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2010-08-12 ホメオパシーの有効な利用法
■[医学]ホメオパシーの有効な利用法

ホメオパシーのレメディは実質的に砂糖玉と一緒で、薬理的な効果は何もない。にも関わらず、というか、だからこそ、診療でレメディが使えたら、結構便利だろう。いくらでも使いようはある。たとえば、
- 薬に抵抗のある人に
「ワクチンは嫌」「ステロイドって副作用が酷いんでしょう?」などと、副作用を過度に恐れて、医学的に必要な薬の使用を嫌がる人がいる。薬を使わないより、薬+砂糖玉のほうがまし、という場合には、「薬の有害性を打ち消すレメディー」を同時に摂ってもらうことで、薬の使用に納得を得やすくなる。実際には「薬の有害性を打ち消す」のではなく、「薬に対する不安感を打ち消す」ことを期待して使う。
- 薬が不要の人に
一方で、単なる風邪に対して、「総合感冒薬と解熱薬と咳止めと抗生物質と胃薬を処方してください」などと、医学的には不要なのにやたらと薬を希望する患者さんもいる。そういう患者さんには、「自然治癒力を引き出すレメディー」を摂ってもらう。別にレメディーに引き出されなくても自然治癒力は働く。漢方薬でも代用できなくはないが、漢方薬には有効成分が含まれているので、稀ながら副作用が出る可能性がある。100%砂糖のレメディなら安心だ。(■良心的なホメオパシーで、フランスでは医師がちょっとした風邪にレメディを処方している運用方法を紹介した)。
- 他に治療法のない人の心の安寧
進行癌で標準的な治療がなくなってしまった人は、高価な代替療法に頼るか、あるいは緩和ケア(ホスピス)しかないのが現状である。病状が進行すれば緩和ケアでもいいが、まだそこまで全身状態が悪くない人は、いわゆる「がん難民」となってしまう。詐欺まがいの高価な代替療法にひっかかるぐらいなら、砂糖玉のほうがまだマシなのではないか。少なくとも、患者さんが「あなたにできる治療法はありません」と突き放されることはなくなる。(■インフォームドコンセントのコストで、「治らない」「ホスピスを探してください」と医師が言うがゆえに、患者が詐欺まがいのインチキ代替療法にひっかかるのだ、という主張について論じた)。
医師以外のホメオパシーの利用方法もありうる。
- ホメオパスによるカウンセリングやトリアージ
「話を聞いてもらうだけで安心して症状が改善する」ような患者さんもいる。医師が話を聞いてあげられればいいのだが、医師不足のために十分な時間がとれないし、コストも高くつく。基本的な医学知識のみを習得させたホメオパスに対応させるほうが、コストは安くつく。医学知識は「重篤な疾患を見逃さないこと」に特化させる。たとえば、「胸痛」「激しい頭痛」「38度以上の発熱」「自殺念慮」は即座に医師に相談する、「38度以下の発熱」「腹痛を伴わない下痢」「不眠」はレメディ処方で3日間経過をみて改善がない場合には医師に相談する、などのルールをつくる。医師が診察して、ホメオパスでも診れると判断した場合の「下請け」も行う。(患者の満足度を上げるために「お話を聞く」役目をつくるというアイディアは■あるいは愚痴で論じた)。
- セルフケアによる安心感
無駄な救急車利用や時間外受診が問題となっている。むやみやたらと医療機関を受診して医療資源を浪費するより、砂糖玉でもなめてもらったほうがましである。問題は、「大丈夫だと思って様子をみていたけど実は重篤な病気だった」というケース。今でも、「子供が発熱しても元気があれば様子を見ましょう。活気がなかったり尿が出ていなかったりした場合は受診しましょう」などといった指針はある。しかし、「元気がある子供の発熱は緊急の受診の必要はない」と言われても親は不安であろう。「元気がある子供の発熱は、レメディを投与して様子を見る」という指針のほうが安心する親がいるかもしれない。砂糖玉は安全なので、医師やホメオパスでなくても使用できる。(■良心的なホメオパシーで、医師の診察を受けるべき基準を明確に示してあるホメオパシーの本を紹介した)。
「ホメオパシーの有効利用」の問題点
運用次第では、ホメオパシーも有効であるように思える。しかし、現実的には日本において有効なホメオパシーの運用には問題がある。二点ほど問題点を挙げよう。一点目は、ホメオパシーは、現代医学の否定と強く結び付いているという現実がある。ホメオパシー団体は、「現代医学を否定してない。現代医学と協力してやっている」と自称しているが、それは建前に過ぎない。具体的な実例は、■喘息に対するステロイド治療を否定するホメオパシー、■ホメオパシーと医療ネグレクト、■ホメオパシーについて朝日新聞が詳報、などで論じた。「ホメオパシーを有効利用しよう」というメッセージは、こうした現代医学を否定するホメオパシー団体に悪用されるであろう。現代医学を否定するホメオパシー団体が、ホメオパシーを有効利用する可能性を殺したのだ。
