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cover ■「ニセ医学」に騙されないために

 ホメオパシー、デトックス、千島学説、血液型ダイエット、ワクチン有害論、酵素栄養学、オーリングテストなどなど、「ニセ医学」についての本を書きました。あらかじめニセ医学の手口を知ることで被害防止を。

2014-02-18 「医師がすすめる空間除菌」のカラクリ

[]「医師がすすめる空間除菌」のカラクリ 「医師がすすめる空間除菌」のカラクリを含むブックマーク

「クレベリン」という二酸化塩素による据え置き型の空間除菌製剤のテレビCMを見て疑問に思った。このテレビCMは、製薬会社のウェブサイトでも見ることができる。


■広告ギャラリー:テレビCM|CM・特集|大幸薬品株式会社


以下、「」内がテレビCMのセリフで、()内が私のツッコミである。


  • 「子供の免疫力は大人より弱い」(二酸化塩素のような化学物質に対する耐性も子供は大人より弱いかもね)
  • 「二酸化塩素分子が空間中のウイルスや菌を99%除菌」(それってたぶん実験室のデータだけど、実際の使用条件で効果があるかどうかとは別問題だよね)
  • 「医師がすすめる空間除菌」(ちょっと待った。誰がすすめているって?)

こんなもんを勧める医師がそうそういるとは思えないが、メーカーのサイト*1で確認すると、683名の医師に対する「感染症対策として空間(空気)の菌やウイルスを除菌・除去し、空間をきれいな状態に保つこと(空間除菌)が有効だと思うか」というアンケートに内科医が80%以上「有効だと思う」と回答したという。「医師がすすめる空間除菌」というフレーズ自体は嘘ではない。

しかしアンケート結果には続きがあって、「うち、空間除菌において、60%以上の医師が二酸化塩素は有効だと回答しました」とある。つまり、空間除菌が有効だと思う医師の40%近くが「二酸化塩素は有効ではない」と考えているわけである。おそらくは空気清浄機などの他の手段による空間除菌が有効だと考えているのだろう。

さらに問題なのは、メーカーが推奨する使い方と、アンケート対象の医師が想定する使い方には、おそらくは大きな隔たりがあることだ。メーカーは家庭での空間除菌製剤の使用をすすめている。「こんな所におすすめ」として寝室やリビングや子供部屋が挙げられている。


f:id:NATROM:20140218000048j:image

製薬会社がすすめる使い方


一方で「感染症対策として空間除菌が有効だと思うか」と聞かれた医師がまず想定するのは、おそらくは病院・診療所における待合室や診察室であろう。待合室には風邪やインフルエンザの患者さんがたくさんやってくる。なんらかの手段で待合室の空気中のウイルスや細菌を除去できれば、感染症対策として有効かもしれないと考える医師がいるのはわかる*2

家庭においてはどうだろう。寝室や子供部屋などのごく限られた人しかいない空間を除菌したとして、感染症対策として有効なのか。きわめて疑問である。というか、正直、意味がわからない。寝室を空間除菌したとして、季節性インフルエンザのようなヒト-ヒト感染する感染症に有効だとはとても思えない。

安全性についても考慮が必要だ。空間除菌製剤から出る二酸化塩素に曝露する時間は、待合室でなら普通は1時間やそこらで、それも受診した日だけである。一方で寝室で使うとなると数時間の曝露が毎日続くのだ。医療機関よりも家庭で使うほうがより高い安全性が要求される。

医師に対するアンケートで、「感染症対策として空間除菌は有効だと思うか」だけでなく、「感染症対策として二酸化塩素による据え置き型の空間除菌製剤の家庭での使用は有効だと思うか」と聞いていたら、また違った結果になっていただろう。私は有効だとは思わない。有効だと思う医師がいたら、どのような感染症に対する対策になると想定しているのか聞いてみたい。潜在的なリスクを否定できないため、消臭などの他のメリットでもない限り、家庭での二酸化塩素による空間除菌製剤の使用を私は勧めない。



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■衛生仮説〜不潔な環境がアレルギー性疾患を予防する

*1:URL:http://www.seirogan.co.jp/news/20131111大幸薬品クレベリン新CM発表web.pdf

*2:本当に有効かどうかを確かめるには臨床試験が必要である。職場や学校において、据え置き型の二酸化塩素放出薬がインフルエンザ様疾患の発生や欠席率を減らすという研究はある。無作為化されていないなど、研究の質は高くない

harrityharrity 2014/02/18 10:47 大幸薬品って、創業者のお孫さんが最近社長になられたそうで、外科医だったんですよ。つまり「社長がすすめる」=「医師がすすめる」で、まあ間違ってませんね。

kxxt kxxt 2014/02/18 21:20 安全じゃないのでぜひやめていただきたいですよね
http://www.caa.go.jp/safety/pdf/130329kouhyou_2.pdf

