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2007-12-19

娯楽はパイの奪い合い

前にも書いた気がするけど、娯楽なんてものは、ごく限られた消費者と言うリソースをいかに獲得するかの競争であり、市場規模はある程度固定化される。消費者が費やすお金は景気にも左右されるけれど、インフレにならない限り、全体の売上は頭打ちになる。メディア業界はもう十分に成熟していて、のびしろはなくなってきているのかもしれない。

こういった状況で必要なのは、商品の付加価値を上げ、単価を上げる戦略。もちろん、これもパイの奪い合いには違いない。けれども、フリーライダーに売上そのものを奪われたのが本当であれば、減ったパイを増やすことはできるかもしれない。

業界が本当に恐れているのは、違法ダウンロードそのものではなく娯楽に費やす時間と、かけるお金がインターネットに奪われていることだ。違法なものは氷山の一角に過ぎない。インターネットには魅力的で中毒性のあるコンテンツが溢れている。お金は掛からない。余ったお金は別の娯楽、食や服や旅行に費やされるかもしれない。パイは奪われた。

映像や音楽は移動中の娯楽に成り下がり、消費される。元々それだけの価値しかなかったのかもしれない。一方で、ロングテール的な展開を可能にするシステムで、ニッチなパイまで奪われる。こんな状況ではフリーライダーに文句の一つも言いたくなるのはわからないでもない。

しかし、業界は、付加価値の創出を選択せず、税金的な発想をその代替にしようとしている。これでは消費材としても生き残れない。もっとも、本当に価値のあるものは残ることだろう。

いや、長い目でみれば、インターネットに広がるコンテンツの山の大部分も無価値だ。商業コンテンツの大部分が無価値なのと同様に。時間の隙間を埋めるだけのコンテンツの価値は刹那的な感動でしかないのかもしれない。であるならば、美食と何の違いがあろうか。

インターネットとのコンテンツ戦争に敗れた業界。しかし、勝者には財力も政治力もなかった。それを突くのがアンフェアとの謗りを受けようが、なりふり構ってはいられないのだ。既に他の業界に奪われたパイを取り戻すことは、ブームの創出でも行わないと有り得ない。そのためには完全に制御できる仕掛けが必要だ。ついでに映像・音楽以外のコンテンツを枯らすことができれば、それに越したことはない。

ウェブ側の勢力が政治的なパワーを発揮するためには、フリーライダーは敵かもしれない。そのシステムは最後には財力を成さねばなるまい。決してインフラはただでは発生しないのであるから、業界を否定するのであれば、自重は必要だろう。

すでに財をなし、コンテンツの支配者として君臨しつつある巨人がいる。ウェブは飲み込まれつつあるし、飲み込まれてしまえば既存の業界などひとたまりもない。政治力と資金力を手に入れたウェブが向かう先はどこか。見誤ったところにはパイのひとかけらも回って来たりはしない。

制度ではなく、システムで解決すべき問題

こう言ってしまうとDRMか、みたいに聞こえるかもしれないが、ここで言うシステムというのはプログラム的仕掛けのみならず、市場全体の運用まで考えた大きな話。

iPodITMSが成功したのは、もちろんコンテンツ業界の勝利ではないけれど、来るべき未来でどのようにして音楽を売っていくのかは示された。コンテンツは全てポータブルでなければならない。これはこれからの真理。所有とする形は大きく変わっているのに、業界の構造を一切変えないで生き続けることのどのくらい困難なことか。

もちろん、変わっていくのは困難なことだ。しかし、それを制度で解決しようとするとき、そのインフラに乗っている他の業界への影響を一顧だにしないことは、およそ真摯な態度で文化を振興というのとはかけ離れた態度である。

既に、ダウンロード違法案が一般の仕事に与えるであろう負の影響は別の方が洞察されているので詳しくは触れない。が、我々は既に個人情報保護法の時に、過剰な反応と過剰な報道を経験している*1。職場でのコンプライアンス対応のため、Webサイトアクセス禁止の日も近い。

制度ではなくシステムで対応すべきなのだ。もし、現実解が見つからないのであれば、きっとそのビジネスは終わったビジネスなのだ。コンテンツメーカーの利益を損なわない為には一刻も早く市場から退場し、新しいシステムに金が落ちていくようにすべきなのではないだろうか。

よろしい、「ネットはダークサイド」だ。ならばリアルは?

