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cover ■「ニセ医学」に騙されないために

 ホメオパシー、デトックス、千島学説、血液型ダイエット、ワクチン有害論、酵素栄養学、オーリングテストなどなど、「ニセ医学」についての本を書きました。あらかじめニセ医学の手口を知ることで被害防止を。

2018-04-30 ネット時代の医療情報との付き合い方

[][]『健康を食い物にするメディアたち ネット時代の医療情報との付き合い方』 『健康を食い物にするメディアたち ネット時代の医療情報との付き合い方』 - NATROMの日記 を含むブックマーク

cover■健康を食い物にするメディアたち ネット時代の医療情報との付き合い方 朽木 誠一郎 (著)



私は「WELQ問題」にぜんぜん気づいていなかった。WELQ問題とは、「一部上場企業のディー・エヌ・エーが、グーグルなどの検索エンジンを攻略し、ウソや不正確な情報を、検索結果上位に大量に表示させていたことが発覚したもの」(P11)だ。私は日常的に医学用語で検索しており、WELQが上位に表示された検索結果もきっと目にしていたはずなのだが、おそらく意識せずに無視していたのであろう。ネット上の医学情報は玉石混交だが、慣れると検索結果を一瞥すれば、信頼できそうかある程度は判断できる。しかし、必ずしも患者さんも同じように判断できると限らない。

WELQは長文の記事を大量に公開する方法で検索上位を獲得していた。検索上位に不正確な情報が大量に表示されていれば、それを信用してしまう患者さんもいるだろう。このWELQ問題を最初に指摘した*1のが、本書『健康を食い物にするメディアたち ネット時代の医療情報との付き合い方』の著者である朽木誠一郎さんだ。

『WELQ問題を指摘するためには、「健康についての情報がウソや不正確なものであること」と「その情報を上位に表示させるテクニックに問題があること」の両方を理解している必要』がある(P11)。著書の朽木さんは、医学部を卒業後、医師にはならずにネットメディアのライターになられた。その経験がWELQ問題にいち早く気づき、指摘することにつながったのであろう。複数の分野をつなぐ、ある意味学際的な役割を果たしたのだと言える。

朽木さんの指摘の後のネットメディアの反応は早かった。私もささやかながら■ネットの“ニセ医学”に要注意! 自衛手段を現役の医師に聞いてみた - トゥギャッチという記事に協力させていただいた。近藤誠氏のような問題のある医師を批判することがあまりない医療業界とはえらい違いである。WELQ運営は「自分たちはプラットフォームである」「情報発信はユーザーが勝手にやったものである」として批判をかわそうとしたが、外部ライターに記事の書き方を支持するマニュアルもあったことがバズフィード・ジャパンのスクープで明らかになった(P79-80)。これらの指摘をうけて2016年末にディー・エヌ・エーはWELQの全記事を非公開とし、責任者が会見で謝罪するに至った。朽木さんの指摘からほんの3ヶ月間程度である。詳しくは本書を参照していただきたい。

もちろん、WELQが閉鎖したからといってネット上の医療情報の問題が解決したわけではない。「本当の戦いはWELQの後」(P92)である。WELQ後にも不正確な医療情報を含むページが上位に表示されていた。しかし、グーグルのアップデートによってそうしたページは順位を落とすなど、少しずつ改善はしている。インターネットの自浄作用は確かにあると感じる。

とはいえ、ネット上から不正確な医療情報を撲滅することはできない。また、仮に可能だとしても撲滅すべきではない。多様な情報にアクセスできることもネットの価値の一つであるからだ。そのネット上の多様な医療情報のうち、信頼性のあるものの見分け方、声の上げ方の提案も本書でなされている。まさしく副題にあるように「ネット時代の医療情報との付き合い方」についての本である。



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■『生態学と化学物質とリスク評価』

■因果推論の考え方を学ぶ。『「原因と結果」の経済学』

2017-08-18 因果推論の考え方を学ぶ。『「原因と結果」の経済学』

[]因果推論の考え方を学ぶ。『「原因と結果」の経済学』 因果推論の考え方を学ぶ。『「原因と結果」の経済学』 - NATROMの日記 を含むブックマーク

cover■「原因と結果」の経済学―――データから真実を見抜く思考法 中室牧子 (著), 津川友介 (著)



相関関係があるからといって必ずしも因果関係があるとは限らない*1。テレビを長時間見ている子どもほど学力が低いとしても、テレビの視聴が低い学力の原因とは限らない。たとえば、テレビ視聴そのものは原因ではなく、長時間のテレビ視聴を許すような家庭環境が低い学力の真の原因なのかもしれない。

