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cover ■「ニセ医学」に騙されないために

 ホメオパシー、デトックス、千島学説、血液型ダイエット、ワクチン有害論、酵素栄養学、オーリングテストなどなど、「ニセ医学」についての本を書きました。あらかじめニセ医学の手口を知ることで被害防止を。

2010-11-30 宝石岩盤浴バイオマット

[][]宝石岩盤浴バイオマット 宝石岩盤浴バイオマットを含むブックマーク

宝石岩盤浴バイオマットというものがある。今のところ、宝石岩盤浴バイオマットが癌に効くという医学的証拠はない。私はインチキ商品であると考えている。仕組みは電気毛布に似ているが、特殊な加工によって何か健康にいいものが放出されていると主張されている。検索で上位のサイトから引用しよう。


f:id:NATROM:20101129182328j:image

バイオマットアメジストたっぷり3点セット内容


「新世紀の最新テクノロジー:量子治療学」なのだそうだ*1。「痛みと堅くなった関節の緩和」「血流UP」ぐらいは、単に加温による効果としてあるだろう。「静脈波とは、地下水脈を通ると増幅される地球そのものが持つ波長のこと*2」というのは初耳である。というか、あまり科学に詳しくない人を対象にしたハッタリであろう。ある程度の科学知識があれば、よほどのことがない限り宝石岩盤浴バイオマットを買うことはない。冒頭でも述べたように、宝石岩盤浴バイオマットが癌に効くという医学的証拠はない。ただ、明らかに体に害があるとは思えないので、個人が試してみることは自由だ。私なら、このようなものに何十万円も出さないが。

「体験は個人の感想であり効果効能をうたっているものではありません」と言いつつ、さまざまな疾患に効いたという体験談がYoutubeにupされている(■YouTube - バイオマット)。Youtubeの利用は珍しいが、体験談を挙げる手法は、医学的根拠の乏しい商品を売る手法としてはありふれている。ちゃんとした医学的根拠があればそちらを提示する。体験談を列挙するのは根拠がないことを自白しているようなものだ。

検索上位のサイトでは、「癌に効く」とは明示していない(ほのめかしてはいる)。効果効能を唄うと法律的にアウトだからだ。しかし、業者の中には、「ガンは消えるよ!治るよ!!」と言って商売している人もいるようだ。


■ガンは ガンを 治した人しか治せない: ほりすてぃっく 緑の風*3強調は引用者による)

48才の岡山県の男性です。

3年ほど前に 肺がんが見つかり、片肺は、1/3 しかないです。片肺は 大丈夫。

その後、胃がんと 悪性リンパ腫が わかりました。

友人が 宝石マットの情報を届けてくれました。

最初は 疑っていましたが、どんどん 弱っていくので、マットのサロンに通うと

マットのサロンの人は 「ガンは消えるよ!治るよ!!」と 言ってくれますが、お医者様は 『ガンは 治る』と 言わないのです。

マットのことを ネットで 検索して 探し回ったそうです。諸外国のサイトも 見たそうです。

このままでは 命がないのですから、マットを購入することを 決めた時、奥様は 電気も通らないゲルマニウムのマットを100万円以上するのを 購入する予定だったので、『安い!』と 喜んで すぐに 購入されました。


引用元のブログ主は、バイオマットを販売している会社の人である*4。もちろん、「薬事法に違反する説明がけしからん」という批判ではなく、いい話として紹介している。順法精神はないらしい。


良質の卵を 毎日 10個食べ、 自然塩は 吐くほど 摂っても大丈夫だというので、充分足りて、吐くほどになるまで、摂ったそうです。そして、朝 夕 2回 高温で 汗をかくことを 1か月続けて、病院にいうと、ガンは きれいに消えていたのです。

35度代の低体温だったのが、37.3度となり、今では、疲れもなく とても元気だそうです。


自然塩を吐くほど摂るのは有害である。せめて、有害な情報を撒き散らすのはやめて欲しい。「マットだけでなく、良質の玉子と 岩塩も お届けせねばなりません」とあるから、卵と塩も販売しているのであろう。「ガンはきれいに消えていた」というのは実際にはどういうことなのかは、情報が足りず推測するしかない。単に捏造である可能性もあるが、もっともらしいシナリオは、胃原発の悪性リンパ腫が標準医療によって寛解に入ったのではないか。標準医療を併用せずに、それほど効果のあるものであれば、是非とも症例報告をしていただきたい。念のために、"biomat cancer"で医学論文を検索してみたが、論文は発見できなかった。

「これからの医療に生かして欲しい」のであれば、症例報告や比較試験を行い、バイオマットに効果があるという証拠を積み重ねるべきだ。小売店には無理でもメーカーには責任がある。本当に効果があるのであれば、いずれは標準医療となり、馬鹿高い金を払わなくても保険適応内で多くの人が恩恵を受けられるようになる。結果、商品も売れ、メーカーは潤う。インチキ商品を売っていると自覚していない限り、積極的にエビデンスを出すはずだ。



関連記事

■バイオラバー販売業者に薬事法違反の恐れ

■「癌が治った」という体験談はどこまで信頼できるか

■癌霊1号が白血病に効く!代替医療が標準医療になるとき

*1:URL:http://bio-mat.ocnk.net/page/4

*2:URL:http://bio-mat.ocnk.net/page/6

*3:URL:http://biomat7980.cocolog-nifty.com/blog/2010/10/post-6260.html

*4:「弊社のマットは 鈍ってしまっている自己治癒力を 最大限に引き出すモノです。」http://biomat7980.cocolog-nifty.com/blog/2010/11/post-c777.html

元外科医元外科医 2010/11/30 22:11 「バイオマットに効果があるという証拠」出せるはずありません
そもそもないんだからw
「インチキ商品」という見方は正しいです。

7$¥ナナシー7$¥ナナシー 2010/11/30 22:12 私は一日に卵4個が限界でオムレツだと3個くらいでつらくなります。
これはバイオマットの利用者ではないからでしょうか?それとも卵が良質ではないスーパーの卵だからでしょうか?

mimonmimon 2010/12/01 00:01 食用塩の表示として、「岩塩」は、原材料名ですからOKですが、「自然塩」は、内容が不明なため、「食用塩の表示に関する公正競争規約」で、実質的に使用を禁止されています。
http://www.jftc.go.jp/pressrelease/08.april/08041804.html
それはそれとして、マグネシウム分の多い食塩ですよね。吐くほど摂ったら、下痢すると思います。それ以上に、苦味が強くて、普通のおいしい精製塩に慣れた人には、苦痛でしょうに。

nn 2010/12/01 11:13 そこのブログのこの記事は強烈ですね。
http://biomat7980.cocolog-nifty.com/blog/2010/11/post-b8f3.html
毒にも薬にもならないことを書いてるぶんにはともかく、腎臓が悪い人にカリウムを摂れと勧めるのは、幾らなんでも殺人的行為なのですが…指摘されても直す気はないらしいです。なんだかなー。
(腎不全ではカリウムを排泄できず血液にカリウムが溢れて心停止とか起こすので、カリウム制限してカリウムを減らす薬物治療を行うのが標準です)

bamboobamboo 2010/12/03 15:53 >私は一日に卵4個が限界でオムレツだと3個くらいでつらくなりま
たしかNATROMさんは「卵は一日一個まで」を教義とするたまご教の信者だったはずだから、そんな恐ろしいことを書いてはいけません。(^^;)

7$¥ナナシー7$¥ナナシー 2010/12/03 18:35 >たしかNATROMさんは「卵は一日一個まで」を教義とするたまご教の信者だったはずだから、そんな恐ろしいことを書いてはいけません。(^^;)


ええっっっ???
ええと...。卵はウズラの卵です。鶏卵は1日1個以内にしています。
...これで安心。かな?

はなみずきはなみずき 2011/04/29 11:08 バイオマットいいですよ〜〜!
眉つばに見えるが、眉つばでない!
身体は すべて 生まれ変わっている その材料が たんぱく質 プロテインスコア-100が 最高に良いのです。
私の傍で、腎臓透析寸前、マット使って、卵食べて、岩塩食べて、見る見る元気回復 ぴんぴんしている75歳のお父さんがいますよ〜〜〜!!

NATROMNATROM 2011/04/29 17:22 業者の嘘宣伝でないとしたら、善意の副作用の好例ですな。人を殺しかねないことをしているという自覚に欠けています。

アメリカ在住アメリカ在住 2011/06/01 18:09 私はアメリカ在住なんですが、バイオマットって保険対象ですよ。
なので、結構な数の病院がバイオマットを治療に使ってますよ。
日本は保険対象じゃないんですね…。

たけ@京都たけ@京都 2011/06/01 20:56 筋肉痛と関節痛の治療器ですね。
http://www.accessdata.fda.gov/cdrh_docs/pdf7/K072534.pdf
アメリカでは他の用途に使っても保険が効くんですか?

NATROMNATROM 2011/06/01 21:07 加温による効果はありそうですから、電気毛布のような使われ方をしているのかもしれません。それにしては高価過ぎますが。癌への治療効果を期待した使用には保険対象にはなっていないでしょう。仮に保険対象になっていたとしても、「インチキグッズを保険対象にしている残念な保険サービスがアメリカ合衆国に存在する」以外のことはわかりません。

アメリカ在住アメリカ在住 2011/06/02 15:59 私が知ったのは、癌センターでしたが、癌に効くとかではなく
手術に備えて免疫力と体力を向上させるために使ってました。
あとは、リハビリセンターで使ってました。
ただ、アメリカで購入する場合、日本の価格(70万円?)もしないです。
上のサイトさんの価格ぐらいなので、良心的な会社もあるんだな…と思ってみてました。

NATROMNATROM 2011/06/02 17:28 免疫力を向上させるため、というのもかなり怪しいですよ。電気毛布以上の効果はないと思います。

もこもこ 2011/06/03 09:52 というか、免疫力をそんなに向上させたいなら、そんな変なマットなんて買わなくたって規則正しい食生活と適度な運動じゃ駄目なんですかね。それだと安価だし…まぁ病気で動けない人なら仕方がないけれど。

というか、仮にマットに効果があって本当に免疫力がアップするとして、そんなもの医者の許可?無しで使って良いもんなんでしょうか。恥ずかしながら無知なのですが、アレルギーって免疫力が高すぎてなるって聞いたことがあります。むやみにマットを使って免疫力が極端に高くなったらそれはそれで危険なのではないでしょうか?効果なんて個人差があって、効き辛い人もいればやたら効いちゃう人だっているでしょう(お薬だって個人に合わせて量を調節したりしますよね?)

