国を愛する心なんて自然に生まれてくるはずが無い

美的感覚は刷り込まれるものである。本能と体の構造に即した美はそれでもあるとは思う。黄金比であるとか、和音であるとか。しかし、桜がはかなく美しいことや、四季折々の風景に日本を感じるなんてのは、生まれつきのものであるはずが無い。親や周りの人間が美しいものとして何度も言うからそうだと思っている。その積み重ねがあって初めてそのものを愛する気持ちが出てくるのではないか。無論、それに反抗を覚えて違う価値観を構築するものもいるし、人それぞれではあるけれども。
画一的というけれど、そもそも国という形態そのものは生物にとって不自然なものなのであるから、それを愛することなんてのはある程度方向付けがないとできないのである。平たく言ってしまえば、愛国心とはその国の政体を愛するに他ならない。「四季があるから日本が好き」と言うのは、国ではなく、風土を好きなのに過ぎない。
さて、日本は民主主義の国であり、平和憲法を是とする世界に稀有な存在である。今、国を愛すと言うのは、そういう国を愛すと言うことである。さて、憲法の改正を行うと言うことになれば、果たして同じように愛し続けられるのか。国民投票を行ったときに得られた結果が、すなわち今の国民の愛国心ということになるのではないか。
愛国心なんてのはそんなもの。政体を変えるほどの不満があるかどうかのバロメーター。残業代が出なくなっても暴動が起きなかったら、みんな少なからず国を愛しているってことなんだよね。

日本の知財終了のお知らせ

http://www.asahi.com/national/update/1123/TKY200611230288.html
そもそも日本語がおかしいような気がするのですが、「音楽や映像を違法コピーした「海賊版」をインターネット上からダウンロードすることを全面的に禁止する」って「正規版」が何を意味するかわからないよ。違法コピーって私的利用のためにアップロードしたのを誰かが(間違えて)持って行っちゃった場合はどうするんでしょうね。
ともかく、Winnyとかで明らかに違法コピーであるものをダウンロードする行為はまず対象にするものとして分からなくは無い。しかし、本当に何をダウンロードしたか、また、それが事前に違法であることが明確にわかるマーカーがついていることがはっきりしていない限り、適用範囲は限りなく広がってしまう。例えば、違法ハッシュDBが公開されていて、公認のダウンローダーやブラウザのプラグインはそれを自動で参照し、非公認のダウンローダーやブラウザは自己責任でハッシュを確認しなさい、と言ったような運用も法で定めて、不自由だが限りなく法律を守らせるような仕掛けを構築することも不可能ではないだろう。
確かに、現行の法律では「明らかに不正なコンテンツ」であってもダウンロードする側に責任を問うことはできない。だが、ちょっと待って欲しい。真に取り締まるべきなのは、依然としてアップロード側なのである。そのアップロードが違法であるか、合法であるか。コンテンツが様々な形態でネットで公開されていく未来、果たしてユーザー側がそれを判断できるのだろうか。先ほどの例を挙げればJASRACのような管理団体を作りホワイトリストを作ることで、合法コンテンツであることを示すことは可能かもしれない。しかし、その合法アップロードした団体が消滅し、著作者本人は公開したくてもできない事態、すなわち今のCDの廃盤コンテンツのような事態が発生する可能性は高い。
ダウンロードを規制することそのものがコンテンツの魅力を減少させ、ますます価値が下がっていく。コンテンツを誰でも公開し、広めるようにできるようになった現在、そういった制約を受けないコンテンツが既得権益の元で保護されたコンテンツを完全に駆逐するかもしれない。それに既存のコンテンツが対抗するにはできるだけ様々な手段で流通するように努力することじゃないかと思うのだが、この著作財産権の確保のみを目的とするような誤った著作権保護が果たしてプラスなのかマイナスなのか、もう一度マクロな視点から考えてみたほうが良いのではないか?
人口に対してもコンテンツ供給過多と思われる現在、どうせ100年後の未来、不朽の名作として語り継がれるものなんて全コンテンツの何万分の一(でも多いか?)でしかない。資料として死蔵されて二度と日の目をみないことが著作者として生きるものが望むことであれば文句の言いようも無いのですが。