NATROMNATROM 2014/02/18 22:41 まあ、おそらくは携帯型よりは、据え置き型の空間除菌製剤のほうがずっと安全であろうとは思います。

おかだおかだ 2014/02/19 17:02 「空間除菌」には「二酸化塩素」を使用するものと、「次亜塩素ナトリウム」の製品とがあるようです。後者は露骨に危なそうですが、前者も有効性と安全性のエビデンスがあるのかな。

uc2014uc2014 2014/02/19 21:25 職場や学校においては、インフルエンザ対策は、冬場の乾燥対策のほうが先かと思われます。

ぴかんぴかん 2014/02/19 21:36 おかだ様

次亜塩素酸ナトリウムも二酸化塩素も塩素を利用した殺菌剤ですので、殺菌対象及び効果に大きな違いはありません。化学的安定性などに多少の違いはありますけどね。

kxxtさんのご指摘の通り、化学やけどを起こすので皮膚接触などが厳禁な危険な物質であることも事実ですし、最悪塩素ガスも発生する物質ですので…事故にならないようによく注意喚起をして欲しいですね。

寝室などで日常的に殺菌して感染症を防ごうとするなら、むしろ帰宅後の手洗い、うがい、服を着替えるといったことを薦めた方がよいと私は思います。

一博士一博士 2014/02/28 21:29 クリアですね。引用された資料(20131111大幸薬品クレベリン新CM発表web.pdf)を見てみました。私もいくつか気になる点が

(1)「空間除菌は感染症対策として有効」が77%で、【うち】「二酸化塩素が有効」と答えたのが61%ですから、「空間除菌に二酸化塩素が有効」(な手段の一つである)と考えている医師は47%ということでしょうか。

(2)【うち】の質問は、「それぞれの手法はどの程度有効だと思いますか」ですから、様々な手法(紫外線照射など)個別項目についてY/Nで答えた割合でしょうね。その中から二酸化塩素だけを切り出した手口でしょう。
ここで、仮に、紫外線や空気清浄機の項目よりもよい値が出ていたら、「二酸化塩素は他の手法より断然おすすめです」という宣伝に使われたのでしょう。(現実はそうならなかったのでは)
それに除菌のリスク(毒性)を考慮しなくてよい質問文になっていますね。とりあえず除菌できれば「有効」という回答をもらいたい設問でしょう。(Natrom様がブログで提示された設問項目との違いです)

(3)除菌とは、それなりに細胞にダメージを与えるのですから、リスクはあるでしょうし。臭いもきついようですね。イワシの頭ではないですが、臭わなくなってからの「置いてある安心」のための商品のように思います。

(4)首かけタイプを病院でつけている医師・看護師を見かけますが、歩く宣伝看板にするために、試供品が配られたりしているのでしょうか?

ぴかんぴかん 2014/03/28 04:34 すでに皆さんご存知とは思いますが、昨日消費者庁より報道発表があり、この製品も対象になっています。とりあえず、ご報告です。

平成26年 3月27日
二酸化塩素を利用した空間除菌を標ぼうするグッズ販売業者17社に対する景品表示法に基づく措置命令について
http://www.caa.go.jp/representation/pdf/140327premiums_2.pdf

あ〜るあ〜る 2014/08/30 13:00 NATROM先生 なんだかすごい方向に逝っちゃってます。
http://jokin-shukan.jp/

トラックバック - http://d.hatena.ne.jp/NATROM/20140218

2014-02-02 白血病に備えて自家末梢血幹細胞の冷凍保存をしておくべきか?

[]白血病に備えて自家末梢血幹細胞の冷凍保存をしておくべきか? 白血病に備えて自家末梢血幹細胞の冷凍保存をしておくべきか?を含むブックマーク

白血病に備えて幹細胞を採取・冷凍することを推奨するツイートがあった。「豪州の白血病専門薬剤師からの話」であるとのこと。



このエントリーを書いた時点で、このツイートは300回以上リツイートされている。情報を提供しようとした善意についてはありがたいと思うが、この話はいくつかの点において疑わしい。非専門家を通じたために話が不正確になっているか、あるいは「豪州の白血病専門薬剤師」がそもそも信用できない人物である可能性がある。現在の日本における状況で、一般の人が白血病に備えて末梢血幹細胞を保存しておく必要性は乏しいと私は考える



