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cover ■「ニセ医学」に騙されないために

 ホメオパシー、デトックス、千島学説、血液型ダイエット、ワクチン有害論、酵素栄養学、オーリングテストなどなど、「ニセ医学」についての本を書きました。あらかじめニセ医学の手口を知ることで被害防止を。

2015-07-17 過剰診断に関する疑問に答える

[]過剰診断に関する疑問に答える 過剰診断に関する疑問に答えるを含むブックマーク

彫木・環(アベ政治を許さない)(CordwainersCat)さんという方が、「NATROMは救命やQOL向上といった側面は全部無視して、超音波検査の普及によって増えた分を全部過剰診断扱いしているのではないか」という趣旨のツイートをしました。実際のところは、これは誤解に過ぎません。その前後に過剰診断についての疑問もツイートしておられましたので、ここでお答えします。ツイートは、以下のリンク先のTogetterにまとめました。引用はすべて以下のリンク先からです。


■過剰診断についての疑問 - Togetterまとめ


「過剰診断」ですが、少なくとも現代の医学知識では臨床的に過剰診断で無いとすると、事後に疫学的統計的に検証したとして「何がどうなれば、どの部分が過剰診断」なのでしょうか?誰もそれを定義せずに何となくで使ってませんか?発見数が死亡率低下分より大きければ過剰なんですか?

「少なくとも現代の医学知識では臨床的に過剰診断で無いとすると」という部分は意味がよくわかりません。過剰診断の定義は、甲状腺がん検診の文脈では、概ね「治療しなくても症状を起こしたり、死亡の原因になったりしない病気を診断すること」です。誰が定義したのか、というなら、たとえば、Welch and Blackがそうです*1

「何がどうなれば、どの部分が過剰診断」なのか、と言いますと、理想的には無作為化比較試験を行い生涯フォローアップして、検診群における診断数と対照群(非検診群)における診断数の差の部分が過剰診断です。実際にはなかなか無作為化比較試験を行うことは困難ですし、行ったとしても長期間のフォローアップがなされているとは限りませんので、別の方法も使います。一番わかりやすいのが、罹患率と死亡率の経時的変化の観察です。罹患率が増えて死亡率が不変であれば、罹患率の増えた部分が過剰診断だと示唆されます。それ以外にもさまざまな方法があります。どのような方法ががん検診における過剰診断を評価するのに適切か、系統的レビューもなされており、複数のコホート研究や生態学的研究が適切だとされています*2



早めに見つける事によるQOL低下防止は無視ですか?

無視はしていませんが評価は困難です。がん死のみをアウトカムと考えることに対する懐疑自体は正当なものです。甲状腺がん検診が、仮にがん死を有意には減らさないにせよ、将来の肺転移やそれに伴う甲状腺全摘やRI治療を減らし、よってQOL低下を防止するという可能性はあります。しかしながら、甲状腺がん検診がこれらの非致死的アウトカムを減らせない可能性もありますし、むしろ増やす可能性すらあります。検診をしなければ生涯無症状であったのに、見つけてしまった以上は治療介入をせざるを得ないケースもあるからです。

私の知る限り、甲状腺がん検診が非致死的アウトカムを減らすことを示した臨床研究はありません。がん検診の有効性を評価するスタンダードな試験方法である無作為化比較試験が存在しない、というのはかなり自信を持って言えます。症例対照研究やコホート研究については、よく探せばあるのかもしれませんが、少なくとも甲状腺がんの過剰診断の論文で言及されるような重要な研究はないようです。

効果があるかどうかわからない薬が漫然と使用されるべきではないのと同じように、効果があるかどうかわからないがん検診が漫然と行われるべきではありません。甲状腺がん検診を推進したいのであれば、何らかの方法で(理想的には無作為化比較試験、困難なら症例対照研究やコホート研究で)有効性を評価するべきです。



一生涯、静かにしてるであろう分まで切ってしまってたら「過剰診断」ですか?

