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cover ■「ニセ医学」に騙されないために

 ホメオパシー、デトックス、千島学説、血液型ダイエット、ワクチン有害論、酵素栄養学、オーリングテストなどなど、「ニセ医学」についての本を書きました。あらかじめニセ医学の手口を知ることで被害防止を。

2016-12-26 水素水の不幸

[]水素水の不幸 水素水の不幸 - NATROMの日記 を含むブックマーク

国民生活センターが市販の水素水をテストし、含まれている水素が表示よりも濃度が低いかったり、あるいは検出されなかった商品もあると発表した。また、健康保持増進効果を謳うものもあり、法律に抵触するおそれのあるため事業者に対し表示の改善を要望している。


■容器入り及び生成器で作る、飲む「水素水」−「水素水」には公的な定義等はなく、溶存水素濃度は様々です−(発表情報)_国民生活センター


水素水ブームが終わりつつあるように見える。完全になくなりはしないだろうが、ぼちぼち次の何かが流行る頃ではないだろうか。現時点では、病気の予防や健康の維持の目的で健康な人が水素水を飲んで何らかのよい効果があるという臨床的証拠はない。ただ、何かいいことがあるかもしれないという可能性にお金を費やすのは個人の自由である。

私自身は、水素水に対してあまり積極的な批判はしてこなかった。理由の一つは、水素水は標準医療を否定せず、ほぼ安全で、安価だからである。普通の水と比較すると高価だが、数千円からときには数百万円かかる他の「ニセ医学」と比較すれば安いものである。しかし、個人個人の負担する費用は安いが、ここまでのブームになると社会全体でのコストは馬鹿にならないかもしれない。

水素水を積極的に批判しなかったもう一つの理由は、水素水に効果がある可能性を完全には否定できないからである。『「ニセ医学」に騙されないために』では、体質改善や病気を治すと称する「水」に対する批判に一章を割いているが、アルカリイオン水と水素水を例外にした。アルカリイオン水は胃腸症状を改善させるとする限定的な証拠がある。

水素水については複数の臨床試験が進行中で、終了したものもある。■UMIN臨床試験登録システム(UMIN-CTR)で検索すると、2016年12月26日時点で18件の臨床試験が登録されている。中には質の高いデザインの二重盲検ランダム化比較試験もある。水素水に見込みがあると考えられているからこそ、コストをかけて臨床試験が行われているのだ。

臨床試験登録システム上で2件だけ結果の記載があった。UMIN試験ID:UMIN000005779は、健常者成人を対象に「水素ガスを溶解させて製造された水製品(健康飲料)の飲用により、被験者の酸化ストレスが減少するかを明らかにする」ことを目的に施行されたが、水素水群と対照の水道水群の比較で「血中・尿中の酸化ストレス指標物質に有意な変化なし」であった。

UMIN試験ID:UMIN000007497では、「水素水摂取によりパーキンソン病の進行抑制効果及び症状改善効果が得られるか検討」したところ、有意な差を認めた*1。UPDRSスコアというパーキンソン病の症状を点数で評価したものが、水道水群は+4.5と悪化したのに比べ水素水群では-1.0と改善した。臨床試験登録システム上では結果は未公表となっているが、Pubmedで検索すると論文になっている*2。これは予備実験なので、サンプルサイズを大きくして追試が行われているようである*3

水素水の飲用がパーキンソン病の症状改善に本当に有効かどうか、個人的には懐疑的な立場に立つ。パーキンソン病に酸化ストレスが関与するのは確かなようであるし、水素分子によって酸化ストレスを軽減すれば効果が期待できるというのもわかる。一方で、水に溶けた少ない量の水素でも効果が出るのだろうか。臨床試験を数多く行えば、たまたま偶然に有意差が生じることもあるのでは。

しかし、結局のところ、やってみなければわからないのが臨床試験である。水には水素はほとんど溶けず水素水に含まれる水素の量が少ないとしても、毎日長期間摂取すれば効果があるという可能性もある。パーキンソン病に対する水素水の効果は追試の結果を待つしかない。他の治療法と同じく、良い結果が出れば臨床に応用されるだろうし、結果が出なければなんとなく忘れ去られるであろう。

ここまで読まれて、ちまたで言われているほど水素水はニセ科学的ではなく、意外に期待が持てると感じた読者もいるであろう。水素水の不幸は、臨床的に効果が確認される前に、万能的な効果を期待されて市場で販売されたことにある。パーキンソン病に効果があるかもしれないという話と、健康な人が水素水を飲んで体によいかという話はぜんぜん別である。

悪徳業者が勝手に効果を謳って水素水を販売したのであれば、研究者側は被害者である。しかし、水素水の場合、指導的な立場の研究者である日本医科大の太田成男教授が積極的に水素水ビジネスに関与し、臨床的証拠に乏しいまま「花粉症が軽くなる」「寝覚めがよくなる」「冷え性が改善する」といった宣伝に協力している。控えめに言って軽率である。根拠なく「効果が科学的に証明された」と主張すれば、ニセ科学と言ってもいいと思う。

