2013年04〜06月期アニメ感想 3 『デート・ア・ライブ』/『這いよれ!ニャル子さんW』/『ゆゆ式』

デート・ア・ライブ 第3巻 [Blu-ray]
 女の子たちの可愛さ表現が上手いバトル系ラブコメ


 たしか昨年か一昨年だったと思うが、「大人気」「大反響」とうるさくCMしていたのが強く印象に残っている*1。やっぱかなり初期段階からアニメ化前提でプッシュされてる感じなんですかね、昨今の作品は。


 「地球の危機を救うためにデートしてデレさせる」という世界系システムが目玉だったようだが、そこに関しては正直そこまで面白くなっているとは思えない。
 まず、ゲーム的なシステムを採っているにも関わらず平行世界的なやり直しシステムがないため作品都合上絶対に失敗(ゲームオーバー)することがなく危機感がないというのが一つ(やり直しできても危機感はないが)。
 二つ目は、選択肢や好感度がどういうシステムで出ているのかというあたりがよくわからない。理詰めではなく勢いで納得させる形になっているが、簡単な説明くらいはないと乗り切れない(あったか?)。が、これに関してはたとえば、「選択肢中には必ず正解がある」などを明確にしてしまうと、「正解を導き出せるなら他の選択肢もその道のプロ達もいらねーだろ」的なツッコミが発生してしまうのを避けられないという判断だったのかもしれない。たしかに難しいところではある。
 三つ目に、主人公「士道」がごくごくまとも以上のよくできた人格であること。この設定だと主人公は女心が解らずモテない男であるべきだし、実際原作の方では「恋人にしたい男子ランキング52位」という不名誉な設定もあるらしいのだが、描かれる姿はどう見てもまっとうに常識ある良い奴なので普通にデートさせりゃそこそこ上手くエスコートできるだろうと思えてしまう。


 しかしながら一つの見せ所であろう、一団体の大規模な経済力組織力をフル活用したバカバカしさ溢れるデートシーンはたしかに見応えがあった。デートに誘えた時点で好感度低くないのでちょろいっちゃちょろいのだけど異種共存的なカタルシスもあるし、悪くない。
 ただ欲を言えば、全体的なシステムの流れ(妖精出現>交渉>デート>攻略成功&儀式で大団円)、構成がもっとハッキリしていた方が、作品をシンプルに理解しやすく、また目玉であるデートシーンへの期待も水戸黄門的に胸を膨らませつつ待てたのではないか。『DEVIL SURVIVOR 2』みたいに、妖精の数や出現時刻・出現場所があらかじめ解っている状況にしておくのが良策だっただろうか。妖精の数把握は欲しいな。
 なんにせよデートシーンは『トリコ』の実食シーンみたいな感じで、視聴者に「キターーーー!」って思わせるべき箇所なわけで、もっと期待を煽る演出が欲しかったかな。


 と、ここまで軽くディスってしまう形になってしまったが、ハーレム・ラブコメものというこの手の作品でもっとも重要な「女の子を可愛く描けている」が隙無くクリアできていたのは本作の大きな美点だったと思う。隙無くというのは全員が可愛く描けていたという意味。
 十香は直球の犬型&世間知らず要素に加え井上麻里奈さんの演技も合っていて、デートシーンなんかは特に可愛かったし、四糸乃も……個人的にはあまりうじうじした系統の娘は好みではないのだけれども頭撫でて安心させたくなるような庇護欲あおられるような可愛さがあったし、折紙はちょっとうざくて電波ながらも10話の病院シーンとか面白かったうえライバル(当て馬)キャラとしてよく機能していたし(可愛さ関係ない)、琴里もベタながらお兄ちゃん大好きなツンデレっ娘でやっぱり可愛いし、狂三もエロかったし……などなどといった具合で、そっちサイドの需要には見事に応えていたのではないだろうか。各キャラの見せ場がきちんと作れていたということか。


 でもやっぱ話がとっ散らかっている感が否めないし、根幹のアイデアは面白いものの、世界を救うために戦う設定とラブコメが上手く繋がってないという気がする。
 世界を救うために止む無くデートするという設定は、男の身勝手な欲望丸出しで「まじ引くわー」なハーレム構造に対する一つの解決策なのかもしれないが、世界を救わなきゃいけないせいで、攻略後のキャラをより掘り下げる展開ができなかったのならもったいない。登場するキャラが可愛いだけに、どうにも世界救う設定が足を引っ張っているように思えてならないんだよな。
 ていうか個人的嗜好もあるだろうけど、本作とか『C3(シーキューブ*2』みたいなハーレム・ラブコメものと世界救う系とのミックス作品自体があんま美味しくない気がするなー。『ネギま!!』が一番成功したのかな。世界を救うという大義のために複数の女の子たちと公然と絆を深められるってところが利点なんだろうけど、世界救う話とラブコメ(縦軸と横軸)が同時に進めにくくて兼ね合いが難しい気がするし……。
 あと、ハーレム構造に対する言い訳用意してるだけあって、快感追求型になっていて、テーマや思想的なものが無かったのがマイナスだったかな。バトルも面白くなかったので、見応えに欠ける。




