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cover ■「ニセ医学」に騙されないために

 ホメオパシー、デトックス、千島学説、血液型ダイエット、ワクチン有害論、酵素栄養学、オーリングテストなどなど、「ニセ医学」についての本を書きました。あらかじめニセ医学の手口を知ることで被害防止を。

2014-07-16 近藤誠氏による乳がんの生存曲線のインチキを解説してみる

[][]近藤誠氏による乳がんの生存曲線のインチキを解説してみる 近藤誠氏による乳がんの生存曲線のインチキを解説してみるを含むブックマーク

近藤誠氏は「がん放置療法のすすめ」「医者に殺されない47の心得」などの著作で知られる医師である。2014年6月29日に放送された、<BSフジサンデースペシャル>『ニッポンの選択』というテレビ番組に、近藤誠氏が出演していた。その中で近藤誠氏が提示した、放置した方が長生きすることを示す乳癌の生存曲線を引用する。


f:id:NATROM:20140716174059j:image

近藤誠氏「これからお見せするのは乳がんで、臓器転移がある患者さんのね、もうstage IVですけれども、治療成績がどう変わったかというと…」


一見しただけでは、抗がん剤を使用する現代の治療よりも、抗がん剤や放射線療法や手術すらなかった100年前のほうが長生きしたように見える。ナレーションでも「何もしない赤のほうが生存率が高いのです」と言っている。しかしながら、放置したほうが長生きできるというのは見せかけだけのものである。それなりの知識がある人がみれば、近藤誠氏によるインチキはだいたい予想がつく。

結論を先に言えば、「対症療法のみ」の群は、症状が生じた時点を生存期間の起点としていることと、進行度の低い症例も混じっていることから、抗がん剤使用群よりも長生きしているように見えているだけである。本エントリーのここから先はこの結論の詳細な解説である。忙しい方は、近藤誠氏は、不適切な比較によって、抗がん剤治療が寿命を縮めると視聴者を誤解させたということだけを覚えていただいて、あとは読むのを止めていただいてかまわない。

さて、近藤誠氏がどのようなインチキをしたか予想できたとしても、「たぶん、こんなインチキしているのであろう」というのは批判として不十分である。グラフの元になった論文があるはずなのでそれを読まねばならない。そこで、出典とされている「New England Journal of Medicine 2002;347:781-798」を読んでみた。雑誌は一流誌である、それほど変なことが書かれているはずがなかろう。

ところが読んでみてびっくり。近藤誠氏が提示したような生存曲線は、出典とされている論文には載っていない。というか、乳がんの論文ですらなく、前立腺がんの論文であった。いったいどういうこと?このデータどこから来た?本当の出典については、インターネットの集合知で判明した。詳しくは■近藤誠氏による乳がんの生存曲線 - Togetterまとめを参照のこと。情報を提供してくださったみなさまに感謝したい。本当の出典は以下である。


A.(抗がん剤なし群)→Bloom HJ et al., Natural history of untreated breast cancer (1805-1933). Comparison of untreated and treated cases according to histological grade of malignancy. Br Med J. 1962 Jul 28;2(5299):213-21.

B.(抗がん剤多剤併用群)→Greenberg PA et al., Long-term follow-up of patients with complete remission following combination chemotherapy for metastatic breast cancer. J Clin Oncol. 1996 Aug;14(8):2197-205.

C.(抗がん剤(ドセタキセル)の乗り換え治療群)→O'Shaughnessy J et al., Superior survival with capecitabine plus docetaxel combination therapy in anthracycline-pretreated patients with advanced breast cancer: phase III trial results. J Clin Oncol. 2002 Jun 15;20(12):2812-23.