フォースの暗黒面に落ちたネット利用者たち。これって侮辱だよね。某委員。

確かに、ネットの暗黒面は存在するし、それが得体のしれないものに見えるのはわかる。しかし、ネットは基本的にオープンなアーキテクチャだ。暗黒を感じるのは盲目だから。不勉強だから。

それよりも、現実に暗黒面はないのか。芸能プロダクションのアレとかレコード会社のアレとか制作会社のアレとか。業界の人には自明過ぎて暗黒ですらないのであれば、その方が問題だよ。

こういう、感情的な部分を表出する発言があるたびに、自分たちの思うとおりになることだけを考えているのが透けて見えて、悲しくなりますね。

コンテンツ産業など滅んでしまえ!

消費者として、その楽しみを人質にとるかのように規制を迫られるのは、それが好きだという弱みがあるので仕方がない。でもさ、疑われてまでみたくねーよバーカという声にはどう対抗すれば良いと思ってるのかな。「違法?知らなかった」⇒「じゃあ正規のを買わなきゃ」になるケースなんてほとんどない。今の無法地帯は到底肯定しえないけれど、「じゃあイラネ」になるのは目に見えている。

インターネットを既存のメディアと同様に扱うのはコンテンツ産業の側の問題の押し付けだ。コンテンツの消費材化を促進してきた結果として、一定の商品サイクルを回すしか利益をあげられなくなっているとか、そういう事情もあるのかもしれないけど、そういった保守的発想が逆に市場の発展を妨げることは一度家庭用VTRのときに証明されている。そして、DVDの市場がきちんと出来上がったのめプロテクトのおかげではない。そんなものはとっくの昔に回避されている。単に便利で綺麗だからに過ぎない。

ダウンロード違法化は、コンテンツ産業側の手抜きだ。一つ簡単な話。ネットでの映像・音楽コンテンツの配信は一切行わないとすればいい。一切してはならず、厳罰を処す。多分ネットでのコンテンツ流通は滅ぶ。合法なものを含め。テキストの時代へ回帰する。適法マークで自分たちだけ配信可能だなんていうのはインフラの搾取だ。搾取されるなら共に滅ぶべき。

(一部の支配的な)コンテンツ産業側が自分たち抜きの文化の発展など望んでいないことはどんなに言葉を取り繕っても明らかだ。少なくとも、一緒に盛り上げていこうとは考えない。泥棒(として見ている相手)と力を合わせようとは言わないだろう。だったらインターネット抜きの発展に回帰せよ。来るな。みんなで古きよき時代に戻ろう。そして、コンテンツの荒野として世界に名を残そう。黒船によって、滅びるのもまたよし。

なんか怖い

メタメタな議論は人間の尊厳を破壊することがあるかもしれない。

違法サイトの作り方

簡単。

「著作者に無許諾で動画や音楽をアップロードしたサイト(以下「違法サイト」)からのダウンロード」を、著作権法30条で認められた「私的使用」の範囲から外し、「違法サイトと知ってダウンロードした場合は違法とする」

この定義で言えば、無許諾で動画や音楽をアップロードしたサイトになればよろしいわけです。つまり、字義通りに従うと、たとえダウンロードが違法な著作物でなくても、ダウンロードしたサイトが違法サイトであれば違法ダウンロード。

ニコニコ動画から合法的な動画をダウンロードしたら違法です(過去に違法アップロードの実績あり)。YouTubeも。Mixi動画も怪しい。つまり、Mixiは違法サイトです。アクセスしただけでダウンロードは発生しますから、Mixi全違法化。YouTubeが貼れるはてなも危ないですね。つまり、このブログも違法?

誰でもアップロードできるような仕組みを作ったら当然違法だし、個人用に作ったウェブサイトのアクセス制限がうっかり外れてても違法。持ち運ぶためにストレージサイトを使っても違法かも。インターネットに繋がってるPCは違法かも知れぬ。そんな不安のある貴方の為に、適法サイトマーク年間XX万円でお譲りします、みたいな。

そして面白いサイトを発見。

なお、違法サイトは事前審査で認定できたとしても適法サイトは事前認定のしようがなく、適法サイトを認定するなどと主張する団体があれば、それは荒唐無稽な机上の空論であり、悪質な詐欺の可能性があるということを警告します。

任意団体日本違法サイト協会

ちょっと屁理屈ぽくもありますが、実際ここは本質的な問題であり、適法認定の利権化まで想像してしまいますよね。

まじめな話として、一定の運用条件で適法サイトとして認められるように思うのですが、適法サイトに違法アップロードされたのをダウンロードするのは適法なのであれば全然実効力が無い話だし、今あるサービスを例にとってどう認定していくかを明らかにしていかないと、こんな風刺にも負けてしまいそうです。法律は理屈の世界だから、屁理屈でも理屈として通っている方が勝ち。