二点目は、インフォームド・コンセントの問題である。ホメオパシーの有効利用と、「十分な情報を提供した上での患者の選択」とは衝突する。「レメディはただの砂糖玉」であることを知らされたとしたら、末期がん患者にとってはたしてホメオパシーが心の安寧になるだろうか?「代替医療のトリック」 の著者たちは、プラセボ効果を期待した代替医療の使用に批判的である*1。
われわれがプラセボにもとづく代替医療は用いるべきではないと考える主な理由のひとつは、医師と患者の関係が、嘘のない誠実なものであってほしいと思うからだ。この数十年ほどのあいだに、医師と患者が情報を共有し、十分なインフォームド・コンセントにもとづいて関係を作り上げていく方向にはっきりと合意が進んだ。それにともない、医師たちは、成功する可能性がもっとも高い治療法を用いるために、《科学的根拠にもとづく医療》の立場をとることになった。プラセボ効果しかない治療に多少とも頼ることは、めざすべき目標のすべてをくつがえすことだ。(P315)
プラセボ効果ではなく心の安寧を期待する場合も、基本的には同様である。「騙されていた方が患者のためである」というパターナリズム的な医療である。「薬に抵抗のある人」「薬が不要の人」に対するホメオパシー使用も、同様にパターナリズム的な医療である。根本に「患者より医師の方が薬の効果について正しく判断できる。患者のために医師が判断してあげなければならない」という前提があるからだ。ホメオパシーの有効使用は、患者の自己決定権とのトレードオフになる。ホメオパシーが伝統的な医療である欧州で、ホメオパシーが公的保険から外される動きが出てきたのは、患者の自己決定権が重視されてきたことも関係があるのではないか、と個人的には考えている。
関連記事
*1:個人的には、限定的な場面では医療にパターナリズムが必要になることもあり、ゆえに、医師の裁量の範囲内でプラセボにもとづく代替医療を使用していいケースもありうると考える










ちなみに、欧米では、無宗教な医者も病院もありません。ただ、この現実の違いでしょうね。
セカンド・オビニオンを得る場合にも、それは違う視点からの論理的な示唆、であって、非論理や、論理否定、ではありません。
その点で、見事にニセ医療になってしまうんですよね。
> 代替医療
# アロマは気分転換にはいいのだけど、あれを医療と言われると困る。
カウンセラーのいるところは予約取れないし、医師には時間かけて相談しづらいし、じっくり話を聞いてもらう人としては有効かも知れないと思います。
甘味とるだけで少し落ち着くし。
カウンセラーのような専門職でなくていい、聞き上手な人がたくさんいればと思います。
でも、薬を否定するならダメですね。今飲んでいる薬を切るのには、医師の慎重な判断が必要ですから。
きちんと連携してくれるなら私は受け入れることができると思うのですが。
そして患者がレメディーの効果を信じていることが何より必要でしょうか……結構難しそう。
医療現場に混乱をもたらす結果になるでしょう。
さすがに効くいわれがまったくないものに時間と気力と金を使うのを看過することはできません…
「NATROMの日記」が毎日新聞に載りました。
http://mainichi.jp/area/okayama/news/20100813ddlk33070596000c.html
岡山の地域ニュースの「きび談語」というやつです。名前の紹介だけでありリンクは貼ってありませんけどね。非常に好意的に書かれています。
毎日の記者さんもこのサイトを見ているのですね〜。
この件考えると、このエントリーの言っている皮肉さ風味が増すような。
日本が、まだまだ自己決定については未熟な場合がある、という事になる。
いずれにせよ、パターナリズムを欲している人にしか有効ではないし、そのパターナリズムは、療法というより、医師への信頼、ですよね。
...という事は別に、それがビタミン剤だっていいわけで、特定の代替療法でなくても良いと思います。(変な医療否定の主張をしている療法に接近するのは、逆に害があると思いますよ。)
> work_memo さん
さて、ちょっとだけ見ましたが、ハイパーサーミアって熱中症の名称ですし、糖尿病って血栓のリスクが高いので、血液濃くしたら、悪影響高いです。
そういう事をしっているのか、知らないのか分かりませんが、そういうのを勧める存在というのは、迷惑極まりませんよね。
(ハイパーサーミア=熱中症 / ハイポサーミア = 低温症、いずれも死に至る事がある、非常に危ない状態の症状名称)
ホメオパシー以前からのヨーロッパの伝統薬でArnica Montanaという植物の成分を使ったものがあり、クリームやGelなどの外用薬の形で打ち身などの痛み止めに使われています。ホメオパシーでも、このクリームやGelは、濃度は伝統薬より低いようですが、「分子がない」レベルまで希釈されてはいません。これの外用薬としての有効性についてはさておき、内服すると外用薬と違って吸収良く全身に回るので、かなりの毒性があり、ホメオパシーでのクリームでも例外ではないようです。「ホメオパシーのレメディ」として飲むArnicaは別にあって、こちらはなるほど砂糖玉に過ぎないようですが。