それぞれの論文の要旨をざっと言うと、


A.(抗がん剤なし群)→「乳がんを放置すると3年も経たずに半分が死ぬ。10年でほとんど死ぬ。ちゃんと治療しようぜ」

B.(抗がん剤多剤併用群)→「転移性乳がんに対して抗がん剤治療を行って完全寛解した群は長生きする。完全寛解するような治療戦略が必要だ」

C.(抗がん剤(ドセタキセル)の乗り換え治療群)→「アンスラサイクリン系抗がん剤が効かない、あるいは、効かなくなってきた転移性乳がんの治療はドセタキセルが標準治療だけど、カペシタビンを併用したらもっと有効だったよ」


当たり前だが、これらの論文には「癌は放置したほうがいい」「抗がん剤が命を縮める」なんてことは一言も書いていない。むしろその逆である。

近藤誠氏はさまざまな著作で「乳がんの生存曲線」を提示している。著作によってはきちんと出典を明示しているものもあるが(『抗がん剤は効かない』 2011年5月、『がん放置療法のすすめ 患者150人の証言』 2012年4月)、無関係な出典が加わっているもの(『プレジデント 2013年6月17日号』)、無関係な出典のみのもの(<BSフジサンデースペシャル>『ニッポンの選択』 2014年6月)がある。

『これでもがん治療を続けますか』、文春新書、2014年4月にも同様の図があったが、なぜか出典の記載はなかった。


f:id:NATROM:20140716122617j:image


グラフ1は臓器転移がある乳がん患者の生存曲線です。細い実線は100年以上前の患者たちの生存曲線です。抗がん剤がなかった時代なので、痛み止めなどの対症療法が行われました。太い実線は、現代の乳がん患者の生存曲線で、多くが乗り換え治療を受けています。

抗がん剤治療や乗り換え治療が盛んになった現代では、患者の余命が短くなっていることが一目瞭然です。このように抗がん剤には「縮命効果」があるのです。(P170)


乗り換え治療とは、近藤誠氏によれば、「再発・転移するごとに、次々と別の薬に乗り換えて(P170)」続けられる治療のことである。「B 抗がん剤の乗り換え治療の生存曲線」は、全例、アンスラサイクリン系の抗がん剤からの「乗り換え」である。

出典の記載の誤りは単純ミスかもしれないが、近藤誠氏の誤りはそれにとどまらない。「A 約100年前の対症療法のみの乳がんの生存曲線」は、原典にあたってみたところ、全250例中、Stage 2が6例(2.4%)、Stage 3が58例(23.2%)含まれていた。これらの症例は入院時点では臓器転移は確認されていない。「グラフ1は臓器転移がある乳がん患者の生存曲線です」という近藤誠氏の説明は嘘である。一方、「B 抗がん剤の乗り換え治療の生存曲線」の患者は全例、転移性乳がんである。

病期が異なることは「対症療法のみ」群が見かけ上生存率がよく見える一因になるが、決定的なのは生存期間の起点である。「対症療法のみ」群の生存期間は"FROM ONSET OF SYMPTOMS"つまり「症状が生じた時点」が起点である。一方で、「抗がん剤の乗り換え治療」群は、無作為化比較試験であるので、一般的には起点は無作為割り付けされた時点である。どのような患者が「抗がん剤の乗り換え治療」の優劣を決める臨床試験に参加するのか。たとえばこのような患者である。

「乳房のしこりを自覚し、6ヶ月ほど様子をみていたが徐々に大きくなってきたので思い切って病院に受診したところ、乳がんと診断された。受診から2ヶ月後に外科的切除と放射線治療を受け、外来で経過を観察されていたが、手術から3年後に肺転移を指摘された。アンスラサイクリン系の抗がん剤治療を受け、いったんは転移巣は縮小したが8ヶ月後の検査で増大が指摘された。臨床試験についての説明を受け、同意し、2ヶ月後に無作為割り付けされた」

この仮想的な事例では、「症状が生じた時点」と「無作為割り付けされた時点」との間に、4年6ヶ月の開きがある。抗がん剤のセカンドライン治療の臨床試験に参加する患者群はすでに他の治療を受けてきたため、「症状が生じた時点」(あるいは検診で無症状で発見されたケースでは「放置していれば症状が生じたであろうという時点」)から何年も経っているのが通常である。現代で「患者の余命が短くなっている」のではない。そもそも現代でなかったら大多数が死亡したであろうという患者を対象にした臨床試験なのだ。

