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cover ■「ニセ医学」に騙されないために

 ホメオパシー、デトックス、千島学説、血液型ダイエット、ワクチン有害論、酵素栄養学、オーリングテストなどなど、「ニセ医学」についての本を書きました。あらかじめニセ医学の手口を知ることで被害防止を。

2012-05-29 個人の反応が異なることはランダム化比較試験が実施できない理由には

[]個人の反応が異なることはランダム化比較試験が実施できない理由にはならない 個人の反応が異なることはランダム化比較試験が実施できない理由にはならないを含むブックマーク

厚生労働省が統合医療について検討している。統合医療とは「近代西洋医学とそれ以外の伝統医学や相補・代替医療とを統合したもの」とのこと。いわゆる相補・代替医療の中にも特異的効果があるものも含まれているだろうから、その辺を評価してくれるといいなあと思っていた。

ちゃんと評価してれくれれば(コスト対効果の問題はあるにせよ)いいのだけど、ちょっぴり不安なことが。というのも、「必ずしもランダム化比較試験(RCT)をしなくてもいいじゃないか」という声が出てきたからだ。RCTというのは、治療の効果などを評価するときに、患者さん(被験者)をランダムに治療群と対照群に分けて比較すること。ランダムに分けることで様々な偏り(バイアス)を少なくすることができる。コストはかかるけど質の良い研究だと言える。

ところが、統合医療の評価についてRCT以外の方法を用いるよう提案されたとの報道があった。


■統合医療も「EBMで評価できる」 - 医療介護CBニュース - キャリアブレイン

 現在、治療のエビデンスを証明する実験方法としては、より正確に治療効果を判別できる「ランダム化比較試験(RCT)」が主流となっているが、従来の近代西洋医学に漢方やはり・きゅう、サプリメント療法などを取り入れた統合医療は、RCTで評価しづらいとされている。しかし福井氏は、「評価方法は、RCTでなければだめというわけではない」と指摘。被験者集団の健康状態を一定期間追跡する「コホート研究」などを例に、RCT以外の方法を用いるよう提案した。


「評価方法は、RCTでなければだめというわけではない」というのは確かにその通り。レベルは落ちるが、非ランダム化試験もエビデンスとして扱われる。例えば、「お金がないからまずはコホート研究を行って、見込みのありそうなものを絞り込んでからRCTをしましょう」という主張だったらよく理解できる。しかし、「RCTで評価しづらいとされているから」というのは、よく意味がわからない*1。厚生労働省のサイトになら詳しい理由が書いてあると思って探してみた。


■「統合医療」のあり方に関する検討会審議会資料|厚生労働省の資料4

「統合医療」の評価基準の策定は非常に困難とされている。個人の反応が異なることからランダム化比較試験(RCT:RandomizedControlledTrial)が実施できない分野が多くある。


「個人の反応が異なることからRCTが実施できない」という主張は誤りである。個人の反応が異なる治療でいくらでもRCTが実施されている。このような主張はRCTが必要である理由を理解していないからなされたとしか思えない。個人の反応が異なるからRCTが実施できないどころか、個人の反応が異なるからこそRCTが必要なのだ。個人の反応が同じならそもそも比較試験なんて必要ないじゃん。「治療を受けた人は全員効果がありました」で終わり。同じ治療を受けても効果のある人もいるし効果の乏しい人もいる。個人の反応が異なるのは当たり前。だからこそ、対照群と治療群とを比較する必要があるのだ。

「統合医療や代替医療は個別化治療だからRCT困難」という意見はよくある。ホメオパスの意見を引用することもできるが、ここではあえて「厚生労働科学研究費補助金(臨床応用基盤 研究事業)研究 主観的個別化患者情報のデータマイニングによる漢方・鍼灸の新規エビデンスの創出」*2から引用しよう。


f:id:NATROM:20120507181851j:image

伝統医学は個別化治療であり、研究デザインが組みにくい


伝統医療がRCTに向かない理由の一つとして、個別化治療である(同病異治・異病同治)ことが挙げられている。たとえば、風邪にある漢方薬の効果を評価したいとする。「風邪の患者の集団は均一ではなく、それぞれの証に合わせて異なる漢方薬が選択される。RCTを行っても治療群に証の合わない患者が多数混じるため有意差を検出しにくい」と言いたいのであろう。

