「科学は、最近成功したひとつの方法にすぎない」の正しさと虚しさ

「科学は、最近成功したひとつの方法にすぎない」 - Togetterより。

言葉としてはとても正しい。それだけに、とても虚しい言葉に思えてならない。
「最近成功したひとつの方法にすぎない」と言う言葉には、大事な二つの要素がある。ひとつは「最近成功した」方法であること。そして、「方法にすぎない」ことだ。
少なくとも、実社会の中では、成功した方法であることは大事であり、その方法論は必ずしも真の正しさを持たないかもしれないけれど、それを打ち破るだけの別の成功した方法が登場しない限り、様々なことの論拠になりうる。だから、「科学は間違っているかもしれない」を、別の方法の正しさの論拠にしてはならない。
難しいのは、科学は物事を客観的に説明する方法ではあるがために、それを打ち破ることは客観的な検証に耐えない=科学ではない、という否定のされ方をしてしまうことに対する非科学側からの怖れ。ただ、実際に科学が否定するのは「それは科学ではない」ということであり、また、科学的でないものを「科学は説明しない」ということだけなんであったりする。
科学と宗教は本質的には相容れない。けれども、科学は宗教を否定し得ないし、積極的に否定するのは少なくとも今の段階の科学においてはごく少数の人だけである。

科学的検証方法に頼らず、直感で判断したことが正しいということは往々にしてある。ところが、直感と言うのは単なるひらめきではない。自分の中に積み上げた客観的証拠が組み合わさってたどり着いた結論だったりする。だから、本質的には、科学的思考のベースがあって、その中で飛躍によってうまれたものだったりする。そこに足りないのは、飛躍した空間に存在すべき証拠であり、それを検証していくのもまた科学なんである。
誰もが荒唐無稽と思った理論だって、検証を積み上げていく中で認められていくこともあるし、本当に荒唐無稽な妄想だったりもする。不幸なのは「荒唐無稽」で片付けられて検証もされないことだ。権威だとか、実績だとか、科学の未来にとって本来不要なものにしがみつく「業界」のせいで、生前認められなかった科学者と言うのはたくさんいる。もっとも、その対抗する「業界」というのは既存の科学者の権威に限らない。

以下、余談的ツッコミ。

ホメオパシーがこれだけ叩かれるのは医薬部外品であるレメディにシェアを奪われた製薬会社が圧力をかけているからだ、という意見を目にしたが、これは陰謀論なのだろうか。
HayakawaYukio
2011-01-05 15:38:49

製薬会社の利権を奪うほどレメディが普及しているとは思わないが、朝日新聞日本学術会議ホメオパシーだけを選んで昨年した仕打ちを思うと、この説を上回る合理的説明が思いつかない。
HayakawaYukio
2011-01-05 15:47:25

「科学は、最近成功したひとつの方法にすぎない」 - Togetter

オッカムの剃刀的に言えば「犠牲者が出たから」がもっともシンプルな理由だと思う。
陰謀論を語って「合理的説明」なんて言葉が虚しくなる。そもそも、業界の圧力であればあえて朝日新聞だけがホメオパシーネガキャンを張る理由がない。むしろ、マスコミが総バッシングをするはずだ。

血液型性格判断は就職差別に使われるからイケナイとする論があるようだ。この論を張る人は、殺人に使われることがあるから包丁はイケナイと言うのだろうか。家で料理するとき包丁を使わないのだろうか。血液型性格判断がイケナイのではない。就職差別がイケナイのだ。
HayakawaYukio
2011-01-06 06:26:18

「科学は、最近成功したひとつの方法にすぎない」 - Togetter

もう、包丁の例えはいろんなところで何度も何度も行われているが、目的外使用の例とするのであれば、就職活動における血液型性格判断は違法でなければならないw
というのはまあ極端であっても、血液型性格占い(判断だなんてそんな…)に目くじらを立てているのはそれが「科学である」と銘打っていたり、「科学的に実証されている」なんていう向きに対してのものである。