その点を無視して「症状が生じた時点」を起点とした生存曲線と並べて『抗がん剤には「縮命効果」がある』と結論するのは誤りである。無作為化試験が未実施あるいは不可能な場合において、やむを得ず仮想的な対照と比較することはある。だが、いくらなんでもこの比較は不適切きわまりない。近藤誠氏は「膨大な数の論文を読み込」んだそうである。にも関わらず、こうした誤りを犯したのだとしたら、とんでもないボンクラだと言わざるを得ない。しかし、近藤誠氏はボンクラではないと私は考えている。

テレビで一瞬だけ見て近藤誠氏の主張を信じる視聴者や、近藤誠氏の本だけを読んで他の情報にあたらない読者もいるであろう。むしろ、そちらのほうが多いのではないか。いちいち原典に当たる人などごく一握りである。近藤誠氏はそのことを十分に理解していると思われる。

だが、近藤誠氏の主張に疑問を持った人に対する情報提供は必要であると信じる。「何かおかしい」「本当かな」と思い、「近藤誠 乳がん」で検索し、このページにたどり着く人が一人でもいればそれでよい。

なお、近藤誠氏へのカウンター情報として、書籍では、


■「抗がん剤は効かない」の罪 勝俣範之 (著)


が有用である。単に近藤誠氏への批判に留まらず、現状の通常の治療に対する問題提起(早目の緩和ケアが望ましいにも関わらず現状では不十分である、など)もなされている。

インターネットで入手できる情報は、


■近藤誠氏への反論|がん治療の虚実


が信頼できる。確かな根拠に基づいて近藤誠氏の誤りについて解説してある。どちらも腫瘍内科医によるものである。



追記(2014年7月17日):

同様の図の出典の間違いおよび不適切な比較について、以前に既に指摘されている。


■もしも近藤誠センセイから「がんの放置治療」をすすめられたら - メディカル・インサイトの社長日記<Part.2>


このような記事が増えることが望まれる。



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bamboobamboo 2014/07/27 21:24 あまりに衝撃的だったのか、近藤誠擁護派からもコメントがありませんね。
私もここまで卑劣なことをしているとは思いませんでした。

一方で、無邪気な検診推進派も問題が無いわけでは無いのが悩ましいところではあるのですが。

nn 2014/07/31 14:47 「A」の論文のイントロ部分に、「乳癌に対する治療が寿命延長に全く寄与しないと言っている人すらいる」みたいな事が書いてあって面白かったです。半世紀以上も前の医療水準に逆行してやっと、近藤氏と似たこと言ってた普通の専門家が見つかるのね、と(笑)

で、もちろん、この50年以上前の論文ですら、「乳癌は治療すれば、放置するよりも寿命が延びるだけでなく、生活の質が改善され、終末期の苦痛も緩和される」が結論です。ていうか、その「100年前の対症療法のみの生存曲線」の由来とまったく全く同一の図には、もともと「(約70年前の水準で、同一グレードの患者を)治療した場合」の、遥かに良好な生存曲線も載っています。
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC1925646/?page=6
近藤氏にとって都合が悪いので綺麗に消してありますね。正直「この隠蔽で誰が死のうと構うものか」という強烈な悪意が無い限り、到底できない改竄です。すごいすごい。

NATROMNATROM 2014/07/31 17:06 Bloom(1962)のにある、乳がんを放置するとどうなるのか、という記述も読む価値があります。Discussionの最後、"It is perhaps noteworthy that those who most decry the value of treatment of breast cancer are not obliged to treat its victims."って、まんま近藤誠氏のことを指していますよね。

非医学系理工系人非医学系理工系人 2014/08/03 06:54 はじめまして。理系だが医学は素人です。

「患者よ、がんと闘うな」の時の近藤氏は今よりもまともなことを言っていたように思いました。治療してすぐ転移が発見されるがんは、治療した段階ですでに転移しているであろうことを指数関数を用いて説明し、その理論は数学上正しいものでした。

また進行がんについても、「進行がんでも治ることはある。むしろ肝硬変などは不可逆なので治らない」とこれも理論的に述べていました。この時点での近藤氏は進行・末期がんでも、治療により治癒または大幅な延命ができることを認めていました。

