Hatena::ブログ(Diary)

気随式(映画MEMO) このページをアンテナに追加 RSSフィード

【最新記事】   【極私的推薦映画】

2007-02-21 VOLVER

ママ、私、付け尻なの

ボルベール <帰郷>

ボルベール <帰郷>を含むブックマーク ボルベール <帰郷>のブックマークコメント

http://volver.gyao.jp/

 

昨夏、id:piedpiperさんが激賞していたので気になっていた作品が、ようやく日本でも公開の運び。piedpiperさんの紹介通り、ツッコミどころの多い筋書きではあるものの、暖かいユーモアと優しい愛に包まれた(ペドロ・アルモドバル作品らしい)作品だ。  

 

物語の中心はライムンダ(ペネロペ・クルス)という主婦。10代の頃に母親を拒んで家を出たが、今では15歳の娘を持つ母になっているという設定。自らの母イレネ(カルメン・マウラ)とは和解する機会もないまま時は流れ、4年前の火事で両親を亡くしている。

 

そんな彼女にある日、二つの死が降りかかる。一つは最愛の伯母パウラ(チェス・ランプレアヴェ)の死。姉ソーラ(ロレ・ドゥエニャス)と隣人アグスティナ(フランカ・ボルティージョ)によって葬儀の準備が進められるが、ライムンダにはその葬儀にすら行けない理由があった。娘パウラ(ヨアンナ・コバ)を守るための、秘密にしなければならないもう一つの死で手一杯だったのだ(これに絡む展開にはリアリティの欠片もないけど、そーゆー映画じゃないので気にしないこと)。

 

やがてライムンダは、「死んだはずの母の姿を見た」という故郷の噂を耳にする。母があの世から戻ってきたのか、それとも幽霊なのか。かつて閉ざしていた心も、今なら素直に開くことが出来る。今ならすべての秘密を打ち明けられる…。母の愛を求めるライムンダの前に、ついに姿を現したイレネ。だがイレネには更に衝撃的な秘密があって…てな感じ。

 

主要な登場人物全てが女性。その「母」「二人の娘」「孫」「伯母」「隣人」を演じた全員が、カンヌで最優秀女優賞を受賞。まあチェス・ランプレアヴェ*1、カルメン・マウラ*2、ペネロペ・クルス*3、ロレ・ドゥエニャス*4と、大半の女優がアルモドバル作品の常連だから監督と息が合っていたのだろうが、それにしても凄い快挙を成し遂げたものだ。

 

最優秀脚本賞をも受賞しただけあって、構成は見事。アルモドバルの近年のテーマとも言える母への慕情を描きつつ、女性と人生への賛歌を高らかに歌い上げている。

アルモドバル作品という括りで言えば、その作品群の中でこれほど「死」を中心に据えた作品も珍しい。死を見据えることで人生の尊さを意識するという、ありがちって言えばありがちなアプローチだが、死からの再生人生の再生と重ねたことで(ネタバレに直結するので詳しく書けないが)、より味わい深い作品となった。

 

女優陣は誰もがとても魅力的だったが、『オール・アバウト・マイ・マザー』では微かに幼さを感じさせたペネロペが、本作ではすっかり大人の魅力を発揮。気丈だが少女のような脆さをも併せ持つライムンダを見事に演じている。ていうか、あんだけ瞳で演技出来る役者はそうそういないだろうな。瞳というか涙か。簡単に泣ける女優は無限にいるが、相手を射るような厳しく乾いた瞳から、突然溢れるように涙を流したり、大きな瞳にじわっと涙を溜めたまま、それを流すことなくタンゴの名曲「VOLVER」を歌いきるなど、その瞳だけで様々な感情を表現してみせる。

  

ていうかね、ほんとーに綺麗なのよ、ペネロペが。美熟女の領域に入ってきたというか、健康的な肉体美の中に淫靡さ一歩手前のフェロモンを滲ませていて、世の男性諸氏にはこのペネロペを観るだけでも価値があると伝えたいほど(笑)。アルモドバルもそれを意識してだろうけど、とにかく胸の谷間は強調しまくり。

