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cover ■「ニセ医学」に騙されないために

 ホメオパシー、デトックス、千島学説、血液型ダイエット、ワクチン有害論、酵素栄養学、オーリングテストなどなど、「ニセ医学」についての本を書きました。あらかじめニセ医学の手口を知ることで被害防止を。

2010-08-30 ホメオパスの成功体験が悪性リンパ腫を見落とさせた

[]ホメオパスの成功体験が悪性リンパ腫を見落とさせた ホメオパスの成功体験が悪性リンパ腫を見落とさせたを含むブックマーク

リスクの大きさの感じ方は、代替医療に親和性のある人との間に大きな隔たりがあるようだ。新生児にビタミンKを投与しなければ、頭蓋内出血等で死亡する確率は2000〜4000分の1である。私を含めて、ほとんどの医師は、無視できないリスクと考えるだろう。だけど、そうでもないと考える人もいるようだ。


f:id:NATROM:20100831001941j:image

看護師敗訴だと仮定する。支払うべき損害賠償額は請求5640万円の1/4000すなわち1万4100円が妥当だろう。*1


医師のほとんどは、大学病院などの大きな病院で研修をはじめる。入院が必要な病気、生きるか死ぬかという病気、大学病院に集まるような稀な病気から診る。風邪や下痢といった「簡単」な病気からはじめて、だんだんと難しい病気を診ていくのではない。確かに、風邪や単なる下痢は「簡単」な病気である。特に治療しなくても、いや、間違った治療をしてすら、自然に治る。しかし、「簡単」な病気の中から、「稀な」病気を見つけ出すことは難しい。稀な病気の患者さんを実際に診たことがあるという経験が、稀な病気を見つけ出すのに役に立つ。

ヤブ医者でもない限り、医師は、「稀な」病気を見落とさないように診療する。もちろん患者のためにやっているのだが、医師の誠実さを信用できない人にも、「病気を見落として訴えられたらかなわん」という医師の利己心は信用してもらえるだろう。いきおい、診療は「稀な」病気を念頭におくことになる*2。頭痛の患者さんは「もしかしたらクモ膜下出血では?」。胸痛の患者さんの「心筋梗塞の可能性は?」。そもそも、クモ膜下出血も心筋梗塞も、医師からみたら全然「稀」でもなんでもない。だが、外来にやってくる患者さんが、クモ膜下出血や心筋梗塞である確率は低い。正確な統計は知らないが、数百〜数千分の1ではなかろうか。

病気の種類は山ほどあるので、大学病院で研修したとしても、たくさんある病気のほんの一握りしか実際には経験できない。経験できない分は、情報を共有することで補う。稀な病気を経験した医師が症例報告を行うのは、情報を共有するためだ。情報を集めることで、誤診の可能性を少しでも減らす。死亡した症例からも学ぶ。教育病院では、臨床病理検討会(CPC)といって、病理解剖が行われた症例を検討する会が定期的にある。

余談だが、大野病院事件において、担当産科医が不当に逮捕されたと医師たちが「騒いだ」ことは、「稀な疾患も念頭において診療する」という医師の習性によるものだったのではないか。「仮に不当逮捕だったとしても稀な事例である。個々の医師が不当逮捕される確率なんてきわめて低いのであるから、医師たちは騒ぎ過ぎだ」との指摘があったのだが、稀な事例を見落とさないことが医師の仕事の一つである。医師の不当逮捕を稀な事例だと軽視する医師は、目の前の患者が稀な病気である可能性を軽視するであろう。

余談はこれぐらいにしよう。代替医療に親和性のある人、とくに非医療従事者は、「稀な」疾患を診た経験がないだろう。そのため、病気のリスクを小さく見積もってしまいがちである。たった8人の子を取り上げただけで「自宅出産マスター」*3を名乗る例が、わかりやすい。ホメオパシーもそうだ。ホメオパスは、ちょっとした風邪やら下痢やらは診るだろうが、本当の重症患者を診る機会はあまりない。「あかつき問題*4」では、患者が悪性リンパ腫が「治療の施しようがなく」なるまで、ホメオパスがメールなどで「指導」していたという。ホメオパスは、「なんかヤバそう」とは思わなかったのか?このホメオパスは、悪性リンパ腫の患者を診たことがないと思う。下手したら、悪性疾患も一例も診たことがないだろう。自然治癒する疾患ばかり診ていて、レメディで「治した」経験ばかり重ねてきた。もしかしたら自然治癒しない症例も混ざっていたかもしれないが、そういう症例はホメオパスから逃げていく。結果、成功例しか経験していないことで、悪性リンパ腫の症状の進行に対して「ヤバい」と感じることができなかったのではないかと、私は考える。