当時の近藤氏には、すべてに賛同できるわけではありませんでしたが、それなりの価値が発言にあったように思えます。

あれから十数年、「インフルエンザワクチンは有害無益」とか「がんは放置せよ」とすっかり「あっちの人」になってしまったのだなあと深く時の流れを感じました。

NATROMNATROM 2014/08/03 09:39 非医学系理工系人さんの仰る通りです。

がん治療のみならず、早期発見早期治療が常に望ましいとする考え方が支配的だった時代に、がん検診の有効性について早くから疑問を呈していたのも、近藤誠氏ですね。現在では、がん検診にも過剰診断・過剰診療の弊害があり、エビデンスの乏しいがん検診は推奨されません(一例:TBS「余命1ヶ月の花嫁・乳がん検診キャラバン」の内容見直しを求める要望書提出について http://www.cancernet.jp/kenshin/ )。

時代が近藤誠氏の主張に追いついたとも言えますが、一方で、エビデンスが積み重なり、有効であることが証明されたがん検診もあるのに、近藤誠氏はいまだにがん検診は一律に無効であると主張しています。近藤誠氏が劣化したのか、あるいははじめから主流の逆張りをやってたまたま当たっただけなのか、区別が困難です。

healthsolutionshealthsolutions 2014/08/17 23:12 はじめまして。
追記で当方のブログエントリーをご紹介頂き、ありがとうございました。
「『ニセ医学』に騙されないために」も楽しく拝読させて頂いています。
騙されてしまう人が一定数出てくるのはやむを得ないのですが、書かれているように少しでも疑問に思った人が騙されずにすむような情報を発信し続けていきたいと思っています。

放置医放置医 2014/08/27 15:57 近藤誠については卑劣以外の言葉が思いつきません。
大昔には乳がんなどでそれなりの仕事もしたはずですが、放射線関連でまさかの主張を行っている西尾正道氏と同様に元々逆張り路線でたまたまそれがあたった事もあっただけなのであろうと私は思います。

ルナルナ 2014/10/10 23:58 こんばんは
ナトロム先生 初めて投稿します ルナと申します
はなちゃんのみそ汁という本からネット巡りめぐってこのブログにたどり着きました
ナトロム先生の明朗快活な文章に引き込まれ本買いました 少しずつ読んでます
私は五年前父を肝内胆管がんで亡くしました
見つかったときにはすてに手遅れの状態で黄疸も出て腹膜に転移して腹水も溜まっている状態でした
主治医の先生に延命はしますかと言われて私は治らないのならしませんと言いました 延命しますかと言われた日に急変して父は亡くなったのですが ナトロム先生の本を読んで思ったのが私は延命の意味を良くわかってなかったと思います
たとえ1ヶ月だとしても延命して好きな風景をみたり海鮮料理を食べたり出来たらそれはいい思い出だから 思い出しか持たせてあげられないのが悲しいですが 延命しませんと言った時点で父の命をたってしまったのではと思っています
だからはなちゃんのみそ汁がなぜもてはやされるのかがわかりません
単に検診怠って治療せずに変な方向にいっちゃただけです ドラマも見ましたがそのなかでガンを自力で治した人が出てきてその人が抗がん剤止めちゃったとかいうんです これテレビでしたらまずいよなと思います 私を含め素人が勘違いするかもしれません
近藤氏も安保氏もたくさん本書いてるけど責任持って書いてるのでしょうか 私とか素人だから病気になったら不安になります 素人が病気になったら迷子がどこに行っていいかわからない状態と一緒なんです そんななかで怪しい選択肢かまざるのは引っ掛かってしまうかもしれないから怖いです そういう本を読んで正しい治
療を受けたら治るのに命を落とすことがあってはならないと思います
長文失礼いたしました 文章も読みにくくてすいません

NATROMNATROM 2014/10/11 11:36 ルナさん、こんにちは。コメントありがとうございました。

まず、ルナさんに謝らなければなりません。ルナさんに誤解をさせてしまいました。抗がん剤によって延命する、しないという話と、ルナさんのお父様の主治医が言っていた「延命はしますか」という話は、違うものなのです。

