IT業界というかSI業界のわけわかんないところ

ここ2日くらいのやりとりのおかげで会計について少しわかった。まだまだ足りないところがあるけどそれは追々。
その過程の中でIT業界というかSI業界ってやっぱり不思議だよねって色々考えることがあったので、簡単にまとめてみる。

ものづくりなのにものがない

何かと建設業に比べられるシステム作りだけど、今日は穴掘ったぜ、とか今日はコンクリ流す枠作ったぜ、とか、もう見た目からして何かが進行しているのがわかるような建築と違って、何行書いた、が全体の何パーセントに当たるのかがそう簡単に出てこないのがプログラムの世界。変数宣言も1日考えてひねり出したロジックも1行は1行ということでは進捗率を主観以外の指標で表わすのが困難。結果として仕様どおり動くものが書ければよい、という仕事だから、物理的な制約によらない部分での個人の生産性にも大きく依存していて、ぶっちゃけ見積もりなんて正確に出せない。それを正確にしようという試みは沢山あって、そこにコストをかければ精度は上がってくる。けれども、そのコストは長年、業界のコストに計上されていなかったから、客に理解してもらうことは結構難しい。だから、内部で負担するしかないんだけど、収益構造がそのコストを賄えるようになっていないことが良くあったりする。
で、出来てきたものも、「モノ」ではない。製造業だと、納品してみたら要求精度と合わないとか、図面が間違っていた、とかはたまにあると思うんだけど、ITの場合、個々のパーツの精度がバラバラ過ぎてどうにもならないことが多い。それが日常だってのがさらに悪い。図面のせいのこともあるけど、図面のせいにした逆ギレのこともあるよね。
客観的に、「ちゃんとできた」と言えるものがないのがまず一つの問題だ。

作ってからの過程が長すぎる

仕様どおりに作りました!で完成ならいいんだけど、建築物とは違って、個々のパーツは組み上げてみないと上手く合わさるかわからない、なんてことがある。いや、建築物でも合わさらないことはあるんだろうけど、なにしろあっちこっちで様々な形の噛みあわせが合って、しかも組みあがったら終わりじゃなくて、実際に地震を起こして耐震強度を確かめる、とか、強盗に襲撃させて、安全を確かめる、とかいう不毛なテストをしなけりゃならんのよね。
全工程の中の半分はテストに当てられるってのも大変な話で、問題が出ればすぐ対応しなきゃならん。もう作った人、別の現場に行っちゃったよ。

検収といいつつ検収じゃない

「コンピューターのことは専門家にお任せしたいから」とかいってろくに検収もしないでハンコ押す客。で、最後に引き渡したら「仕様と違う」。いやそれ仕様ですから、ハンコ押してますから…
好景気だったらこんな客を甘やかさないでいられたんだろうけど、今はどこの会社も継続して発注してくれる会社に切られたらやっていけないから…
世の中が最も好景気なときに「他にもうちに仕事をやってくれっていうところいっぱいありますから!」って言って仕事のやり方を確立できなかったのがいけないんだろうなあ。きっと好景気のときは「予算なんていくらでもあるから好きにやってくれたまえ」で「仕様と違いますよ!」「じゃあ直すんでお金下さい」「おうよ、あとバックマージンは頼んだぜ?じゃあこれから銀座行くか!仕事は明日明日!」ってなっていたに違いない…

後戻りしすぎ

リフォームの匠どころかつるはし握るのが精一杯の人たちがそれっぽい図面を見ながらそれっぽいものを作っていく仕事になりがちだから、当然ガタはでるし嵌まらないところも出るし、雨漏りしたりトイレが前後逆になってたり。出来るだけ既製品の組み合わせで出来るように頑張っているけど、どこにいっても同じ間取りのマンションじゃなくて、顧客の我侭な注文をできるだけ反映したオーダーメードを作っているから、顧客満足度向上の為に後戻りをしなきゃならないことが沢山ある。ある程度ノウハウで出来る部分は設計書も上手くいったものの焼き直しでそう簡単におかしなものが出来たりしないんだけどね。
あと、図面を読む能力がなさ過ぎる工員が多すぎるんだよなあ。

そもそも何作るんだっけ

本当にシステムを必要としている人と、システムを作る人の距離が遠すぎて、何を作っているのかわからないまま作り続ける。で、最後にエンドユーザーが現れコレは違うといって去っていく。哀しい。

無茶な要望、肝心なところの不確定

前も書いたけど、意味不明な要望をする反面大事なことを何一つ決めないまま時間だけが過ぎていくことがよくある。こっちだって仕事だから無理やり要件を決めさせるけど、結局ろくなものができない。お得意様じゃなければゴネ得では終わらせないけどね。

責任の擦り付け合い

結局のところ、ちゃんとシステムをわかっていない人がお客さんの場合、失敗したときにどうやって責任を取らないかに終始したり、もともとの見積もりに対してどのくらいまけさせたかしか評価の基準にならなかったりして、いざ失敗したときに誰が責任取るかなんてことが一番重大になっていたりする。

偽装派遣偽装請負

偽装請負とか、それに限りなく近い形で仕事をやってると、とてもじゃないけど工事進行基準なんて適用できない。だって言われたことを言われたときにハイハイってやらなきゃいけないんだもの…

改善!改善!

ちゃんと要件が出て、ちゃんと見積もって、ちゃんと契約して、ちゃんと仕事して、ちゃんと検収して、というのは当たり前のはずなんだけど、当たり前に出来ていないのがIT業界。今まではそれも良かったかも知れないけど、どんどんそうは行かなくなってきている。システム屋も客もお互いに甘えてやってきたから、そのツケが今に回ってきているだけ、というべきか。
どちらか片方の意識を変えるだけではうまくいかない。こういう、守らないと会社の経営に影響があるものが出てきてくれると、正常化するのに言い訳しやすくてよいな、という捉え方が一番良いんだろうなあ。
とはいえ、本丸が、見積もりと実際のものづくり作業の精緻化が一番の課題である、というのはまだまだ成熟していない産業であることをあらわにする。GeekがいるようなIT業界と、スーツとニッカボッカSIerでは技術の使い方とか、標準化が違ってもいいはずなんだよね。多少非効率で古くても、正確に見積もれて、作業レベルの差が出難い工法を選択すべきである、という話になりそうだ。
という結論にしてしまうと、SIerに技術的イノベーションはなく、先端を行くIT業界が開発したものを上手く適用していくだけのお仕事です、になりかねないけど、まあそういうものだね。SIerの本質は巨大なものづくりの運営をいかにするか、であって、新しい技術を開発することではないから。とはいえ、ちゃんと確立した新しい技術を使わないでいると時代に取り残されちゃうからね。いつまでもつるはしでトンネル工事ではあるまい。巨大なものづくりにそういうものを適用できる力が、つまり、それを標準化し、ブレをすくなくしていく力がSIerの力なのだよね。
あー勉強しよっと。