その通りです。定義上、一生涯、静かにしてるであろう分まで切ってしまったら過剰診断です。細かいことを言いますと、その場合は過剰診断、かつ、過剰治療です。「一生涯、静かにしてるであろう分」を診断し、治療はせずに経過を観察した場合は、過剰治療にはなりませんが、過剰診断にはなります。治療した場合ほどではありませんが、経過観察する場合でも、疾患に対する不安や検査のコストなどのデメリットが発生します。



どことどこを比較したら「一生涯静かにしてる筈の癌まで切ってしまった」事が分かるんですか?比較しようとすると集団や時代が異なるのに。

「どことどこを比較したら分かるのか」については、最初の回答を参照してください。甲状腺がん検診について無作為化比較試験が施行されていない以上、過剰診断が生じているとする研究になんらかのバイアスが入り込んでいるのではないか、という懐疑自体は正当なものです。たとえば、「罹患率が上昇し、死亡率は不変であるから過剰診断が存在しているというが、医療被曝等の外的要因により真の罹患率が上昇し、かつ、早期発見効果や治療法の進歩によってその分の死亡率上昇が打ち消し合っているとしても説明可能ではないか」というものです。

しかしながら、成人の甲状腺がんの罹患率上昇については、かなりの確度で主因が過剰診断であると言えます。韓国においては甲状腺がんの罹患率は15倍になりましたが、死亡率は相対的にはほとんど変化していません*3。国民全体における真の罹患率を15倍にするような外的要因はきわめて考えにくいですし、もしそうだとして、その15倍もの罹患率上昇に伴う死亡率上昇をちょうど打ち消し合うように甲状腺がん検診がたまたま開始されたなんてことはさらにありそうもないです。

アメリカ合衆国では罹患率は3倍で、やっぱり死亡率の変化は乏しいです*4。これもたまたまでしょうか。韓国においては強く、アメリカ合衆国においては比較的弱く、真の罹患率を上昇させる要因があり、それぞれの国において、ちょうど死亡率の上昇をキャンセルするぐらいの検診が行われたのでしょうか。他の国は?「真の罹患率上昇と検診による死亡率低下」説が正しければ、あまり検診を行わなかったため死亡率が急上昇した国や、外的要因が弱かったけれども検診を積極的に行ったために死亡率が急低下した国があってもよさそうなのに。

「真の罹患率上昇分がゼロである」と言っているわけではありません。専門家の間では、甲状腺がんの罹患率上昇が過剰診断だけで説明可能なのか、それとも過剰診断に加えて別の要因も存在するのか、について議論があります*5。しかし、過剰診断が無いと主張している専門家を私は知りません。観察研究ではどうしてもバイアスは入りますが、それを考慮してもなお、過剰診断の存在は明らかです。これを疑うのであれば、他の観察研究による知見、たとえば放射線被曝による発癌についても疑うべきでしょう。

「早期発見・早期治療による、がん死やQOL低下の予防がゼロである」と言っているわけでもありません。甲状腺がん検診によるメリットはあるかもしれませんし、ないかもしれませんが、それとは独立して過剰診断は存在します。超音波検査による一律の成人の甲状腺がん検診を積極的に推進している専門家は私の知る限りではいませんが、その理由は「メリットがゼロ」ではなく、「メリットが不明。もしメリットがゼロでないとしても、デメリットと比較してきわめて小さい」というものでしょう。


さらに厄介なのは恐らく話が確率的だと言う事です。数パーセントの癌死を減らすために数十パーセント切除手術が増えたとしたら、それは本当に過剰診断で過剰手術なんですか?話が確率的で誰にも未来(癌の成長)が予見できないのに?

