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cover ■「ニセ医学」に騙されないために

 ホメオパシー、デトックス、千島学説、血液型ダイエット、ワクチン有害論、酵素栄養学、オーリングテストなどなど、「ニセ医学」についての本を書きました。あらかじめニセ医学の手口を知ることで被害防止を。

2012-09-04 「過剰診療」ってどういうこと?怪文書から学ぶ医療保険のしくみ

[]「過剰診療」ってどういうこと?怪文書から学ぶ医療保険のしくみ 「過剰診療」ってどういうこと?怪文書から学ぶ医療保険のしくみを含むブックマーク


「東京の小児科で受け取ったお知らせ」

「子供達を守ろうとするお医者さんに圧力がかかっている」として、「東京の小児科で受け取ったお知らせ」が話題になっている。■#原発 『東京での甲状腺検査に過剰診療と圧力が!』の巻 - Togetterより引用する。


小児の甲状腺検査について


本年5月診療分にさかのぼり、甲状腺検査の保険請求分が急に支払い拒否されました


不払いの理由は「過剰診療」ということで、

「今後、小児に関して、福島県立医大以外の甲状腺検査はうけさせない」という

厚生労働省のメッセージ(脅し)です


本来到底受け入れられることではありませんが、

今後も皆さんの甲状腺検査は続けていかねばなりません


すでに当院は「マークされている」ので

今後 甲状腺検査は保険診療でなく 健康相談(自費診療)として行います

甲状腺検査に関わる¥10490のうち¥4500を負担してください


大本の画像は既に削除されている。医療機関や医師の名前が明示されておらず、怪文書の類とみなしてよいと思う。本当に「東京の小児科」で配布されたのか、捏造ではないかと疑う人もいる。捏造の可能性は否定できないが、このような「お知らせ」を配布してしまう医療機関があったとしても不思議ではないと個人的には考える。しかしながら、「厚生労働省のメッセージ(脅し)」というのはもちろん事実ではない。すでにTogetterにて考察がなされているが、いったいなぜこんなことになったのかを解説してみよう。


まずは日本の医療保険制度の解説を

日本では国民皆保険制度が採用されている。詳しくは■国民皆保険制度がわりとうまくいっていた理由で解説したが、要は皆さんが医療機関を受診したら、その費用の(たとえば)3割のみを自己負担として患者さんが支払い、残りの7割は保険者が支払うという仕組みである。


f:id:NATROM:20090310202637j:image

国民皆保険制度


医療機関が保険者に対して「こういう患者さんにこういう治療をしたから7割分を払ってちょ」と診療報酬を請求する。そのときの請求書がレセプト。保険者は医療機関の請求をそのまんま払ったりはしない。まあなるべく支払うお金は少なくしたいから当然ことだよね。保険者がレセプトを審査して「この患者さんにこういう検査や治療は不要だろ。だから支払わない」なんてことがある(査定)。たまに医学的に必要な治療をしても理不尽な査定をされることもあり、これはこれで問題なんだけど、一方でこういう審査がなければ医療費がどんどん高くなってしまう。儲けるための、あるいはそうでなくても経済的なことを一切考慮しない医療行為を保険者による査定が抑制する。


過剰診療の例

通常、行った検査・治療などの診療内容や病名がレセプトに記載されるが、カルテのように詳細な病歴は載せない。なので、ズルをしようと思えばできる。たとえば医療機関が儲けるために医学的に必要のない頭部CTを行っても、レセプトに「クモ膜下出血の疑い」なんて架空の病名をつけておけば、保険者がこのズルを見抜くことは難しい。

ただし、1人2人ではなく、多数の患者さんで同じことをすればさすがにバレる確率が高くなる。レセプトはまとめて保険者が審査するので、医療機関の規模に対してあまりにも多くの患者さんが「クモ膜下出血の疑い」で頭部CTを受けていれば、「なんかおかしくね?こんなにクモ膜下出血の疑いの患者さんがいるわけないだろ」と気付かれる。結果、この医療機関は保険者に「マークされる」ことになる。保険者によるレセプト審査によって、医療機関が医学的に必要のない高額な検査をバンバン行って公的保険を食いものしつつ儲け続けることができないようになっているわけ。


「小児の甲状腺検査」については?

