●平成19(ワ)2366 意匠権侵害差止等請求事件「マンホール蓋受枠」

 本日は、『平成19(ワ)2366 意匠権侵害差止等請求事件 意匠権 民事訴訟「マンホール蓋受枠」平成20年01月22日 大阪地方裁判所』(http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20080125110913.pdf)について取り上げます。


 本件は、意匠権等の侵害差止等請求事件であり、その請求が認容された事案です。


 本件では、被告は、原権利者らの行為は独占禁止法に違反するもので、原意匠権者から権利を譲り受けた原告らの本件請求は権利の濫用に当たる旨を主張しており、その点における判断が参考になる事案かと思います。


 つまり、大阪地裁(第21民事部 裁判長裁判官 田中俊次、裁判官 障沛シ宏之、裁判官 西理香)は、


4 争点4(原告の本件請求は権利の濫用か。)について


 被告は,日之出の行為は独占禁止法に違反するものであり,日之出から権利を承継した原告の本件請求は権利の濫用に当たる旨主張する。


 独占禁止法21条は,特許権等の権利行使と認められる場合には,独占禁止法を適用しないことを確認的に規定したものであって,発明,考案,意匠の創作を奨励し,産業の発展に寄与することを目的とする特許制度等の趣旨を逸脱し,又は上記目的に反するような不当な権利行使については,独占禁止法の適用が除外されるものではない。


 この点に関して,被告は,日之出は多くの地方公共団体に日之出仕様のマンホールを標準仕様として指定,発注させる一方で,地方公共団体からの受注数量を予め予測してその25%を自らのシェアとし,残り75%を同業他社に割り当ててライセンス契約を締結し,これら業者が割当数量を超えて製造販売する場合には日之出に製造を委託させることによって,価格と数量の両面から同業他社をコントロールしてきた旨主張する。


 しかし,許諾数量を制限して実施許諾すること自体は,何ら不合理なものとはいえない。また,受注数量を予測してその一定割合を同業他社に割り当ててライセンス契約を締結し,ライセンシーが割当数量を超えて製造販売する場合にライセンサーが自らに製造を委託をさせることについても,それ自体が特段不合理なものとはいえない。


 もっとも,日之出が,本件各権利の実施許諾によって得た支配的地位を利用して許諾数量の制限を行うことにより,市場における実質的な需給調整を行う場合には,その具体的事情いかんによっては,不当な権利行使として独占禁止法上の問題が生じる可能性がある。


 この点に関して,被告は,日之出仕様を標準仕様として指定している地方公共団体におけるマンホールの単価が,そうでない地方公共団体におけるマンホールの単価よりも異常に高くなっており,日之出仕様の指定を取り止めた地方公共団体においてマンホールの単価が低下した例がある旨主張する。


 しかし,上記主張事実については証拠が全くない上,日之出仕様を標準仕様としている地方公共団体においては,同業他社は実施料を負担しなければならないのであるから,日之出仕様を標準仕様としないことから実施料の負担が不要である地方公共団体と比べてマンホールの単価が高額になることは当然である。被告の主張する価格差が,このような実施料の負担の有無によって説明できない程度のものであることについても証拠は全くなく,その他,本件において,結果として市場における需給調整効果が実際に実現されているとか,業者間の公正な競争が実際に阻害されているといった事情を認めるに足りる証拠もない。


 被告は,日之出と被告は平成16年までは毎年8月にライセンス契約を締結していたのに,平成17年に原告と被告がライセンス契約を締結しようとしたところ原告が許諾数量を厳しく制限したため契約を締結することができなかった旨主張する。


 しかし,許諾数量の多寡と価格調整ないし需給調整との関係は明らかでなく,そうである以上,このような事情をもって日之出ないし原告の権利行使が濫用的であるということはできない。


 また,被告は,平成17年も,同年8月のライセンス契約締結までに被告が生産した数量については,すべてその8月のライセンス契約でカバーできるとの前提で生産を継続した旨主張する。


しかし,ライセンス契約の締結よりも前に生産した物は権利侵害品にほかならず,このような権利侵害品について平成16年までは後に締結されたライセンス契約の合意内容によって遡ってライセンスの対象とされたという事情があったとしても,そのことをもって,結局ライセンス契約が締結されなかった平成17年における権利侵害品に対する権利行使を妨げ得る根拠とすることはできない。


 以上によれば,日之出において独占禁止法違反の行為があったとは認められず,その他,日之出又は原告において権利の濫用に当たる行為を行ったことを認めるに足りる証拠はない。


 したがって,被告の権利濫用の抗弁は理由がない。


5 争点5(損害額等)について


逸失利益

 以上によれば,被告製品の製造販売等は,本件意匠権1及び2,本件実用新案権及び本件特許権を侵害するものであるところ,被告が平成17年4月20日から平成18年3月31日までの間に被告製品を原告の実施許諾を受けずに合計1165個販売し,合計978万8600円を下回らない利益を得たことは,当事者間に争いがない。したがって,意匠法39条2項,実用新案法29条2項,特許法102条2項により,上記利益の額が被告の本件各権利侵害行為により原告が受けた損害の額と推定される。


・弁護士費用

 本件に顕れた一切の事情を考慮すると,本件での弁護士費用相当額は98万円とするのが相当である。


 被告は,被告製品は平成17年8月に原被告間でライセンス契約が成立するとの前提で一旦適法に市場に流通したものであり,原告の権利は消尽している旨主張する。しかし,平成17年については,前記のとおり,原被告間でライセンス契約は成立しなかったのであるから,被告製品は適法に市場に流通したものではない。したがって,被告の上記主張は理由がない。


 したがって,本件において原告が被告に対して請求し得る損害額は,上記 との合計1076万8600円となる。


6 結論


 以上によれば,原告の本件請求は,被告に対し,本件実用新案権又は本件特許権に基づきハ号製品(i)及び(ii)の,本件特許権に基づきニ号製品の各製造販売等の差止め及び半製品等の廃棄を求め,本件各権利侵害の不法行為民法709条)に基づく損害賠償請求として1076万8600円及びこれに対する不法行為の後の日である平成18年4月1日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める限度において理由があるからこれを認容し,その余は理由がないからこれを棄却することとし,訴訟費用について民訴法64条ただし書,61条を適用し,仮執行宣言については,同法259条1項を適用して主文第1項及び第3項についてのみこれを付し,その余は相当でないからこれを付さないこととする。

 よって,主文のとおり判決する。  』


 と判示されました。


 詳細は、本判決文を参照してください。


 追伸;<気になった記事>

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