代替医療の提供者だけでなく、患者側についても同様である。「私には効いた」という体験談は、一例に過ぎない。予防接種の害など、現代医学の負の部分についてはリスクを過大視しているわけで、とくにリスク全般について過小評価しているわけではなさそうだ。代替医療の害については可視化されていないことも原因なのだろう。その点で、今回、ビタミンKの不投与や、悪性リンパ腫見逃しの例について報道されたことは意味があると考える。



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■非典型例の恐ろしさ

*1:URL:http://twitter.com/HayakawaYukio/status/22411849829

*2:より正確には、重症だが早期の介入によって治る可能性が高く、鑑別にコストのかからない疾患から考える。ゆっくり診断をつけても間に合う病気は後回し。検査にコストのかかる病気も後回し

*3:URL:http://ameblo.jp/jitakusyussann/

*4:URL:http://www012.upp.so-net.ne.jp/mackboxy/Health/

mimonmimon 2010/08/31 05:15 冒頭に引用された、
> 支払うべき損害賠償額は請求5640万円の1/4000すなわち1万4100円が妥当だろう。
ですが、それは、K2レメディを投与された潜在的被害者が全員提訴することを前提としているわけですね。そうでなければ、理屈にあいません。
それだけの率で死ぬリスクを負わせ続けてきて、不幸にも昨年、実際の被害が発生したのですから、損害額に応じた賠償責任が存在します。民事(刑事ではなく)上の相当因果関係が立証可能であろうと、私は、解釈しています。

ちょっとしたSEちょっとしたSE 2010/08/31 05:59 彼のHさんをフォローしてたのに外された。。。もう一回フォローしとこ(サーバの不調とかかもしれないし)

件のツイート追いましたが、脈絡なく出てるようにみえますな。。。
なので、脳内補完でmimon様のような、考え方が浮かばい限り、なにを言ってるんだ?という印象しか浮かばない。(自分は後者です、阿呆なもので)

ところで、医療従事者様方々に訪ねたいのですが、プラシーボ効果のみしか、効果が
得られないものは、医療品(療法)として認めれられるものですかね?
(そこのところを、彼らは「効果がないというのけしからん!」と反論してるようにみえるもので)

zororizorori 2010/08/31 06:28 加害者側が万が一の賠償金支払いに備えて保険に加入する場合の保険料なら、被害額に被害が発生する確率をかけたものになるので、保険金と保険料を混同していると。Hayakawayukio氏は、保険金として支払った保険料しか受け取らないのですね。

被害を受けた側が受け取る賠償額は、その人が受けた被害額に決まっているわけで。

NOV1975NOV1975 2010/08/31 06:50 なんか「事故にあう確率は1万分の1である。だから、実際に事故にあったときの被害は1万分の1である」みたいな理屈ですね、某氏は。

JA50JA50 2010/08/31 09:33 プラシーボと同等の効果ということは、無効ということです。

teekateeka 2010/08/31 09:50 そもそも何故「請求の額」に1/4000をかけた物が「支払うべき金額」なんだろう……
普通は請求って発生する確率とは関係なく「支払うべき金額」そのものを表しているのでは?

luckdragon2009luckdragon2009 2010/08/31 15:28 あかつき問題、、非医療者が見ても、やばそうな感じなんですけど...。

nn 2010/08/31 16:32 例えば「10代の日本人」の総合的な年間死亡率が1/10000前後ですから、子供にどんなアホな治療をしても損害賠償は数万円程度でOKってことでしょうか。稀な重病をすべてスルーして死亡しても1件数万円でカタがつくなら、小児科の人手不足なんて一気に解消しそう。

普通の電気設計者普通の電気設計者 2010/08/31 20:52 > 支払うべき損害賠償額は請求5640万円の1/4000すなわち1万4100円が妥当だろう。
これが成り立つなら、
「支払うべき診療報酬額は請求70万円の1/4000すなわち175円が妥当だろう。」
だって成り立ちそうです。
175円っては妥当な額(ビンに詰めた砂糖菓子)な気がします。

matudamatuda 2010/08/31 21:30 訴えられた看護士が負うべき責任が1万4100円相当と考えるのであれば、同様の行動をして運よく何の問題が起きなかった看護士を延べ人数であと3999人揃え、1人あたり1万4100円払うべきですよね。もちろん事後に集めるのは非現実的な話なので、先に保険料を積み立てておくべきですね。具体的には該当レメディに14100円を上乗せ。

oskimuraoskimura 2010/08/31 21:34 1/4000の確率でも年100万人くらい新生児はうまれているので、投与しなかったら250人は死ぬことになるんですよね。
どうも早川さんはこういう事が理解できないみたいですね。