冒頭の「小児の甲状腺検査」についても同様のことだったのだろう。小児の甲状腺検査が医学的に必要になる事態など、クモ膜下出血の疑いよりも稀である。同一の医療機関で、小児の甲状腺検査を数多く行っていたら、「過剰診療」とみなされて「甲状腺検査の保険請求分が支払い拒否され」てもおかしくはない。「保険請求分」を支払うのは保険者であって厚生労働省は関係ない。保険者は多くの被保険者からお金を預かって保険を運営しているので、不自然に高額な検査を行っている医療機関を「マークする」のは当然の責務である。

検査が本当に医学的に必要であったのに不当に査定されたのであれば、医療機関は保険者に対して再審査請求(「この検査はこれこれこういう理由で医学的に必要なんだよ。わかったか。わかったら金払え」という内容をマイルドに書く)を行うことができる。医学的に必要であった理由を述べられないのであれば、再審査請求はできず、自腹を切るか患者さんに自費診療として負担を求めるしかない。「小児の甲状腺検査」の事例についてはそのようである。


厚生労働省の脅しの可能性は?

仮の話として、厚生労働省が、「今後、小児に関して、福島県立医大以外の甲状腺検査はうけさせない」ことを目的に、医学的に必要な病態であっても小児の甲状腺検査の診療報酬支払いを停止させたとしよう(厚生労働省にそのような権限はないけれどもあくまで仮の話として)。果たして医師たちが唯唯諾諾と厚生労働省に従うだろうか。一医療機関が患者さんに稚拙な内容の「お知らせ」を配る前に、日本医師会やら日本内分泌学会やらが大々的に厚生労働省を批判するに決まっている。だいたい、原発事故とは無関係に甲状腺疾患に罹る小児は一定の割合で生じている。全部福島県に集めるとでも言うのか。

まともな医療機関は、医学的に必要のない甲状腺検査を保険診療では行わない。よって支払い拒否されることもない。「厚生労働省のメッセージ(脅し)」というのは(「怪文書」が捏造でないとすれば)単に過剰診療と判断されて保険者に支払い拒否された医師の根拠のない想像であろう。



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■大阪市会議員が尼崎医療生協病院を批判

bamboobamboo 2012/09/05 12:14 拡散する前に少しで良いから信憑性を考えてみろと言いたいですが、流言飛語というものは元々そう言うものなので、無理なんでしょうねえ。
自分の友達がお知らせを受け取ったという人が何人もいるらしいので、意図的に嘘を拡散している人もいるんでしょう。

nn 2012/09/06 02:05 文章自体がねつ造でないと仮定すると、親の不安につけ込んで「甲状腺癌疑い」とかの病名で保険診療で一律にエコーを勧めまくって儲けている小児科医が都内に実在するってことですよね。
意図的に騙して儲けようとしてる悪徳医師なのか、とんでもない藪医者による確信犯なのか、本気でスタディ組みたかったのか、どれだか分かりませんけど、そりゃ「マークされる」のは当然でしょう。
今まで何百万円儲けたのか知りませんが、是非病院名を公開していただいて全額返金しろと糾弾したいところ(^^;)

(※補足:(1)今回の被曝は量的に甲状腺癌のリスクが有意に増える程とは考えられません (2)被曝後に甲状腺癌がエコーで見えるまで育つには数年の遅れがあるので、去年や今年前半の段階で開業医がエコーしてもしょうがないです (3)福島の全数検査はちゃんと大規模に被験者を登録して何十年計画で追跡・比較することで初めて意味を成し、保険と別の予算でやられている研究であって、現に眼前の病気を疑う患者に保険診療でエコーをすべき適応とは何ら関係ありません)

十六夜十六夜 2012/09/06 21:38 この「怪文書」がツッコミどころ満載で、もしこの医療機関が実在しているとしたら、それはちょっとおかしな医療機関だ、という点には納得できるのですが、その理由として

