Winny被害額100億円の違和感

Winnyによる被害額は約100億円--最も大きな被害はゲーム - CNET Japan、このニュース、ぱっと聞いて違和感を持った人も多かったんじゃないかと思います。
Kazuho Oku's Weblog 「Winny による被害額は約100億円」っておかしいんじゃないかに算出方法の計算式の想定は書かれています。ブクマコメントに114条について触れられていますので抜粋してみましょう。114条の条文は以下の通り(一部抜粋)。

その譲渡した物の数量又はその公衆送信が公衆によつて受信されることにより作成された著作物若しくは実演等の複製物(以下この項において「受信複製物」という。)の数量(以下この項において「譲渡等数量」という。)に、著作権者等がその侵害の行為がなければ販売することができた物(受信複製物を含む。)の単位数量当たりの利益の額を乗じて得た額を、著作権者等の当該物に係る販売その他の行為を行う能力に応じた額を超えない限度において、著作権者等が受けた損害の額とすることができる。

「単位数量×利益」…あれ?利益とありますね。そう、損害額は上記の条文によると、数量×利益になるというわけです。そりゃあ遺失利益が損害なのですからね。とすると、平均価格で算出している時点で損害額とは異なってきます。被害額という言葉を使っているのはそういう理由かもしれません。
さて、先のエントリでは単位数量についても疑問が呈されています。21万ノードが公開しているファイル数を直接掛け算するという単純計算だという推定になっていますが、さすがにそこまでじゃないとしても、ハッシュの違いで同じものが複数にカウントされている可能性はありますね。そもそも、ファイル名だけを根拠に算出したのであれば、被害額を算出するための調査としては妥当といいがたいですね。ゲームソフト117万タイトルっていうけれど、世の中には何タイトルゲームが存在し、21万本以上売れるのがそのうち何本なんでしょうかね。
コピーソフトをCD-Rに焼いて格安で売るといった場合、買った人間はある程度使用の意思を認められますから、それについて遺失利益と認定するのは違和感がありません。しかし、ご存知の通りですがP2Pでダウンロードされたものは勝手にキャッシュとして溜まっていくものを含んでいますから、必ずしも遺失利益になっているとは限りません。むしろそうでないものが大半なのではないでしょうか。とすると、被害額は更に減ると思われます。ところで、ちょっと古いデータですが2005年上半期の家庭用ゲームソフトの売り上げは1340.9億円だったそうです。こうしてみると記事中のゲームタイトルが全部家庭用だったとして、50億ですから年換算して2680億のうちの50億というと、それくらいは妥当かな、という気にはなってしまいますね。
さて、114条の続きにはこうあります。

ただし、譲渡等数量の全部又は一部に相当する数量を著作権者等が販売することができないとする事情があるときは、当該事情に相当する数量に応じた額を控除するものとする。

さてさて、この条文を適用したとき、今回の試算は果たして販売できる量なのでしょうか。重複しているタイトルや、既に販売していないタイトルなどを正確に把握した上で算出しない限り、法の定めるところの「損害額」とは言えないということになります。本当に95億円の損害があるのでしょうか。
ちなみにJASRAC管理下のものは送信可能権を侵害したという計算で、

3  著作権者又は著作隣接権者は、故意又は過失によりその著作権又は著作隣接権を侵害した者に対し、その著作権又は著作隣接権の行使につき受けるべき金銭の額に相当する額を自己が受けた損害の額として、その賠償を請求することができる。

の規定に当てはまると思います。「月額使用料換算で約4億4000万円相当の被害額となる。」としているのでこれは単純掛け算で正しいと思われます。といいつつ、6時間がピーク時間だったら実際には割り引かなければいけないですね。その点を差し引けさえすれば、現在のJASRACの定める使用料に対する損害という計算ですから妥当なんじゃないかと思います(ただし、今のJASRACぼったくり計算が前提なのですが)。ところで、「月額」です。つまり、「年額約50億円」と言っています。