「安全な、穏やかな免疫力アップの効果」ならそんな高価なものじゃなくても達成できるし、「ぐんと免疫力がアップする」なら医者の指示無しで使うのは危険だと思います…

ままりんままりん 2011/12/04 07:43 FDAが医療用として認めていますが、それでもインチキなのでしょうか…今は10万円代で買えそうですね。
前のコメントで、70万円って、ぼり過ぎですね。

MisoMiso 2011/12/04 10:45 興味があって調べてみましたが、FDAの認可は、「既に使われている機器に類似したリスクの小さい機器」に対するClass 2の認可で、筋肉の痛みなどへの使用を想定した赤外線パッドとしてです。製造会社(Richway)は、現存する他の赤外線パッドと同じくらいの効能があると主張しています。最新テクノロジーとかは全く書いてありません。ちなみにこのクラスのFDA認可は、機器の実際の医療効果を保証しません。参考まで。http://www.accessdata.fda.gov/cdrh_docs/pdf7/K072534.pdf

NATROMNATROM 2011/12/04 12:59 Misoさんが既に指摘してくださっていますが、「FDAが医療用として認めている」というのは、「新世紀の最新テクノロジー:量子治療学」を認めているわけではないのです。温かいので、筋肉痛や関節痛をやわらげるぐらいの効果はあるかもしれません。なのに、量子治療学だとか、地下水脈を通ると増幅される地球そのものが持つ波長だとか、「ガンは消えるよ!治るよ!!」だとか、宣伝するのがインチキです。

使用者使用者 2012/08/03 17:40 バイオマットは遠赤外線を利用した医療機器と聞きました。
遠赤外線と熱活性たんぱく質が深く関連しているそうです。
なので、免疫力の向上に役に立てると聞きましたが、、
これに対して答えてください。

NATROMNATROM 2012/08/03 18:39 遠赤外線は普通の電気毛布からも出ています。熱活性たんぱく質というのは、おそらくはHeat Shock Protein(熱ショックタンパク質)か何かでしょうが、バイオマットが特別に「熱活性たんぱく質」とやらを活性化させたりすることは考えにくいです。「免疫力の向上に役に立てる」という点も、何か証拠がない限り、バイオマットの優位性があるとは思われません。

バイオマットが遠赤外線を利用し「熱活性たんぱく質」関連を通じて「免疫力の向上に役に立つ」としたら、メーカーか販売会社は何らかの方法で、「熱活性たんぱく質」や「免疫力」を測定しているはずですから、そのデータを公開すればいいと思います。「単にそれっぽい単語を並べ、素人を騙して売り上げを上げたいだけ」ならば、データは公開できないでしょうね。消費者としては、データが公開されない限り、眉に唾をつけておくほうがよろしいかと。

トラックバック - http://d.hatena.ne.jp/NATROM/20101130

2010-11-18 「ホメオパシー叩き」は統合医療潰しを目的としていたのか?

[]「ホメオパシー叩き」は統合医療潰しを目的としていたのか? 「ホメオパシー叩き」は統合医療潰しを目的としていたのか?を含むブックマーク

週刊ポスト(2010年12月3日号)に、『「ホメオパシー叩き」に隠された「統合医療は迷信」の権威主義』という記事が掲載された。ジャーナリスト・国際医療福祉大学大学院教授の黒岩祐治氏による。記事の内容はタイトルから予想できるものだった。「検証 医療とマスコミ」という短期集中連載の第5回で、「私は決してホメオパシー擁護論者ではない」と言いつつも、ホメオパシーに否定的なマスコミ報道を批判している。



誰が「エビデンスのとれないものはすべていかがわしい」と言ったのか?

黒岩氏は、ホメオパシーに「医学的な効果は期待できないと見るのが常識」であることは認めている。科学的根拠がないにも関わらず、ホメオパシーが世界に普及している理由をプラセボ効果に求める。プラセボは有用ではないか、という、ホメオパシー擁護論者がしばしば持ち出す主張を、黒岩氏も行う。


ならばプラセボはいけないのか?少なくとも害にならないのであれば、使用することに問題はないだろう。エビデンスの重要性に疑義を差し挟むものではないが、エビデンスのとれないものはすべていかがわしいと位置づける考え方にも違和感を覚える。


黒岩氏の主張は間違っていない。ただ、わら人形論法なだけである。私の把握している範囲内では、プラセボはいけないと主張したマスコミ報道はない。また、エビデンスのとれないものはすべていかがわしいと主張したマスコミ報道はない。

私は、プラセボがいけないとは思わない。けれども、他に有用な治療法があるにも関わらず、プラセボを使用するのはいけない。たとえば、ビタミンKの代わりに、砂糖玉を使ってはいけない。また、エビデンスのとれないものはすべていかがわしいとは思わない。けれども、ホメオパシーは「エビデンスのとれないもの」ではない。ホメオパシーに特異的効果があるかどうかは、比較的容易に検証できる。実際、検証され、特異的効果がないと証明された。



ホメオパシーそのものを叩くのは論点がずれているか?

ホメオパシーそのものは無害であるという主張も、おなじみのものである。


確かに国家資格を持った助産師が業として行っていたことは由々しき事態といわざるをえない。しかし、今回の問題はホメオパシーを絶対視し、ビタミンK2を摂取させなかったことであって、ホメオパシーそのものが害だったのではない。ことさらホメオパシーそのものを叩くというのは少し論点がズレている。


ホメオパシーそのものに害がないことは、批判者も承知している。ホメオパシーが叩かれる理由は、「ホメオパシーに頼ることによって、確実で有効な治療を受ける機会を逸する可能性があることが大きな問題であり、時には命にかかわる事態も起こりかね」*1ないからである。既に日本では、ホメオパシーは現代医学の否定と強く結び付いている。ビタミンK2を摂取させなかった行為は稀な例外ではなく、氷山の一角である。日本最大のホメオパシー団体は、予防接種や、喘息に対する吸入ステロイドを否定している。私が想像するに、黒岩氏は、日本ホメオパシー医学協会による主張をよく知らないのではないか*2



朝日の報道は統合医療全体を問題視する意図があったのか?

『「ホメオパシー叩き」に隠された「統合医療は迷信」の権威主義』というタイトルからわかるように、黒岩氏は、ホメオパシー批判には統合医療潰しの意図があるのではないかと疑っている。


むしろ私が問題視したいのは記事の次のようなくだりである。朝日新聞7月31日の解説記事に、唐突な感じでこんな文章があった。

「厚生労働省は今年、ホメオパシーを含む代替医療を現在の医療体制に取り込むことを検討するため、鳩山前首相の所信表明演説に基づき作業班を発足させた」

この一文を意味するところは何か? 代替医療とは漢方やインドのアーユルヴェーダや、カイロプラクティックなど西洋医学以外の”医療”のこと。これを西洋医学と相補うカタチで利用しようというのが統合医療という考え方である。

ホメオパシーがその一環であることは間違いない。しかし、ホメオパシーの非科学性を論じている記事の流れでは、ホメオパシーの一事を統合医療全体の万事に拡げようという意図を感じてしまう。記者がそういう作為を持ってこの記事を書いたものなのかどうかは知らないが…。


朝日新聞の原文はネットで読める(参照:■asahi.com(朝日新聞社):問われる真偽 ホメオパシー療法 - アピタル(医療・健康))。はたして、「唐突な感じ」「ホメオパシーの一事を統合医療全体の万事に拡げようという意図」を感じるかどうか、読者に判断してもらいたい。



黒岩祐治氏は「漢方・鍼灸を活用した日本型医療創生」研究会の座長を務めた

私は政府の科学研究費による「漢方・鍼灸を活用した日本型医療創生」研究会の座長を務め、2月に報告書を取りまとめた。民主党のマニフェストに「統合医療の確立と推進」があるからこその研究会であった。鳩山前首相の所信表明演説もその方針の上で行われたものである。

ただ、統合医療はあまりにも範囲が広すぎて、呪術もどきのいかがわしいものまで入ってくるのは事実である。それを整理し、安全安心の療法を選別していこうと、厚労省のプロジェクトチームも動き出している。


黒岩氏は、いったい、どのような方法で、「呪術もどきのいかがわしいもの」と「安全安心の療法」を選別しようというのだろう。黒岩氏がホメオパシーを擁護する同じ理屈で、呪術だって擁護できる。呪術にもプラセボ効果はあるわけで、「少なくとも害にならないのであれば、使用することに問題はない」はずなのではないか。

統合医療を研究するのはいい。まだ十分に証明されてないだけで、中には有用なものもあるだろう。ただ、有用なものと、そうでないものを区別するのは、科学的根拠に基づく必要があると私は考える。科学的根拠に基づかず、有用なものとそうでないものを区別するのはそもそも不可能だ。ここで言う科学的根拠とは、「どのようなメカニズムで効くのか」という作用機序のことではなく、「効くのかどうか」という疫学的・臨床的証拠のことである。

政府が科学研究費を出すからには、有用である見込みが高いものを優先して検証すべきである。「医学的な効果は期待できないと見るのが常識」であり、また、既に効果がないことが臨床的にも証明されているホメオパシーを検証するのは、研究費の無駄遣いである。統合医療の有用性を期待し、その研究を勧める立場の人こそ、ホメオパシーのような呪術もどきのいかがわしいものが入ってこないように努めるべきだ。

