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cover ■「ニセ医学」に騙されないために

 ホメオパシー、デトックス、千島学説、血液型ダイエット、ワクチン有害論、酵素栄養学、オーリングテストなどなど、「ニセ医学」についての本を書きました。あらかじめニセ医学の手口を知ることで被害防止を。

2012-03-18 「タバコを吸うとガンになる可能性は3分の1以下になる!」。何が何

[]「タバコを吸うとガンになる可能性は3分の1以下になる!」。何が何だか分からないよ! 「タバコを吸うとガンになる可能性は3分の1以下になる!」。何が何だか分からないよ!を含むブックマーク

もう武田邦彦はお腹いっぱいだよと思っている人も多かろうとは思うけど、もうちょっとだけ。ナマモノだから早目に調理しないといけないネタ。武田邦彦先生は、喫煙が肺癌の原因であると主張する人たちの資料は曖昧で、事実をそのまま示しておらず、自分の都合のよいデータだけを選んで出していることがわかっちゃったんだそうだ。さすが武田先生!以下が、武田先生の「そのまま示された事実」です。■人の健康をダシに??政策に絡む研究のいかがわしさ(武田邦彦) - BLOGOS(ブロゴス)より引用した。



f:id:NATROM:20120318102824j:image

実は「タバコを吸っても吸わなくても肺がんは同じ」ということなのです。


意味わかんないでしょ?私も最初、意味がわからなかった。しかし、ちゃんと読んだら一応は「タバコを吸っても吸わなくても肺がんは同じ」と判断した理由が書いてあるのです。武田先生は円グラフの数字を「各疾患での死亡者中の喫煙者の割合」と考えたのです。武田先生の思考過程はおそらく以下のような感じ。


「肺がんで死亡した人のうち喫煙者は69.2%だ。この数字はいかにもタバコを吸うと肺がんになると思わせるが、対照群と比較しなければならない。タイムラグを考慮して20年前の日本人男性を対照群とみなすと、そのころの喫煙率は70%である。肺癌死亡者中の喫煙者の割合と、対照群中の喫煙者の割合に差がないため、タバコを吸っても吸わなくても肺がんのリスクは変わらない」


疾病群と対照群とのそれぞれの群で暴露状況を比較するという手法は、症例対照研究といって疫学の手法の一つである。肺癌死亡者中の喫煙者の割合と、対照群中の喫煙者の割合を比較するのはまっとうなやり方だ。円グラフの数字を「各疾患での死亡者中の喫煙者の割合」とする前提が正しくないから結論も正しくないけど。


f:id:NATROM:20120318102825j:image

おそらく「タバコを吸うと胃がんが10分の1になる」というぐらいの数字が出てくるでしょう。


胃がんや全がんについても同じである。対照群での喫煙者の割合が70%なのに、胃がん死亡者での喫煙割合が25.2%であれば、喫煙が胃がんに防護的に働くと推測される。厳密にやるなら年齢調整などを行わないといけないが、大雑把な推測としては妥当だ。円グラフの数字が「各疾患での死亡者中の喫煙者の割合」だという前提が正しければの話だけど。


f:id:NATROM:20120318102826j:image

つまり、タバコを吸うとガンになる可能性は3分の1以下になるということで、これもまた驚きです。


「喫煙者が100人に70人もいるのに、ガンになる人は約12人なのに、タバコを吸わない人は30人に対して18人もガンになったということです。その比率は3.5倍ということになります」って部分、意味わかる人いる?私にはわかる。どんな武田邦彦ファン以上に、武田氏の主張を理解している自信があるよ。武田先生の思考過程はおそらく以下のような感じ。


「全死因のうちの癌死の割合は30%である。人はいずれは必ず死ぬので、100人の日本人男性のうち、30人は癌で死亡し、70人が非癌死する。また、円グラフより癌死亡者のうちの喫煙者の割合は約40%である。よって30×0.4=12人が喫煙者かつ癌死者。30-12=18人が非喫煙者かつ癌死者。

