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cover ■「ニセ医学」に騙されないために

 ホメオパシー、デトックス、千島学説、血液型ダイエット、ワクチン有害論、酵素栄養学、オーリングテストなどなど、「ニセ医学」についての本を書きました。あらかじめニセ医学の手口を知ることで被害防止を。

2012-06-25 服に薬理作用があるから服用という?

[][]服に薬理作用があるから服用という? 服に薬理作用があるから服用という?を含むブックマーク

「統合医療」という言葉には既にネガティブなイメージがつきつつあるようだ。最近、「統合医療」を教えるため新設を申請した統合医療大学院大(東京)について、大学設置・学校法人審議会が設置を認めないよう答申したというニュースがあった*1。そのニュースを受けて、医師向けサイトで「統合医療、と聞いて…」イメージがわくか、わかないかの簡単なアンケートが取られていた。回答には一言コメントでき、そのコメントに対して参加者は「そう思う」というボタンを押せる。そう思うが多い順でみると、見事にネガティブなコメントが並んでいた。

「ハッキリと「呪術」と言い換えるべき」「しいて言えばインチキというイメージ」「患者さん側に立った学問ではなくいかがわしい業者も混じった業界の後押しで成り立っている当たりが怪しく思われる原因」などなど。中立的なコメントは「玉石混淆」ぐらい。ネットに親和的な医師による回答というバイアスがかかっているものの、平均的な医師は「統合医療」にあまり良いイメージを持っていないのは確かであろう。

統合医療を掲げている医療機関がすべてトンデモというわけではなく、標準医療では満足できない患者さんの受け皿として代替医療を行う医師もいたほうがいいと私は思うのだが、実情を見るに「玉石混交」でしかも石がメインであると言わざるを得ない。■国際統合医学会が「国際個別化医療学会」に名称変更した理由の一つが、統合医療という言葉につきつつあるネガティブなイメージを避けることにあるかもしれない。

さて、国際個別化医療学会のサイトでは学会誌のサマリーを読むことができる。そのうちの一つをご紹介しよう。EBM(根拠に基づいた医療)の信頼性に対する異議申し立てである。


■国際統合医学会誌 | 薬(サプリメント)は飲まないでも効くのか?EBMに対する批判的見解

服用の語源は古書「書経」にあるといわれ, 服に薬理作用があることを示唆している。すなわち薬物を身体に取り込まなくても, 薬効が生じる事を, 東洋人は認識していたと思われる。実際, 薬物を投与せず身体に近接させただけで, 被験者の握力に変化のみられることはオーリングテストにおいて認知されているが, 握力だけでなく, 平衡感覚や関節可動域においても変化が見られる。近年EBM(Evidence Based Medicine)による治療効果判定が盛んに行われているが, EBMにおいて上位レベルに位置するランダム化試験やコフォート試験においては, 薬物(サプリメント)は体の中に取り込まれなければ絶対効かないという前提がある。しかしながら, 物質は体に近接するだけで体を変化させるので, この前提は覆される。前提が覆される以上, EBMは治療効果を正しく評価するとは考えにくい。ランダム化試験に用いられる盲検法にしても, プラセボが身体に近接しただけで身体に変化を与える可能性があるにもかかわらず, 検証していない事もEBMの信頼性を損なう理由となると思われる。


物質が何らかの「固有波動」を持ちそれが体に影響しているというメカニズムを想定しているようだ。荒唐無稽に聞こえるものの、「物質は体に近接するだけで体を変化させる」ことを示す強い証拠があれば話は別である。

「物質は体に近接するだけで体を変化させる」証拠を得るにはどうすればいいか。体の変化はたとえば握力で測ればいい。被験者に調べたい物質を近接させて、握力に変化があるかどうかを調べればよいが、単なる心理的な影響なのか、物質の「固有波動」のせいなのか、区別できなければならない。被験者や測定者が、「この物質を体に近接させてば握力が落ちるはずだ」と思っていたら、無意識的に握る力を弱めたり、低めの測定値を出したりするかもしれない。

物質の「固有波動」とやらで「物質は体に近接するだけで体を変化させる」としたら、被験者や測定者が物質が何なのかを知らなくても安定した結果が得られるはずである。被験者や測定者に物質が何なのかを知られていたら、「固有波動」ではなく単なる心理的な影響に過ぎない可能性を否定できない。つまり、「物質は体に近接するだけで体を変化させる」証拠を得るには二重盲検法による試験が必要なのである。「薬物を投与せず身体に近接させただけで, 被験者の握力に変化のみられることはオーリングテストにおいて認知されている」とあるが、私の知る限りでは、きちんとした二重盲検法をクリアした研究はない。

「ランダム化試験やコフォート試験においては, 薬物(サプリメント)は体の中に取り込まれなければ絶対効かないという前提がある」とあるが誤りである。上記したような二重盲検法を行い、薬剤が体の中に取り込まれなくても効くことをきちんと示せばいいだけだ。それを示す責任があるのは、「物質は体に近接するだけで体を変化させる」と主張する側であるが、その責任は果たされていない。だいたい、「物質は体に近接するだけで体を変化させる」ことが事実だと仮定しても、実薬群とプラセボ群で差があったのなら、実薬が効くことは確かであろう。

