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cover ■「ニセ医学」に騙されないために

 ホメオパシー、デトックス、千島学説、血液型ダイエット、ワクチン有害論、酵素栄養学、オーリングテストなどなど、「ニセ医学」についての本を書きました。あらかじめニセ医学の手口を知ることで被害防止を。

2010-06-25 食の安全と環境−「気分のエコ」にはだまされない

[][]食の安全と環境−「気分のエコ」にはだまされない 食の安全と環境−「気分のエコ」にはだまされないを含むブックマーク

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■食の安全と環境−「気分のエコ」にはだまされない(シリーズ 地球と人間の環境を考える11)


松永和紀の新刊。ちなみに、和紀は、「かずのり」ではなく、「わき」と読む。本書のサブタイトルは『「気分のエコ」にはだまされない』。「気分のエコ」については、具体例を出すのがいいだろう。地産地消、つまり地域で取れた食品をその地域で消費することは「エコ」であると、一般的には考えれられている。確かに、遠くの外国から輸入するのと比較して、地産地消では食品を輸送するための燃料は少なくて済みそうだ。しかし、以下に引用する事例は、まったく「エコ」にはなっていない。


 たとえば、ある中国地方の団体が、地産地消活動の一環として、地元産のコメをレトルトパックのご飯にして売ることにした。だが、ご飯のレトルトパックは地元産業では作れないため、関東地方の企業にわざわざ地元のコメを持ってゆき加工したそうだ。「地産地消」の名目で、コメが日本列島を大横断している。

 あるいは、「安全でエコな生活を」と、休日に都会から地方の直売所に車で乗り付ける消費者も目立つ。大型乗用車に乗っているのは一人か二人。買うのはごくわずかな野菜、というタイプだ。快適なドライブで、地方のよい空気を吸って気分がよいのは分かる。だが、近くのスーパーマーケットに歩いて行って買う方が、おそらくうんと環境にはやさしい。スーパーマーケットに並ぶ野菜は多くの場合、効率よく大量生産され、エネルギー効率のよい大型船や鉄道、大型トラックで運ばれているからだ。(P18)


これは「気分のエコ」の非常にわかりやすい例である。他にも、地産地消が必ずしも環境に良いわけではない具体的な事例が挙げられている。たとえば、食パンの原料として、国産小麦と北米産小麦をCO2の排出量で比較すると、ほとんど違いがないそうだ。北米産小麦は燃料を使って輸送されてくる。一方で、国産小麦は、水分の含有量が多く、かなりの化石燃料を使って乾燥させなければ、カビ毒などの安全性に問題が生じる。輸送によるCO2排出量は、乾燥過程で排出によって相殺されてしまうのだ。あるいは、トマトについては、加温しない雨よけ栽培トマトを運んでくるより、地元の温室栽培のほうがCO2排出量が多い。

ならば、温室栽培をあきらめて、「地元の旬」のものだけを食べばよいのではないか?それはそれで、別の問題が生じる。環境問題はトレードオフ、つまり、「一方を追求すれば他方を犠牲にせざるを得ないという二律背反の状態*1」の問題でもある。本書では、「環境」と「食の安全」が必ずしも両立しない、それどころかむしろ、「一方を追求すれば他方を犠牲にせざるを得ない」という関係が頻繁に発生していると指摘されている。環境のことだけを考えれば、「地元の旬」のものだけを食べるのがよいかもしれないが、健康リスクが生じるかもしれない。たとえば、日本の火山国であり、土壌中のカドミウム濃度が高い。地域によっては食用にできないほどのカドミウム濃度の高いコメができる。


 皮肉なことだが、コメのカドミウム濃度が高くても、日本人が健康影響を心配せずにすむのは、コメを食べる量が減ったからだ。最近は「コメを食べて自給率を上げよう」という運動が盛んだが、日本人が再びコメを大量に食べるようになれば、カドミウムの摂取量は増え健康影響をもたらす可能性もあり、規制をより厳しくする必要が出てくるかもしれない。

 諸外国に比べて食品中の含有量が高いのは、カドミウムだけではない。ほかにも、土壌条件や食習慣などから、日本の方が諸外国に比べてはるかにリスクが高くなっている食品は少なくない。(P15)


