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2013-05-12

とんでもない愚作、「夏への扉」は海外でも愛されていた

『夏への扉』はとんでもない愚作なので褒めないでくださいについて。

もちろん、増田のいうことはわかる。夏への扉は(タイムトラベルパラドックスについて一般的に認識されるようになった)今ではベタすぎるし、話の展開もご都合主義、幼女が時間差で成長しておとなになって釣り合う的な話も今では珍しくもないどころか過去の遺物だろう。

でも、依然としてこの話は本読みに愛されている。日本だけではなく。

例えば、以下のサイトを見てみよう。

The Door Into Summer by Robert A. Heinlein

5点満点中3.94点である。

no title

5点満点中4.5点である。

「タイムトラベルものとしてベストだ」「非常にチャーミングなお話だ」等々、日本の読者と通じる評価がたくさん見られる。同様に、陳腐だご都合主義だという批判も見られる。つまり、日本だけで高評価されているわけでもない。

The Door Into Summer Review - Robert Heinlein | Summary, Paperback, Kindle

このサイトではオールタイム・ベストの72位になっている。

増田はいきなり猫小説という観点から批判をしているけれども、この小説でピートの果たす役割は猫の生態をもって読者に萌えさせるわけではないのでちょっと的はずれだ。もっとも、猫小説として推す向きがいるのは僕も不可解ではある。

で、確かにプロットはご都合主義もいいところで、(今更ネタバレを恐れるものでもないので言ってしまうが)未来で軍事機密にたまたまアクセスできてしまうという僥倖があってこそのお話、というのはさすがにね、とは思う。でも、厳密に言ってご都合主義がないエンタメ物語はあまりないんではないかと思うんだけどね。

ロマンスの陳腐なところについてはまあともかく、ロリってのは違うよね。一緒になるのは成長してからの話だし。それ言ったら源氏…まあいいか。

ともあれ、この2000年代において、エンタメ小説の作法の積み重ねとSFガジェットの進歩とが相まって他の小説に比べて図抜けて秀でているとは言いがたい存在になっているのは確かだけれども、ジュブナイルSFに近い位置づけで読んでみるというのも良いと思う。

ただ、以前にも述べたとおり、SFガジェットそのものの陳腐化によって入門にはならないと思うんだよなあ。SFマインドがある程度鍛えられることで読めるようになる名作なんではないかと思っている。

読んでたらヤバイ?迷作SF小説8選

昨日のエントリブクマを見ているとなんかニーズがありそうなのでw

ただ、読んでたらヤバイというSFなどそれほどない上に僕がそこまでアレなものを読み込んでいないので書き始めの今の時点で10選できるか実に微妙。読んだら人間性を疑われるとかそういう方面を期待している人はごめん。

1.「虎よ、虎よ!」アルフレッド・ベスター

虎よ、虎よ! (ハヤカワ文庫 SF ヘ 1-2)

虎よ、虎よ! (ハヤカワ文庫 SF ヘ 1-2)

まあ、これだ

f:id:NOV1975:20111231112409j:image

以前書いたように、ラノベ酷いのネタにされてしまったこれだけど、まじめに没入するとこの視覚効果は結構ヤバイ。理不尽なまでの主人公の怒りに呼応してバッド・トリップしてしまうかも…

2.「ヴァリスフィリップ・K・ディック

ヴァリス (創元推理文庫)

ヴァリス (創元推理文庫)

主人公が狂っているあるいは狂っていくというのはディックの小説においては珍しいことではないけれども、神秘主義に傾倒して?から書かれたこれはSFというジャンルにしていいのかというくらいの問題をはらんだ作品で、作者もついに狂ったかと言われたようなものだ。ディックを特徴付けるディストピアの提示とはまた違った形で、僕たちは自己認識の崩壊を迫られるかもしれない。

3.「虚航船団」筒井康隆

虚航船団 (新潮文庫)

虚航船団 (新潮文庫)

文房具船が宇宙を旅してイタチ宇宙人を殲滅する話。これだけで狂っている。乗務員の文房具たちも狂っている。多分Wikipediaで登場人物を見るだけでクラクラしてくると思う。劇物注意。

筒井康隆といえばこれと「残像に口紅を」がおすすめ。いや、普通人にはおすすめしないぞ!