黒岩祐治氏による、週刊ポスト(2010年11月19日号)の「検証 医療とマスコミ」という短期集中連載の第4回『「予防接種悪玉論」の横行で日本はワクチン後進国になった』は良い記事だった。黒岩氏には、ホメオパシー批判を安易に「権威主義」「統合医療潰しの意図」によるものだと考えず、批判には相応の理由があったことを理解してもらいたい。それが、統合医療の確立と推進にもつながるものだと私は考える。



関連記事

■ホメオパシーはまた人を殺すだろう

■ホメオパシーについて朝日新聞が詳報

■ホメオパシーが叩かれる理由

*1:「ホメオパシー」についての会長談話

*2:TBSラジオ Dig「ホメオパシー問題から代替医療を考える」に出演していた医療ジャーナリストの田辺功氏と櫻井充医師も、ホメオパシーについてわりと肯定的な発言をしていたが、やはり日本ホメオパシー医学協会による主張をよく知らないのではないかと、私には思えた

7$¥ナナシー7$¥ナナシー 2010/11/18 10:11 朝日の代替医療に対するスタンスは大野講師の発言にある「日本の行政はホメオパシーを含む代替医療について、ずっと当たらず障らずの立場を続けてきた。効かないものは効かないということも、国は責任を持って情報発信すべきだ」だと思います。
これはエビデンスを積み重ねようとする「漢方・鍼灸を活用した日本型医療創生」の調査研究班にとっては歓迎すべきことだと思います。ホメオパシーに渡るであろう予算の一部が流れてくることが期待できるのですから。
代替医療全部を否定されていると誤読して、拙速な記事を書いたのでしょうか?

うさぎ林檎うさぎ林檎 2010/11/18 10:22 おはようございます。

>代替医療とは漢方やインドのアーユルヴェーダや、カイロプラクティック

漢方はまだしも、後の二つも検討に値する代替医療だと考えておられるのだとしたら、黒岩氏はご自分で代替医療についてよく調査していないのではないかと推察します。
まさかとは思いますが、「代替医療のトリック」を読んでこの見解でしたら……非常に残念と言わざるを得ません。
雑誌に記事が掲載されればホメ問題を多くの人に思い起こしてもらえます。こうやって時々へなちょこなホメ記事が掲載されるのもさほど悪いことではないかもしれません。

大天使ありえる大天使ありえる 2011/11/20 16:24 人や動物が穏やかで平和な死を迎えるのに、特別な薬も、道具も、そのための資格も
いらないことを、本当はご存知です。

2010-11-09 インフルエンザ診断ゲームで学ぶ検査閾値と治療閾値

[]インフルエンザ診断ゲームで学ぶ検査閾値と治療閾値 インフルエンザ診断ゲームで学ぶ検査閾値と治療閾値を含むブックマーク

簡易検査はするべきではない?

北秋田市の病院でインフルエンザの集団感染があった。簡易検査では陰性だったが死亡した患者もいたと報道された*1。インフルエンザ迅速診断キットの感度は高くない、つまり、インフルエンザに感染していても検査結果で陰性と出やすいことはよく知られている。あらゆる検査と同様に、インフルエンザの簡易検査は感度・特異度を理解の上に使うべきである*2。当たり前の話。しかし、まれに、インフルエンザの患者に対して、簡易検査をするべきではない簡易検査をする意味は何もないと誤解している人もいる。


■Open ブログ: ◆ 簡易検査による死者増加*3

 要するに、簡易検査をする意味は、何もない。

  ・ 検査で陽性ならば → 抗インフルエンザ薬の投与

  ・ 検査で陰性ならば → 抗インフルエンザ薬の投与

                 (様子見、は間違い。)

 つまり、どっちみち、「抗インフルエンザ薬の投与」である。投与するか否かは、患者の症状によってのみ決まり、簡易検査の結果には左右されない。

 したがって、簡易検査をしてもしなくても、結果は同じなのだ。簡易検査をすることには、まったく意味がないのだ。


検査前確率はグラデーションである

どのようなときにインフルエンザの簡易検査を行うべきかを考察することは、医療者ではない皆さんに医療の不確実性を理解してもらうのに良い題材だろう。ほとんどの場合、臨床の現場における診断は確率でしか言えない。例えばの話、インフルエンザの人と接触した後に、高熱、頭痛、関節痛などのインフルエンザに矛盾しない症状を呈し、簡易キットでインフルエンザ陽性だった患者さんがいたとしよう。まず間違いなくインフルエンザと診断されるだろうが、その診断が正しい確率は100%ではない。インフルエンザ以外に発熱や関節痛を来たす疾患もあるし、簡易キットは偽陽性もある。100%にきわめて近いが、100%だとは断言できない。逆に、臨床症状や簡易キットからインフルエンザではないと思われても、インフルエンザの確率は0%にはならない。

実際に外来にやってくる患者さんの病歴や臨床症状はさまざまである。高熱はあるものの関節痛などの全身症状に乏しい人。発熱は軽度で全身症状は関節痛ぐらいだがインフルエンザ患者と接触歴のある人。高熱と咽頭痛と関節痛を呈しているがワクチン接種歴がありしばしば扁桃腺炎を起こした病歴がある人(発熱はインフルエンザによるもの?それとも扁桃腺炎?)。それぞれの患者さんの「インフルエンザっぽさ」は確率でしか言えない。ある患者さんがインフルエンザである確率は経験的に20%ぐらいと推定できるが、別の患者さんは70%ぐらいであると推定できる、といった具合である



インフルエンザ診断ゲーム

さて、ここでゲームをしよう。あなた(プレイヤー)は、インフルエンザが疑われる患者さんを診る医師である。あなたは、病歴、臨床症状、診察から、その患者さんがインフルエンザである確率を推定することができる。あなたは、患者さんに、タミフル*4を処方するか否かを決定しなければならない。インフルエンザではない患者さんにタミフルを処方すると、薬剤にかかるコストや不必要な投薬による副作用のリスクを負わせたことによって、ペナルティ(-10点の利得)を払う。インフルエンザではないと正しく診断すれば得点(+10点の利得)を得る。また、インフルエンザの患者さんにタミフルを処方すれば、有症状日の短縮や入院・死亡のリスクの減少により、得点(+10点の利得)を得る。インフルエンザを見落としてタミフルを処方しなければ、ペナルティ(-10点の利得)だ。


f:id:NATROM:20101109175301j:image

インフルエンザ診断ゲーム(チュートリアル)


上記の利得表は、説明を簡単にするために恣意的に点数を設定してある*5。だが、問題の本質を理解するには十分だ。後に、利得が異なる場合にどうなるか、検討することになるだろう。さて、インフルエンザである確率がどれぐらいなら、タミフルを処方すべきであるか?おそらく、比較的容易に答えは出せるだろう(そのように利得を設定した)。インフルエンザである確率が50%以上なら、タミフルを処方すべきである。グラフにするとわかりやすい。病歴、臨床症状、診察から判断された確率を検査前確率としよう。検査前確率が低ければ、処方しないほうが利得が高いが、確率が高くなるにつれ処方した場合の利得が高くなり、検査前確率が50%を超えると、処方した場合と処方しなかった場合の利得が逆転する*6

f:id:NATROM:20101109170157j:image

検査前確率が50%以上なら、タミフルを処方したほうが得。


検査を行うかどうかの選択肢をゲームのルールに追加

さて、ここで、ゲームに新しいルールを追加する。プレイヤーは、タミフルを処方する、処方しないという選択肢の他に、コスト2点を支払って、検査をするか否かをも選択することができる。まずは、この検査は間違わないという仮定を置こう。感度100%、特異度100%の検査だ。直感的には、だいたいは検査をした方が得だが、検査前確率があまりにも高かったり、あるいは低過ぎだったりする場合は、検査しない方が得であるとご理解いただけるものと思う。


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インフルエンザ診断ゲーム(チュートリアルその2)


グラフにしよう。処方利得と、非処方利得は前回と変わらない。キット陽性処方利得とは、検査で陽性であればタミフルを処方し、陰性であればタミフルを処方しなかった場合の利得の期待値である*7


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検査前確率が100%なら、コストを支払って検査するまでもなく、タミフルを処方したほうが得。


検査が不完全だった場合には?

さて、実際の迅速診断キットは間違う。どのくらい間違うのかについては報告に幅があるが、だいたいは感度は低いが、特異度は高いとされている。仮に感度が60%、特異度が90%であるとしよう。つまり、インフルエンザの人に対して検査した場合、陽性結果が出る確率は60%。インフルエンザではない人に対して陰性結果が出る確率は90%である。プレイヤーは、検査をするべきか?あるいは、「検査をすることには意味がない?」


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インフルエンザ診断ゲーム(不完全検査条件)


これも、センスがある人ならば、直感的にわかる。上記した仮定においては、検査前確率が約30%〜約60%の間であれば、検査は有用である*8


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検査前確率が約30%〜約60%の間であれば検査をしたほうが得。


上記仮定した条件下では、検査前確率が約30%以下ならば、検査せずにタミフルを処方しないほうがよい。この境界を検査閾値という。また、検査前確率が約60%以上であれば、検査せずにタミフルを処方したほうがいい。この境界を治療閾値という*9。当たり前の話であるが、利得や検査のコスト次第では、感度の低い検査でも有用である。臨床の現場ではさまざまな検査前確率を持った患者さんがいるということを知っていれば、「検査で陰性でも結局タミフルを投与することになるのだから、簡易検査をすることには、まったく意味がない」という誤謬に陥らなくて済む。


米国での公的見解は「簡易検査は不必要だ」なのでは?