数パーセントのがん死を減らすために数十パーセント切除手術が増えたとしたら、その一部は過剰診断で過剰手術です。話が確率的で誰にも未来(癌の成長)が予見できないからこそそう言えます。■「過剰診断」とは何かで紹介した仮想的な乳がん検診の場合では、2%(100人中2人)のがん死を減らすために、3%(100人中3人)の治療介入が増えました。増えた分の3%は過剰診断で過剰治療です。


f:id:NATROM:20150324164936j:image

仮想的な癌検診の例


「過剰診断が存在するかどうか」という問題と、「治療介入を行うべきかどうか」という問題が混同されているのかもしれません。乳がん検診や子宮頸がん検診は、過剰診断が存在しないから推奨されているのではなく、過剰診断が存在するけれどもがん死を抑制することが証明されているから推奨されているのです。診断時点では「話が確率的で誰にも未来(癌の成長)が予見できない」ため、過剰診断かもしれないけれども治療するのです。


いろいろ総合して考えると、要するに「これまでよりたくさん発見して切除手術したら」その分をすべて過剰診断と呼ぼうとしてませんか?それが命を救う事に繋がろうが、QOLを上げようが関係無く。

NATROMさんの発言とか見てるとそう考えてるとしか思えないんですよね。超音波検査が普及して発見、手術数が増えた分はすべて「過剰診断」の分類に入れてしまってる。そこから真の増加分を差し引いたとしても、その手術によって救われる命とかQOL向上などの成果の側面は全部無視して「過剰診断」扱いしてるような気がするんですが、違いますか?

以上、ご説明したように、違います。気のせいです。


なお、本論の主張はすべて成人の甲状腺がんについてのものです。福島県における子供の甲状腺がんについては、当てはまることもあるでしょうし、当てはまらないこともあるでしょう。「福島県において、実際には被曝によって真の甲状腺がん罹患率上昇があるにも関わらず、国や東電が責任逃れのために過剰診断ということにしてごまかしてしまうのではないか」という懐疑自体は正当なものです。しかしながら、その懐疑が強すぎるあまりなのか、一般的な過剰診断の議論すら理解しようとしない人も一部にはいらっしゃいます。福島県の現状についての健全の議論のためにも、過剰診断についての標準的な考え方が広く理解されることを願っています。何かご質問のある方は、コメント欄で質問していただけたらお答えいたします。


関連記事

■韓国における甲状腺がんの過剰診断

WHWH 2015/07/17 16:31 非常にわかりやすかったです。ありがとうございます。

nn 2015/07/21 13:57 元質問者の人は「早めに見つけるデメリットは無視」しているようですが、過剰診断で甲状腺切除した場合のQOLの低下については、「甲状腺癌の術後合併症」とかで検索するとここに書ききれないくらい出てきます。医学的なことを除いても、「"癌"とされるものを切って首に痕がある」という事実や不安は現実問題として保険やら就職やら結婚やらの面で一生つきまといます。過剰手術されても生命まで失うことは今時めったにないでしょうが、全く不必要な苦しみを一生涯受けることは、統計を持ち出すまでもなく確定しています。「生きてる間のQOL低下を無視」しているのは一体どっちでしょうかね。

ところで、今sivad氏のブログが「過剰診断ではない!」と長文ポストしてるの見つけましたw 彼が自信満々に紹介しているリンク先の論文1個辿ったら、もう「過剰診断です!」と明白に書いてあって(10秒で見つけた)笑っちゃいました。彼は記事をよく読めとか吼えてた記憶がありますが、もう文章の流れとか一切無視して自分に都合よく曲解できる部分を恣意的に抜き出し、英語の読めない人だけ騙すスタンスで開き直ったのかな。近藤誠氏に似てきましたね。

NATROMNATROM 2015/07/22 08:32 sivad氏にとっては福島県の子供の甲状腺癌が本丸であって、「韓国の成人の甲状腺癌とは異なる」とすればいいだけの話のように思えるのですが、致死率と死亡率の混同のような誤りを認めたくないという心理が働いているのでしょうか。本当に近藤誠氏もこんなだったのかもしれません。