「腕から採血した血液から採取できる」という点から、骨髄幹細胞ではなく末梢血幹細胞のことを言っていると思われる。ちなみに骨髄幹細胞であっても「背骨に直接針を打ち込んで」採取するわけではない。一般的には腸骨(骨盤の一部)から採取する。



「医師側にも反対の人が多い」もなにも「一般住人の白血病に備えて幹細胞採取を」という話に賛成している医師がいるのかどうか疑問である。「原発作業員の大量被曝に備えて」という話とごっちゃになっているのではないか。また、G-CSF(顆粒球コロニー刺激因子)の薬剤費は末梢血幹細胞採取に必要な医療費の一部であり、後発医薬品が出てきたぐらいではそれほどコストは変わりないと思う。



原爆被爆者における白血病リスクは被爆後約6−8年がピークであった*1。「放射能の影響による白血病の発症が心配なのは事故から2〜5年の間」という主張に根拠はあるのだろうか?



私がこの話を疑わしいと判断した最大の理由が、「どうして日本の白血病専門医はこの事実をもっと広く国民に知らせないのだろうと、その豪州の白血病専門薬剤師の人はしきりに不思議がった」という点である。白血病についての一般的な知識があれば、白血病に備えての末梢血幹細胞採取が勧められない理由はいくらでも考えつくはずだからである。たとえば以下である。


  • 現状の日本の被曝状況で白血病が過剰発生するとは考えにくい。よしんば過剰発生するとしても、もともと白血病の罹患率は低く、絶対リスクは小さい。
  • 末梢血幹細胞採取に使用するG-CSFの長期安全性は確立されていない。たいていは大丈夫であるがリスクがゼロであるとは断言できない。
  • 白血病を発症したとして、あらかじめ採取しておいた自家末梢血幹細胞が治療に役に立つケースは限定的である。GVL効果(移植片対白血病効果)が期待できる他家幹細胞移植が使用可能であればそちらが優先される。

GVL効果とは、ドナーの白血球がレシピエントの白血病細胞を攻撃することによって得られる抗癌効果である。自家幹細胞移植ではGVL効果は得られない。この点が、大量被曝後の急性放射線障害による骨髄抑制に対する幹細胞移植とは異なる。急性放射線障害に対してはGVL効果は不要なので可能ならば他家(他人からの移植)ではなく自家幹細胞移植が望ましい。

「原発作業員の大量被曝に備えて」幹細胞を採取・保存しておくべきだ、という意見であれば理解できる。しかし、「一般住人の白血病に備えて幹細胞採取を」幹細胞を採取・保存しておくべきだという意見は、何か相応の根拠がない限り、懐疑的に受け止めたほうがよい。本当の専門家であれば、上記したような理由に対して具体的な反論をするはずであり、「しきりに不思議がった」というのは不自然である。



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■作業員の自己造血幹細胞の事前採取の是非は誰にもわからない

真島忠政真島忠政 2014/02/03 12:34 こんにちは。初めてコメントします。
大変ですね。頑張って下さい。
さようなら。

nn 2014/02/05 04:48 (昔も書きましたが)個人的には「原発作業員の大量被曝に備えて」すら、G-CSFを使った末梢幹細胞採取には反対でした。理由は以下の通り。

●数十年・数十万人レベルでの追跡研究がある放射線被曝と比べて、G-CSFの長期安全性は未知であり、健常人に気軽に投与できる類の薬とは思えないこと。
●急性放射線障害における幹細胞移植は、「ある狭い特定の範囲の線量を急性被曝した人に理論上は効きそうだが、過去に世界で数例に試されたものの本当に有効かどうか不明な治療法」というレベルでしかないこと。急性放射線障害では、移植しても死亡するか移植しなくても生存するケースが殆どで、移植が生死を分ける状況はレアと思われること。
●G-CSFを用いる幹細胞採取に、数日間の入院を要すること。入院先が確保できず多くの生命が失われていた震災直後のあの時期に、大量の健康な若年者を予防目的で入院させるのは優先順位がおかしいこと。
●原発が不安定な時に、重要な技術者が入院のために数日間現場を離れてしまうと、それこそ他の多くの人命を危険に晒しかねないこと。

要するに「世界で1人救えるかどうかの実験的治療をやるメリットより、本人および周囲が被る生命リスクの方が大きい」というのが自分の感覚です。

この予防的手法は当時のマスコミが大いに取り上げ、世間的には「これをやらない東電は人命軽視」といった議論が主流ではありました。が、一部の学会は「社会が要請するのであれば協力はします」という玉虫色の反応をしたものの、残りの学会はこの主張を最後までスルーした、というのが顛末だったと記憶しています。