「ほとんどのケースでインフルエンザ検査は不要である」*10とアラバマ保健局が述べたという報道がある。しかし、これは簡易キットの低い感度に由来するものではなく、健康な人に対する新型インフルエンザへの対応の違いによる。日本では、基礎疾患のない人に対しても、早期のタミフル投与が推奨されていた。この対応については賛否両論であるが、日本における新型インフルエンザによる死亡率が非常に低かったことから、今のところは一定の合理性はあったものと思われる。

一方、米国では基礎疾患のない人が新型インフルエンザに罹患してもタミフルの投与は推奨されていなかった。「寝てれば治るだろう。重症化のリスクは無視しうる」というわけだ。いわば、インフルエンザに対するタミフル投与の利得は、非投与の利得と変わらないような利得設定になっている。この場合、治療閾値も検査閾値もなくなる。検査せずにタミフルを投与しない選択が、プレイヤーの利得を常に最大化する。たとえ感度100%、特異度100%の完全な検査が使用可能であっても検査しないほうがいいことになる。


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検査するだけ無駄。


簡易検査キットは人を殺す効果しかない?

「簡易キットの結果が陰性で、抗ウイルス薬を使用せず、結果的にインフルエンザが重症化して患者が死んだ」というケースがあるからといって「簡易検査キットは人を殺す効果しかない*11」というのは誤りである。検査前確率が治療閾値を超えていることが当時の医療水準に照らして明らかであったにも関わらず、つまり、検査せずに抗ウイルス治療をしたほうがよかったことが明らかであったにも関わらず、結果陰性を理由に抗ウイルス治療を行わなず、患者さんが死亡した場合は、医療ミスと言える。しかしこの場合、簡易検査キットが人を殺したのではなく、感度・特異度を理解の上に使っていなかったのが問題だったのである。

こちらの方がありそうな話だと私には思えるが、「検査前確率が治療閾値以下であると判断され、抗ウイルス薬を使用せず、運悪く結果的に患者が死んだ」という可能性もある。これはミスではなく、不可抗力である。医療ミスだったのか、不可抗力だったのかを判断するためには、詳細な情報と専門的な知識が必要である。医療の不確実性を理解してないと、インフルエンザだったという結果を知っているがゆえに、「医療ミスだ。医者による殺人だ*12」という誤謬に陥りやすい。後知恵バイアスと呼ばれるものだ。

インフルエンザ診断ゲームのプレイヤーは、検査を併用してもなお、「誤診」*13が生じうることが理解できただろう。検査が不完全であれば、たとえば検査前確率20%の患者に対しては、検査せずにタミフルを処方しない選択が利得を最大化させる。これは患者さんの20%が「誤診」されることになる。「誤診」された20%の患者さんは、たいていの場合は自然治癒するが、運悪く重症化したとしよう。「誤診したな。ヤブ医者め。なぜ検査しなかった」と訴えられたとしたらどうだろう。後出しジャンケンで批判するなという医療者の言い分を少しは理解してもらえただろうか。ちなみにこうした訴訟が増えることは、(医師にとっての)インフルエンザ症例へのタミフル非処方ペナルティが増えることであり、結果として検査閾値や治療閾値が下がる。いわゆる防衛医療である*14


利得表が恣意的ではないか?一般論ではどうなるの?

利得表はもちろん恣意的に設定した。実際には、インフルエンザに対してタミフルを処方した場合の利得と、非インフルエンザに対してタミフルを処方しなかった場合の利得が必ずしも同じではない。米国の健常者に対する例で示したように、利得によっては検査に意味がない場合がある。ただ、感度が低いからといって、必ずしも検査に意味がないとは言えないことを示す目的は達成できた。

「一般論で言えば特異度の低い検査薬は、それなりに使い道があるが、感度が著しく低い検査薬は、使い道がない*15」という主張も誤りである。上記仮定した条件下では、たとえば感度が90%、特異度が60%である検査があったとして、検査閾値は約40%、治療閾値は約70%となる。検査が有用な検査前確率の範囲は、感度が60%特異度90%の検査と変わりがない。もちろん、利得や検査コスト次第である。場合によっては、感度が高く特異度の低い検査が有用なこともあるが、場合によっては、感度が低くても特異度が高い検査が有用なこともある。一般論で言えば「感度・特異度を理解の上に使う」が常に正しい。


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感度が高いからより有用というわけではない。複数の検査がある場合は、それぞれの検査の感度、特異度、コストを考慮して使い分ける。


利得は患者によって異なる

米国であってすら、「簡易検査をすることには、まったく意味がない」ということはありえない。なぜなら、インフルエンザを抗ウイルス薬を投与せず経過をみるリスクは患者さんによって異なるからだ。米国でも、糖尿病や腎不全などの基礎疾患のある人がインフルエンザに罹患すれば、タミフル投与が勧められる。インフルエンザなのに非投与であったときのペナルティが高いことに相当する。検査前確率が高ければ検査せずに投与するのが正解であるが、検査前確率がそれほど高くなかったら?利得が変われば、検査閾値も治療閾値も変わる。たとえば、インフルエンザに対して処方しなかった場合のペナルティを-50点としたら、検査閾値や治療閾値は下がる。


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インフルエンザ重症化リスクの高い人だったら?検査閾値、治療閾値ともに下がっているのに注目。


流行の把握に有用

検査前確率やら治療閾値やらを言わなくても、感度が低い検査でも有効な例を示そう。病棟で複数の患者が熱発した。インフルエンザか否か?1人の患者のみ簡易検査して陰性だとしても、インフルエンザでないとは言えない。しかし、5人続けて陰性だったとしたら?感度が60%の検査なら、インフルエンザ患者を5人続けて偽陰性と判定する確率は、0.4の5乗で1%ぐらいだ。検査で1人でも陽性ならインフルエンザのアウトブレイクとして対応し、5人が陰性ならそれ以外の原因によるものとして対応すればいい(それでも心配なら6人目、7人目を調べてもいい)。

*1■インフル集団感染、入院高齢者6人死亡…秋田 : 社会 : YOMIURI ONLINE(読売新聞)

*2:たとえば、国立感染症研究所感染症情報センター■診断ガイダンスには「いわゆる迅速診断キットの性能は病原診断として完璧なものではないという認識を持って使用すべきものである」とある。

*3:URL:http://openblog.meblog.biz/article/1875637.html

*4:タミフルを好まない人は適宜別の抗ウイルス薬に代えてください

*5:いろいろ言いたいことはわかる。しかし、わかりやすく説明するにはこうするしかないだろう?

*6:たとえば、検査前確率が40%だった場合、タミフルを処方した場合の利得の期待値=40%×[インフルエンザ症例へのタミフル処方利得] + 60%×[ 非インフルエンザ症例へのタミフル処方ペナルティ ] =0.4×10 + 0.6×(-10)= -2点

*7:たとえば、検査前確率が40%だった場合、キット陽性例は全体の40%でその全てがインフルエンザ患者であり、キット陰性例は全体の60%でその全てがインフルエンザ患者ではない。キット陽性例にのみ処方すると、利得の期待値=40%×[インフルエンザ症例へのタミフル処方利得] + 60%×[ 非インフルエンザ症例へのタミフル非処方利得 ] - [検査コスト] =0.4×10 + 0.6×10 - 2= 8点

*8:たとえば、検査前確率が40%だったとしよう。インフルエンザ患者が全体のうち40%であるが、そのうち、キット陽性は40%×[ 感度 ]=40%×60%=24%、キット陰性は40%×[1 - 感度]=40%×40%=16%。インフルエンザでない人は全体の60%であるが、そのうち、キット陽性は60%×[1 - 特異度]=60%×10%=6%、キット陰性は60%×[ 特異度 ]=60%×90%=54%となる。キット陽性例にのみ処方すると、利得の期待値=24%×[インフルエンザ症例へのタミフル処方利得] + 16%×[ インフルエンザ症例へのタミフル非処方ペナルティ ] + 6%×[非インフルエンザ症例へのタミフル処方ペナルティ] + 54%×[ 非インフルエンザ症例へのタミフル非処方利得 ] - [検査コスト] =0.24×10 + 0.16×(-10) + 0.06×(-10) + 0.54×10 -2 = 3.6点。また検査後確率はそれぞれキット陽性の場合は0.24/(0.24+0.06)=80%、キット陰性の場合は0.16/(0.16+0.54)=22.8%である。計算間違いがあるかもしれないが、大まかな主張は正しいはずである

*9安田隆、検査結果の信用性、治療84:10 P50(2002)によれば、検査より治療を選択する疾患の確率の最低値を「治療閾値」と呼ぶ検査を行う確率の最低値は「検査閾値」と呼ばれる、とある。八森淳、検査の選び方、治療 84:10 P42 (2002)も同様の定義に則っている。一方で、治療すべきか否かの検査後確率(事後確率)の境界(このゲームの場合は50%)を治療閾値とする定義もある。どちらがより一般的かはよくわからない

*10■Health Department: Testing For H1N1 Influenza Unnecessary

*11:URL:http://openblog.meblog.biz/article/1783308.html

*12:URL:http://openblog.meblog.biz/article/1909437.html

*13:何か落ち度があったかのように誤解されるため、誤診と呼ばないほうがいいかもしれない。医療の不確実性のために生じる不可避なリスクと、医療水準に則っていれば正しく診断できたはずなのにそうしなかった行為は、まったく別物である。

*14:この話もはじめると長くなる。医師の利得と患者の利得が一致しないことがある。また、たとえば、患者が検査を希望したとしたら?訴訟可能性や患者の希望などによって、利得や検査コストは変わりうる

*15:URL:http://openblog.meblog.biz/article/1875637.html

tomtom 2010/11/09 19:20 力作お見事です!