だったら(たとえば)麻黄湯が効くと思われる証の患者のみ選んでからRCTを行えばいいと私には思えるのだがどうか。あるいは、風邪の患者をランダムに「伝統医学」群と通常治療群に分け、「伝統医学」群で思う存分個別化治療を行い、通常治療群と比較するという方法もあるだろう。ちなみに伝統医学に限らず、通常医療においても、風邪に対して一律に同じ処方するのではなく、症状に合った処方を行う。代替医療や伝統医学は個別化治療で標準医療はそうでない、という主張は誤解の産物だと私は考える。(■標準医療は画一的で、代替医療は個別的という誤解を参照)。

「統合医療は個別化治療だからRCTに向かない」とは言えない。実際に、漢方でも鍼でもホメオパシーでもRCTはなされている。個別化治療をRCT免除の言い訳にする主張には警戒が必要だ。効果がないか小さいがゆえにRCTで効果を検出できないだけなのに、個別化治療を免罪符としてごまかしているのかもしれない。



外部リンク

■統合医療とRCT - Interdisciplinary 「統合医療の評価にRCTが向かない理由」として「個別化治療である」ことだけでなく、「ホリスティックで文脈依存型である」ことが挙げられることもある。



関連記事

■「虚構体系」の効果 「ホリスティックで文脈依存型」の効果もRCTで検出可能だと私は考える。

*1:2012年6月4日追記:「統合医療はRCTで評価しづらいとされている」というのは福井氏の意見ではない。ublftboさんのコメント(2012/06/03 20:01)を参照

*2:URL:http://www.jmacct.med.or.jp/pediatric/iryo/pdf/16_20_watanabe.pdf

shinzorshinzor 2012/05/29 22:32 統合医療には効果があるという前提から、その効果を確かめる試験を探しているだけじゃないですか?ズルイ。
試合で負けた後で、「このルールでは実力が判定できない」といって、ルールを変えようとしているようなもの。
初めに、効果の定義とその判定試験法を決めたら、あとで変えちゃダメですよね。

たまの通りすがりたまの通りすがり 2012/06/02 23:58 効果を確かめる試験を探している。それで良いのですよ。
るーるを変えても
科学的に証明できれば何でも良いのですから。
一般的には最終的にRCTがこれにあたりますが、例えば漢方薬を考えたときに
日本で使えるものも100種類以上あると思いますが、ある漢方の、その対象を選別することはかなり難しい。この難しさが分かるかどうかですが。
だって、伝承医学ですから・・・
効果の評価基準や、層別化を行うための背景も分からないし、あっても複雑すぎるので
一般化して試験を組むのが難しい訳です。
適当に西洋医学的な評価項目で判断する方法もあるのでしょうが
これも最近では真に患者のためになっているか微妙な場合もあることは
普段から臨床試験に詳しい方なら分かります。
いずれにせよ試験を組むレベルまでまだ達していない訳です。
つまり標準治療のある場合は、医療の手段に入れちゃもともとだめな訳ですよ。
こんな背景の不確かな治療にランダム化される患者の身にもなってくださいな。
そんなことも分からないのが寂しい限りですが。
従って、従来のRCTでは十分な対応できないのが分かってますから
統合医療なんてものに全く魅力も糞もありませんので、
まず、絶対効果があると踏んだところで望む患者だけで
PIIしてくださいな。
ICでだまさないで欲しいのでPMDAにきちんと相談してプロトコールかいてくださいね。
のっけからRCTなんて無理なものは無理でしょう。
それで効果があれば、そこで効果がありそうな群を絞り込んで
次にRCTですが、絶対に必要なものではないので
勘違いしない方が良いですよ。
RCT絶対主義はこれからの個別化医療が進めば進む程無理なことは
知ってる人は知ってますから。
まあ、風邪なら試験できそうですけどね。

shinzorshinzor 2012/06/03 09:52 >効果を確かめる試験を探している。それで良いのですよ。

どういうことが「効果」なのかは、最初に決めるのが原則だと思います。何が「効果」なのかは、価値観の問題ですから、科学の範疇ではなく、社会的合意ということになろうかと思います。実際はもう少し複雑で、複数の「効果」のメニューを用意しておき、患者が選択するということになっています。患者が選んだ「効果」が最も期待出来る治療法は何かについては、科学的手法(RCT等)で判断することが出来ます。延命治療よりも、苦痛軽減治療を望むという類の選択です。