国立医薬品食品衛生研究所の畝山智香子・主任研究官*2によれば『世界中からあらゆる食品を輸入している現在の日本の状況の方が、リスクの分散ができているという意味で「より安全」と言える』のだそうだ。栄養学的にも、選択肢が多いほうが容易にバランスの良い食事が可能になる。「栄養価の高いトマトをはじめとする生鮮野菜を年間を通してふんだんに食べる生活が実現して、日本人は健康になった。健康面を考えると、地元産や旬だけにこだわらず、さまざまな農産物を運んできて食べることもまた、重要なのだ(P14)」

ここでは、地産地消の例を挙げたが、この本ではさまざまなトレードオフの事例が挙げられている。除草剤を撒く代わりに、化石燃料を消費しつつ草刈りをするのは環境によいか?毒性の強いとされる農薬DDTをマラリヤ予防に使うのは?アイガモ農法は人獣共通の寄生虫の感染症のリスクにならないか?保存料無添加にこだわると、冷蔵のためのエネルギーの無駄や食品の廃棄が増えるのではないか?

一つ一つの事例が具体的だからわかりやすい。食育では、食の安全と環境はトレードオフの問題であることを教えるべきであるのに、安易な添加物・農薬・遺伝子組み換え作物批判にしかなっていない例をよく聞く。それは、「気分のエコ」に騙されているにすぎない。本書は、そうした誤解を解くための役立つだろう。



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*1:URL:http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%88%E3%83%AC%E3%83%BC%E3%83%89%E3%82%AA%E3%83%95

*2■食品安全情報blogの人。畝山氏による■ほんとうの「食の安全」を考える―ゼロリスクという幻想も読む価値のある本だ。「食の安全と環境」と比較すると、やや専門的に感じるが、挿絵に味がある。

inoue04inoue04 2010/06/25 14:16 >『世界中からあらゆる食品を輸入している現在の日本の状況の方が、リスクの分散ができているという意味で「より安全」と言える』のだそうだ。

水俣病、イタイイタイ病、新潟水俣病などの、食物が原因となった公害事件では、犠牲者の大半が、生まれてからずっと同じ土地に住み、土地の産物を食べてきた人たちでした。地産地消で公害病。

mimonmimon 2010/06/25 21:50 松永和紀さんのその本、私も買って読みました。発売直後に買って、読みやすいのですぐに読み終え、奥付を見たら、まだ発行前でした。週刊誌などでは、よくある現象ですが、単行本だと「勝った」気分になります。

私が一番印象に残ったのは、p126.の
>  一つ気になる研究結果がある。森山達哉・近畿大農学部講師らによる実験では、無農薬栽培さ
> れたリンゴは、一部の人にアレルギー症状を起こすアレルゲンの量が多く、農薬を使いそれ以外
> は同じ条件で栽培されたリンゴはアレルゲンがほとんどなく、農薬を春先のみ使ったリンゴは、
> その中間だったという。
でした。
葉っぱ物を無農薬栽培すると、虫食いなどのストレスで「防御物質」が増えるのは、理解できますが、元々食べられるための果実でも、そうなのですね。確かに、鳥に丸呑みにされて、種子を運んでもらえたら本望ですが、虫においしい所だけかじられたら、「ただ食い」です。リンゴが「このさじ加減が難しい。」と、ぼやいているような気もします。
オッカムなら、「植物は、葉と果実とで全く違う反応をするほど分化していない。」とか、言いそうですけれども。
以前、話題になりました「奇跡のリンゴ」は、人によっては、危険な可能性も考えられます。

エディエディ 2010/06/26 01:08 >mimon さん
「奇跡のリンゴ」と森山達哉・近畿大農学部講師の研究については、
http://techon.nikkeibp.co.jp/article/COLUMN/20090212/165571/
でも取り上げられていました。


TOSS教師は「気分のエコ」に騙されて、「地産地消」を薦めてそうな悪寒…。

tikani_nemuru_Mtikani_nemuru_M 2010/06/26 16:58 この本は丁寧に書かれていてよかったと僕も思う。
ところで
地産地消は地元経済の活性化という文脈では意味がある。
皮肉なことに、環境より経済を優先させるというトレードオフにおいて、地産地消は意味があるといえるわけだ。