医療も科学も0か1かじゃないってことを、もっと理解してくれるといいんですが。

wenderpunktwenderpunkt 2010/11/09 23:07 お疲れ様です・・・毎度、感服させられます。
と同時に、これだけ書かないと分からない人がいること、
これだけ書いても分からない人がいるであろうことに、
暗澹たる気分にさせられますね。
1つ疑問なのですが、実際の医療現場では、検査前確率や
リスク(コスト)&ベネフィットを考慮した上で簡易検査の有無を
決めているのでしょうか?2年ほど前に季節性に罹った際に受診した病院は
熱が一定以上なら自動的に簡易検査してたようですが。
…鼻の奥を綿棒でぐりぐりやられて涙が出てきたのを思い出します…

NATROMNATROM 2010/11/10 00:33 実際には、検査前確率や利得は大雑把にしか推定できませんので、現場での意思決定も大雑把です。まあでも、「熱が一定以上なら自動的に簡易検査」は、さすがに大雑把過ぎるだろうとは思いますが。私は、十分にインフルエンザっぽくて(検査前確率が高くて)、患者さんがタミフル処方を希望したら、簡易検査なしで処方していました。

wenderpunktwenderpunkt 2010/11/10 07:30 なるほど…ちなみにその際は、体温計を渡されて測ったら38.8℃、
体温計返却時に受付で看護師さんに予防接種済みか聞かれ、NOと答えると
診察前に直接処置室に通されて簡易検査、という流れでした。
大きな病院だったからなのか、土地柄なのか。
あるいは、その看護師さんが「インフルエンザっぽさ」を
独自に判断していたのかもしれませんが。担当医はかなりの年配でしたし。
結局、検査の結果が出るまで診察待たされて、3分診療でタミフル処方されました(^^;
まあ、二度呼ばれるよりは合理的っちゃあ合理的ですが。

kittenkitten 2010/11/10 15:01  去年と今年とで、また状況が違いそうですね。
新型インフル騒ぎの去年だと、検査しないリスクや、
インフルエンザなのにタミフル処方しないリスクが、
通常よりもはるかに高かったと思います。
 社会情勢によっても、検査閾値や治療閾値はかわりますね。

nn 2010/11/10 18:19 この理論自体は誰しもぼんやり程度には脳内にあるのだと思いますが、冒頭のリンク先のブログや、時々いるタミフル薬害説な人へ、これで有効な反論をするのは難しい気がします。

冒頭のブログ主はこういうモデルを考えてないわけではなく、むしろ念頭にありつつも、「インフル症例でタミフルを投与しないのはマイナス500点」と考えてしまっているから、検査閾値が限りなく0に近づいていると解釈すべきではないでしょうか。彼にとって、できる治療をやらなずに患者を死なせるかもしれないペナルティがやけに高い。去年の冬、新型インフルエンザが過剰に怖れられていた頃、一般の人もこっち派が多かったことでしょう。
また別の人は「有病者にタミフルを投与することによる加点は0.1点で、非インフル例に投与なんかしたらマイナス100点」という得点表が脳内にあるのだと思います。「インフルエンザなんて寝てれば治る、健康な人にタミフルを投与してしまうのはとんでもない、つまりタミフルに百害あって一利なし」という結論が導かれ、典型的なタミフル薬害論者のそれ。異常行動とか流行ってた数年前はこっち派の人も多かったですね。
結局は利得表そのものが歪めば結論は全く変わりますし、利得表そのものは恣意的に決める以外の方法がなかなかないのが問題なのかな、と思います。

nn 2010/11/10 18:44 訂正。冒頭のブログ主にとって限りなくゼロに近いのは「治療閾値」だと表現すべきでした。
要するにNATROMさんが最後に挙げたグラフを更に極端にした例(青い線が常に上に来ている)が、冒頭のブログ主さんの状態ですよね。
そういう人にどうやって説明すべきなのかは難しいところ。

tomtom 2010/11/10 19:54 リスクアバースというか、「とにかく死なないように!!」と凝り固まってしまっているんですよね。
全員を守るだけのリソースがあればそれでもいいんでしょうが、そんなわけはないので、実際にはこれはリソース配分の問題でしょうね。
ちょっと話はずれますが、先日新宿で行われたトリアージの訓練で、うまくできなかった医師が何割かいた、ということを思い出しました。これも、リソース配分という考えに慣れてないからでしょうね。

NATROMNATROM 2010/11/10 20:17 浜六郎氏なんかが、「インフル例に処方」利得や、「非インフル例の処方」利得を低く評価しているのは、一貫性があります。まあ、これはそれぞれの考え方です。理解できなくもありません。

一方、Open ブログの人は、単に利得の評価が異なるのとは違います。「できる治療をやらずに患者を死なせるかもしれないペナルティがやけに高い」にしては、健常人に対するタミフル投与には否定的なんですよ。日本感染症学会の推奨は間違っているのだそうです。

利得の評価が異なるのではなく、0か1かの1ビット思考に由来するんじゃないかと私は考えています。インフルエンザに罹患するのは「健康な人」か、「リスクのある人」かのどちらかしかないと誤解しているのではなかろうかと。中等度のリスクがある人はどうなのか、という観点がありません。その観点があれば、「低リスクの人にはタミフルは使用しない(治療閾値なし)」「高リスクの人には少しでも疑えばタミフル投与(治療閾値きわめて低い」の間があることに気がつくはずです。

検査前確率を理解していなさそうなところも、1ビット思考ですね。「症状のある人」と「症状のない人」しかいないと思っているようです。さまざまなリスクの程度、さまざまな検査前確率の患者さんがいることを思えば、簡易検査が有用である範囲があることが理解できるはずです。

nn 2010/11/10 20:51 >NATROMさん
すみません。彼のブログの本文だけ読んで、勝手に好意的に判断していました(向こうでの9日20:28のコメントとかを見る限りは私と似たようなことも書いてるようだし)。でもあのページの記載内容をだいたい読みましたが、あまりにツッコミどころが多すぎてどこからツッコんだらいいか全く分からないレベルでした(笑)

彼の意見を1ビット思考とかまで貶めたくはないですが、やはり感度・特異度の定義を覚えただけで何でも分かったように舞い上がってるに過ぎず、NATROMさんの緑色のグラフの根拠となる数式すら全く理解する気がないようですね。検査前/後確率とかも計算できずに延々と長文で反論してくる辺り、全然理系ぽくないなあ。
まあ「あれは誇張だったんだからね!」とか「アンタが誤読してたんだからね!」と言いながら少しずつ意見が修正されていく姿は、ちょっと可愛い…かもしれない(笑)

たかしたかし 2010/11/11 20:53 全然関係のない話ですいません。
一般の方に科学的思考を促す難しさも感じていますが、薬剤師に医療の基礎を教える難しさを毎日感じています。
今日、聞かれたこと
「この抗がん剤で起こる悪心は、急性ですか、遅発性ですか、予測性ですか」
偉そうな態度とるわりには、、、、。
薬剤師っているのですかね。

ゆうこゆうこ 2010/11/12 04:00 検査前確率は、定量的に算出することができるのでしょうか。
その判断基準が知りたいです。
また、事後に検査前確率を正確にする手段はあるんでしょうか。

nn 2010/11/12 07:53 >ゆうこさん
インフルエンザの場合、定量的に算出するのは無理ですが、大まかなグラフの形をイメージすることはできますから考え方自体は大事です。
これが「癌検診」とか「保健所のHIV検査」のようなものであれば、この考え方を用いて、かなりいい線で事前前確率(=集団の有病率)および事後確率とも、定量的に測定できます。

ゆうこゆうこ 2010/11/12 12:53 n様

>インフルエンザの場合、定量的に算出するのは無理ですが、大まかなグラフの形をイメージすることはできますから考え方自体は大事です。

 ここでの内容を読んで、大まかなイメージは共有できているつもりで質問しました。
 なんとなくですが、癌やHIVなど多角的な判断基準がとれる?場合は、検査前確率が線形的(もしくは、一様な分布といったらよいのかしら)になり、定量的にも測定できるんだろうと推測していました。
 ここで議論されているインフルエンザのように定量的な算出が難しい?場合は、検査前事前確率が30%〜60%(治療閾値)の範疇に入るケースが少なく、そのほとんどが治療閾値外、つまり正規分布しないことはないのかなと思った次第です。
 
 今日、読み直したらコメントに「大雑把」って書いてありましたね。
 #普通に大雑把ですよねー。
 失礼致しました。

zororizorori 2010/11/12 21:58 検査前確率を正確に知ることは出来ないと思いますが,日常的には,このような判断もしているんですね。

道路を横断する場合,車が近づいていないか確認します。もし車が確認出来たら,横断しませんし,来ていなければ渡ります。

しかし,交通量の多い幹線道路では,車が途切れることは殆ど有りませんので,歩行者は横断することすら考えません。横断しないのですから,車の確認も当然しません。稀に確認すれば渡れる場合もあるかもしれませんが,確認に要する時間と運良く渡れる頻度を考慮すれば馬鹿らしいからです。

一方,信号のある道路では,確認せずに渡る場合もありますね。信号無視の車に轢かれる可能性もありますが,青信号で既に横断者が大勢いて,後に続くような場合はまず確認しません。沢山の人が横断中のところに信号無視の車が突っ込むケースは殆ど無いからです。しかし,信号が変わって最初に渡る場合は確認する人が多いです。

どんな場合でも,道路は渡らないので確認しても無駄だとか,青信号なら必ず渡るのだから確認は無駄だとか,逆に確認は絶対しなければならないという人はあまりいません。状況から何となく車のくる確率を判断しているものです。

医療の検査前確率も,お医者さんは経験からある程度分かるのじゃないでしょうか。というよりも分かってもらわなければ困ると言うか。

ゆうこゆうこ 2010/11/13 02:06 zorori様

> 検査前確率を正確に知ることは出来ないと思います
> 状況から何となく車のくる確率を判断しているものです。
> 医療の検査前確率も,お医者さんは経験からある程度分かるのじゃないでしょうか。