ある特定の治療法が「効果あり」と判断されるような「効果」を、後から探すのでは、「私が勝つルールにしろ」と同じで、「それは無いよ」とうのが私の書いたことです。

ただ、現実には目標とする「効果」を後から修正することは普通に行われており、それに社会的合意が得られるのであれば問題は無いと思います。その修正した「効果」も大抵は科学的手法で測定することは可能というのがNATROMさんの書いていることではないでしょうか。

ublftboublftbo 2012/06/03 20:01 今晩は。

上の「たまの通りすがり」さんが書いている「RCT絶対主義」というのが誰を指しているのかに興味があります。そういう志向を持つ人なり組織なりがあるのでしょうか。まさかNATROMさんの事では無いでしょう(NATROMさんがそんな意見を言っているのを見た事が無い)。

と言うか、「絶対主義」って相当強い表現ですよね。それ以外は認めない、のようなものですから。そこまで強い立場から意見を言っている人がいれば見てみたいものです。

-----------

>NATROMさん

CBの記事について。RCTで無くてもコーホートなどで研究を行えば、というのが福井氏の意見で、記事ではあたかも、福井氏が統合医療支持の立場からRCTの方法的不備を認識している、かのように読めますが、第二回の議事録を読むと、全くそうでは無い事が解ります。ですので、こちらのエントリーの検討は、もちろん渥美氏や寺澤氏の言い分についてのものとしては妥当ですが、「福井氏の見解」へのもの、としては成り立たないと思いますので、それは補足しておいても良いかも知れません。
詳しくはこちらで書きました。
http://d.hatena.ne.jp/ublftbo/20120529/p1

ublftboublftbo 2012/06/03 20:12 よく考えれば、鍼療法を支持する人の一部などは、RCTを相当重視している、と言えますね。より正確に確かめられるよう、ダブルブラインドのデザインをすべく工夫しているようですし。
鍼は統合医療の文脈で採り上げられる事もよくありますので、興味深いものがあります。

尤も、「絶対主義」などと言うのは当たりませんし、特異的効果の検討を追究していけばそういう方向に行くのはある意味で当然ですけれども。

NATROMNATROM 2012/06/04 12:11 ublftboさんのご指摘のように議事録を読む限り、福井次矢氏の意見は妥当だと思います。キャリアブレインの記事では、どこからどこまでが福井次矢氏の意見かよくわかりません。当エントリーは「個人の反応が異なることからRCTが実施できない/実施しづらい」というよくある誤解に対して書きました(なので「厚生労働省の資料4」「厚生労働科学研究費補助金」との二つの例を挙げました)。「福井氏の見解」に向けて書いたわけでありませんが、追記として注釈を入れました。

NATROMNATROM 2012/06/04 12:12 「たまの通りすがり」さんの主張はわかりにくいですが、「効果の評価基準や、層別化を行うための背景も分からないし、あっても複雑すぎる」ためにRCTで効果を評価するのは困難だ、というものと思われます。「効果の評価基準や、層別化を行うための背景も分からないし、あっても複雑すぎる」ような治療法があったとして、RCTでの効果の評価が困難であるのと同時に、実地臨床の場での治療法の選択も困難だということになります。「層別化を行うための背景も分からない」ような治療法を実地診療の場で役立てるのは難しそうです。

shinzorshinzor 2012/06/07 22:01 >実地臨床の場での治療法の選択も困難だということになります。

これって、調理法も食べ方も分からず,摂取量も不明なので安全性の評価が出来ないというような状況でしょうか?だとすると,評価以前に,食べ方が分からないのだから食べられませんね。