因果関係の有無を検証するのはしばしば困難である。テレビの視聴以外の、家庭環境を含め条件がすべて同一で、唯一の違いがテレビ視聴時間だけの子どもの学力を比較できればよいが、通常はそのような比較は難しい。十分な数の子どもたちをランダムに二群に分け、テレビの視聴時間を減らした介入群と視聴時間が変わらない対照群との間に学力に差が出るかどうかを比較するランダム化比較試験を行えばいいが、コストも時間もかかる。ランダム化比較試験ができない場合でも因果推論は可能である。本書では、テレビ視聴と学力の因果関係を「操作変数法」で検証した研究を紹介している。

操作変数とは「結果には直接影響を与えないが、原因に影響を与えることで、間接的に結果に影響を与える」ような第3の変数のことである(P115)。アメリカ合衆国においてテレビが普及しつつあった1948年から1952年までの期間、新規のテレビ放送免許の凍結が行われた。これを利用し、1948年以前からテレビを視聴できた群と1952年以降しかテレビを見ることができなかった群とを比較できる。この場合、操作変数は「テレビの所有」であり、「子供の学力」には直接影響を与えないが*2、「テレビの視聴」には影響を与える。この研究ではテレビを見ていた子どもたちのほうが、わずかであるが学力テストの成績が良かったことが示された。

書名に「経済学」とあるが、因果推論は経済学だけではなく医学の分野でも重要である。たとえば「喫煙は肺がんの原因かどうか?」という問いは因果推論そのものである。治療についても同様だ。「高血圧の患者は降圧薬を内服すべきか?」という問いは「降圧薬内服は良好な予後の原因かどうか?」という問いに変換できる。

本書では因果推論の方法として、ランダム化比較試験や操作変数法のほか、「差の差分析」「回帰不連続デザイン」「マッチング法」「重回帰分析」などが紹介されている。マッチング法と重回帰分析は医学の分野でもよく使われるが、そのほかの方法はあまり馴染みがない。操作変数法も医学の分野で馴染みがないと当初は思ったが、よく考えてみると、「メンデルランダム化解析」という手法は操作変数法であるように思う。今後、経済学での手法が分野を超え医学の分野でも応用されるようになるかもしれない(というか応用されているが私が知らないだけかもしれない)。



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■『生態学と化学物質とリスク評価』

*1:本書では「相関関係」を「2つのことがらに関係があるものの、その2つは原因と結果の関係にないもの」という狭い意味で使用しているが、ここでは因果関係がある場合も含んだ広い意味での相関関係を指す

*2:当時、テレビを所有していたかどうかは、家庭環境などではなくテレビ放送されている地域に住んでいるかどうかでほとんど決まるため

2017-08-17 『生態学と化学物質とリスク評価』

[][]『生態学と化学物質とリスク評価』 『生態学と化学物質とリスク評価』 - NATROMの日記 を含むブックマーク

cover■生態学と化学物質とリスク評価 (共立スマートセレクション) 加茂 将史 (著)



生態学と生態リスク評価はだいぶ違うものらしい。本書は基本的にはリスク評価、とくに生態リスク評価の方法の解説であるが、ちょいちょい挟まれる著者の経験が興味深い。著者の加茂将史さんは生態学が専門で理学出身だ。一方で、リスク評価は工学的な考え方をするそうである。

リスク評価は工学の世界で誕生しました.理学者は「飛行機がなぜ飛ぶのか」を知ろうとします.工学者は「どうすればちゃんと飛ぶ飛行機を作ることができるか」を考えます.「なぜ飛ぶのか」といった原理はさておいて,とにかく安全に行って帰ってくる飛行機を作ることが最大の目的なのです.化学物質の影響なんて,細かく詰めていけばわからないことだらけです.わからないことはわからないというべきであって,わからないから研究を行うのである.何か主張したければまず証拠を示せ,というのが理学的な発想です.その発想からすると,わからない世界にあえて踏み込んでいくリスク評価の方法論は危なっかしいものに思えます.工学的な発想と折り合いをつけること,これが,理学出身の私が超えなければならないルビコンでした.(はじめに)

強いて言えば、基礎医学が理学的で臨床医学が工学的であるようなものか、とも思ったが、基礎医学と臨床医学は分野間の交流が密である。臨床経験のある基礎医学者はざらにいるし、臨床医であっても博士号を基礎医学の分野で取ることもよくある。ところが,生態学と生態リスク評価では「お互いが思っている『生態』という言葉の意味が違いすぎて,話が通じない」ほどだったそうだ。