この論文の著者はランダム化試験や盲検法について良く理解していないのではないか。この論文を掲載した編集部の見識も問いたい。論文の著者は「EBMの信頼性を損なう理由」を述べたつもりであろうが、著者および国際個別化医療学会誌の信頼性を損なっただけである。こういう論文がリジェクトされずに載るようであれば、今後は「個別化医療」にもネガティブなイメージがつくようになるかもしれない。そうしたら国際個別化医療学会は、また名称を変更するのであろうか。



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SilverBackSilverBack 2012/06/25 21:20 つまらん事ですが,コフォートは無いでしょう.w
コホートまたはコーホートですね.
資質が知れる書き間違いです.

皮肉屋皮肉屋 2012/06/26 13:43 きっと「薬物(サプリメント)は体の中に取り込まれなければ絶対効かないという前提」
がある「ランダム“イヒ”試験」とか「コフォート試験」とかが存在するんだよ。
我々の知る「ランダム化試験」とか「コホート試験」とは別物なんだよ。
「国際個別化医療学会」はそういう「新規の」主張をしているだけなんだよ。
注:質の悪いジョークです。

ただ微妙に違う単語を用いることでその集団の主張が検索上位に来て誤解が広まる危険性については注視する必要があるかもしれません。

7$¥ナナシー7$¥ナナシー 2012/06/28 23:56 この人が別のページ(http://kami-awase.info/papers/2012/01.html)に掲載している論文を読むと、
「古書、書経において「草根木皮は小薬なり。鍼灸は中薬なり。飲食、衣服は大薬なり」と著されており、もともと治療として薬草をしみ込ませた布をまとうこともあったようで、服用の語源といわれている。」
とあります。
薬草を染み込ませた布をまとうってのはいわゆる湿布のことじゃないかと普通なら考えるのではないでしょうか?

薬草の成分を経皮吸収したり気化した成分を吸収して、病状が改善するというケースは昔から知られても不思議じゃないですね。

津田沼ポパイ津田沼ポパイ 2012/06/29 10:45 「飲食、衣服は大薬なり」って、普通に考えれば
「適切な飲食や、気候に合わせた衣服は、健康の基本です」
みたいな意味にも思えます。違うのかなぁ・・。
草根木皮(いわゆる当時の医薬品)は一時的な薬だけど、適切な食事や衣服を心がけ普段の健康増進を図ることは、もっと大きな意味での「薬」になるんだよ、みたいな感じの教えだったのかと。
っていうか「薬草を染み込ませた布」って時点で「小薬」ですよねそれ(笑)。

att460att460 2012/06/30 00:33 本来、大元の情報を確認すべきですが、省略
語源を誤っている気が...

http://ja.wiktionary.org/wiki/%E6%9C%8D
会意形声。「月(元は"舟")」+音符「𠬝」.「𠬝」は、「人」+「又(手)」であり、ぴったりとくっつく、人を押さえつけるなどの意。あわせて、舟端にぴったりとくっつくの意か。ぴったりくっつくことから、「したがう」の意が生じ、ぴったりとした衣類を服と言うようになったもの。

http://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_detail/q1417493024
http://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_detail/q149498474
「服」は、したがう、と言う意味があります。
『山海経』(せんがいきょう)春秋戦国時代に書かれた書。
植物や鉱物の薬効が記載されています。
この本では、身体の外側に薬を「衣服」のようにまとって病気のもととなる邪気の浸入を防ぐことを外服、薬を体内で効かせるために飲むことを内服と呼んでいます。
今日の内服という言葉の語源です。

「服」には身に着けるという意味のほかに
薬やお茶を飲むという意味もあるからです。
なお「服用」を薬を飲むという意味に用いるのは
本来日本語特有のの用法でしたが、
近代になって中国語にも逆輸入されたようです。

shinzorshinzor 2012/07/01 10:12 漢字検定問題でよく問われる熟語の構成

ア、同じような意味の漢字を重ねたもの          {岩石}
イ、反対または対応の意味を表す字を重ねたもの   {高低}
ウ、上の字が下の字を修飾しているもの         {洋画}
エ、下の字が上の字の目的語・補語になっているもの {着席}
オ、上の字が下の字の意味を打ち消しているもの   {非常}

この人の解釈によると「服」は「薬」と同じような意味になり,「服薬」はアになりますが,正解はエではないかと。
「取り入れるもの」ではなく「取り入れること」の意味ですね、多分。
「服毒」,「たばこを一服」,「着服」とかいうし。

