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cover ■「ニセ医学」に騙されないために

 ホメオパシー、デトックス、千島学説、血液型ダイエット、ワクチン有害論、酵素栄養学、オーリングテストなどなど、「ニセ医学」についての本を書きました。あらかじめニセ医学の手口を知ることで被害防止を。

2013-05-31 ワクチン接種による胎児死亡率の増加が40倍?!

[][]「ワクチン接種による胎児死亡率の増加が4000パーセントを超えています!」 「ワクチン接種による胎児死亡率の増加が4000パーセントを超えています!」を含むブックマーク

「妊娠中にインフルエンザのワクチンを接種した場合、胎児の死亡率は4250%アップ」*1というツイートがあった。プロフィールによれば「専門は動物の統合診療医&外科医」。




根拠は海外の反ワクチンサイト*2のようだ。"4,250% Increase in Fetal Deaths Reported to VAERS After Flu Shot Given to Pregnant Women"(妊娠女性に与えられたインフルエンザワクチン接種後のワクチン有害事象報告システムへの胎児死亡の報告が4250%増加)とある。どこから4250%なんて数字が出てきたのか興味があったので調べてみた。結論から言うと、Human & Experimental Toxicology誌に掲載されたGS Goldman氏による論文*3の表に由来するようだ。


f:id:NATROM:20130531135441j:image

■Swine Flu Vax Increased Vaccine-Related Miscarriages 6-11 Times | Gaia HealthGaia Health

このサイトでは6〜11倍としている。


2008/2009年のシーズンでは胎児死亡の報告は4例。2009/2010年のシーズンでは胎児死亡の報告は合計174例だが、そのうち4例は季節性インフルエンザワクチンのみ接種しており、H1N1ワクチンを接種した妊婦からの胎児死亡は170例。170/4=42.5。なるほど、そう来たか。ワクチンを接種された妊娠女性の数が年度で異なるのだから(2009/2010年のシーズンでは前年の約4倍の女性がワクチンを接種されている)このような単純な比較はできないのだが、そんなことは気にせずに「40倍!怖い!」と騙されちゃう人が想定「顧客」なのだろう。「動物の統合診療医&外科医」が「詐欺師」なのか「顧客」なのかはわからない。

ワクチンを接種された妊娠女性数あたりで比較すると、胎児死亡の報告は40倍ではなく11.4倍となる。これでも問題だと考える人もいるであろう。確かに胎児死亡そのものが約11倍であれば問題であるが、結論から言うと、ワクチン有害事象報告システムに捕捉された胎児死亡が約11倍であっただけで、実際の胎児死亡については何も言えない。おそらくは増えてはいないし、少なくとも約11倍とかいう数字にはならない。

考えてもみよ。2009/2010年のシーズンには妊娠女性の43%がワクチンを接種したのだ。もしワクチン接種によって胎児死亡が11倍(あるいは6倍)になったとしたら、全妊娠女性で約3倍になる。気付かれないわけがない。アメリカ合衆国全体の胎児死亡の統計は発見できなかったが、発見した範囲内での各州の統計では、とくに2009年〜2010年にかけて胎児死亡は増えていない。一例として、テキサス州での胎児死亡率のグラフを挙げる。


f:id:NATROM:20130531151845j:image

■Texas Department of State Health Services, Vital Statistics Annual Report, Mortality Narrativeより引用。テキサス州での胎児死亡率は2009年〜2010年にかけて大きな変化を認めない


ワクチン有害事象報告システムへの報告数と、実際の有害事象の数の違いを明確にせず、「4250%アップ」とか「11倍」とか恐怖心を煽るのは、反ワクチン団体の常套手段である。ワクチン有害事象報告システムには、ワクチンとの因果関係が明らかでなくともワクチン接種後に有害事象が起これば報告してもよい。よって、有害事象の報告数は医師やワクチン接種者の意識に強く影響を受ける。「ワクチンが胎児死亡に関係があるかもしれない」という噂が広まるだけで、胎児死亡の報告が増えるだろう。