生態学を学んできた著者は生態リスクの基礎知識を知らないゆえに、苦労もするし悩みもする。一方で、生態リスク評価村の住民は生態学村での基礎知識を知らない(P51)。生態学を学んだ人にとっては当たり前のことも生態リスク評価分野ではそうでもなかったりした。分野間に断絶があることに気づき、生態リスク評価分野においては新しい発想である「個体群の維持が困難となる濃度での種の感受性分布」についての研究を行い、高い評価を受けた。まさに「その世界の常識を知らないことがよい方向に働いた幸運な事例」(P74)である。

現代科学は各分野の専門性が高く、そのぶん、隣がなにをしているのかよくわからない。分野をまたいだ学際的な発想が進歩を促すのであろう。私はただ読むだけだが、たまには違った分野の本を読むのも面白い。本書を読まなければ、生態学と生態リスク評価の違いなんて知らないままだったに違いない。



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■食の安全や健康情報の「うんちく話」

2017-08-16 食の安全や健康情報の「うんちく話」

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■効かない健康食品 危ない自然・天然 (光文社新書) 松永 和紀 (著)



松永和紀さんの新刊。ちなみに和紀は「かずのり」ではなく「わき」と読む。本書のプロフィールによれば、毎日新聞社の記者として10年間働いた後に退職し、科学ジャーナリストとして活動を開始した。最近では、BuzzFeedNewsに載った■<偽装豆腐>という間違いだらけの指摘にこそ注意!という記事で注目を集めた。

本書では食の安全や健康情報の分野のさまざまな話題が扱われている。水素水、ブルーベリー、ウコン、酵素ドリンク、グルテンフリー、トランス脂肪酸などなど。各項目は数ページで、冒頭に数行のサマリー、末尾に1〜2行のチェックポイントがついている。たとえば水素水の項目のサマリーは

「抗酸化作用がある」「がんに効く」「糖尿病が改善する」など、水素水のさまざまな”効能”が話題です。でも、「効かない」「根拠がない」と批判する科学者も目立ちます。どちらを信用すべきでしょうか?

答えは今のところ、「効き目の根拠は、ほとんどなし」です。水素は体内の大腸でも大量発生しており一部は血液中を循環しています。それに比べ、水素水として口から飲める量はごくわずかです。

チェックポイントは

「効く成分」が入っていなくても、期待が効き目に結びつく「プラセボ効果」にご注意。

といった具合。一項目が長くないので好きなところ、興味のあるところだけスパっと読める。

書名の「危ない自然・天然」は、肉の生食、浅漬けや冷やしキュウリによる腸管出血性大腸菌の感染、ヒジキ中の無機ヒ素などのリスクを紹介していることによる。なんとなくイメージで「天然なら安全」と思い込んでいる人はこのブログの読者には多くないだろうが、さまざまな事例を学ぶことができ有用だろう。また、友人、家族に勧めるのにも本書は手ごろだと思う。

リスクだけではなく、だったらどうすればいいかという点も述べられている。たとえば「バランスの取れた食事」は死亡リスクを下げる。当たり前のことではあるが、だからこそあまり取り上げられない。根拠に乏しくても「健康になりたければ○○しなさい」「××を食べるだけでがん予防になる」といった刺激的なキャッチコピーのほうが広まりやすい。とくにインターネットではそうである。

最終章ではNHS(イギリスの国民保健サービス)の「健康ニュースの読み解き方」が紹介されている。また、各項目のチェックポイントは他の事例にも応用ができるだろう。ネットの情報は玉石混交である。そうした情報の見分け方を身に付けるのに本書は役立つだろう。



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2016-09-07 前の本より読みやすい!『各分野の専門家が伝える 子どもを守るため

[][]前の本より読みやすい!『各分野の専門家が伝える 子どもを守るために知っておきたいこと』 前の本より読みやすい!『各分野の専門家が伝える 子どもを守るために知っておきたいこと』 - NATROMの日記 を含むブックマーク

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■各分野の専門家が伝える 子どもを守るために知っておきたいこと(メタモル出版)

もうすでにご存知の読者もいらっしゃると思いますが、『各分野の専門家が伝える 子どもを守るために知っておきたいこと』という本が出ました。タイトルの通り、複数の分野の専門家が、主に子育てを行っている世代の大人を対象に書きました。私も「ホメオパシーをすすめられました」「フッ素って危ないの?」という章を担当しました。