また、FDAのサイトには、Arnica Cream と言っておいてイブプロフェンを入れている製品に対する警告状が複数掲載されています。
検索したらLance Armstrong財団のサイトにも、やや詳しい一般向け解説があったのでとりあえず。
http://www.livestrong.com/article/145339-side-effects-of-arnica-cream/
ひとまずフォローがはいってたので、そのままにしておきます。
(ホメオパシーが入ってたので、温熱療法まで代替療法と勘違いしました。すみません。)
お詫びに下記リンクなど。
> がんの温熱療法
> http://www.taishitsu.or.jp/hyperthermia/
なお、ホメオパシー自身で問題発生した内容としては、ここらへんなんかも。
> http://transact.seesaa.net/article/159074533.html
> 温熱療法
このブログも「コンピューター技師」に頼んで書いてもらってるそうですw
ttp://blogs.yahoo.co.jp/tetsuyajpn/50005351.html
> 現代医学を否定するホメオパシー団体が、ホメオパシーを有効利用する可能性を殺したのだ。
ホメオパシーを有効利用することは可能です。(誰かが)ホメオパシーを有効利用する可能性を殺したということは、ありません。今からでも十分にプラセボ医療は実行できます。それは本項で示したとおりでしょう。ホメオパシー団体はそれを邪魔する能力をもちません。
> 「ホメオパシーを有効利用しよう」というメッセージは、こうした現代医学を否定するホメオパシー団体に悪用されるであろう。
このことはホメオパシーの有効利用を妨げる理由になりません。モルヒネを悪用する人がいるからといって、モルヒネの有効利用が妨げられるわけではありません。他にも、包丁とか、青酸カリとか、ダイナマイトとか、いろいろあります。
「ホメオパシーを有効利用しよう、ただし現代医療のもとで(医師のもとで)」と語れば、それで済むことです。もちろん、NATROMさんも、そう語ることができます。ホメオパシー団体に悪用される心配はありません。
また、ホメオパシー思想そのものは、モルヒネ並みの管理の必要がありません。すでに悪しき思想が流布しているので、それに対抗する正しい思想を流布させることは、改善になっても、改悪にはなりません。ホメオパシー思想そのものは、一般薬程度の管理(医師の管理)で十分です。
ホメオパシーが、これほど強く現代医学否定と結び付いていなければ、そうですね。
>ホメオパシー思想そのものは、一般薬程度の管理(医師の管理)で十分です。
ホメオパシーが、これほど強く現代医学否定と結び付いていなければ、そうですね。
「それに対抗する正しい思想を流布させる」ことにもコストがかかります。さらに、「レメディには薬効もないこと」を同時に流布させざるを得ませんので、そうなるとエントリーで書いたホメオパシーの有効利用の効果は激減するでしょう。
このことはどっちみち必要なコストです。NATROMさんが今やっているとおり。
ホメオパシーを公的に認可するからといって、別途加算されるコストではありません。
> さらに、「レメディには薬効もないこと」を同時に流布させざるを得ませんので、そうなるとエントリーで書いたホメオパシーの有効利用の効果は激減するでしょう。
最初からプラセボ効果と告げておけば問題ありません。それを科学的に理解する人は、もともと利用しません。それを科学的に理解しない人は、利用しますが、ホメオパシーの有効効果があります。つまり、利用する人に限っては、効果があります。効果が激減するとしたら、ホメオパシーを信じない人ですが、信じない人は、最初から利用しないので、効果の問題も発生しません。
「それを科学的に理解しない人」が多くいるような状態では、現代医学否定と結び付いているホメオパシーを使うのは危ないですね。別段、わざわざ今現在強く現代医学否定と結び付いているホメオパシーを使う必要はありません。
1)標準医療(現代医学ベース。二重盲検で検証済み+国の認可)
2)先端医療(現代医学ベース。まだ検証終わってない。遺伝子組み換えヘルペスウイルスなど。重粒子は2→1?)
3)現代医学の世界観?に基づいた代替療法(活性化リンパ球療法などの免疫療法、ハイパーサーミア、高濃度ビタミンC療法。ムコ多糖類系健康食品も? 検証は部分的)
4)現代医学とは異なる体系に基き、相補的に使われている療法(中医学、鍼灸など)
5)現代医学で明確に「効かない」とされているもの(ホメオパシーやなんとか水)
なんにしても、治療成績とリスク説明はきっちりやって欲しいものです。