ニセ科学は悪くない。科学を称することは、誰にでもが何にでも許された行為だ。「科学」は商標登録されていない。著作権も特許もない。
HayakawaYukio
2011-01-06 06:51:23

「科学は、最近成功したひとつの方法にすぎない」 - Togetter

悪くない、というのは法律で規制されていない、という意味であるのかw
実際には、科学と称すること=詐欺であることは強く規制(必ずしも犯罪にはならない)されている。すなわち、効用があると認められていないことを効用があるとうたってモノを販売する等。ここには科学と言う言葉は必ずしも必要とされないが、科学の「方法」が適用されている。
単に標榜されているだけでは誰にも迷惑をかけない?そうとも限らないから批判される。科学を標榜することが自由であることと同程度に科学と称するニセ科学を批判する自由もある。あとは、当事者以外がどう判断するかの問題である。

ホメオパシーの原理が化学的に間違っていて、科学を標榜しているとしても、それだけでは悪くない。悪い結果をもたらしたのは、ビタミンK2が止血効果をもつという現代医学の知見を無視した(母親または助産師の)選択だ。ホメオパシーの原理が、あるいはレメディが、乳児を殺したのではない。
HayakawaYukio
2011-01-06 06:54:44

「科学は、最近成功したひとつの方法にすぎない」 - Togetter

これは問題だ。現代科学の知見をなぜ無視しえたのか。これは、ホメオパシーが科学を標榜し、現代医学の知見を半ば否定し、かつ、代替になることをうたっていたからである。つまるところ、ホメオパシーの原理に基づく誤った知見が現代医学の知見を上書きして消去してしまったから起きた悲劇であり、責任はホメオパシーにある。
母親または助産師の選択は、ホメオパシーがなければ選択肢になりえなかったものなのである。
唯一正しいのは、「レメディが乳児を殺したのではない」というところだ。もちろん、この正しさは虚しい正しさである。

山口の裁判は和解によって解決しました。助産師に責任があった事実は確認されませんでした。母親が出した訴状と言い分を鵜呑みにして論を立てた個人と団体は、過去に遡って自己批判する必要があろうかと思います。 http://ht.ly/3z7xI
HayakawaYukio
2011-01-06 12:47:59

「科学は、最近成功したひとつの方法にすぎない」 - Togetter

今回のケースは本人の承諾を得て「K2シロップとらない」かつ「ホメオパシーのレメディーをとる」という選択を母親がしたものです。ホメオパシーのレメディーをとるかとらないかは、ビタミンK2シロップをとるかどうかとは全く独立の事象であるにもかかわらず、あえて併記され、「代わり」にという表現が用いられて、ホメオパシーのレメディーをあげたことにより、児が死亡したという、歪曲された報道がなされております。  

平成22年8月5日創刊 ホメオパシー新聞(号外)|日本ホメオパシー医学協会

とまあ、こんなことを言っているけれども、本当に独立の事象であると思っていたら、K2シロップを取らない選択などまったく合理性にかけているわけで、どんな説明をしたかは想像に難くない。が、和解の内容は口外されないというのが条件だし、そうである以上想像でしか語れないので、「助産師に責任があった事実は確認されませんでした。母親が出した訴状と言い分を鵜呑みにして論を立てた個人と団体は、過去に遡って自己批判する必要があろうかと思います。」というのは言いすぎであり、真相は闇の中としかいえないはずだ。また、id:NATROM先生のエントリにもあるように、この和解の最大の成果は、上記ページに明記された
ホメオパシーのレメディーは、ビタミンK2のシロップの代用にはなりません。」という言質だ。
代用にならないのに独立した事象としてレメディーを取るという合理的な理由が思いつかない以上、件の助産師がどのような説明をしたかは推してしかるべきであるが、あまり推測のみでものを言っても仕方がないのでこのくらいに留めておくべきだろう。