また、喫煙率は70%であるから、100人の日本人男性のうち70人が喫煙者。70-12=58人が喫煙者かつ非癌死者。100人の日本人男性のうち30人が非喫煙者。30-18=12人が非喫煙者かつ非癌死者。

相対危険(喫煙に対する非喫煙)は、(18/30)/(12/70)=3.5。よってタバコを吸わないことは、タバコを吸うことに対して、がんで死ぬリスクは3.5倍になる。逆に言えば、タバコを吸うと癌で死ぬ可能性は3分の1以下になる」


驚くべきことにこの推論は細部はともかくとして概ね正しい。オッズ比を計算したら確かに3.5になる。前提が間違っているから結論は間違っているけど。

さて、武田先生の間違いは、円グラフの数字を「各疾患での死亡者中の喫煙者の割合」としてしまったところである。いつものように武田先生は引用元を示していないが、元図と思われる図を見つけた。


f:id:NATROM:20120318102827j:image

■保険適用4年目を迎えた禁煙治療の現状と今後の展望より引用。



ちゃんと「喫煙の人口寄与危険割合」と大きく書いてある。「がんの原因のうち喫煙がどのくらいの割合を占めるかを表す指標(%)」のことである*1。たとえば全がんでの喫煙の人口寄与危険割合が38.6%ということは、がんで死んだ人のうち38.6%が喫煙が原因であったということである。

疫学の指標はたくさんあるから人口寄与危険割合がなんだかわからなくても仕方がない。しかし、せめて「人口寄与危険割合」で検索してみるぐらいの知恵はないのだろうか。大学教授なんだよ。百歩譲って、「人口寄与危険割合」を「各疾患での死亡者中の喫煙者の割合」だと勘違いして計算していくうち「タバコを吸うと癌で死ぬ可能性は3分の1以下になる」なんて結論が出た時点で、「いやいや、おかしい。なんか間違っている」と気付かないものだろうか?


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■養老孟司の禁煙原理主義批判批判

NNNN 2012/03/18 16:05 分かりにくかった人向けに勝手に補足してみます。
寄与危険割合とは、がんで死んだ人のうち、喫煙者100人と非喫煙者100人を取り出してきたら、喫煙者のうちどれくらいの人がタバコのせいで死んだか分かるよね、という割合です。
喫煙が関係なかったら0%になりますし、武田氏のいうようにタバコを吸うとがんが減るのなら、マイナスの値にもなり得るのです。
ですから、円グラフにするのは本当はあんまり良くないのです…

masamasamasamasa 2012/03/18 17:39 難しすぎるー!!!

yamamotoyamamoto 2012/03/18 20:50 喫煙者100人で、ガンになった人(45人)、ならなかった人(55人)、発ガン率(45%)。
非喫煙者100人で、ガンになった人(5人)、ならなかった人(95人)、発ガン率(5%)。
だから、喫煙の寄与危険割合は、45% - 5% = 40%。
って理解で良いですか?
要するに、煙草を吸っても吸わなくても5%の人はガンになるけど、吸えば確実に40% UPするって事で・・・で、残り60%は煙草以外の原因でガンになったと。
(数字は適当です)

kyu.kyu. 2012/03/18 22:40 この数値は死亡数の内、煙草が原因と思われる割合を示すものという理解でよいのでしょうか?
煙草が関係しない場合は0で、武田氏の主張が正しいのならマイナスになる?

farestfarest 2012/03/19 01:19 武田先生が何を言っているのかさっぱりわからないので、大変参考になりました。
NATROMさんは武田先生の最大の理解者ですね!

antant 2012/03/19 07:41 喫煙の人口寄与危険割合のグラフは、喫煙が0になればこれだけ癌になる人が減る(はずだ)よ、を意味するものだと思っていたのですが・・・
違いましたっけ?