「たまの通りすがり 」さんの主張がそういう意味だとしたら、統合医療に対してずいぶん厳しいですね。
でも、統合医療は暗黙知の職人技の部分が大きく,治療法の選択理由を明示的に説明することは出来ないとしても,選択はしているわけですよね。現実に治療しているのだから。ならば,RCTは可能ですね。

2012-05-18 「非常に感染力の強い方のお産」を扱う助産師

[]「非常に感染力の強い方のお産」を扱う助産師 「非常に感染力の強い方のお産」を扱う助産師を含むブックマーク

自宅出産は医療機関で行う出産よりもリスクは高い。しかし、十分にリスクを説明された上での自宅出産の選択肢があってもいいと個人的には思う。ただし、その場合でも適切な医療介入は必要であろう。産科医から独立して助産院や自宅での出産を扱う助産師は、それだけ高い技術と知識を要するはずであるが、現実にはむしろ逆のように見える(たとえば、ブログ「助産院は安全?」のエントリー■2012-05-01 - Twitterからの【助産師会】が参考になるだろう)。

自宅出産を扱う開業助産師の医学知識について不安に思える一例を見つけた。「神霊教」という宗教に入信した助産師の話である。業務に影響しなければ、別に助産師がどのような宗教に入信していてもかまわない。さて、この助産師さんは「家族が参加する家庭での出産を扱う助産所を開業」した。妊婦さんたちは神霊教の信者ではないが、「少しは神霊教の御神光(みひかり)が行っている」ためか、皆安産なのだそうだ。ここまではまあいい。しかし、以下の引用を読むと、この助産師さんの介助するお産が果たして安全なのか、きわめて疑問に思える。


■数々の安産と家庭円満をよびこむ奇跡の力

 こういうこともありました。E型肝炎抗原プラス(劇症肝炎)で非常に感染力の強い方のお産を手伝ったときに、私は抗体を持っていないのですが、不思議と予防注射を打つ気持ちになりませんでした。神様に守られているから大丈夫って。そして案の定、血をあびたのに感染しませんでした。お産された方を検査したら、E型肝炎がほぼうつらない抗体に変わっていたのです。生まれたこどもにも感染していませんでした。命を落とすような大変な病気ですから、神霊教に入信していなかったら手伝うなんて夢にも思わなかったでしょうね。


字句通りに受け取ると意味が通らない。劇症肝炎の患者さんが自宅出産することはありえない。劇症肝炎であれば肝機能がきわめて低下しており意識障害を生じている。退院どころかICUでの管理が必要な状態である。E型肝炎というのも奇妙である。E型肝炎は通常は「E型肝炎抗原」ではなく、HEV(Hepatitis E Virus) RNAをPCR法で検出するか、抗HEV抗体を測って診断する。E型肝炎ワクチンは開発中で現在のところ一般に使える「予防注射」は存在しない。

意味が通るように好意的に解釈すれば、妊婦さんは(E型肝炎抗原ではなく)HBe抗原プラスで、(劇症肝炎ではなく)慢性B型肝炎もしくはB型肝炎キャリアであったのだろう。HBe抗原はB型肝炎の感染力の指標となる。「ほぼうつらない抗体に変わっていた」というのは、HBe抗原プラスからHBe抗体プラスに変わっていたと考えれば辻褄は合う。なお、自然にHBe抗体が陽性化することはよくある。またB型肝炎であれば予防注射はある。

助産師さん本人が「神様に守られているから大丈夫」と考えるのは勝手である(空気感染する麻疹について「神様に守られているから大丈夫」と考えていませんように!)。しかし、もしこの症例がB型肝炎であったとするならば、新生児に対してはすみやかな母子感染防止対策(出生直後を含めた2回のHBIG投与および3回のHBワクチン接種)が必要である。「神様に守られているから大丈夫」などと思っていなかったよね?