 横断の例えは良く理解できませんでした。何を何に置き換えればよのやら。
 この記事に趣旨に戻してインフルエンザの例でもよいでしょうか。
 インフルエンザの場合の検査前確率は、問診なんだと理解していまいした。
 問診におけるクライテリアが何かと考えると、普段、病院にいく事を思い出すと次のようなことでしょうか。
  ・年齢や性別、家族構成、持病、過去の病歴、通院履歴
  ・熱の有・無と発症期間、扁桃腺の腫れ、聴診
  ・インフルエンザの流行状況、発症者への接触状況
  ・渡航の履歴
  ・予防接種の有・無
 これらは状況から何となくではなくて、普通に問診して確認してくることでしょう(流行状況はお医者さんによっては地域ネットワークで情報を仕入れていることですね)。
 こういったクライテリアがあるのであれば、ここでのゲーム理論と同じく重み付けをして、かつクリイテリア間の関係性の係数(乗算もあるでしょう)を考慮して、検査前確率というのをお医者さんは大雑把にも判断しているのだと思っています。
 直感的に、これはインフルエンザであろう(ここではインフルエンザであれば重症化するというリスクも含めます)と判断できるクライテリアもしくはその組み合わせはお医者さんなら判っていることだと思います。ここでの60%以上のことです。では60%以下なのか30%以下なのかになると、このエリアは非常に曖昧で線引きが難しいのかなと思っていました。つまり、簡易検査が有効であるという30%〜60%というのが、検査前確率の曖昧性から意味をなさない事はないのでしょうか。
 お二方のご意見では事後検証することが不可能であったり、検査前確率が曖昧ということですので、この問いへの解は常に曖昧な気がしてきました。

zororizorori 2010/11/13 08:34 ゆうこさん、

たとえが下手で混乱させてすみません。

a.検査前確率(問診で推定した感染の確率) ー 交通状況から推定した車通過の確率
b.検査(感染の有無を判断) ー 安全確認(車通過を判断)
c.処方 ー 横断中止
d.全例処方利得 ー 安全確認無し横断中止の利得
e.全例非処方利得 ー 安全確認無し横断の利得
f.キット陽性処方利得 − 安全確認の結果、車通過と判断した場合横断中止の利得

g.検査閾値 : f=e となる検査前確率 
h.治療閾値 : f=d となる検査前確率

検査閾値と治療閾値はそれぞれの利得や検査(安全確認)の精度(程度)で変化しますし、利得(d.e.f.)は症状の程度(交通事故の被害の程度)で変化しますから、簡単には計算できません。にもかかわらず普通の人でも、道路を横断するしないの判断、更にその判断の為に安全確認をするしないの判断もしています。絶対横断せずに歩道橋しか利用しないのだから安全確認も不要という人は稀ということです。

正確に数値を計算することは出来なくても、なじみのあることなら、大抵の人は程度の判断をします。不確実でも得られる情報の範囲内で柔軟に対応します。ところが、良く知らない恐怖(例えば病気)に対しては、二分法判断になる傾向が有るようです。

自動車のない国から来た人なら、道路は怖くて横断しないかもしれません。青信号だし車は止まるから安全だよといっても、信用しないかもしれません。医者を信用出来ないように。

ひくしひくし 2010/11/14 18:32 たかしさん:
>「この抗がん剤で起こる悪心は、急性ですか、遅発性ですか、予測性ですか」

専門家でないので教えていただきたいのですが、この質問はどの程度非科学的なのでしょうか?

また、たかしさんがどういう立場の人か存じませんが、このケースから、「薬剤師なんているのか」という一般論を導いた理路を教えていただけるでしょうか?

たかしたかし 2010/11/16 22:14 ひくしさん
コメントありがとうございます。あまりにやるせない思いだったので、ついつい。
唐突なコメントですいません。
予測性の嘔吐は過去の抗がん剤での嘔吐の経験がもとになるものであり、抗がん剤そのものによるものというのは適切ではありません。
薬剤師に対してはいろいろ思うところがあるものですから。
なんでも検査値の意味も理解しようとないわりには、検査値検査値と声高にさけんだり。
頭は良い方々が多いと思うのですが、マニュアルだけで患者さんベースに物事を考えない姿に少々嫌気がさしています。
もっとも、私の周りがそうなだけで、そうではない方も多くおみえになるとは思うのですが、、、というより信じたいのですが。

ひくしひくし 2010/11/17 18:07 >たかしさん

私は少し前まで薬剤師については、昔に比べて医師から直接薬をもらえないのは面倒くさいなというレベルでしか意識したことがなかったのですが、最近、ある病気で入院することがあって認識が変わりました。

私の主治医は信頼できそうな方でしたが、少々取っつきにくく、出された薬について「こんなことをきいたら気を悪くされるのではないか」と質問をためらっていたところ、薬の飲み方を教えに来た薬剤師さんが、私の色々な疑問に丁寧に答えてくれ、その薬に漠然と抱いていた不安を解消してくれました。そしてその時、何故医師以外に薬剤師が必要なのかも説明してくれました。また、私の主治医とその薬剤師との関係は良好で、対等ではないにしろ、ある種の協調関係にあるような印象を私は受けました。

どの職業でも(従って医師でも薬剤師でも)ダメな人(プライドばかり高い人、知識ばかりひけらかす人、自分中心にしか考えない人、生意気な人等々)はいるものです。たかしさん(お医者さんだと推定しています)の周りの薬剤師がダメなのは本当なのかも知れませんが、その体験から、こういう場にわざわざ「薬剤師なんているのか?」と書き込む乱暴さが私には理解できません。いらない理由を原理的に説明できるのならば別ですが。

たかしさんの書き込みを読むと、受け取りようによっては、失礼ながら、薬剤師との関係がうまくいかない医師の愚痴・悩み相談にも見えます。私はこういう話は相対的に捉えたいので、薬剤師側のたかしさん評もきいてみたいですね。患者は自分の命がかかっているのですから、知識はなくとも、信頼できる医師かどうかを見分ける動物的感覚は異常に研ぎ澄まされているでしょう。同じ病院内で働く人との関係が良好であることは決してマイナスにはならないと思うのですが・・・。

ゆうこゆうこ 2010/11/18 01:33 zorori さん

 例えの設定が正しくないと思いますが、仰っていることは判りました。
 その例では不確実性に基づく一般論の話で、私はそのことを疑問視しているわけではありませんよ。

 補足にある診断ガイダンス http://idsc.nih.go.jp/disease/swine_influenza/2009idsc/diagnosis0902.html
 には、「発症翌日に検体が採取された場合に感度が高いとされているが、それでも40〜80%程度である2,3)。発症当日や発症後数日以降に採取された場合はさらに感度が下がる。」です。
 また、こちらの診断ガイダンスhttp://idsc.nih.go.jp/disease/swine_influenza/2009cdc/CDC_rapid_testing.html には、「ウイルスの排出が最大となる発症後4-5日のあいだに採取されるべきである」とあります。
 ここでの例は感度は60%ですが、実際には幅がある、恣意的にみれは20%〜80%です。
 検査前確率と合わせて、この感度の幅をしっかり認識して使う必要があるとなります。検査の感度に幅がありますから、この幅を認識するため検査前の基準はありそうですがそれは無いし曖昧、そういった状況で、一般論から検査は意味がある範囲があるってどうして納得できるんだろう、ただそれだけです。
 私はこういう簡易検査はお医者さんをただ困らせるだけと思ってしまうのですよ。

> 良く知らない恐怖(例えば病気)に対しては、二分法判断になる傾向が有るようです。

 主語がわかりませんが、そんな気がします。

zororizorori 2010/11/18 21:43 ゆうこさん、

>私はこういう簡易検査はお医者さんをただ困らせるだけと思ってしまうのですよ。

もちろん,不確実な情報で判断しなければならないのですから困るというか,悩みはあるでしょう。NATROMさんが説明されている利得のグラフも確定値ではなくて,確率的期待値に過ぎません。その利得が確実に保証されるというわけではありません。それでも,最も期待値の大きい選択をするわけです。

現実には,利得のグラフも正確には描けません。つまり,その段階でも不確実性が有りますが,経験有るお医者さんなら,大ざっぱな見積もりから,最も妥当性の高そうなグラフを想定するわけです。

つまり,不確実性は二重にあるのです。最初の不確実性はどの利得のグラフを選択すべきかで,二番目は選択した確率的期待値を示すに過ぎない利得グラフから検査や治療の実施の判断をすることです。

Openブログの人は,この一番目の選択において,NATROMさんが示している最後のグラフのもっと極端な場合を選択しているに過ぎません。非処方の損害が非常に大きい場合に決め打ちした上で,検査は無駄だと言っているだけです。

なぜ,そのような決め打ちをするのかというと,よく知らないものには大きな恐怖を感じるからではないでしょうか。経験のあるお医者さんならインフルエンザがどういうものであるかある程度知っていますので,感染の損害の見積もりが出来ますが,無知ですと非常に恐ろしく感じてしまい,検査結果に拘わらず処方しなければならないと考えるのでしょう。不思議なことに,恐怖の対象が薬になると,薬は危険なので処方してはいけないと,同じ人が矛盾したことを言ったりしますが,未知のものへの恐怖はこのような矛盾した行動も説明できます。

また,不確実というのは,人間心理を非常に不安にします。不確実なものを不確実なまま扱う確率的思考は大抵の人は苦手です。どちらかにスパッと決めてしまう二分法の方が好まれるということもあるかもしれません。

nn 2010/11/18 22:30 >ゆうこさん
>一般論から検査は意味がある範囲があるってどうして納得できる
そんな事は言ってないので、納得できなくて当然と思います。検査の性能があまりに低いなら、検査せずに医師の診察だけで決めた方がよいという状況(緑色のグラフが常に赤や青より低い)はあり得ますし、実際、発症初期は検査しないという方針の医師もいます。
NATROMさんが3番目に挙げたグラフの概形は、実際の日本人医師が典型的患者を診る時の感覚に近いと思いますが、あくまで感覚的なものです。具体的なグラフの交点座標(30や60)に意味がないどころか、この概形が正しいと決まったわけでもありません。
この記事のそもそもの趣旨が、「感度が低い簡易検査は全く何の役にも立たない」的な某主張に対し「いろんな条件をもっと考えよう」と反駁するものだったようです。この記事は「いろんな条件でいろんな方針が生まれるし、多少感度が低くても条件によっては検査は役に立つ」と言ってますが、「実際にこういう条件だ」までは言ってないです。