水素水ブームが去り、水素水の効果があるのかないのか、あるとしたら何に対してどれぐらいの効果があるのか、正確に評価され公表されることを期待している。



外部リンク

■水素水、「ニセ科学」と切り捨ててはいけないが、エビデンスありとは言い難い | FOOCOM.NET

■【水素水】日本医科大の太田成男教授の主張には明らかな誤認がある 公益財団法人食の安全・安心財団理事長・唐木英明(東大名誉教授)(1/3ページ) - 産経ニュース



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■「ニセ医学」についての本を書きました

■何でも治る超ミネラル水。野島尚武博士が熱い!

*1:"The total UPDRS score of the H2-water group (n = 9) improved-1.0 (median), -5.7+- 8.4 (mean +- SD)], whereas that of the placebo group (n = 8) worsened [4.5, 4.1 +- 9.2]. Despite the minimal number of subjects and the short duration of the trial, the difference was significant (P < 0.05). "

*2https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/23400965

*3https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/27176725

kassykassy 2016/12/26 17:52 最初、太田成男教授を知ったときは、真面目に水素水を研究していて、
この人がいる限り水素水をニセ科学とは呼べないなと思っていました。

しかし、安保徹氏と対談本を出したり、だんだん怪しげになってきた感
じです。それとも、もともと、怪しげだったのでしょうか。

NATROMNATROM 2016/12/26 18:01 研究者の中には、必ずしも証拠に基づかない仮説を強く信じこんで研究を進めるタイプの人もいます(ライナス・ポーリングがそうだったと聞きます)。太田成男教授もそういうタイプである可能性があります。ビジネスをやられるとこうして問題になりますが、そうでなければ盲信してガンガン研究するほうが成功する確率が高いかもしれません。

JamesJames 2016/12/28 01:19 順天堂の研究ですが,水素水といっても特注で高濃度の水素水をカプセルにして内服出来るようにしているそうです.市販の水素水は濃度が低すぎて話にならないということでした.

水素水については動物実験レベルで有効性をしめす論文があるのも話をややこしくしている原因かもしれません.

NATROMNATROM 2016/12/28 08:42 順天堂大学のパーキンソン病の臨床試験では「水素水はエコモインターナショナル株式会社のアキュエラブルーにより各患者宅で生成した電解高濃度水素水(1.6ppm)を48週間飲用する」"The subjects should make 1000 ml of molecular hydrogen water which contains 1.6 ppm dissolved hydrogen by Aquerable, and consume for 48 weeks."とあります。なぜか日本語のほうには量の記載がないですが1000 mL、つまり一日1リットルです。

1.6 ppmが事実なら市販商品と比較しても高いですが、それでもとびぬけて高いわけではありません。アルミパウチ商品でも1.4〜1.5 ppmのものもあります。「エコモインターナショナル株式会社のアキュエラブルー」についても、国民生活センターなどの第三者が検証した数字があればいいのですが。

NATROMNATROM 2016/12/28 08:56 個人的には水素水の濃度ではなく、盲検がきちんと達成されていたかが気になります。

対照は「電解高濃度水素水を含まない水は偽器械により生成し48週間飲用する」です。二重盲検なので患者さんは自分が飲んでいるのが水素水か「ニセ水素水」かわからないはずですが、ときに盲検は破れます。偽器械の出来が悪く、患者さんが「ニセ水素水」だと気づくようなら、デザインとしては二重盲検試験ですが、実際にはそうではないことになります。

パーキンソン病の研究は、アウトカムを自覚症状で評価していますので、盲検が破れれば結果は偏りやすいです。「盲検が破れていない」ことも示す必要があるはずですが、論文はサマリーしか読んでいませんので、そこを検討しているかどうかわかりません(うがった見方をすれば、盲検が破れれば水素水優位の結果が出やすくなりますので、試験するほうも「絶対に見破られることのない偽器械をつくろう」という動機が弱いのです)。

追試と思われるUMIN000010014では、対照に偽器械を使わず、「水素水5.0より生成した水素水を自宅に毎週送付」「偽水(水素分子を含まない窒素充填水)」を比較しています。盲検がより破れにくいための工夫かもしれません(もちろん、ほかの理由かもしれません)。

kassykassy 2017/01/06 09:10 UMIN000010014ですが、最終更新日から1年以上経過しています。

スタートが2013年なので結果は出ていると思うのですが、発表されていないの
でしょうか。それとも、大した結果になっていないので発表されずなのでしょ
うか。良い結果なら、すぐに発表されると思うのですが。

しかし、自宅に郵送して飲んでもらうって、信頼性が低いように感じます。

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