ってたけど、神経痛で止めたから軽いものだわ。
ある意味ターミナルケアの一環として、引火の危険の少ない「安全煙草」を開発した方がいいのかも…

PochiPochi 2010/04/06 03:17 >ところで在宅でヘリオックスなんか使うんですか?

大変申し訳ありません。ヘリオックスという商標だという偽記憶でした。
もちろんヘリオスのことで、混合ガスではありません。

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