mimonmimon 2010/06/26 17:25 エディさん、ご教示いただきありがとうございます。
実は、私はまだ「奇跡のリンゴ」の本を買っていません。だって、あんな「実話に基づいたフィクション」が\1,365-もするのですよ。いま、amazonの古本を見たら、まだ\497-もします。これがamazonで\1-(送料別)かBookOffで\105-均一で出たら買ってみます。(時間の無駄ですから、読むとは限りませんけれども、まぁ、エンギモンみたいな感じでしょうか。)
とはいっても、少し気になりますので、ご教示いただいたページをひと通り読みました。2ページ目にこんな記述があります。
> 6年目に大豆をばら撒いた。
まさか、アメリカ産のダイズの種子を粉に挽いて、施したわけではありませんよね。そうだとしたら、「無肥料」ではなく、超高級肥料の施肥にあたります。大豆カスなら、まだ許せる気もしますが。
私だったら、同じマメ科でもレンゲを植えるところですね。ダイズは、農産物ですから、やっぱり収穫したくなるじゃないですか。そうすると、ダイズだって根粒菌が固定してくれた窒素を種子に回して、茎や葉にはあまり残りません。それに対して、レンゲなら、花をつけて実がなる前に、容赦なくすき込むことができます。
農産物だって、自然科学に従って生きているのですから、霊的なナニカを求めちゃいけませんよね。TOSSって、妙にオカルト好きが集まってますから、嫌いです。

TOMOTOMO 2010/06/26 21:08 国産小麦と輸入小麦のCO2排出量の件は、日能研の車内広告にちょうど出題されていましたね。松永さんの本をたまたま読んだ児童が、本番でそのようなツッコミをしたらどの様に評価されるんでしょうかね。

カルロスカルロス 2010/06/26 22:18 いつも拝見させていただいております
カルロスと申します。
初めてコメントさせていただきます。
この本は読んでいませんが、核心を突いていると
思います。
しかし、どうせ核心を突くならば、
「我々人類が健康で繁栄することと、エコであることは
必ずしもイコールではない」ということを
書いてほしいと思いますが、
そのような記述はあるのでしょうか?
(そもそも「エコである」という表現自体が?ですし、
「エコである」という表現の定義も?ですけどね)

電気屋電気屋 2010/06/26 23:49  やつがれの感覚だと、「エコとはすなわち人類が健康で繁栄すること」であり、決して地球環境保全ではないって理解だな。だから、「地球に優しいエコ」とか言われるとちょい待てやゴルァ!て思っちゃうワ。

エディエディ 2010/06/27 18:57 >TOMO さん
>国産小麦と輸入小麦のCO2排出量の件は、日能研の車内広告にちょうど出題されていましたね。
http://www.nichinoken.co.jp/column/shikakumaru/2010/1007_sh.html
だと思いますが、「国産米と輸入小麦」の比較ですよ。

通りすがり通りすがり 2010/06/28 01:51 ちょっと疑問に思ったんですが、世間一般ではそんなにエコ中心の生活をしてる人っているんでしょうか?エコに振り回されている人ってほんの一部だけだと思いますけど??
例えば似たような製品を買うならなんとなくエコっぽい物のほうが良い→だからエコを売りにしているものを買う、普通の人ってその程度のものだと思いますが?エコバックにしても名前にエコが付いただけで、昔から風呂敷や予備の袋を持ち歩く習慣の人って結構いましたし。私は地方住まいなので都市部の人とは生活の仕方が違うだけかもしれませんが。

nrtnrt 2010/06/28 18:28 > 似たような製品を買うならなんとなくエコっぽい物のほうが良い→だからエコを売りにしているものを買う
という人には「エコ」が十分に付加価値として機能している状態であり、「エコ」を売る側はまさにそういう「なんとなくエコ」の人を狙っているはずです。(一部のエコ中心の生活をしている人だけでなく。)
そうした状況で、本当にその「エコ」に価値があるのか?他に見るべき・優先すべき点があるのではないか?をちゃんと考えてみよう、というのが論旨なのではないでしょうか。

inoue04inoue04 2010/06/29 15:59 選挙演説やマニフェストでは、エコロジー教の教義をまぶすと、ナンセンスな主張の聞こえがよくなります。だから、エコロジー教は私たちの生活に多大な影響を与えているし、無視することもできない。

KotaroKotaro 2012/01/31 20:50 最後の段落の畝山千賀子氏は正しくは智香子です。
細かいところですが、一応人名ですので訂正お願いいたします。

NATROMNATROM 2012/01/31 23:15 訂正いたしました。ご指摘ありがとうございました。