  • バカバカしいことを大真面目に議論しあうのが見せ場であろうデート時の作戦会議はもうちょっとその点をフィーチャーして欲しかった。どちらかというとフィーチャーされているのは副司令官の変態性であり、彼のキャラ立てにしかなってない。もっと「こいつらバカだなwww」という2ch的な雰囲気が出せたのではないかと思うが……尺の問題か?
  • もっとシンプルにした方が良いと思っていて、そのために折紙&その組織は要らないと思ったんだけど、6話「恋する温泉」とか、8話「三重狂騒曲」のような混み合ったドタバタがしたかったのならしゃーないのかなー。
  • 全話通して一つのセリフしか話さないという「まじ引くわー」ちゃんはアニメ界の伝説となったのではないだろうか。
  • 3話「空分かつ剣」の冒頭、ベタなんだけど演技込みで可愛いって思ってしまったな。ここで十香のキャラが決定づけられたと思うんだけど、この辺で視聴も決まったし、かなり良い掴み。
  • 十香回だと十香が可愛く見えるし、四糸乃回だと四糸乃が可愛く見える。というのは『俺妹』とかでもそうなんだけど、凄い気がする。で、最後のヒロインだったせいか、妹ちゃんが妙に気に入ってしまった。
    • 単なるツンデレでも可愛いんだけど、他のライバルキャラ(本物の妹)と鞘当てして奪い合ってるのとかニヤニヤする。
  • あとは目の下隈子さんとかも可愛い。



這いよれ! ニャル子さんW 6 【初回生産限定版】 [Blu-ray]
 「いやー、話がつまんなかったなー」。
 クー子との偽装恋愛シーンがちょいニヤニヤできて良い萌えシーンだった。クー子の、表向きニャル子狙いだけど真尋のこともまんざらでない感じがニャル子よりラブコメ向きな気がする。
 けど、やっぱ全体にギャグ寄り。で、そのギャグも変な宇宙人出してそれを中心に話組むようなタイプはなぁ……一期『To Loveる』と重なる誰得感。


 本作に関しては一期感想で言ったようにニャル子を日常に寄せる作劇がベターだと思うのだけど、個人的にはちょっとこういう方向に進めて欲しいなーっていうのがあって、俺はもうちょっとシリアス寄りの恋愛ドラマが見たいんだよなぁ。それも誰得かもだけど。


 ニャル子って鬱屈ゲージが溜まると泣きながらそれをヒステリックに真尋にぶつけて、シリアス化するじゃないですか? そこが好きなんだよね。

 だからもうニャル子&真尋で付き合った後、喧嘩とかたくさんしながらそれ以後の関係を育んでいくドラマが見たい。準本格ラブストーリー的な。そんなんだったらテーマソング「いっぱいキスしよう(山下久美子/1993)」(古い……)でMAD作るのに。
 だから珠緒とか絡んでくる三角関係展開は要らないんだよなぁ。でも本当、個人的嗜好だけで言うんじゃなく、本作は流行りのハーレムラブコメに乗っかるより、付き合った以後をやった方が良いと思う。その状態でだってクー子との偽装恋愛エピソードはできるし。


 そういうわけなので、第06話「エンジテミル」とか好きだ。シリアスシーンで言う「愛することが罪だとユートピア?」のちょいボケ台詞もすごい好き。あそこは「ごちゃごちゃ言ってないで早く抱きしめて頭なでてやれよ!」てなったなぁ。全体的にああいうのが見たい。



  • (気付いた中で)一番お気に入りのパロは、第03話「超邪神黙示録」の、「ハッハッハッハッハー! まぁさかぁー! メタルマサカーッ!!格闘ゲームKOF』のマチュアの必殺技)」。使い勝手良さそう……と思ったけど絶対伝わらん。
  • ハス太要らんよなぁ。賑やかしにしかならない。……て思ったけど、クトゥルフネタ的に「ハスター」は出したくて、名前的に「ハス太」だから男キャラになったとか、そういうのがあったのかな。
  • 二期は本編と無関係のシーン(ハス太とルーヒーがキャッキャウフフしてるシーンとか)が細切れで挿入される作りが多用されてたんだけど、あれ……なに? 尺稼ぎ? あれ……要る? あれのせいでなんかごちゃごちゃして間延びもしてた。
  • 本作の女キャラの体がちょいエロい。ニャル子とか真尋母とか。特に下半身。普段萌え系の絵柄にエロは感じないんだけど、体だけならエロい。
  • 大ヒットしたOPの二期OP作るのとかすごいプレッシャーだろうし大変そうだ。本作も最初は「一期に劣るかな」と思ってたんだけど、一期OPも今聞いたら案外派手さがないし、二期は後半の畳みかける感じとか気に入ってるのでアリやな。



ゆゆ式 1 (初回限定版) [Blu-ray]
 「くっそつまんねー」と思ったものの、本作のやりたいことに気付いたら「なるほどなー」って具合になったし、興味深い作品であるとも思った。でも長くなりそうなので別記事(前回の)で、書いておいたというわけだ。