以前の補足。以前「癌検診」や「保健所のHIV検査」でなら事前確率は正確に決まると言いましたが、それは、これらが季節で流行するわけでも自覚症状があるわけでもなく、ただ検査一発で判定するものなので、「事前確率」として得られる情報が単にその年代での国民の有病率そのものでしかなく、それなら広く統計的に知られている、という意味でした。

ゆうこゆうこ 2010/11/19 01:14 zororiさん
n さん

 某ブログの人の記事は読んでいますが、偏った尖がった主張なので特に気にしていません。自分が気にしているのは某ブログの人のこととは別です。出来れば切り離して下さい。

> また,不確実というのは,人間心理を非常に不安にします。不確実なものを不確実なまま扱う確率的思考は大抵の人は苦手です。どちらかにスパッと決めてしまう二分法の方が好まれるということもあるかもしれません。

 普通の人なら、不確実なときはリスクを最大化して確度を低く捕らえると思いますよ(ギャンブルが好きな人もいるでしょうが、重要な決断になればなるほど)。なんらかの条件の感度が高いと一気に確実へとなると思います。普通に生活している場合は、多くの条件がない事が多いので、不確実か確実で二分化されることが多いかなという意味で、そんな気がすると書きました。

>>一般論から検査は意味がある範囲があるってどうして納得できる
>そんな事は言ってないので、納得できなくて当然と思います。

 ということであれば私の誤読ですね。

 「インフルエンザの簡易検査は感度・特異度を理解の上に使うべきである*2。当たり前の話。しかし、まれに、インフルエンザの患者には、簡易検査をするべきではない、簡易検査をする意味は何もないと誤解している人もいる。」
 このことが命題と誤認し、インフルエンザの簡易検査に有用な範囲があることを示そうとしていたのかと思いましたが、実際は、インフルエンザの簡易検査に関係なく、検査の有用性のことだったのですね。理解しました。

> 以前の補足。

 たぶん、同じ解釈と思いますが・・・
 私は癌であれば、問診(血縁に癌はいるかとか、タバコはすっているとか)と実際の統計から検査前確率(癌の羅患率)が参考にできるから、検査前確率は定量的になるのかなと思っていました。検査もインフルエンザのように簡易検査1つではなくて、血液検査、レントゲン、MRIなどなどとヴァリエーションもありますから、仮説と検証を繰り返して、確度を上げることができると言う意味でも、定量的になりやすのかなと。

zororizorori 2010/11/19 06:40 >自分が気にしているのは某ブログの人のこととは別です。出来れば切り離して下さい。

失礼しました。私は、某ブログの人のような考え方になるのはなぜかということに興味がありましたので。
なぜなら、その考え方は決して特殊なものではなくて、普通の人でも陥りやすいものだと思うからです。

>普通の人なら、不確実なときはリスクを最大化して確度を低く捕らえると思いますよ

ここが、重要なところで、病気のリスクがはっきりしないなら、リスクが非常に大きいと仮定すれば安全側であると安易に考えがちなんですね。病気のリスクが大きいなら治療をすればよいと。ところが、治療にもリスクがあるわけで、そちらは無視しているんですね。逆に治療のリスクだけ注目し病気のリスクを無視することもあります。一つのリスクを下げると別のリスクが増えるというトレードオフの考えが抜け落ちてしまうのだと思います。

普通の人でも、そのように考える例は沢山あって、例えば、BSE問題での全頭検査が良い例です。

ゆうこゆうこ 2010/11/19 18:53 zororiさん

> 私は、某ブログの人のような考え方になるのはなぜかということに興味がありましたので。

 なるほど〜。リスクは定性的、定量的に捉えるんでしょうけど、定性的、定量的にも質が落ちればトレードオフまでに至らないのでしょうね。
 例にあげて頂いたBSE問題に関しては、一般の人が得る情報は、せいぜいTVや新聞でしょうから。実際の発症の確率が0.001%以下(正しいか不明ですが、ものすごく低い)という認識が正しく伝わっており、この確率と経済や国家間に及ぼす影響の比較が定量的にされていれば、普通の人というか、普通に認識できないものかなと思います。こういった事がなく、死んだら責任を取れるのかという定性的な報道が多いですから、人に与える影響、バイアスの掛り方が普通でないと思います。実際に、律儀に検証して尖がった報道をするマスコミがいても良いのですが、なぜか大衆迎合で横並びですからね・・・。判りやすく0.001%を0%にするために税金が5%UPしますと連日報道するマスコミがいてもいいのに。
 政府、役人さんがそういった論理(定性・定量分析)に基づいて国会(大臣でもいいですが)で判断しているかというと、そんな感じもしないので困ったところ。もしかしたら、役人さんはそういう資料を提出していて、政府側(判断する側)の問題なのかも知れませんが、私は調べたことがないので良く判りません。

 この記事の本来の趣旨とだいぶ外れてしまったコメントですので、ここまでにしたいと思います。

2010-11-01 お金の切れ目が命の切れ目

[]お金の切れ目が命の切れ目 お金の切れ目が命の切れ目を含むブックマーク

肝臓癌の治療薬にソラフェニブという薬がある。商品名はネクサバール。日本では2009年5月から保険適応となった。肝臓癌の治療法は、部分肝切除術、ラジオ波焼灼療法、肝移植、腫瘍塞栓術、持続動注化学療法など複数あり、病期や肝障害の程度によって使いわける。ソラフェニブは切除不能な肝細胞癌が対象となる。海外で行われた二重盲検プラセボ対照試験では、生存期間の中央値はソラフェニブ群で 10.7 ヵ月,プラセボ群で 7.9 ヵ月であった*1

ちなみに、薬価は、1錠5000円強。標準的な投与量は1日あたり4錠なので、1日あたりにすると2万円強、1ヶ月あたり60万円強ということになる。保険適応になっているから、患者さんの自己負担は60万円の3割で18万円。これは高額療養費制度の適応になるので、平均的な所得の人ならば、ソラフェニブ以外の医療費も含めて自己負担額は8万円強程度になる。差額は組合・政府などの保険者の負担になる。これは、まわりまわって、税金や保険料からまかなわれることになる。3ヶ月間の生存期間延長に対して1ヶ月あたり60万円強の医療費は高いとお思いだろうか?私は高いとは思わない。残された時間の少ない人にとって、3ヶ月間という時間がどれだけ貴重か。

しかし、使える医療費は有限である。今後、治療法はどんどん改良されて、生存期間は延長していくだろう。そのぶんだけ医療費も余計にかかることになる。実際に、乳癌や大腸癌については、化学療法が進歩して予後は大幅に改善した一方、増大する医療費が問題になっている。


■アピタル_わたしのがん対策_年間の医療費は? ああ高い! 抗がん剤(朝日新聞)

 がんになったら医療費はどれくらいかかるのだろうか。

 東北大の濃沼信夫教授(医療管理学)らは04年から全国の主要病院でがん患者6604人に協力を求め、医療費のアンケートをした。入院・外来医療費、交通費、健康食品費、装具費などを含む自己負担額は平均で年間100・7万円だった。このうち62・5万円が高額療養費の払い戻し、税金の還付金、民間保険給付などで戻り、実質負担は38・2万円だった=グラフ。

 高額療養費は、公的医療保険で、自己負担が限度額を超えた分を負担しなくてよかったり後で払い戻されたりする制度。調査で高額療養費の適用になる患者は52・6%を占めた。がん患者にとっては高額療養費が当たり前だ。

 特に、化学療法を受けた患者(1150人)は平均で年間133・1万円を自己負担し、75・2万円が戻り、実質負担は57・9万円だった。自己負担分をまかなうために貯蓄を取り崩した人が63・8%を占めた。  医師691人への調査では、患者の経済的理由で治療内容を変えた経験がある人は11・7%。患者数全体の中では1%以下とみられる。

 濃沼教授は「がん新薬はバイオ技術で作られる時代になった。よく効くが開発費もかかり高価だ。将来、薬代が高すぎて治療が受けられない患者が例外でなくなるかもしれない」と語る。


この記事は、「高額な抗がん剤治療をする病院に製薬会社などが寄付したり、薬代を割り引いたりする仕組みがあれば、患者は助かるのではないか」という提案で締められている。現時点では、がん患者に過大な負担がかからないような制度を整備することに私も賛成である。日本の総医療費は、国際的に見れば相対的に少なく、改善の余地がある。エビデンスの十分にある治療法については、患者の経済的状況に関わらず、公平に受けることができる制度が望ましい。しかし、総医療費を増やすためには、税金や保険料を上げる必要がある。現時点でも、税金や保険料が上がるのはごめんだ、という人もいるだろうし、総医療費を増やすのに賛成する人でも、際限ない医療費の増大までは容認できないであろう。

有限な医療費をどのように分配するか。がん患者にではなく、別の分野(たとえば救急医療や産科領域)に予算を分配すべきだという主張もあるだろう。現時点ではともかくとして、将来は、単に「効果がある」というだけでは公的保険の適応にならず、費用対効果が厳しく問われるようになるだろう。現在でも「経済的理由で治療内容を変えた」患者さんはいるものの、いまだ「患者数全体の中では1%以下とみられる」。しかし、将来は、「お金の切れ目が命の切れ目」が普通になる時代が来る。



関連記事

■国民皆保険制度がわりとうまくいっていた理由

■医療の値段

askask 2010/11/02 00:10 > 「お金の切れ目が命の切れ目」が普通になる時代が来る。

 誤解を招く表現です。お金を出せば死なずに済むと読めます。実際には生存期間がわずか3カ月伸びる程度でしょう。お金を出しても命は切れます。もっと正確に表現しましょう。