bamboobamboo 2012/03/19 18:24 前回のエントリの対象ブログはそのままだけど、こっちは自信があるのだろうか。
今回の対象のBLOGOS(ブロゴス)はまだあるが、自分のブログは消したらしい。
http://takedanet.com/2012/03/post_aae9.html

げげげげ 2012/03/19 20:48 曝露集団の寄与危険度割合
寄与危険度割合
=曝露が寄与する罹患率の割合
={(曝露群の罹患率)−(非曝露群の罹患率)}/曝露群の罹患率

だそうですね

NNNN 2012/03/19 22:00 >yamamotoさん
その例の場合、寄与危険割合は(0.45-0.05)/0.45=約89%になります。
がんになった45人のうちの約89%の人、つまり40人はタバコのせいでがんになってますね。

>kyu.さん
「喫煙者の死亡数」のうち、タバコが原因と思われるものの割合ですね。
喫煙者の中にはタバコを吸わなくても結局がんで死ぬ人もいたことでしょうから。

>antさん
割合のグラフですからね。
がんになる人がどれだけ減るかは喫煙者がどれくらいいるかによるでしょう。

shinzorshinzor 2012/03/19 22:06 yamamotoさん,

検索してみたら、「寄与危険度割合」は、げげさんが示しているもので、

「(曝露群の罹患率)−(非曝露群の罹患率)」は「寄与危険度」というそうです。


寄与危険度割合
=(寄与危険度)/曝露群の罹患率
=((曝露群の罹患率)−(非曝露群の罹患率))/曝露群の罹患率


45% - 5% = 40%。は寄与危険度で,喫煙の寄与危険割合は、
(45% - 5%)/45% = 89% となるのではないでしょうか。

喫煙者ががんになっても、喫煙以外の原因かもしれないので、45%の内、喫煙が原因である40%の割合というような意味かと思います。

がんの原因には喫煙以外にもいろいろあって,例えば,ストレスの「寄与危険度割合」が10%(数字はいい加減)だとします。そして,現代人はたいていストレスを感じていますので,ストレスを感じている人の割合は100%近い。武田先生は10%と100%を比べて,ストレスはがんを1/10にすると仰っているというようなものかと。

NATROMNATROM 2012/03/19 22:10 寄与危険とか人口寄与危険割合とか、このあたりの疫学の指標はたくさんあってすぐにわけがわからなくなります。近いうちに、まとめのエントリーを書きます。


>喫煙者100人で、ガンになった人(45人)、ならなかった人(55人)、発ガン率(45%)。
>非喫煙者100人で、ガンになった人(5人)、ならなかった人(95人)、発ガン率(5%)。
>だから、喫煙の寄与危険割合は、45% - 5% = 40%。
>って理解で良いですか?
>要するに、煙草を吸っても吸わなくても5%の人はガンになるけど、吸えば確実に40% UPするって事で・・・で、残り60%は煙草以外の原因でガンになったと。

「曝露群と非曝露群の疾患頻度の差を(狭義の)寄与危険という(「基礎から学ぶ楽しい疫学 第2版」より引用)」ので、45% - 5% = 40%は「寄与危険」ですね。喫煙者で癌になった人のうち、真に喫煙で増加したぶんが40%で、残りの5%は喫煙とは無関係に癌になったと考えます。

寄与危険割合は「曝露群の疾病頻度のうちで、真に曝露によって増加した部分の占める割合(同書)」です。提示された数字で計算すると、40% / 45% =約89%です。喫煙者の発癌者の中で真に喫煙によって発癌した人の割合です。

人口寄与危険(集団寄与危険)が「一般集団における曝露によって増加した疾病頻度(同書)」です。「人口寄与危険」と「寄与危険」は異なる用語なのです。わかりづらい。提示された数字では計算できません。一般集団(喫煙者・非喫煙者の混在)の発ガン率か、喫煙者の割合の情報が必要です。