過小評価はよくない過小評価はよくない 2015/07/28 01:15 過剰診断のモデル図で、乳がん死を半分の2名に減らし、過剰診断が3名としていますが、
実際は検診の効果はもっと小さく、過剰診断問題ははるかに大きいです。

コクランレビューなどによると
乳がん死が5名→4名に1人減らすかわりに、
乳房を切られる過剰診断が5名
偽陽性で生検を受けたり不安にさせられる人が100名
さらに、乳癌死を仮に減らせても、総死亡は変わりません。

この図は過剰診断を過小に評価しており問題だと思いました。

NATROMNATROM 2015/07/28 01:58 ご指摘はもっともですが、『「過剰診断」とは何か』のエントリーの注、「説明のために単純化した上に仮想的な数字を使用した。当たり前だが実際に行われた臨床試験の結果の解釈はもっと複雑であるし、こんなには乳癌死を減らさない」( http://d.hatena.ne.jp/NATROM/20150324#20150324f2 )も参照していただければ幸いです。

asuhoasuho 2015/08/06 14:56 はじめまして。検索からここにたどり着きました。
時間はかかりましたが楽しく読ませて頂いてます。
あの先生がいうことにはこんなトリックがあったんだ、とか勉強になります。

私はアトピー持ちだったのですが、アトピー関連もトンデモさんが多数いらっしゃいます。
特にステロイド軟膏に関係することはかなり凄いですよ。
トンデモさんリストのコメントに、代表的な医者を書かせてもらったので参考にどうぞ。
アトピーはニセ医学の宝庫です。全く効果が無いような民間療法が当たり前のように通用しています。

uchitode2014uchitode2014 2015/08/14 21:49 過剰診断が存在する場合、診断基準を変更するのでしょうか。
それとも、「治療介入を行うべきかどうか」の基準を変えるのでしょうか。

>「過剰診断が存在するかどうか」という問題と、
>「治療介入を行うべきかどうか」という問題が混同されているのかもしれません。

NATROMNATROM 2015/08/16 10:40 uchitode2014さん、コメントありがとうございました。

>過剰診断が存在する場合、診断基準を変更するのでしょうか。
>それとも、「治療介入を行うべきかどうか」の基準を変えるのでしょうか。

過剰診断が存在し、治療による弊害が利益を上回りそうな場合は、診断基準ではなく、治療介入の基準を変えるというのが一般的だと思います。前立腺がんや甲状腺がんについては、腫瘍の大きさや患者の年齢によっては、がんと診断しても必ずしも積極的な治療を行わなくなりました。

ただし、そうは言ってもがんという診断名がつくと不安や誤解を招くので、治療しなくても害を及ぼしそうにない「がん」は呼び方を変えようという提案もなされています。

uchitode2014uchitode2014 2015/10/04 16:19 「過剰診断という問題が存在する」という話かと思って読んでいましたが、過剰診断そのものが問題というわけではないということでしょうか。

>「過剰診断が存在するかどうか」という問題と、
>「治療介入を行うべきかどうか」という問題が混同されているのかもしれません。

NATROMNATROM 2015/10/04 22:55 >「過剰診断という問題が存在する」という話かと思って読んでいましたが、過剰診断そのものが問題というわけではないということでしょうか。

「過剰診断という問題が存在する」、をより正確に言えば、「過剰診断によって生じる不利益が、検診による利益より大きいという問題が存在する」になります。

過剰診断によって生じる不利益は、たとえば、治療に伴う苦痛や、がんと診断されることによる不安です。検診による利益は、がん死や進行がんの減少です。成人の甲状腺がん検診は、過剰診断の不利益はしっかりとある一方で、検診による利益は存在するかどうかも明らかではなく、仮に利益があったとしても相対的に小さいのです。