おそらく、2008/2009年のシーズンでは胎児死亡の報告が少ないのは、それまでは胎児死亡とワクチンの関係が疑われていなかったからであろう。胎児死亡との関係が注目されて2009/2010年のシーズンでは報告数が増えたが、翌年の2010/2011年のシーズンで胎児死亡の報告は約6分の1に減った。医師やワクチン接種者が「飽きた」ためだと私は推測する。

A-H1N1ワクチンが胎児死亡を増やさず、むしろインフルエンザ罹患を減らすことでリスクを減らす可能性があることが、複数の質の良い研究からわかっている。たとえば、■Risk of fetal death after pandemic influenza vi... [N Engl J Med. 2013] - PubMed - NCBI。日本語の要約は、■パンデミックインフルエンザウイルス感染またはワクチン接種後の胎児死亡リスク。「ワクチン接種そのものは胎児死亡率の上昇とは関連しておらず,パンデミック中のインフルエンザ関連の胎児死亡リスクを低減させた可能性がある」と結論されている。

これからも、反ワクチン団体は、ワクチン有害事象報告システムへの報告数と実際の有害事象の数の違いを利用し、不適切にワクチンへの恐怖を煽るであろう。最近、HPVワクチンの「副作用」に関する報道がなされている。HPVワクチンに無視できない副作用があろうとなかろうと無関係に、今後、HPVワクチンの有害事象の報告数は必ず増える。そして報告数の増加が反ワクチン団体に利用されると予言しておく。



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■子宮頸がんワクチン副作用者数一覧?有害事象と副反応 - うさうさメモ

■女性自身の「“危険すぎる副反応”の実態」という記事について - うさうさメモ

■「子宮頸がんワクチンで不妊」はやっぱりデマ - うさうさメモ

*1:URL:https://twitter.com/keijimoriiVet/status/273377921010380800

*2■4,250% Increase in Fetal Deaths Reported to VAERS After Flu Shot Given to Pregnant Women | Health Impact News

*3■Comparison of VAERS fetal-loss reports during three consecutive influenza seasons: Was there a synergistic fetal toxicity associated with the two-vaccine 2009/2010 season?(3連続インフルエンザシーズンのワクチン有害事象報告システムによる胎児死亡報告の比較:2009/2010年の2つのワクチンと関連した相互作用的な胎児毒性は存在するか?)

あらべすくあらべすく 2013/06/27 01:27 特異体質あるいはワクチン以外の原因による接種事故が多いと思う。風邪などで熱が出ないからワクチン接種した場合とかです。あと、いつも熱出るタイプも接種してる事が多い。延期しても発熱が治らないから、無視して接種です。これは、ワクチン接種が義務的だと起こりえます。実際に38℃ある時にB型肝炎もインフルエンザも接種して寝込んでました。

NATROMNATROM 2013/06/28 08:30 IshidaTsuyoshiさんのご指摘によって以下のように誤字を訂正しました。ご指摘ありがとうございました。

(訂正前)ワクチン有害事象報告システムに補足された胎児死亡が約11倍であっただけで
(訂正後)ワクチン有害事象報告システムに捕捉された胎児死亡が約11倍であっただけで

無精子症無精子症 2017/04/30 13:10 不妊治療の患者に「適当な治療法がない無精子症」を見出したとすれば、これは過剰診断です。しかし、この診断がなされたことによって、実父の精子を使い、この夫婦が子供を授かることができた、とすれば、「この過剰診断には大きなメリットがあった」というべきでしょう。

このことは裏を返せば、「適当な治療法がない無精子症」の患者にそれと診断せず(すなわち、過剰診断をせずに)不妊治療を施すことは大きなデメリットと言えます。一見、逆説的に聞こえますが、これは過剰診断をしなかったことによって大きな損失が発生している状況と言えます。

後者では「過剰診断しなかった」ことによって過剰治療が生じてしまった一方、逆に、前者では「過剰診断」によって過剰治療を回避できた、ということです。

NATROMNATROM 2017/04/30 17:40 無精子症という時点で男性不妊という症状がありますので過剰診断ではありません。

NATROMNATROM 2017/04/30 17:41 警告です。「早期発見」さん、「正しくは」さん、「治療の必要のない疾患」さん、「血液型の診断」さん、「無精子症」さん、ハンドルネームを固定してください。固定しなければコメントを消します。