この助産師さんの助産院のサイトを見てみたが、自宅出産のメリットは書いてあるがリスクは書いていない。「神霊教で奇蹟を体験した方々を紹介するBlog」では「私は10年間で500ほどの家庭出産を手がけていますが、逆子だったり、妊婦さんが肝炎を患っていたりと、色々なケースに出合います。普通は怖くて難しい家庭出産ですが、神霊教の神様に守られているからこそできるのです*1」とインタビューで答えている。

高い技術と豊富な知識に支えられた上での信仰なら問題はないが、既に指摘したように、この助産師さんの感染症に対する認識には問題がある。細部については本人ではなくインタビュアーが間違えたのかもしれないが、感染力のある肝炎の妊婦さんの出産を扱ったというのは事実であろう(事実でないならインタビューで嘘を述べたことになりこれはこれで問題だ)。この症例がB型肝炎であろうとE型肝炎であろうと、劇症肝炎であろうと慢性肝炎であろうと、「感染力の強い方のお産」である以上、産婦人科医が管理すべきであったと私は考える。産科医の介入を要する症例を「神様に守られているからこそできる」と勘違いしていたのではないか。

医師にもトンデモな人がいるように、開業助産師にもトンデモな人がいるというだけかもしれない。しかし、この助産師は東京都助産師会の専門部会理事である*2日本助産師会の上層部がホメオパシージャパンと深いつながりがあったことが知られている(たとえば、■ホメオパシーと日本助産師会:Chromeplated Ratを参考にせよ)。産科医の介入のない出産に肯定的な助産師には、標準医療に否定的な傾向があると私には思われる。結果として、助産院での出産や自宅出産のリスクを高める要因の一つになっているのではないだろうか。



関連記事

■病腎移植とB型肝炎

■B型肝炎ワクチンとホメオパシー

■ホメオパシーはまた人を殺すだろう

*1:URL:http://srkblog.info/archives/219846.html

*2:組織・役員 | 東京都助産師会とは | 東京都助産師会, URL:http://jmat.jp/midwife/organization.html

放置医放置医 2012/05/18 14:11 妊婦は母子感染のリスクを理解していたんでしょうか。はなはだ疑問です。
産科医がこの助産師レベルだったら間違いなくマスゴミによって血祭りでしょうに。

tadano--rytadano--ry 2012/05/19 21:50  肝臓専門医や産科医でないのであやふやなところもありますが、要するに妊娠初期の検査でHBe抗原(+)HBe抗体(-)だったのが、自然経過でセロコンバージョンを起こして出産時にはHBe抗原(-)HBe抗体(+)に変化していたということだと考えられます。セロコンバージョンには通常2-3ヵ月かかると認識していますから、十分あり得る話です。

 HBe抗原(+)HBe抗体(-)の妊婦さんの母子感染率はほぼ100%ですが、HBe抗原(-)HBe抗体(+)の場合の母子感染率は10%と言われているので、「生まれたこどもにも感染していませんでした」というのは珍しいことではなさそうに思います。

 知識がなければ単なる自然経過も「奇跡」と解釈してしまう好例と考えます。

RyoRyo 2012/05/22 01:38 調べてもよくわからなかったのですが、15年位前の東京(あるいは関東圏)で産科オープンシステムは始まっていたのでしょうか?

2012-05-11 CT画像とエコー画像の区別もできないシモンチーニ氏のウェブサイト

[][]CT画像とエコー画像の区別もできないシモンチーニ氏のウェブサイト CT画像とエコー画像の区別もできないシモンチーニ氏のウェブサイトを含むブックマーク

インチキな治療法の提唱者に「なぜ論文を書いて発表しないのか?」と尋ねると、たいていは「製薬会社などの既得利益を守る集団が圧力をかけて論文掲載を阻止している」といった反論が返ってくる。安価で効果のある治療法が周知されると薬が売れなくなって困る連中がいるのだそうだ。世界中のすべての医学雑誌に影響力を及ぼす巨大な権力が存在しているなど典型的な陰謀論であるが、よしんば百歩譲ってそのような陰謀が存在するとして、掲載を阻止されたという論文を公開すればいいだけだ。出版してもいいし、今だったらウェブに公開すればほとんどコストはかからない。