「だって査定されるってことは医学的に必要ないってことだよ」
「もし、本当に必要だったら再審査請求すればいいよ」
「それでも不当な査定をされたら、医師会や学会が黙っていないよ」

という説明には納得できないものがあります。

>検査が本当に医学的に必要であったのに不当に査定されたのであれば、医療機関は保険者に対して再審査請求(中略)を行うことができる。

そりゃあできますよ。できますけど、再審査請求が通ることってどれくらいあります? ぶっちゃけ「ほとんど通らない」でしょう? この記事を読んだ非医療業界の人は「過剰請求として査定されているということは、医学的に必要がないということで、万一医学的に必要なことであったなら再審査請求すればOK」と思ってしまうのではないでしょうか。

むしろ現場の医師の感覚としては「たとえ医学的に必要なことであっても、保険者にバンバン査定されまくるし、苦労して『医学的必要性』をレポートにして検査データを添付して再審査請求しても通らないことが多い」ではないでしょうか。まあ、NATROM様の記事の中にもこのことは触れられていますが。

>果たして医師たちが唯唯諾諾と厚生労働省に従うだろうか。(中略)日本医師会やら日本内分泌学会やらが大々的に厚生労働省を批判するに決まっている。

いや、従うでしょう。これまで、どんなに理不尽な点数改定や制度改悪があっても、従ってきたではないですか。勿論医師会は医師会なりに厚生労働省批判を行ってきましたが、それでも、決まった法律には従う以外の選択肢はないでしょう。

というか、そもそもそういう問題ではないと思うのですが。仮にとんでもなく不当な査定をされている一医療機関があったとして、その医療機関の為に「医師会や学会が」戦います? 戦うのはその「一医療機関」ではないですか?

余談ですが、小児の甲状腺疾患ってそんなにありえないんですかね。確かに「小児の甲状腺疾患の患者数」は、どうクグっても出てこなかったし、一般知識としても成人の疾患であることは判るので、そんなに多くないことは想像できますが、大抵の一般書(甲状腺機能障害に対する患者向けの本)には「小児のバセドウ病」や「小児の甲状腺機能低下症」についての項目がありますけど…。

勿論「小児の甲状腺疾患」がありうるからといって、いち医療機関に「甲状腺機能の検査が必要な児童が集中する」というのはありえないと思いますが。

NATROMNATROM 2012/09/07 01:34 「たとえ医学的に必要なことであっても、保険者にバンバン査定されまくるし、苦労して『医学的必要性』をレポートにして検査データを添付して再審査請求しても通らないことが多い」ということには同意します。けれども、医学的に必要である診療が査定されたら再審査請求するでしょう。いきなり諦めて「自費診療として行います」とはしません。普通の医療機関なら。


>いや、従うでしょう。これまで、どんなに理不尽な点数改定や制度改悪があっても、従ってきたではないですか。勿論医師会は医師会なりに厚生労働省批判を行ってきましたが、それでも、決まった法律には従う以外の選択肢はないでしょう。

確かに「決まった法律には従う以外の選択肢はない」です。でも「厚生労働省の脅し」って法律の話じゃないでしょう。それに、十六夜さんもご指摘のように「医師会は医師会なりに厚生労働省批判を」行います。さらにつけ加えれば、これまでも「理不尽な点数改定や制度改悪」はありましたが、『「今後、小児に関して、福島県立医大以外の甲状腺検査はうけさせない」ことを目的に、医学的に必要な病態であっても小児の甲状腺検査の診療報酬支払いを停止させた』に匹敵する理不尽ってありましたか?こんなめちゃくちゃな理不尽に反論しないなんてありえませんよ。


>というか、そもそもそういう問題ではないと思うのですが。仮にとんでもなく不当な査定をされている一医療機関があったとして、その医療機関の為に「医師会や学会が」戦います? 戦うのはその「一医療機関」ではないですか?