7$¥ナナシー7$¥ナナシー 2010/09/01 11:29 新生児の死亡率12/4000は現代の医学で解決できない問題が主な原因で、助産師も親も好き好んでこのリスクに賭けているわけじゃないってことも早川氏は理解していないと思います。

こいしこいし 2010/09/01 15:50 あかつき問題は酷すぎますね。「痛かっただろうな」とか「苦しかっただろうな」とか考えたら怒りで体が熱くなってしまいました。
悪性リンパ腫は悪性腫瘍の中では比較的薬も放射線も効くので完治が期待できるので治療できなかったことが本当に悔やまれますね。
また、黄疸で白い便が出るとか健康ならありえないような症状はネットで検索すればすぐにヒットするでしょう。いくらホメオパスが無知だといってもあんまりです。
自分の友人でもナチュラル系な人が多いので心配です。中でも数人は人気者だし人にも影響を与えていそうな感じ。

ぷーすかぷーすか 2010/09/04 02:03 こんなの発見!
ホメオパシー体験記 http://voise.ti-da.net/
末期の悪性リンパ腫が自然治癒したそうだ。
経緯はよくはわからんけど。
癌を宣告されて頭が真っ白な状態でここを見ちゃった場合、なんか救われるかもってホメオパシーに流れる人もいるのかもよ。
新聞でも紹介されてるしね。
http://ryukyushimpo.jp/news/storyid-158547-storytopic-7.html

luckdragon2009luckdragon2009 2010/09/04 08:01 まれに、癌組織がなぜか消えちゃった、というのはあるそうですが、さすがに末期だとないのでは? 転移とかしてるんでしょ...末期なら。

まあ、詳細を知らないので、なんともいえないし、医療者ではないので、分析もできないのだけど。

luckdragon2009luckdragon2009 2010/09/04 08:04 補足
> 癌組織がなぜか消えちゃった、というのは

これは、稀に、正常組織に形成しなおされた、という事らしいですけどね。
詳しい症例報告は知りませんけど。(組織は細胞分裂で置き換わるので、正常細胞に置き換わった場合には、確かにがん細胞ではなくなるが、メカニズムは良く知らない...。)

luckdragon2009luckdragon2009 2010/09/04 08:09 末期でなければ、癌治癒の事例の中に、多分ですが、腫瘍マーカーの偽陽性問題も隠れているかもしれないような...。(事例が出てこないと、なんとも言えないですけど。)

NATROMNATROM 2010/09/04 09:02 ぷーすかさんからご紹介していただいた琉球新報の「末期の悪性リンパ腫」の件は、ブログを読んだ限りでは、「悪性リンパ腫が標準治療を受けた。治療終了の3ヶ月後に再発したと告知されたが、移植のために紹介された大学病院で精密検査を受けたら癌細胞が消えていた」という話のようです。そもそも、あまり「末期の」悪性リンパ腫とは言いませんね。stage IVでもわりと治りますので。末期と言うとしても、標準医療を尽くして治療抵抗性になったときぐらいでしょう。

当たり前ですが、最初の悪性リンパ腫が消えたのは標準治療(「8回の多量の抗がん剤投与と32回の放射線照射」)のおかげですね。再発が消えたのは、自然治癒の可能性もゼロではないですが、誤診(再発したという診断が誤り)か、患者側の誤解(「再発の"可能性"があるから大学病院で精密検査を受けろ」と医師側は説明したつもり)の可能性の方が高いように思えます。

危ないのは、この人、悪性リンパ腫の治療をして4年しか経っていないことです。再発の可能性はまだあります。再発したとき、ホメオパシーやらレイキやらに頼っていると、今度は治らないでしょう。琉球新報の報道は悪質です。抗がん剤や放射線治療といった標準治療も受けたことは明記すべきです。悪性リンパ腫に罹った読者が、標準医療を避け、ホメオパシーで治そうとするかもしれません。

元CS患者元CS患者 2010/09/16 01:59 ぷーすかさんが紹介されたホメオパスのブログが削除されていますね。

販売行為・セミナー等のあらゆる広報に規制が出てきて、代理店の運営が困難になってきたりで、ブログも代理店も閉鎖されるようです。
別ブログで心境をかたっていらっしゃいます。
色んな報道によって、やはり風当たりが強くなってきたんですね。

患者が惑わされるような内容でしたから、仕方ありませんかね。
特に根治が難しい病を患っている人には命取りにもなりかねなかった。