> 将来は、「お金の切れ目が命の切れ目」が普通になる時代が来る。

 評価はしていませんが、それは素晴らしいことですよ。お金を出せば(金持ちならば)3カ月生きられるならば。
 現状は、日本は未承認薬が多すぎて、お金を出しても3カ月の延命ができません。こっちの指摘の方が専決でしょう。

NATROMNATROM 2010/11/02 00:43 「実際には生存期間がわずか3カ月伸びる程度」ならまだ問題は少ないのですが、将来はもっと生存期間は伸びるし、大腸癌や乳がんは実際にそうなっていると書いたのですが、askさんは理解できなかったのですね。「未承認薬が多い」というのも、最終的には医療費の問題に帰結します。まるで、askさんは、何度も議論で負け続け、反論したくてたまらないのに、能力不足のために的外れなことしか言えない人のようです。

毎度毎度のことですが、「ask」さんは、過去に批判的なコメントをして、反論されたらそれっきりになってしまった人たちと同じホストからの投稿です。具体的には、「ホメオパシーの有効な利用法」というエントリーで「(誰かが)ホメオパシーを有効利用する可能性を殺したということは、ありません」と発言したKKKさん、『「冷たい」標準医療は「ぬくもりある」代替医療に勝てない』というエントリーで「ホメオパシーが強力なのは、ぬくもりがあるからじゃなくて、真実を語らずに嘘ばかり語るからです」と発言したマンガンさん、「癌霊1号が白血病に効く!代替医療が標準医療になるとき」で著作権法についてユニークな意見を開陳した「くろす」さん、などです。

申し訳ありませんが、askさんには、今後は、黒木による『「匿名」による批判の禁止ルール[ http://www.math.tohoku.ac.jp/~kuroki/keijiban/Rules.html#anonymous ]』を適用いたします。「馬鹿なことを言ってしまったときに恥をかけるだけ十分に詳しく自己紹介を」お願いいたします。「馬鹿に巻き込まれただけ」なのであれば、誠に申し訳ありません。しかし、いくつかの理由から、反論できなくなって逃げ出したKKKさん、マンガンさん、くろすさんと同一人物である可能性がきわめて高いと考えています。今回が初めてのコメントであるならば、その旨、おっしゃってください。

エディエディ 2010/11/02 02:27 「同じホスト・IPアドレス」の意味がわからない人じゃないでしょうか?w

yumipapayumipapa 2010/11/02 08:57 乳癌の世界では進行再発の症例でも予後が長いので、治療費は問題になっています。高額医療費の助成をうけても自己負担は年100万円はかかります。現在使われているハーセプチンは対象者が少なかったのですが、今後出るアバスチンは適応が広くなると予想されています.
生存率に差がでる薬剤ならまだしも、病勢進行をおさえるだけの治療に意義があるのか、難しい問題です.
「病状の進行数カ月遅らせるデータはあります。でも生存率を伸ばしません」
こんな説明したくないですが、だからといって
生存率に寄与しない高額な医療を続けていると、医療費が破綻するのは目にみえています。
今後分子標的薬が開発されれば、ますます深刻な問題になるでしょう。

まつもとまつもと 2010/11/02 19:14 乾いた見方をすれば、余命が伸びた末期癌患者がその間にどれだけの経済活動を行うかも視野にいれなければならなくなると思います。そういった試算はされているのでしょうか。
まずは、そんな策が必要になるほど日本社会が疲弊しないことを願いますが。

774774 2010/11/02 20:26 http://www.foreignaffairsj.co.jp/shop/shop-FAR1009.htm
フォーリンアフェアーズの9月号でエイズについて似たような問題が取り上げられていますな。

nn 2010/11/03 03:14 >まつもとさん
別にその3か月だけの生産性で測る必要も意味もないと思いますよ。長く健康に生きて国民健康保険料を納めてきた人であれば、その分の貸しを取り戻すだけですから。
またその人の一生でのトータルで考える必要もありません。関連記事の「国民皆保険制度がわりとうまくいっていた理由」にもありますが、病気がちの人や収入が低い人は払う保険料より受け取る医療費の方が多くなる、というのは、現在の日本の医療システムが積極的に認めていることです(これがどれだけ有り難いことか)。
要は健康保険とは助け合いの制度ですから、社会全体でシステムが破綻しないようになっていればOKです。
もちろん、仮に破綻しなくてもあまりに不均衡なもの、例えば3か月延命するのに3000万円かかるような治療は保険適用になりません。1か月60万円程度なら大概の重病や事故の治療でかかる額なので、かなり長期化するようになって初めて問題になるくらいのスケール感です。

foobirdsfoobirds 2010/11/03 18:05 リウマチの生物学的製剤の場合は、もうすでに問題が出てきています。年間約40−70万円の自己負担(保険ありで)、元の値段を考えれば確かに安いですが、それでもこの薬だけで月3−6万くらいの負担。これを高いと思うか安いと思うか。
やはり、保険がきいての自己負担でも、やめてしまう人もいます。

生命予後もそうですが、機能予後。とくに、リウマチの場合早期に生物学的製剤を始めることで、機能予後がかなり改善される人がいるので、リウマチで今後ずっと不自由な生活を送るためのコストと、リウマチを早期に治療開始して、社会生活・経済活動を続けられる人が増えることとを比較したら、もうすこし手厚い補助があってもいいのかな、と思っています。(リウマチだけを特別扱いしろというのではないです。念のため)

NATROMNATROM 2010/11/03 21:16 ウイルス性肝炎については、政治的な配慮もあってのことでしょうが、かなりの補助があります。それはそれでよいことなのですが、有限な医療資源が適切に配分されているかどうかについては、あまり検証されていないように思えます。

att460att460 2010/11/04 00:28 人工透析が保険適用となった際に、すでに高コストであることが問題となっていたような気がします。

まつもとまつもと 2010/11/05 21:47 >n様
日本の国民皆保険は健康な人が不健康な人を助けるための社会福祉であるという点には同意します。そしてそれはNATROM様が度々主張している日本の保険制度の評価すべき点であることも理解しているつもりです。

医療技術が発展するにつれて治療可能な疾病が際限なく増え続けるとしたら、《健康な》人が助けるべき《不健康な》人はどの程度まで《不健康な》人であるのかが疑問でした。なぜならば、稀な難病は稀であるが為に治療に費用がかかるという点で救済されるべきであり、よくみられる疾病は数が多いという点で保険適用されるべきである、このため全ての疾病は治療されるべきである。という一見しただけもおかしい結論に疑問を持っていました。
ですが、保険適用とする時点で「保険適用とする治療方法であるか否か」の判断がなされているのなら、合理的な方法ですね、目から鱗です。
私個人としては“長く健康に生きて国民健康保険料を納めてきた人であれば、その分の貸しを取り戻すだけ”という立場には少々否定的です。これは私が信じている国民皆保険制度の目的と対立するように感じます。

suzume002suzume002 2010/11/06 17:34 効能があっても高価なために保険適用から外れる治療法が出てくるとした場合、それは保険内診療と併用することが認められるべきでしょうか。

NATROMNATROM 2010/11/06 17:40 混合診療の問題ですね。混合診療の解禁・禁止にはそれぞれ長所・短所があるのですが、全面禁止はデメリットが大きいと思います。「効能があっても高価なために保険適用から外れる治療法」については、混合診療を認めてもいいと、個人的には思います。その場合でも、効果があるのが明らかなら、いずれは保険適用にすることを目標にすべきです。

zororizorori 2010/11/08 21:54 「お金の切れ目が命の切れ目」と書くと,なにやら非人道的な印象が有りますが,「有限な医療費をどのように分配するか。」ということですね。命はお金より大事なのだから,一人の命が救えるなら,100億円でも注ぎ込むべきかというと,そうはなりませんからね。その100億円で1万人の食中毒死を防げる水道施設が出来るとすれば,1万人の命と引き替えに1人の患者を救っていることになります。
 
つまり,お金と命を比べるのはお金を使わせるミスリーディングなのですね。お金は多様な価値を交換する媒体に過ぎず,そのものに価値が有るわけでは有りませんから。そのお金で他にどんなことが出来るかを比べなければなりません。でも,これが非常に難しいのは「事業仕分け」を見ていても分かります。

財源や資源には限りが有るのですから,万民が最良の治療を受けるというのも不可能です。ただし,低額の治療法しか無ければ可能で,ここ最近の日本はたまたまそういう特殊な状況だったのかもしれません。万民に治療可能な程度の低額の治療法しか無かったというのが実態であり,最良の治療を万民に提供すべく,他のものを犠牲にしてきたわけじゃ無いのですね。今後は高度,高額な医療が増えてきますから,「お金の切れ目が命の切れ目」という普通の状態になるんでしょう。それは別に貧乏人にとって現状で受けられる治療が受けられなくなるわけではなく,金持ちが受けられる治療法が増えただけですけどね。とはいえ,絶対的状況は悪化しなくとも,金持ちとの相対的差が広がるとなると,釈然としないのも確かです,これは,ひがみ根性なのか平等の精神なのかよく分かりません。

元CS患者元CS患者 2010/11/09 08:00 気分が重くなりますね。
でも、
Ustreamで孫正義さんと医療者の熱い対談を見たら、なんだか日本もいけるような気がしてきました。

「ITで医療は変わるのか?(前編)」
http://www.ustream.tv/recorded/10648930

「ITで医療は変わるのか?(後編)」
http://www.ustream.tv/recorded/10650766

luckdragon2009luckdragon2009 2010/11/09 12:15 某ペプチドワクチンの時にも、話題になりました。
難しい問題ですね。
特に、晩年の病気は、その人が以前生産者であった事を、忘れてしまうケースが多くて。

nomnomnomnom 2010/11/18 14:46 以前慢性骨髄性白血病の患者さんで、グリベック内服中でしたが、こんな高い薬はのみ続けられない、と家族にももうなったからとやめちゃって、しばらくして急性転化、DIC、腎不全、多臓器不全でもうなす術もなく、あれよあれよでなくなってしまいました。まさに金の切れ目が。