大腸がん検診も、多くの過剰診断を引き起こします。将来、症状や死亡を引き起こさない大腸ポリープが切除されています。しかし、大腸がん検診については「過剰診断という問題が存在する」とあまり言われません。大腸ポリープ切除術に伴う苦痛は小さいものですし、「がん」と診断されるわけではないので患者さんの不安も大きくありません。よって、過剰診断によって生じる不利益は小さいのです。

そう考えると、「過剰診断そのものが問題というわけではない」というご指摘は的を射たものと言えましょう。

室井室井 2017/04/05 11:55 「過剰診断そのものが問題である」と強く主張をする方を見かけるのですが、この場合は、文脈から判断して「過剰治療」のことだと解釈すべきですよね。不安の問題は適切に「大したことではないこと」を説明すれば良いでしょう。そう言えない場合というのは、「過剰診断の可能性が低い」ということです。

というより、「過剰診断というのものがあるのか?」、言い換えれば「そのような概念が適切であるか?」という問題があるでしょう。血液型がA型であることを診断した場合は、これは「将来に渡って、問題を引き起こさないものを診断した」訳ですから過剰診断です。この概念に意味があるようには全く思われません。

あるいは、「将来に渡って問題を引き起こさないものを、問題を引き起こす可能性が高いと診断をすること」などと適切な定義に変更するべきでしょう。直接的な言い方をすれば、「過大危険評価」となります。

NATROMNATROM 2017/04/05 12:40 『不安の問題は適切に「大したことではないこと」を説明すれば良い』では済まないんです。説明をすれば納得する人もいるでしょうが、納得できない人もいるんです。それから血液型は「病気」じゃありませんし「診断」でもありません。

ublftboublftbo 2017/04/09 08:36 今日は。

最近、高野徹氏@阪大 の説(芽細胞発癌説)に着目する向きもあるようですが、これについてはどのようにお考えでしょうか。

高野氏の論は、甲状腺がん発生のメカニズムに関するもので、たとえば韓国の例を持説で整合的に説明出来る、あるいは、福島の事例にも適用出来る、との主張と見る事が出来ますが、現状では、がんについての定説を覆そうとするような新奇の学説のようで(この理解で間違い無いでしょうか)、興味深いものではあっても、いまの時点でそれに飛びつくのは少々早計なのではないかな、と感じます。

いま重要なのは あくまで、検診をたくさんおこなってきた国における観察研究によるエビデンスに基づいて、若年者の甲状腺がんの自然史について推論し、それを福島の事例に補外し考察していく、事であって、ひとまずそれを説明するメカニズムは措いておく(専門家に任せて、飛びつかない)のが良いのではないかなと、思っています。

NATROMNATROM 2017/04/10 22:39 正直なところ「芽細胞発癌説」の重要性についてよくわかりません。芽細胞起原のがんもあってもおかしくはないでしょうが、多段階発癌説と並び立たないものでもないと思います。幼少期から「甲状腺芽細胞に由来する若年型」の甲状腺がんが存在するとして、多くは増殖能は頭打ちになっているものの一部は中年期以降に増殖能を獲得して臨床的ながんに進行するというようなことはありえるのではないでしょうか。

論文をよく読んだらこうした疑問に対する答えは用意されているのかもしれませんが、現時点では芽細胞発癌説は定説に挑戦する位置づけの学説のようで、正直、論文を読みこんで理解しようとする気になりません。病理学者とか分子生物学者とかの間での今後の検討に期待しつつ、臨床医としては、現時点で分かっている範囲内で最善を尽くすように努めるしかありません。

ublftboublftbo 2017/04/10 23:57 今晩は。

>NATROMさん

ありがとうございます。
この所ちらほらと、高野氏の説を紹介しているのを見かけるので、見解をうかがった、という次第でした。

「メカニズムに飛びつく」というのは、これまで散々、色々の議論で見てきたものですので、たとえそれが展望のあるものであっても、現象を説明する理論的根拠として早々と結びつけるのは好ましく無いのでは、と考えています。

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