しかし、いったいどういう理由からなのか、彼らの出版物やウェブサイトにまともな論文が載ることはない。載るのは「詐欺師が医学知識の無い一般人を騙そうとした」もしくは「書いた本人も医学知識について無知である」という論文まがいのものだ。きちんとした情報を提示すれば、他の多くの医師からの協力が得られるかもしれないのにね。

さて、「8月26日にDr.Simoncini氏の特別講演が開催される」*1。Simoncini(シモンチーニ)氏は、■癌は真菌であり、重炭酸ナトリウムで治療可能と主張している人である。イタリアの医師だったが、癌の治療法を発明し「医師や医薬品会社・学会にとって莫大な売り上げに対し損害与える危険な存在」であった結果、ドクターライセンスを剥奪されたのだそうだ。日本滞在中にシモンチーニ氏自身への個人相談が可能とのことである。


f:id:NATROM:20120511154733j:image

ご相談料金    148,000円


シモンチーニ氏の治療法に効果があるとする論文は存在しない。製薬会社の圧力のせいで医学雑誌に論文が載らないのかもしれないネ。まあそうだとしても、ウェブサイトに症例報告を載せることぐらいはできるはずだ。「炭酸水素ナトリウム投与で腫瘍塊が頻繁に飛躍的な退縮することを表す」ケースが紹介されていた。


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炭酸水素ナトリウム投与で腫瘍塊が頻繁に飛躍的な退縮することを表す


いろいろツッコミどころがあるけど、提示されているCT画像では10 cm超の大きな肝癌は認められない*2。そもそも「超音波検査による」のなら超音波(エコー)検査の画像を出せばいいのに。というか、英語のサイトを見に行ったら、CT画像をエコー検査の画像だとしていた。


f:id:NATROM:20120511154731j:image

"as shown by ecographic scan"とある。


つまり、Simoncini Cancer Center(シモンチーニがんセンター)のサイトをつくった人は、「デタラメを載せても顧客はどうせわからないだろう」とたかをくくっているか、CT画像とエコー画像の区別がつかないぐらい医学について無知か(あるいはその両方)であろう。CT画像とエコー画像の区別もつかない人のつくったサイトの他の医学的な記述も信用するべきではない。さすがにサイトを作ったのはシモンチーニ氏本人ではないだろうが、ご自分のサイトのチェックもしていないわけである(チェックしていてアレという可能性もあるけど)。

インチキ治療者が論文を書かない本当の理由は、まともな論文を書く能力の欠如である。彼らは、専門家からは逃げて、医学知識のないカモを騙すための「症例提示」や動画の紹介だけを行う。彼らが本当に患者さんの役に立ちたいと願うのであれば、他の専門家から検証されることを恐れるはずがない。



外部リンク

■幻影随想: トゥーリオ・シモンチーニのがん治療についてのまとめ


関連記事

■ニセ科学を見抜く練習問題(世界医学気功学会の論文集から)

■標準医療をしなかった医師が提訴された

■平沢進と物質X(ミラクルミネラルソリューション)

*1:URL:http://www.simoncinicc.com/。リンクは張らない

*2:肝右葉の低吸収域はたぶんラジオ焼灼後。後から考えると、おそらくcase 2の画像であろう。

nn 2012/05/11 22:43 問題のページに行ってみたのですが、英語の別の文章に差し替わって「エコー」画像が消えちゃってるようですね。もう対応されたのかな。

NGC2841NGC2841 2012/05/12 07:23 問題のページに行ってみたが、変わりなく
as shown by ecographic scan of January 16, 2001
とあり画像も変化ないようだ。

ItokayoItokayo 2012/05/12 08:24 上頚部癌の患者です。画像は探しましたがわかりませんでしたが、大変、貴重な情報にめぐり合えてよかったです。こういう治療方法もあるんですね。僕の場合、手術不可能な場所に癌があります。どうしようかと悩んでいました。ありがとうございます。

NATROMNATROM 2012/05/12 08:27 対応された「問題のページ」は、日本語版( http://www.simoncinicc.com/%E8%82%9D%E8%87%93%E7%99%8C/ )のほうです。英語版のほうはまだ手が回らないのでしょう。