戦いません。戦うのはその「一医療機関」です。あのですね、私が「日本医師会やら日本内分泌学会やらが大々的に厚生労働省を批判するに決まっている」と言ったのは、「とんでもなく不当な査定をされている一医療機関」があったらという話ではなく、『「今後、小児に関して、福島県立医大以外の甲状腺検査はうけさせない」ことを目的に、医学的に必要な病態であっても小児の甲状腺検査の診療報酬支払いを停止させた』ら、という話です。この場合は「不当な査定」は一医療機関に留まりませんね。福島県立医大以外の医療機関、それこそ東京大学病院や京都大学病院であっても、小児に関して甲状腺検査は保険診療できないことになります。それでも医師会や学会が従うと思いますか?

nn 2012/09/07 02:46 多分NATROMさんは、この文書の「今後、小児に関して、福島県立医大以外の甲状腺検査はうけさせない」の部分を、「医学的適応があろうと、大学病院だろうと、何が何でも、福島以外で甲状腺検査は受けさせない」、の意味で解釈し、こういう記事になっているのだと思います。当然ながらそういう規制はありえません。

が、この病院が実在するなら、まともな医師ならおよそ甲状腺疾患を疑う理由のない不特定多数の小児に、大量にスクリーニング目的の甲状腺検査をしている施設と思います。東京の子供はすべからく甲状腺疾患のウルトラハイリスク群だから、スクリーニングが医学水準として適切な行為で、保険診療で認められるべき、と、トンデモ主張をしているのだ、と推測します。
従って、恐らくこの張り紙は、「『スクリーニング目的では』今後、小児に関して、福島県立医大以外の甲状腺検査はうけさせない」という意味なんだろう、と、私は勝手に補って解釈しました。

そういう意味であれば、保険者なり厚労省なりがその旨のメッセージを(明示的ではないにせよ)発することは妥当だし、事実であってもよいと思います。

Yosyanさんの調べたところによると、10490円ってエコーに加えて血液検査もほぼフルセットやるとぴったりこの値段みたいですね(笑) こんなん捏造できる素人はいないと思うので、なんか本物臭いなあという気がしてきました。

大河大河 2012/09/07 09:44 素朴な疑問なのですが

>まともな医師ならおよそ甲状腺疾患を疑う理由のない不特定多数の小児に、大量にスクリーニング目的の甲状腺検査を

行う際に保護者の同意は必要なものなのでしょうか、不要なものなのでしょうか。
もちろん念のためにしておきませんかと言われれば保護者もお願いしますと言うでしょう。
疑いがあるのでと言われれば、ぜひお願いしますとなるでしょう。
でもスクリーニング目的であれば、正しい説明とは言いきれないですよね。
正しいとは言い切れない説明で診療方針の選択をせまることについて
とある診療施設はどう思っているのでしょうか?
もちろんすべての小児に疑いがあり検査が必要と盲信している可能性もありますが。

善意の解釈をすれば保護者からの強烈な希望を受けて、心が休まるならばと検査を行いその結果
他では渋る検査を受けてくれる「いい診療施設」として口コミが広がり件数が増大、当然指導は入るものの
保護者の心のケアの為にやっている自覚があるので他の診療施設に紹介もできない。
紙の資料でで保護者に伝えたことを正義感溢れる保護者がネットに拡散。
診療施設にも伝わり診療施設からの削除のお願いが出ている。
そしていつものネットで話題が独り歩き。
検査をしてくれる病院にあたるまで病院を渡り歩くような保護者に何人もすがりつかれたら大変でしょうね。
(もちろん保護者の心のケアの為に必要ない検査をするのは間違っていますし、文面に脅しと入っているので
違うと思いますが。)

nn 2012/09/07 10:42 不安解消のための検査自体が常に間違いだとは言い切れないので、ごく一部の不安の強い保護者の要望で、自費診療で検査を行うレベルなら良いと思います。が、その目的で健康保険を濫用して何ら悪びれないことは明らかに不適切かと。
そもそも貼り紙の文面は検査の妥当性を積極的に薦めていると読み取れるので、そこまで善意の解釈する余地はないと思います。(トンデモに共通の話ですが)意図的に騙してるのか、正義と信じてやってるのかは外からは不明です。前者なら、こうやってネットで話題になるのを恐れ、本人が取り下げのお願いをした可能性はあると思います。
検査自体は保護者の同意の下でやるべきで、黙って検査して請求したら完膚なきまでの詐欺です。

十六夜十六夜 2012/09/07 22:51 >「たとえ医学的に必要なことであっても、保険者にバンバン査定されまくるし、苦労して『医学的必要性』をレポートにして検査データを添付して再審査請求しても通らないことが多い」ということには同意します。

この一言が聞かれたので私は満足です(←あんた何様?)