 前記事では本作について、「日常性」に対し独自こだわりをもって描いた結果、イベントごとをそぎ落としたり、あえてつまらない会話劇をやったり、脚本と無関係に天候を変えたりということを試みた作品であるというようなことを語ったわけだが……。


 会話に関してもう少し考えてみると、単に「つまらない会話を目指した」というよりは、「現実の生っぽい会話を追求した」ように見える。自ら進んでボケ、お笑い芸人的な行動を志向するわりにいま一つ盛り上がらない、グダグダなまま終わる煮え切らなさは芸人でも何でもない素人の生の会話っぽさを追求しているようだった。
 その辺の意図はハッキリしないのだが、「ポテト」という何でもない言葉がツボに入って笑い転げるとか、「土曜日っぽい」などという誰にも通じない感覚を共有して話を進めるあたりは故意犯的に敢えて受け手を振り切ろうとしているとしか思えない。まともに(ただ単に)受け手を笑わせようとしているわけでないことだけは確かだ。そういう内輪ウケ&理解不能なノリを見せられてもポカーンとするだけで笑えるわけはないのだけど、表現したいのはそういった部分なのだろう。
 そんな感じで本作、ギャグ寄りの日常系に見えながら、表現したいものが「いまいち笑えない」部分であるためギャグ作品としては矛盾を抱えていると言えるかもしれない。


 いやー、しかし本作は本当にきつかったなー。前記事みたいなことに思い当たったのでなんとか興味持って最後まで見れたし、なんだかんだ満足してた部分もなくはなかったんだけど、最初は本当に辛いと思った。
 下手の横好きというか、センス無い人のお笑い好きみたいなノリがなぁ……。俺の中でのお笑い好きは、面白くない癖に自分が一番面白いと思ってやたら前に出てボケたり、ツッコミやノリツッコミ強要したりする印象が強いんだよなー。だからお笑い好き=うざいになるんだけど、本作のゆずことかもそのイメージから外れたものではないっていう。
 でも作者の人はこのノリが好きで描いてるんだろうし、これこそが好きって人もいるんだろうなー。俺は時間が経つのが遅いです。でも後半はちょっと楽になったかなー。慣れかなー。


  • 作者の人はふつーにギャグ百合作品描こうとしてるだけかもしれない。けど、それでもやっぱり表現したいのであろう部分に「内輪ウケ」や「理解不能なノリ」とか「思い付きを口にしただけの反射的なギャグ」を含んでるわけで…………まぁそれは面白くしようがないよね。しかし新しいといえば新しくはあるしそのフロンティア精神は買えそう。
  • あと、ゆずこと唯がボケ・ツッコミで1ターン消費した時に、余った縁が「アハハハハッ!」って声出して笑うのが本作のギャグを寒くしてる一因だよな。もしかすると視聴者との同調を図ろうというか、誘い笑い的な目論みかもしれないけど、実際には「人が怖がってるのみると醒めちゃう効果」の方が発動されていて、余計寒い。あれがなければシュールなギャグとして笑えたものもあったかもしれないが……。もちろん、「楽しそうな雰囲気、楽しんでる感じ」を出そうとしてやってるってのが一番の目的なんだろうけど。声出して笑うほど面白いこと言ってないんだよなー。
    • 単なる笑い声じゃなく、「アハハハハッ!」ってハッキリ言いすぎてるから自然な笑い声じゃなく聞こえるって問題もある気がする。あれマジでなんなん。
    • なんかこう、そこまで面白くないんだけど、「楽しんでる私達」を演出するため無理に笑ってるのではないかと感じさせる不自然な笑い方ではないか。というのもあって、縁ちゃんが痛い子に見える。『けいおん!』のむぎちゃんと重なる……。
  • よくよく考えると、「低レベルなギャグ」が辛いのではなく、「低レベルなギャグを言い合って喜んでる」状態を見るのが辛いのかもしれない。「子ども同士の会話」を見ているような気持ちというか。しかし、そういったものを微笑ましいと思って見れないのは俺の心が狭いということかもしれない。これをどう感じるかが本作を楽しめるかどうかの分水嶺だろうか。これを微笑ましく見れるタイプの人だと100%楽しく見れ、自身も癒されるのかもしれない。
  • 本当、小学生レベルの会話だと感じるシーンが多かったな。
  • 先生のことを「おかあさん」とか言ってしまうのがちょっと受け付けない。当事者が嫌がってないので良し悪しで言えば悪くはないのだろうが、俺の頭が固いのか、良い先生であるならそのぶん余計に敬意を払ってほしいみたいな気持ちがある……のか? まぁこの手の親しみやすい先生は鉄板キャラなのだろうとは思うものの、「子どもに近い(≒若い)大人」という形でしか魅力的な大人を描けないというのはちょっと稚拙である気がする。でも萌え作品だし、若くてかわいくて巨乳な先生の方が良いですよね。俺も自分が作者ならそうしたよ。キャラが可愛いか否かが一番重要な作品だもん。何が稚拙だ。

*1:wikipediaにも載ってた

*2:ちょっとしか見てない