対応が早いってことは、私のツイッターかブログをチェックされているのでしょうか>日本語版シモンチーニのサイトの中の人。 http://www.simoncinicc.com/再発性膀胱腫瘍/ もわりとすごいので、対応したほうがよろしいと思います。図と文章の関係が意味不明です。どっから持ってきたこの図。薬剤の効果を示すビデオCGからキャプチャーしたんでしょうか。

NATROMNATROM 2012/05/12 10:06 Itokayo さん、こんにちは。コメントありがとうございました。手術不能な癌ということで、治療方法が限られて、なかなか大変だろうと思います。代替医療を併用するという選択肢もあると思いますが、代替医療の中にはあまりお勧めできないものもあるのでご注意ください。代替医療を容認する条件として、安価、安全、標準医療との共存があると私は考えていますが、シモンチーニ氏による治療はどの条件も満たしていません。

高価で危険で標準医療を否定しており、私の知る中ではシモンチーニ氏による治療は最悪の部類に入ります。ホメオパシーですら、レメディそのものは砂糖玉で基本的には安全であり、シモンチーニ氏による治療はホメオパシー以下です。代替医療を選ぶとしても、シモンチーニ氏による治療以外にもマシなものはいくらでもあります。こういう情報を提供できて、私もうれしく思います。

すずめすずめ 2012/05/12 20:42 > 製薬会社などの既得利益を守る集団が圧力をかけて論文掲載を阻止している」といった反論が返ってくる。

本論からそれて申し訳ないですが,ここに名前を変えてコメントあらしをした
「あの方」を思い起こさせますね.某有名なトンデモさんのことを.
これと同じような記述が彼のページの中にありますからね.

nn 2012/05/13 03:01 「末期の子宮頚癌」も凄いですね。
・あからさまな誤訳(「炭酸水素ナトリウム治療はすでに無効果ではなく」とか)が多すぎ。
・画像見比べても何かが改善したように見えない。
・改善した排尿障害は腫瘍の壊死成分をドレナージした効果(これ自体は標準医療)で十分説明可能。
・何より、肝心の重炭酸治療を本格的に始める部分の直前で記述終了(笑)

ところで「シモンチーニ氏の治療法が効果があるとする論文は存在しない」について、こんなの見つけました。
http://cancerres.aacrjournals.org/content/69/6/2260.abstract
http://cancerres.aacrjournals.org/content/69/6/2677.abstract
数匹の動物実験レベルだし、流石に癌は真菌だとかは書いてませんけど。

かめのかめの 2012/05/14 11:14 問題のページにはecographic とあるので、echographic (エコー画像)とは異なる斜め上からの手法で撮像したものかと思いました。

tadano--rytadano--ry 2012/05/14 13:08 http://www.cgems.eu/newsletter/article/152

詐欺罪と殺人罪で訴えられて刑が確定しそうなので医師免許を剥奪されたようです

nn 2012/05/14 15:03 >かめのさん
毎回間違えているので気になったので調べたら、どうもイタリア語ではechographyをecografiaというらしく、それが誤訳の理由っぽいです。本人が喋ってるビデオ見ましたが英語はそこまで得意じゃなさそう(自分よりは多少マシですが…(^^;))。

ff 2012/05/14 19:33 シモンチーニがんセンターの主催者は、どうも詐欺師っぽいですね。
http://ameblo.jp/fedis/entry-11247270708.html

nn 2012/05/14 23:09 うわ本当だ。確かに4u-detox.comのサイトに明記してある住所と、
シモンチーニがんセンターのドメイン登録住所がほぼ同じだ(笑)
こんな所でECRRとシモンチーニが繋がってたとは……。ちょっとだけ世界レベルの陰謀の臭いがしたw

十六夜十六夜 2012/05/15 19:22 サイト見てきましたけど、「内視鏡手術療法」とか「カテーテル療法」とか、「公的保険が適用されない自由診療」などというレベルじゃなく、普通に医師法違反なのでは?(医療法上の「医行為」に該当) …と、思ったけど、要はオペをするのが海外だから日本の法律じゃ裁けないってことなんですね(多分)。 じゃあ、これで失敗した患者はどこに訴えるのか? そもそも訴えることは可能なのか? 