まぁ、ちょっと「過剰請求叩き」にはトラウマがあるんですよ。10年以上前の話ですが、全国レベルの日刊紙で「医療機関の98%が不正請求をしていた」なんて記事があって、よくよく読んでみたら「過剰請求でレセプトを返戻された経験のある医療機関が98%だった」とか。(あ、すみません。なにぶん昔の話すぎて信頼できるソースはありません。私の妄想記憶だと一蹴していただいて結構です)

この医療機関が実在しているとして、どんな症状の、どれくらいの人数の児童に甲状腺検査を行っていたかは「文書」では判りません。まあ、そんなことはほぼありえないとは思いますが、医学的に許容されるべき範囲だった、ということもありえなくはないです(言い方がまわりくどい)

この「怪文書」で言えることは「査定されたら普通は再審査請求するべきなのに、すぐ自費請求しようとすることはおかしい」「もし不当査定が事実だとしても、患者ではなく保険者もしくは厚生労働省、あるいは内分泌学会などに訴えるべきだ」「まして、厚生労働省が福島医大以外での甲状腺検査を阻止しようとしているというデマを流すのはよくないことだ」ぐらいのことで、甲状腺機能検査が『過剰診療だ』ということは情報量が少なすぎて判断できないように思います。

とある業界人とある業界人 2012/09/08 14:58 まあ保険で飯食ってるこの業界の人間ならここらへんのことは説明されなくても事情はすぐわかる当たり前すぎる話なんですけど、一般人にはレセプトの仕組みや査定の仕組みとか全然わからないでしょうから変な誤解が一人歩きしちゃうんでしょうね。
「査定されたら普通は再審査請求するべきなのに」
↑技官(査定する人)には普通の医療機関はあまり逆らわないでしょうし、そもそもこれ保険通るかな?やりすぎたら間違いなくアウトだな、くらいは業界人なら普通わかりますよね。
保険って暗黙の了解の領域が多過ぎてwww

nn 2012/09/09 02:12 うーん? 十六夜さんは
「本来再審査請求するなり、しかるべき所に問題を訴え出るなり、泣き寝入りするなりするのが普通であるところ、デマに近い情報を流して、安易に患者に費用を転嫁しようとしてる」
まで、この貼り紙から読み取られてるんですよね。ならもう、この施設は「保険診療でやっちゃいけないこと(=本来過剰診療と見なされる行為)をしてる自覚がある」、というところまで推測してもいいんじゃないでしょうか。
「甲状腺の腫れた小児が、ある施設に単なる偶然で突然集中する」可能性は完全にゼロではないですが、それで不当な査定食らった真っ当な医師が、(泣き寝入りすることはあっても)このような文面の貼り紙を堂々出すことは、あり得ないと思うんですけど。

十六夜十六夜 2012/09/09 21:36 まあ正直言って、訳のわからないいちゃもんをつけてどうもすみませんでした、私が間違っていましたといって引き下がりたい気持ちも満々なのですが、なんかこの記事を読んで微妙にもやもやする気持ちを感じたのは何だったのかなぁと、もう少し考えてみたいと思います。

>「甲状腺の腫れた小児が、ある施設に単なる偶然で突然集中する」(中略)ありえないと思うんですけど。

先にも述べましたが、私もそれはありえないと思いますよ。でも、そもそも「査定されたのは、この病院がスクリーニング目的で甲状腺機能検査を大量に行っているからだ」ということが前提になっていますよね。ここに疑問があるわけです。そういった情報は「お知らせ」からは読み取れません。ひょっとしたら請求したのはたった1件かもしれない。それでも査定される時は勿論査定されます。