ほら(笑)! ↓

f:id:NKYYSD:20070221040924j:image

 

パンと張ったお尻も目立つし。て思ったら尻は付け尻だったけど(ライムンダというキャラクターには、ペネロペ本人の尻は小さすぎたんだとか)。

 

物語の各所に、葬儀や墓参に関するスペインの風習が出てくるのも興味深い。その一つ一つがアルモドバルにとってのVOLVERを意味するのだろうけど、どローカルに徹しているからこそ、深いところでは普遍的なのだ。俺も数年前にお袋を亡くし、それに絡んで父の郷里へ「帰郷」したが、田舎では(本作同様)死者が決して消滅しない。親戚や近所の人たちは、故人の思い出を昨日のことのように自然に語り、頻繁に墓参をする。死者は生者の生活の一部になるのだ。都会では見ることのないそうした習慣に対し、俺は深い畏敬の念に打たれたし、なにやら羨ましい気持ちを感じたものよ。

 

もっとも、(この映画みたいに)お袋がいま再び目の前に現れたらどうしようかな。なに話したらいいものやら。息子ってのは、どうも親に対して構えるところあるしね。その点、やっぱ母と娘というのは、その距離感が羨ましいわ。

 

てことで、世の母と娘、要するに全ての女性に、特にお奨めしたい一本。

もっとも監督は男性だからね、男性が観ても楽しめること請け合い。

 

6月公開予定。

*1:アルモドバルの初期の作品『バチあたり修道院の最期』『私の秘密の花』に出演

*2:最も初期の頃からアルモドバル作品の常連

*3:『ライブ・フレッシュ』『オール・アバウト・マイ・マザー』

*4:『トーゥ・トゥ・ハー』

piedpiperpiedpiper 2007/02/21 19:59 ををを。日本では6月に公開なのかー
これを読んで、また観たくなりましたよ。やっぱりDVD買わなきゃ!(付け尻の裏話とかはしらんかったし。)
ちなみに、あまり映画を観ないので、実はアルモドバルさんの映画はこれが初めてでした(彼が有名な監督ってことも知らず…)。

NKYYSDNKYYSD 2007/02/22 00:16 面白い映画をご紹介頂いてありがとうございました。アルモドバル監督は、日本では『神経衰弱ぎりぎりの女たち』(87)で大きな注目を浴びた後、『アタメ 私をしばって!』(89)という邦題で損をし(笑)、『オール・アバウト・マイ・マザー』(99)で人気を確立し、『トーク・トゥ・ハー』(02)で再び微妙な評価になったりと、巧いんだかどうなんだか微妙だけど名前だけは有名な監督です。今最も自由で独立した監督だとも言われています。

piedpiperpiedpiper 2007/02/22 02:22 そういえば、この映画を観にさそってくれた友達も、アルモドバルさんの作品にはいいのとイマイチなのと両方あるっていってましたね。

NKYYSDNKYYSD 2007/02/22 10:32 やぱり皆そう思うんですね(笑)

sycosyco 2007/02/24 00:45 私は、アルモドバル映画はドタバタ喜劇の部分に波長が合わなくて苦手でしたけど、『トーク・トゥ・ハー』と『バッド・エデュケーション』で大好きになりました。 『ボルベール』もこの路線っぽいので是非観たいです。 実は今こちらでも上映中なんですよね、これ。

NKYYSDNKYYSD 2007/02/24 04:50 今回は若干ドタバタ系も混じってます。少なくとも脚本へのツッコミどころは満載です(笑)。

panaderopanadero 2007/08/06 12:39 公式HPの上映予定を見たら、新潟で上映する映画館が1館も無いのね。上京するか、レンタルに降りてくるのを待つか?多分待つ方だろうなぁ・・・・・・

NKYYSDNKYYSD 2007/08/08 05:55 まあ大画面ならでは、という映画じゃないので、レンタルでも充分かもしれません。

Connection: close