ホメオパシーについてはこのブログの読者はお馴染みでしょう。フッ素については、齲歯(虫歯)予防のフッ化物利用について書きました。特別なことは書いていません。コクランレビューや質の高いメタアナリシスに基づいています。

発売されて1ヵ月ちょっと経ちました。■Amazonのカスタマーレビューは、最初は好意的なものばかりでしたが、最近は否定的なレビューもあります。ほとんどが、星5つか星1つに分かれるというのも興味深いところです。『「ニセ医学」に騙されないために』も似たようなパターンをとりました。一定数のアンチが生じるのは仕方がないことかもしれません。

他の著者の方々も、このブログの読者にとって馴染みが深いでしょう。宋美玄さん(自然分娩、母乳育児)、森戸やすみさん(経皮毒、薬一般)、成田崇信さん(マクロビ、トランス脂肪酸)、畝山智香子さん(残留農薬、食品添加物)、菊池誠さん(「水からの伝言」、放射能、EM菌)。

『各分野の専門家が伝える 子どもを守るために知っておきたいこと』の内容は、医学やニセ科学の分野に限りません。教育については、知らなかったようなことが書かれていて、たいへん勉強になりました。

「誕生学」については、私も耳にしたことはありますが、あまり詳しくありませんでした。自殺予防教育の一貫として一部の学校で採用されていますが、専門家によると「誕生学」のような「命の大切さ」を伝える自殺予防教育は良くない方法なのだそうです。「誕生学」の章は国立精神・神経医療研究センターの精神科医・松本俊彦さんが書いています。清原和博氏(元プロ野球選手)が覚せい剤取締法違反の疑いで逮捕されたときに、薬物依存症の専門家としてコメントしておられました(■薬物問題、いま必要な議論とは / 松本俊彦×荻上チキ | SYNODOS -シノドス-など)。

「2分の1成人式」は、10歳になる小学4年生のための学校行事です。そう言えば私の子どもも「2分の1成人式」を行いましたが、問題点については気づいていませんでした。子どもの家庭背景は多様です。離婚や虐待のない家庭のみを前提にしたような学校行事は問題です。「2分の1成人式」の章は名古屋大学大学院教育発達科学研究科准教授・内田良さんによります。小中学校で行われる組体操、特に競うように高くなっていったピラミッドの危険性を指摘していたことでご存知の読者もいらっしゃるでしょう(■組体操、この先に必要な議論とは / 内田良×木村草太×荻上チキ | SYNODOS -シノドス-など)。

『各分野の専門家が伝える 子どもを守るために知っておきたいこと』は、子育て世代を対象に書かれていますが、子どもがいなかったり、すでに大きくなってりしている人が読んでも面白いと思います。私の母に読ませてみたところ、「前の本*1より読みやすい」と好評でした。



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■「ニセ医学」についての本を書きました

*1:『「ニセ医学」に騙されないために』

Dr. BambooDr. Bamboo 2016/09/10 10:25 昨日届きました。
孫が危険にさらされる前に長男夫妻に読んでもらうつもり。

sagarasagara 2016/09/15 19:17 はじめて書き込みます、代替医療で有名な「あはき」を営む者です。
故りーちゃん先生のブログから流れてきました。

NATROM先生に限らず、多くの皆様にご意見を伺いたいことがございます。
代替医療(特に実技を伴うもの)を医学の領域に昇華していくためには、何が必要でしょうか?

積み重ねられた「1症例研究」の山が、私には塵にさえ見えないのです。

PYOPYO 2016/09/15 21:02 純粋に文章上の確認のためsagaraさんにお伺いします。
>「1症例研究」の山が、私には塵にさえ見えないのです。
というのは「1症例研究」の山 が 塵(ゴミ) にさえ(ごみにすら)見えない
つまりゴミ以下にしか見えない、という意味でしょうか?
どうにも文意がとりかねたので、確認したいだけなのですが。

NATROMNATROM 2016/09/16 08:57 sagaraさん、コメントありがとうございました。

最近では製薬会社がコストをかけて候補物質を見つけて最初から臨床試験を行うことも多いですが、症例報告を積み重ねて徐々に標準治療に取り入れられるような治療法もあります。

"積み重ねられた「1症例研究」の山"がどの程度のものかはわかりませんが、優れた症例報告は世界を変えます。「川崎病」という病気をご存じでしょうか。小児の炎症性疾患でいまではどの医師も知っておかないといけない重要な疾患です。ですが、1960年ごろまではこの病気の存在を誰も知りませんでした。