例えば、どこぞの医療機関が「便鮮血検査が支払い拒否されました。当院はマークされたので、今後便鮮血は自費で行います」という「お知らせ」を出したとしたら、他のまっとうな医師の反応としては、「お知らせ」を出した行為については批判すると思いますが、はたして「便鮮血検査」がその患者に必要だったかどうかの判断については「患者を直接診なくては判らない」あるいは「カルテを見なくては判らない」と、保留にすると思うのです。しかし今回の場合は「福島」「甲状腺機能」などというキーワードから「どうせスクリーニング目的で行っているんだろう」という先入観があるように思えたのです。

nn 2012/09/10 00:24 正当な診療に対して、たった1件やそこら、1万円程度の支払いを拒否され、泣き寝入りも交渉もせず、代わりに「二度と保険でこの検査はしない!」とこんな激しい文章で患者に通達する医師を想定されているのでしょうか。その人は、私の「先入観」で想像していた医師より、確かに医学的判断だけは妥当です…が、それどころじゃなく性格面が酷すぎ、むしろ実在可能性が低いような…(^^;) まあ絶対いないとは言えませんね。
ただ、お知らせの文面の「急に支払い拒否されました」「今後も続けていかねば」の2個所から、請求が頻繁であったことは読み取って良い気がします。その場合、上記の議論も無意味です。

NATROMNATROM 2012/09/10 09:02 「正当な医療を行っても査定されて、再審査請求してもほとんど通らなかった」という経験をたくさんすると、十六夜さんのように感じるのかもしれません。私もその気持ちはわからないでもありません。非常に単純化して言えば、「査定をしてくる支払基金は敵!」ってなっちゃうんです。「あいつら(査定する側の医師)はヤブだ」「お前が病気になったら、ぜったいに査定されない治療してしてやらないからな」という感じです。

まあ酷い査定もありますが(というかまともな医療をしていれば査定のほとんどが酷い査定になっちゃいます)、それはそれとして、酷い「不正請求」「過剰診療」もあるわけです。「厚生労働省のメッセージ(脅し)」だとまで言うのであれば、再審査請求をしてから言うのがスジだろうと思います

十六夜十六夜 2012/09/10 22:00 殆どモンスターペイシェントのような私の言い分に真摯に向き合って下さったNATROM様、n様、ありがとうございました。自分の投稿文を読み直してみて「原発事故の影響で甲状腺癌にならない可能性って0%なの? 証明できるの? ねぇ!そうじゃないでしょ! だったら責任とってよ!」とヒステリックに叫ぶゼロリスク論者と言ってること変わらないなぁと自己嫌悪に陥った次第です。そういうつもりじゃなかったんですけどね。

今度こそ、まとめとお詫びをして退散したいと思います。(こういうことをいう奴に限って、絶対にまた現れるのは世の常ではありますが)

<言いたかったことその1>
「スクリーニングとしての甲状腺機能障害検査は正しくないし、保険者が査定するのも当然。でもそれはそれとして、一般論として保険者の査定が医学的に絶対的に正しいという訳ではない」
 →NATROM様はそのことは十分理解されているし、そもそも初めからそんなこと(保険者の査定は絶対正しい)は言っていない。(ただ、私もNATROM様に対してというより、記事を読んでいる非医療従事者向けへの注釈のようなつもりもありました)

<言いたかったことその2>
このことはあまり言い切れなかったのですが…。

「怪文書」は所詮「怪文書」です。もし、この「怪文書」をもって「原発ヒステリーの中には、こんなイッちゃった不届きな(=国民の財産である保険を無駄遣い)医師もいるよ!」という批判があるとしたら、こんな不確かなソースで「こんな医師もいる」と批判するのは、やはり科学的でないというか、正しい姿勢ではないと思います。細かい話ですが、あくまで「いたとしたらとんでもないよね」という立場であるべきなのではないかと思います。

こういうイッちゃった医師は、いてもおかしくないし、いかにもいそうだなぁと私も思いますが。

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