百 (新潮文庫)

百 (新潮文庫)

おもしろい。破たんした家族関係や自分のいびつな形の頭についてなど、著者の性格形成ひいては人生観が築かれるにいたたった出来事が書かれている。自分はまともには生きられないと覚悟を決めて生きていく。でも開き直っているわけではなく、あくまで外れた道を生きているという気持ちがあって、不良かっこいい、とかではなく、いつかは手詰まりになることが分かっているような諦めがある。なんだか消したくても消せない頭の隅の不安にずっと付きまとわれているような影がありストレスを感じた。
個人的には、『連笑』『永日』の二編が特に良かった。身幅で生きる、という表現がなんとも哀しく印象に残った。

身幅で生きることということは、身の内の自然にできるだけ沿いながら、しかもそれを得心し続けて行くということでしょう。身幅以外のものはただの観念で、そういうものを信じるわけじゃないから、折り合いに困るのですね。