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cover ■「ニセ医学」に騙されないために

 ホメオパシー、デトックス、千島学説、血液型ダイエット、ワクチン有害論、酵素栄養学、オーリングテストなどなど、「ニセ医学」についての本を書きました。あらかじめニセ医学の手口を知ることで被害防止を。

2015-02-20 「MCSの本物の性質が認識されている公式な報告書」って、どれ?

[]それで、「MCSの本物の性質が認識されている公式な報告書」って、どれ? それで、「MCSの本物の性質が認識されている公式な報告書」って、どれ?を含むブックマーク

代替医療を提唱・実践する組織が、○○医学協会、○○学会、○○研究所、○○医学センターなどを名乗ることがある。慣れない人が公的な組織であると誤解することもあるだろうが、名乗るのは自由である。また、代替医療の組織が医学雑誌を発行することも自由である。組織外のメンバーに読まれるかどうかはともかくとして、論文のようなものを掲載すれば医学雑誌のように見える。なんならグループ内部で査読したことにしてもいい。

たとえばの話、日本ホメオパシー医学協会*1が、見た目の体裁だけは整った医学雑誌を発行することもできる。そのような雑誌に載った総説に「複数の公的な報告書がホメオパシーの有効性を科学的に認めている」と書いてあったとして、読者らは信じるだろうか?

さて、sivad氏は、「もう少し新しい知見を追いましょうね」として、イギリス・アレルギー環境栄養医学協会(BSAENM)の報告書(以下BSAENM報告書)を引用している。



■NATROM氏はどこで道をあやまったのか〜なぜ1994年報告書はMCSや臨床環境医を否定しなかったのか〜 - 赤の女王とお茶を

ちなみに氏は英国の、またぞろ1994年の文献を持ち出してきています。何度もいいますが、もう少し新しい知見を追いましょうね。たとえば英国なら2000年にイギリス・アレルギー環境栄養医学協会(BSAENM)が報告書を出しています。

Multiple Chemical Sensitivity: Recognition and Management. A document on the health effects of everyday chemical exposures and their implications

http://www.bsem.org.uk/uploads/BSEM%20MCS%20Report.pdf

EXECUTIVE SUMMARYの4を見てみましょう。

The genuine nature of MCS has been recognized by officially commissioned reports from independent scientists in the USA and the UK, who have concluded that it is a valid diagnosis and a sometimes disabling condition, although all have stressed the need for further research.

MCSの本物の性質は、米国と英国とでそれぞれ独立した科学者らによる公式な報告書において認識されており、MCSが有効な診断であり、時に重篤な疾患であると結論しているが、すべてにおいてさらなる研究が必要だと強調されている。

そういうことですね。



「MCSの本物の性質は、米国と英国とでそれぞれ独立した科学者らによる公式な報告書において認識されて」いるのだそうである。文脈からは、「化学物質曝露との関係はともかくとして、MCSとされる患者さんの苦痛は本物である」といった意味ではなく、「臨床環境医の主張するように、超微量の化学物質の曝露で症状が誘発される疾患は実際に存在する」という意味だと取れる。ただ、BSAENM報告書の該当箇所には参考文献の提示がなく、「米国と英国の公式な報告書」が具体的にどの文書なのか不明である。

さらに、285編もの長い参考文献のリストがあるにも関わらず、臨床環境医学に批判的な1992年のアメリカ医師会の報告書*2、あるいは1989年のアメリカ内科学会のposition paper*3も含まれていない。また、2000年であれば、すでにMCS(Multiple chemical sensitivity:多発性化学物質過敏症)の別名としてIEI(Idiopathic Environmental Intolerance:本態性環境不耐性症)という、より中立的だとされる呼称が提唱されていたのに、BSAENM報告書にはIEIについてまったく言及がない。そもそも、BSAENM報告書を出したイギリス・アレルギー環境栄養医学協会(BSAENM)なる組織は、どのような性格を持つのであろうか。また、BSAENM報告書が掲載されている雑誌、Journal of Nutritional & Environmental Medicineはどのような位置づけの雑誌なのだろう。

BSAENM報告書BSEM(British Society for Ecological Medicine:イギリス生態医学協会)のウェブサイト内にある*4Our history(我々の歴史)というページによれば、2005年にBSAENMからBSEMに名前が変わっており、事実上同じ組織であることがわかる。さらにさかのぼれば、Clinical Ecology Groupつまり臨床環境医学のグループがその起源である

BSEMは主に代替医療を行っている組織である。BSEMのサイトではBSEMのトレーニングを受けた開業医を検索するメニュー(Find a practitioner)があり、開業医の使用するMethodsを検索条件にできる。これらのMethodsの多くが代替医療である。読者になじみのあるのはホメオパシーだろう。現時点では、検索可能な開業医15人のうち、7人がホメオパシーを使用している。また、BSEMの会長のDr Damien Downingはホメオパシーに擁護的であるとして批判されている*5

「NATROMがまたホメオパシーを持ち出して印象操作している」「ホメオパシーには興味がない」「臨床環境医はホメオパシーだけを研究しているわけではない」などという的外れな批判が予測されるので、あらかじめ反論しておく。私がホメオパシーを例に挙げるのは、ホメオパシーの非科学性が周知されているからに過ぎない。BSEMが代替医療を行っているとする根拠はホメオパシー以外にも多くある。たとえば、"Bio-identical Hormons"や"i.v. Detoxiification"などのBSEMの開業医が用いている他の代替医療を挙げても私の主張は可能である。しかし、それらの代替医療が一体どういうもので、どういう評価がなされているのかをいちいち説明する必要がある。ホメオパシーならそのような説明が不要である。