違法ダウンロード、させろ〜〜

パブコメを出したみなさま、お疲れさまでした。しかしながら、努力の甲斐なく、とりあえず小委員会の結論ではダウンロード違法化の方向性は不可避と見られています。さすが民主主義の国。

文化庁長官の諮問機関・文化審議会著作権分科会に設けられた「私的録音録画小委員会」の第15回会合が12月18日に開かれ、「著作者に無許諾で動画や音楽をアップロードしたサイト(以下「違法サイト」)からのダウンロード」を、著作権法30条で認められた「私的使用」の範囲から外し、「違法サイトと知ってダウンロードした場合は違法とする」という方向性がまとまった

私的録音録画小委員会:「ダウンロード違法化」不可避に - ITmedia ニュース

まとまってねー。強引にそういう方向に持っていっただけでしょう。あの大量のパブコメはどこに?

ただ「ユーザーの意見を無視したわけではない。ネットからの意見も踏まえたつもりだ」と強調。「違法化について、個人から多数の反対意見が出た。『違法サイトと知らずにダウンロードしてしまった場合、無意識に法を犯してしまうのでは』などといった不安は、十分理解できる。ユーザーの不利益にならないような制度設計をする」と話す。

私的録音録画小委員会:「ダウンロード違法化」不可避に - ITmedia ニュース

消費者が「法を犯してしまうという不安」を取り除けばこの制度はまかり通る、と考えていると言うことですね。ユーザーの不利益にならないような制度設計をしたら、ダウンロード違法化なんて設計できるわけがない気もするのですが。

また法執行の面でも、ユーザーの一方的な不利益にはなりにくいと説く。「仮に、権利者が違法サイトからダウンロードしたユーザーに対して民事訴訟をするとしても、立証責任は権利者側にあり、権利者は実務上、利用者に警告した上で、それでも違法行為が続けば法的措置に踏み切ることになる。ユーザーが著しく不安定な立場に置かれる、ということはない」

私的録音録画小委員会:「ダウンロード違法化」不可避に - ITmedia ニュース

文化庁が保証してくれるんですよね、これ。できないことは言わないでね。

さて、今回の本質的な問題は、「違法アップロード」を送信可能化権で摘発できるというのに、何故ダウンロードまで規制しなければならないか、というあたりにあると思うのですが、正直なところ、対症療法としては強力なんだろうなあと。当然、副作用も強力です。アップロードの違法であるかの判断については、当然アップロードしている人がそれを知りえるところから始まりますから、言い逃れは不可能。情を知ってなんて話も通用しません。

ところが、ダウンロードは落としてみるまでわからんわけですよ。ここのグレーゾーンがどう運用されるか、明確に見えない。上記引用部だって「そうなればいいなー、でもならなかったらごめんねー」って言っているようにしか思えません。思えませんとも。

適法サイトと言う考え方も、じゃあ適法サイトでないサイトは全部違法サイトか、と言う問題があります。完全に運用の問題なんだけど、じゃあ誰が運用するのか。業界でお金出し合ってやるのか。税金使ったり天下りしたら許しませんからね。

さて、実際にこのように改正の方向で固まるとすると、適法じゃないもの(違法とは限らない)をダウンロードするための手段と言うのは十分に提供されえるものなのでしょうか。もし、そうでなかったとしたら、消費者というより、インターネットユーザーとしての権利を損なわれないために「違法ダウンロードの合法化」を叫ばざるを得なくなります。違法なものひっくるめて。だって分けられないじゃない。

今見えている構図は権利者vs消費者(利用者)なのかもしれませんが、実際には消費者ではない(ネットの)利用者がいて、その人たちの権利を制限しようとしている行為である、というところも見ていかなければなりません。私的録音補償金HDDに課そうとした際の権利団体の認識。自分たちが使えるメディアはすべからく権利の対象とすべし、という考え方こそがフリーライドであって、また、違法ダウンロードがあくまで個々人の問題なのに対して、補償金の問題は何の問題もないユーザーを泥棒扱いする考え方ではあります。現実解として全否定できるようなものではありませんが、根本的解決でもなく。少なくとも、文化そのものが税金で守られることまでは許容できても、市場を守ることは必要ないでしょう。

*1:これについてはネット上の漏洩に対する過剰反応も問題ではあり、また、そこの問題がブーメラン的に戻ってきている様相ではある