4.「家畜人ヤプー沼正三

家畜人ヤプー〈第1巻〉 (幻冬舎アウトロー文庫)

家畜人ヤプー〈第1巻〉 (幻冬舎アウトロー文庫)

家畜人ヤプー〈第2巻〉 (幻冬舎アウトロー文庫)

家畜人ヤプー〈第2巻〉 (幻冬舎アウトロー文庫)

家畜人ヤプー〈第3巻〉 (幻冬舎アウトロー文庫)

家畜人ヤプー〈第3巻〉 (幻冬舎アウトロー文庫)

家畜人ヤプー〈第4巻〉 (幻冬舎アウトロー文庫)

家畜人ヤプー〈第4巻〉 (幻冬舎アウトロー文庫)

家畜人ヤプー〈第5巻〉 (幻冬舎アウトロー文庫)

家畜人ヤプー〈第5巻〉 (幻冬舎アウトロー文庫)

誰だよ江川達也なんかに漫画化させたの…

ひょんなことから未来世界に招待された日本人とドイツ人のカップル。しかし、その未来は日本人が家畜人「ヤプー」として白色人種に飼われる異様な社会だった…いやこれSFでしかできないよな…

まあ色々やばい。読んだら右翼が家の前に街宣に来るくらいヤバイ。

5.「セックス・スフィア」ルーディ・ラッカー

あとがきいわく「この小説は、「球のかたちをしたおまんこがいてさあ、これを股のあいだに持ってって、ああ気持ちいい。どころがびっくり、このおまんこは異次元生物だったんだねえ、うん」」

意味わからん…

もちろん、まともにポルノではない。4次元通り越して5次元までいって頭おかしくなります。

6,「戦士志願」L・M・ビジョルド

戦士志願

戦士志願

胎児であるときに毒殺されかかったせいで不具として生まれた主人公(と言っても身分は貴族だ)が軍人として、統治者として成長していくシリーズ。ここの作品群からは医療テクノロジーへの警鐘や、身的心的マイノリティの有り様など非常にセンシティブな領域への問題意識を感じる。まあ、ヤバイってほどではないかも。

7.「ダイアネスティック」L・ロン・ハバード

これをSF小説の枠に入れるのはもちろん反則なんだけど、SFにハマったものの負の側面として紹介してしまおう。ハバードはSF作家にしてあの「サイエントロジー」の教祖だ。科学を称した自己啓発セミナーの発展形と言っていいだろう。あからさまな疑似科学ネタにするか皮肉ることがSF作家の矜持だと思うんだが、自らが疑似科学の教祖になってしまうというのはSF者から見ると堕落なのでなないか。

8.「悪徳なんかこわくない」ロバート・A・ハインライン

ノンケの老人が女性の体に脳移植して新たな性に目覚める。おいこれ御三家の作品だろ?

いやいや、これが書かれた時代を考えると、こういった問題はタブーに近かった。SFが音楽におけるロックの役割を文学界(?)で果たしていたことを思うとこれはまさにロック。

いやー、これが限界。どうしてもやばい系はホラーに近づいていくので純SFジャンルというのは難しい。ここに上げたものもSFと言えるのかというものもある(それどころか小説じゃないものもあるけどw)。ヤバイSFが読みたければディックを読めば事足りる、というのもある。「変種第二号」を読んでなお自動殺戮兵器を作ろうとしている人がいたらキチガイだ。

それでもヤバイSFというのは沢山出てくる。ひとつ言えるのは、SFというのは限界突破するための小説であるということ。限界突破の方向が社会の問題を超えて人間の有り様に至った時、SFはそのヤバさを最大限に発揮するのだ。



あと、日本人は変態。