NATROM先生は、この制度上の問題(海外だったらやりたい放題)についてはどのよううな対策があるとお考えでしょうか。(いやまあ、そんなこといったら臓器移植や代理出産や美容整形はどうなんだとかいろいろ問題があるとは思いますが)

NATROMNATROM 2012/05/16 08:43 シモンチーニ氏本人は現在ではライセンスを持っていないはずですが、。恐ろしいことに、ライセンスを持った他の医師が行う分には「内視鏡手術療法」や「カテーテル療法」もOKなわけです。医師のみが研修可能のコースもシモンチーニ氏は用意しています。シモンチーニ氏は日本での活動にあたって「協力者」が欲しいはずです。日本でも、ライセンスを持った医師が協力すれば、「内視鏡手術療法」や「カテーテル療法」は可能です。

日本での場合。患者さんが死ぬか重度な障害が生じれば、これはさすがに警察が介入してくるでしょう。単に治らなかったり、軽度の副作用程度では、おそらく警察は動きません。患者さんが施術した医師を民事訴訟で訴えることはできます。普通にやればたぶん勝つとは思います。

事前に、強制力をもって、「内視鏡手術療法」や「カテーテル療法」を中止させることは難しいと思います。この問題を「医師の裁量権大きすぎズルイ問題」と私は仮に呼んでいます(他にもっと良い呼び名はないかな)。医師のライセンスを持たない他の代替医療の施術者は、たとえば助産師という国家資格を持っていても、医師法の前にかなり制限されます。しかし、医師は事実上野放しです。医師が癌が治ると称して水を売っても、それだけではおとがめなしです。たぶん、医師以外の代替医療の施術者は「医師ズルイ」と思っているでしょう。

海外でも、おそらくは日本と基本的には似たようなものだろうと思いますが、詳しいことはわかりません。訴えるにしても海外の医師相手だと手続きが面倒そうです。

対策は、医師の裁量権を制限するか(いろんな理由で難しい)、ガンガン民事訴訟してデタラメな医療がペイしないようにするかでしょうかねえ。

十六夜十六夜 2012/05/16 22:20 すばやいご回答ありがとうございます。

前回投稿後、さらにサイトを見てみると「現在、シモンチーニ博士の専門医療機関は日本にしかありません」とのこと。 なんですと!? 「海外だからOK」って訳じゃないんだ! 本当に早とちりですみません。

まあ、韓国での美容整形が流行って、治療後にトラブルが云々、といった問題は実際に起きているので「海外だったらやりたい放題問題」(他にもっと正確な呼び名もあると思うのですが)も深刻な問題だとは思うのですが、シモンチーニ氏の「治療」の問題とは本質的に異なるということですね。

日本で「治療」が可能で、しかもそれが医師法にひっかからない。つまり、日本の医師免許をもった医師がシモンチーニ氏の治療方針に「賛同」し、「施術」を行っているということですね。(あるいはまだ行う「予定」の段階?) 大丈夫か日本の医療。

ところで「医師の裁量権大きすぎズルイ問題」は判りやすくていい言葉だと思います(^^)

はっさくはっさく 2012/05/18 16:22 この写真がおかしい、と気づかない人は治療者側の説明も素直に受け入れる"よいお客"となる可能性が高い。

一方、写真がおかしいと思う程度に知識のある人はクレーマーや訴訟沙汰にもなりかねない。大きくおかしな写真を掲げておけばこういった人たちは関わりを持とうとしないし、万が一気づいてたとえば自分のブログでそれを気づいたとしても、"よいお客様"はそういったところは見ないから実害はほとんどない。悪評が広がったとしてもその前に撤退するのが前提のビジネス、ほとぼりが冷めたころに新手を編み出すのは簡単…

故にこういったおかしな情報がゲージとしてよいお客様を選別するのに役立っている。

半分冗談で書きましたが案外そういった効果(顧客選別ゲージ)があるのかもしれません。