BSAENM報告書が掲載されたJournal of Nutritional & Environmental Medicineについても話しておこう。これはBSEM(2000年当時はBSAENM)が発行している医学雑誌である。ResearchGateというサイトで調べてみたところ、Journal of Nutritional & Environmental Medicineのインパクト・ファクター(その雑誌に掲載された論文がどれくらい引用されているかを示す指標)はゼロであった*6。ちなみに同サイトによると、1992年のアメリカ医師会の報告書が掲載されたJAMAのインパクト・ファクターは約30、また、1989年のアメリカ内科学会のposition paperが掲載されたAnnals of internal medicineは約16である。両誌ともに数多くある臨床系の医学雑誌の中で5本の指に入る。ただしこれらの数字は近年のものであるので、BSAENM報告書が掲載された2000年ごろは異なる数字かもしれない。しかしながら、Journal of Nutritional & Environmental Medicineがきわめてマイナーな雑誌であることは間違いない。BSEMのメンバー以外にはほとんど読まれていないと私は思う。

それどころか、Journal of Nutritional & Environmental Medicineに掲載された「論文」のほとんどがPubMedで検索できない。PubMedは、医学論文を検索するための世界最大のデータベースである。別に代替医療だからといってPubMedから排除されているわけではなく、代替医療に関する論文も多数検索できる。しかしながら、Pubmedを運営するアメリカ国立医学図書館は、Journal of Nutritional & Environmental Medicineに掲載されるような論文は検索されるに値しないと判断したわけである。PubMedを普段使わない読者には伝わりにくいかもしれないが、そうでない読者は、Journal of Nutritional & Environmental Medicineなる雑誌に学術的価値がほとんど認められていないことをご理解できたであろう。

「MCSの本物の性質」が公式な報告書において認識されていると主張したいのであれば、その公式な報告書を示せばよい。しかし、公的な報告書ではなく、代替医療を行っている組織が発行する、Pubmedにおいて検索されるに値しないとみなされている医学雑誌に掲載された報告書をsivad氏は示した。なぜか。つまりはそういうことである。



関連記事

■「EPAらが臨床環境医を否定できなくなった」という主張は根拠なし

■1994年報告書は多種化学物質過敏症の概念を支持していない

*1:「山口新生児ビタミンK欠乏性出血症死亡事故」において、乳児にビタミンKシロップを与えなかった助産師が所属していた団体

*2http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/1460738

*3http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/2662850

*4:URL:http://www.bsem.org.uk/uploads/BSEM%20MCS%20Report.pdf

*5https://apgaylard.wordpress.com/2008/04/26/homeopathy-and-the-absence-of-evidence/

*6http://www.researchgate.net/journal/1359-0847_Journal_of_Nutritional_Environmental_Medicine

bamboobamboo 2015/02/22 16:30 日本バイ・ディジタルO−リングテスト医学会なんてものもありますしね。
ttp://bdort.kenkyuukai.jp/about/
上記のサイトは m3.com のサイトなのですが、m3.comというのは、そういう会社なんですかねえ。
そういえば、ドクター中松もお手盛り学会を作っていたなあ。

傍観者傍観者 2015/11/17 02:21 http://state-of-our-world-anan1477.blogspot.jp/2013/05/cs6-the-damage-caused-by-misinformation.html

『化学物質過敏症の風評被害について ・ 過去の二重盲検法の問題点……』

まあ、リンク先のPDFファイルは、オーストラリア政府のもので間違いがないのでしょう。オーストラリアのロゴが描かれていましたから…。

私は、それ以上は、言いません。

傍観者傍観者 2015/11/17 02:31 ついでにこちらも

http://state-of-our-world-anan1477.blogspot.jp/2013/05/cs5-the-damage-caused-by-misinformation.html

『化学物質過敏症の風評被害について』

いっそのこと、皆さん、anan1477さんの化学物質過敏症の記事全部隅々まで読んだほうが良いんじゃないですかね?

http://state-of-our-world-anan1477.blogspot.jp/2015/03/Category-Archive.html

TAKATAKA 2015/11/18 20:22  こんにちは。初めにプレゾンテしておきます。私は、「常勝のニセ科学批判批判への道を探求している者」です。
 ちなみに先ほどまでは、「ハイコンテクスト」という言葉と、「最高に『ハイ!』ってやつだ、WRYYY!」という言葉の、語源の関係について調べていました。

 ところで、傍観者さんによる以下の言い回しに私は注目しました。

 >『私は、それ以上は、言いません』

 これは斬新な言い回しだと思いました。
 というのも、他の読者の皆さんから、「だから何? その記事を私達に読ませることによって、NATROMさんの主張に誤りがあることを悟らせたいのかしら?」という感じのツッコミをもらった際に、「この私は、他所で見つけた記事を紹介しただけの者である。NATROMさんに反論したいわけでもなく、かといって賛同するわけでもない、公平無私の紹介者にすぎないのである。よって、諸君が私にツッコミを入れる行為は、全くの的外れな行為だといえる」と返すことが可能だからです。

 「客観的な立場の紹介者であることを名乗りつつ、気がついたら世の全てのニセ科学批判者達に勝ってしまっていた論法」を模索している私にとって、大変参考になった次第です。

OceanBlueOceanBlue 2015/11/19 12:47 傍観者様、OceanBlueと申します。

 11/17 2:21付け記事にの『化学物質過敏症の風評被害について ・ 過去の二重盲検法の問題点……』を紹介されたコメントで、

> まあ、リンク先のPDFファイルは、オーストラリア政府のもので間違いがないのでしょ
> う。オーストラリアのロゴが描かれていましたから…。

と書かれていましたが、リンク先の記事内にPDFファイル、もしくはPDFファイルへのリンクは見つかりませんでした。「オーストラリア政府のもので間違いがない」ことを確認したいので、PDFファイルへの直リンクをご教示いただけないでしょうか。