「服」の元々の意味は、att460 さんの説明のとおりのようで、「服」と「衣」の違いも今回初めて知りました。

ピッタリしていない「衣」にも「薬理作用」は有るのかな。「衣用」とか言ったりして。

トラックバック - http://d.hatena.ne.jp/NATROM/20120625

2012-06-18 国際統合医学会が「国際個別化医療学会」に名称変更していた

[]国際統合医学会が「国際個別化医療学会」に名称変更していた 国際統合医学会が「国際個別化医療学会」に名称変更していたを含むブックマーク

前回のエントリー■個人の反応が異なることはランダム化比較試験が実施できない理由にはならないでは、個別化医療だからといってランダム化比較試験(RCT)が困難というわけではないことを論じた。私のイメージする「個別化医療」は、個々のゲノムに応じて薬剤を選択する医療だ。個々のゲノム解読のコストが低くなった西暦2050年には「医師は、あなたの体の異常に対して、平均値的な人間に勧めるような処方箋を手渡すのではなく、あなたのゲノムにぴったり合った処方箋を渡すだろう」*1とドーキンスは予測した。

遺伝子A*2を持つ患者には薬A'を、遺伝子Bを持つ患者には薬B'をという具合だ。ヒトの薬に対する反応は複雑すぎるので、2050年の未来であっても臨床試験なしに薬の効果を確実に予測することは困難で、臨床試験は必要であり続けるだろう。もちろん理想的にはRCTだ。遺伝子Aを持つ患者を多数集めて無作為に複数の群に分け、薬A'を投与された群が他の治療法を受けた群より有意に効果があることが示されば、遺伝子Aを持つ患者には薬A'が標準医療となる。

「ゲノム医療」はまだ十分に実用化されたとは言えない(ゲノム医療についての予測と現状は、aggren0xの日記の■オーダーメイド医療の概説(2)10年前の未来予想図が参考になる)。しかしゲノム医療に限らず、治療の個別化は普通になされている。■標準医療は画一的で、代替医療は個別的という誤解では、慢性C型肝炎の治療が個別化されていった経緯について述べた。一部の分子標的薬はがん細胞の遺伝子変異の有無で使い分ける。これらの個別化医療は現在の標準医療の話である。

一方、統合医療や代替医療も個別化医療であるという主張がある。確かに漢方やホメオパシーは個別化医療の色が強いが、代替医療の中には「ガン・糖尿・アトピーをはじめほとんどの病気は超ミネラル水で治る」といった画一的な代替医療もあるので「統合医療や代替医療の中には個別化医療であるものもある」とするのがより正確であろう。

ところが、「国際統合医学会」の名称が、2011年12月に、「国際個別化医療学会」に変更されたそうである*3。学会の名称なんて先に使用されていない限り自由に名乗ってよいわけで、なるほど、感心した。ただ、それ以上に「うまいこと利用されてる感」*4がハンパない。

このモヤモヤ感をみなさんに共有していただきたくてこのエントリーを書きました。



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■C型肝炎が治らないなんて誰がいったの?/トリムイオン及び水の舞

■「万能薬」は効かない

*1:悪魔に使える仕える牧師, P109

*2:より正確には遺伝子ではなくアリルというべきだろう

*3■学会名称変更のお知らせ

*4■はてなブックマーク - aggren0x のブックマーク - 2012年5月29日より

あ 2012/06/18 15:58 創造科学コンサートを読んでください。進化論が空想の産物である事が確認できます

amblewariaamblewaria 2012/06/19 08:43 統合医療大学院は設置不許可になったそうです。
http://www.asahi.com/national/update/0618/TKY201206180412.html

uruuru 2012/06/25 19:26 「*1 悪魔に使える牧師」というのは「今は牧師だけどいざというときは悪魔にも転用可能」ということでしょうか

NATROMNATROM 2012/06/25 19:50 「悪魔に仕える牧師」とはドーキンスという進化生物学者が書いた本の名前です。ダーウィンが知人に宛てた手紙の中で使われた言葉に由来します。当時は普通の牧師はキリスト教の神に仕えていましたので進化論を受け入れることができません。「悪魔に仕える牧師」は、キリスト教的な創造論ではなく、突然変異と自然淘汰によって生物は進化するという説を唱えたダーウィン自身のことをたとえているのだと思います。ネットにいくつか書評がありますので、それらを読めば大まかなところはイメージできるでしょう。

NATROMNATROM 2012/06/25 19:53 ああ、誤字のご指摘だったんですね。×悪魔に使える牧師→○悪魔に仕える牧師です。修正しました。ご指摘ありがとうございました。

京都の小児科医京都の小児科医 2012/08/03 05:35 >学会の名称なんて先に使用されていない限り自由に名乗ってよいわけ
これは事実なのでしょうか(法的な根拠はあるでしょうか)
たとえば姓名が同じでも基本かまわないと思いますが・・・
新小児科医のつぶやき - 国際個別化医療学会
に書きましたが一般社団法人(国際個別化医療学会)としては問題のある対応の
ように感じました。

NATROMNATROM 2012/08/03 13:26 >>学会の名称なんて先に使用されていない限り自由に名乗ってよいわけ
>これは事実なのでしょうか(法的な根拠はあるでしょうか)

法的な根拠を踏まえてのことではなく、一般常識として申し上げました。ただ、法律には詳しくないのですが、先に使用されている名称を勝手に使用すると、民事訴訟なりで負ける可能性が高いように思います。