人口寄与危険割合(集団寄与危険割合)は「一般集団における疾病頻度のうち、集団寄与危険が占める割合」です。円グラフの数字が示されているのがそれです。

「喫煙が関係なかったら0%になりますし、武田氏のいうようにタバコを吸うとがんが減るのなら、マイナスの値にもなり得るのです」
「この数値は死亡数の内、煙草が原因と思われる割合を示すもの」
「喫煙の人口寄与危険割合のグラフは、喫煙が0になればこれだけ癌になる人が減る(はずだ)よ」

で正しい(はず)です。

あ 2012/03/20 07:07  武田工学博士はさすがですねぇ。
ここまで電波だと、中部大学も今の職に就くだけの適性があるかどうか再検査した方が良いのではないかと。

yamamotoyamamoto 2012/03/20 09:21 NATROM先生、解説ありがとうございました。寄与危険度と寄与危険度割合を勘違いしていたようですね。
まとめのエントリー期待しています。
げげさん、NNさん、shinzorさん、ありがとうございました。

上の例が全人口集団と仮定すると、人口寄与危険度割合は0.8ですね(自信なし)。

東郷ビール東郷ビール 2012/03/21 10:57 血液型がA型の場合とA型以外の場合でがん(別に風邪とかでもいいですが)
にかかる割合は、明確な差異がないでしょうから
血液型A型の人口寄与危険度割合はゼロと考えていいでしょうね。

武田せんせーの主張どおり人口寄与危険度割合=罹患者割合の世界なら
血液型A型、おひつじ座、名前がY の私はあらゆる病気にかからない
最強生物になりますねー

綾波シンジ綾波シンジ 2012/03/21 23:05 武田先生のすごいところは、これだけの間違いをブログスフェアで指摘されて、本人がおそらくその間違えに気づいて記事から消すぐらい根本的に論説が成り立たない場合でも、その危うい箇所はうまーく金権批判を塗りたくってごまかし、一般向け書籍で堂々と述べてしまうところでしょう。

>「いやいや、おかしい。なんか間違っている」と気付かないものだろうか?

これに気づくと、武田先生の売りの「オリジナリティ溢れるおもしろいお役人批判ストーリー」にはならないですから、検索しても気づかないふりをするのでしょう。そして騙されるのは一般書を買ってしまった判断力に乏しい一般人。

antant 2012/03/22 07:30 NATRON先生、皆様方解説ありがとうございます。
一応自分の理解が間違っていなかった事にほっとしております。
その数字の意味する所が何かを理解する事は、科学に関る者の最低限の資質の一つと思うのですが・・・
センセーがどうのとは申しませんが、一応大学の教官である以上、指導する学生や院生がいるはずで、それらの方々の今後を考えると一寸ねぇ・・・
 
>綾波シンジ様
>そして騙されるのは一般書を買ってしまった判断力に乏しい一般人。
二冊も買っちまったよ・・・orz

くにひこくにひこ 2012/04/28 01:30 大先生は、今日も超特大ホームランを打ってくれました。
SFとして読むべきなのだろうか・・・。

att460att460 2012/04/28 19:40 皆さん、よく、読めますね...
私は、目が拒否してしまいました。

ヒット数を稼がせるのもしゃくですので、googleのキャッシュを書きます。
http://webcache.googleusercontent.com/search?strip=1&q=cache:http%3A%2F%2Ftakedanet.com%2F2012%2F04%2Fpost_8f48.html

どのみち、googleのランクは上がるでしょうから、炎上マーケティングを狙っているのか??

FヨシカズFヨシカズ 2012/06/12 13:04 とても勉強になりました。ありがとうございます。面白かったので私も記事を書いてみました→武田邦彦読解入門:「タバコを吸うとガンになる可能性は3分の1以下になる」ってホント!? http://d.hatena.ne.jp/yosikazuf/20120612/p1

SSSS 2012/11/26 23:19 ナチスは正しいこともいっぱいやってるんだ!

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