「黄疸も出て腹膜に転移して腹水も溜まって」いて、「延命しますかと言われた日に急変」するような患者さんには、普通は抗がん剤治療はしません。このような患者さんに抗がん剤を使うとかえって命を縮めてしまいます。こう言っては変ですが、抗がん剤治療で生存期間の延長が期待できる患者さんは、治療に耐えられるだけの「元気」がある方なのです。

ルナさんのお父様の主治医が言っていた「延命はしますか」という質問は、抗がん剤治療のことではなく、呼吸や心臓が止まったときに、人工呼吸や心臓マッサージをするかどうかを聞いていたのだろうと思います。

がんの終末期の患者さんに人工呼吸をしても癌が治るわけではありません。普通は数時間から数日の延命にしかなりません。一般的にはがんの終末期の患者さんには、人工呼吸や心臓マッサージといった「延命」治療はせずに、「自然に」看取ることが多いです。

でも、たとえば「死に目に会いたい」と遠くから家族が駆けつけてくる途中だった場合は人工呼吸や心臓マッサージをすることもあります。また、患者さんやご家族の中には「治らなくても一分でも一秒でも長生きして欲しい」と希望する方もいらっしゃいます。そういうこともあって、がんの終末期の患者さんの治療方針を考えるときに、「延命はしますか」という質問をすることはよくあります。

ルナさんの「治らないのならしません」という答えは正しかったと私は思います。私の父がルナさんのお父様と同じ病態だったら、私も人工呼吸や心臓マッサージといった「延命」治療は選びません。

医師の説明はしばしば不十分で患者さんを誤解させてしまいます。今回は「延命」という言葉の意味について説明が不十分でした。ルナさんがコメントして教えてくださったことで、今後の診療では、「延命」という言葉の意味について、なるべく誤解を招かないような丁寧な説明を心がけることにいたします。ルナさんのおかげです。本当にありがとうございました。

ルナルナ 2014/10/11 19:52 ナトロム先生 こんばんは
お返事ありがとうございました お返事読んで涙がつたいました 治せないならしませんと言ったのが父の命をたってしまったのではと思っていたから少し心が楽になりました

ナトロム先生の本とかネットの記事を読んでいて
思うのですが医者の先生が解るように説明するのはそうですが私含め素人も理解しようとしなければならないと思います せっかく解りやすく説明してもらっても意味ないですね
ナトロム先生私を誤解させてしまったといってましたが

ルナルナ 2014/10/11 19:58 上の続きです 私のほうが理解力がなかっただけです 本当にすいませんでした
ナトロム先生素敵な本をありがとうございました続編期待してます

カルストカルスト 2014/11/12 16:42 NATROM様、始めまして。近藤誠氏の事を調べていてこちらにたどり着きました。近藤氏の逸見政孝氏の胃がん手術批判にはうなずけるものがありましたが、最近はやたらと断定的かつ攻撃的だと思います。私の母も近藤氏の本(医者に殺されない47の方法)を購入して感化されたようで困っています。こちらの記事を読んで勉強させて頂きます。ところで、近藤氏監修のコミックの連載が始まりました。売り上げに寄与するのが癪なので斜め読みしかしていませんが、どうやら最近の近藤氏お得意の、他人の論文のつまみ食いなどをやっているようです。これで変な影響を受ける人が増えるのではないかと心配です。
今後もコメントを書かせて頂くかも知れませんが、よろしくお願いいたします。

あ 2016/04/14 03:18 政府も医療費を削減したいから煽っているんだろうね。
産経、読売、日経が書いているものは信用しないようにしている。

NATROMNATROM 2016/04/14 12:14 近藤誠氏に共鳴し、早期乳がんを放置したものの、腫瘍が増大してから手術し、転移が判明しては放射線とホルモン療法を受け、(たしか)16年の経過で死亡した事例があります。(参考:http://blogs.yahoo.co.jp/taddy442000/34724936.html)

これたぶん、早期の段階で標準治療を受けていればかなり高い確率で治癒切除できていたんです。もちろん死亡という結果を招いたのが一番の問題点ですが、医療費という観点からみても、最初に放置したせいでよけいなコストがかかっています。無症状のうちならともかく、症状が出ても放置療法を貫ける人なんてなかなかいません。

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