川崎富作先生が優れた症例報告(正確には複数の症例ですのでケースシリーズでしょうか)を行ったことで、疾患に注目が集まり、議論が起こり、現在では治療法もできて多くの子どもたちが恩恵を受けています。

これは治療法ではなく新規の疾患概念についてですが、本当に価値のある医療であるなら、質の良い症例報告を行うことで、誰か他の人の目に留まり、広がっていくのではないかと思います。

ublftboublftbo 2016/09/17 02:37 今晩は。

>sagara さん

シン と エルンスト『代替医療解剖』は読んでおられるでしょうか。
その本は、代替療法に限らず、療法の効果を確かめるにはどうすれば良いか、標準医療に組み込む療法はどのような条件を備えているべきか、という事について詳しく説明している良書ですので、もし未読でしたら、読まれる事をお勧めします。

▼ 引  用 ▼
積み重ねられた「1症例研究」の山が、私には塵にさえ見えないのです。
▲ 引用終了 ▲
これがもし、「塵として捨て去るのは勿体無い」という意味でしたら、実際、シングルケースの場合が情報として役に立たないとは即言えない、と思います。

ただ、これには、「どのように調べたか」や「どのように報告したか」が重要で、たとえば、「自分が施術をおこなった患者さんは確かに症状が改善した」と言うだけでは足りない訳ですね。
症状の改善は、客観性を持つ尺度によって測ったか、とか、その改善は、確かに当該療法自体の効果であったのか、というのをきちんと検討する必要があります。
医学医療分野には、「意味に反応して身体の症状が改善される」という現象、いわゆる「プラセボ効果」がある事が知られていますので、調べたいそのものの効果であるかを検討するには、二重遮蔽(二重盲検)などの方法を採る事が肝腎です。たとえば鍼治療であれば、ダブルブラインド鍼を用いて効果を調べるという研究があります。

ある療法(手技なり)が、広く有用な医療として認められるには、

 ・方法がマニュアル化されている
 ・集団にて効果が実証されている

これらの条件が鍵だと考えられます。もし、その療法が、「上手い人もいれば下手な人もいる」ようなもので、「ばらつき」が大きいのであれば、一般的に、技術が標準化されていない、あるいはそれが普及していない、という事を意味します。「一部の達人の施術なら効くが」みたいなものだと、療法としての汎用性を欠く、と評価される訳ですね。

そして、シングルケースは捨て去る事は出来ない、と先ほどは言いましたが、とは言っても、結果的には、事例は積み重ねられ、集団を観察した時に効果が見られる、という事が確かめられる必要があります。シングルケースの検討によって、何らかの普遍的な要因を見出し、それを、より一般的な技術・療法体系にフィードバックさせ、その体系的方法に基づいた療法を施す事による効果が確認され、効果に比較して有害な副作用が小さいと言えるならば、それは、標準的な医療に組み込まれていく、事と思います。

kakiflykakifly 2016/10/29 01:43 sagara様へ

「1症例研究」の1症例が、1症例にすぎないというのか、たとえ1症例であってもというのか、どちらの意味なのか判然としないのですが。しかし、「代替医療を医学の領域に昇華していく」とありますから、後者と判別します。物理主義者ですから、この世界の現象はすべてデタラメに起きることはないと考えます。何らかの治療を行って、治癒する場合と治癒しない場合があったとします。たとえ1症例であっても、その治療法による結果であることが疑えないのであれば、それは研究対象となります。1症例に過ぎず、統計的に有意ではないとして否定することはしません。治癒した理由があるがあれば、治癒しなかった理由もあるはずです。その違いを探っていくことが、メカニズムや法則解明の糸口になるかもしれないからです。このような変則事例を否定するようでは研究者としての資質がないといえるでしょう。

医学の領域に昇華していくためには何が必要か。諸科学の基礎であり、最も確実な知識である物理学によって説明されればよいでしょう。

kakiflykakifly 2016/10/29 02:15 「治癒した理由があるがあれば」→「治癒した理由があれば」のミスです。申し訳ありません。

NATROMNATROM 2016/10/29 08:44 >何らかの治療を行って、治癒する場合と治癒しない場合があったとします。たとえ1症例であっても、その治療法による結果であることが疑えないのであれば、それは研究対象となります。

たとえば、「じんま疹」や「膀胱炎」の治癒が自然治癒によるものではなく、その治療法による結果であると示すには、比較試験が必要です。比較試験をせずに、「その治療法による結果であることが疑えない」とは主張できません。