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特許実務日記 このページをアンテナに追加 RSSフィード

2011-01-25 ●平成20(ワ)13709 特許権侵害差止等請求事件「履物底部とその製造 このエントリーを含むブックマーク このエントリーのブックマークコメント

 本日は、『平成20(ワ)13709 特許権侵害差止等請求事件 特許権 民事訴訟「履物底部とその製造方法」平成22年12月24日 大阪地方裁判所』(http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20110125112921.pdf)について取り上げます。


 本件は、特許権侵害差止等請求事件で、その請求が棄却された事案です。


 本件では、争点1(被告製品の製造方法はイ号方法であるか)についての判断が参考になるかと思います。


 つまり、大阪地裁(第21民事部 裁判長裁判官 森崎英二、裁判官 北岡裕章、裁判官 山下隼人)は、


『1 争点1(被告製品の製造方法はイ号方法であるか)について

(1) 被告製品の外観形状及び底部外周部を一部,分解して示した様子が別紙被告製品説明書添付の写真のとおりであることは当事者間に争いがないところ,原告は,被告製品底部はイ号方法により製造されたものであると主張する。


 被告製品が,イ号方法を用いてその底部を製造されたことを直接認めるに足りる証拠はないものの,証拠(甲8,甲9,検証の結果)によれば,原告がイ号方法を用いてその底部を製造したところ,製造された底部外周部に現れた突状の形状は被告製品の底部外周に現れている突状の形状と概ね一致していることが認められる。


 したがって,この事実は,少なくとも,イ号方法が,被告製品底部外周部に現れている突状と同様の形状を有する履物底部を製造する有力な製造方法であることを示しているということができる。


(2)ア他方,被告は,原告の主張に係るイ号方法を否認し,被告製品底部は,ロ号方法により製造されたものである旨を積極的に主張し,その旨の立証をしている。


 ところで,物の製造方法に係る特許についての特許権侵害が主張されている本件においては,侵害していると主張される製造方法について主張立証責任を負うのは,特許権者である原告であって被告ではないが,被告が積極的に明らかにして立証した被告製品の製造方法が矛盾に満ちていたり,不自然不合理であったりするため信用できないような場合には,そのことが翻って原告主張の製造方法の立証を補強することになる場合もあり得るところである。


イそこで,以上の観点から,被告による被告製品底部がロ号方法により製造された旨の立証についてみると,証拠(乙16ないし24,検証の結果)及び弁論の全趣旨によれば,被告は,本件訴訟における立証のため,直接取引をしていた貿易会社を介して被告製品を製造していた安諾靴工業有限公司(中華人民共和国)に対し,被告製品の製造方法を明らかにするよう求めたところ,ロ号方法によって製造していることが開示されたこと,さらに同工場において,その明らかにした製造方法であるロ号方法を用いて,被告製品と同様の靴を製造させたところ,その靴(以下「再現製品」という。)の底部外周部に形成された突状部分は,被告製品のそれに比べやや太いものの,突条の隆起の程度等を含めそれ以外の点では被告製品と概ね同様の形状であることが認められる(なお,原告は,安諾靴工業有限公司が被告製品の製造者であることも争っているが,証拠(乙18ないし乙24(枝番号を含む。))に加え,再現製品の靴が,その外観形状のみならず,その素材が被告製品と同じであり,さらには中敷きには被告製品と同じロゴが印刷されていることからすると,同工場が,被告製品を実際に製造していた工場であることは十分認められるというべきである。)。


 したがって,被告製品の直接の製造者ではない被告としては,被告製品の製造方法がイ号方法ではないことを明らかにするため,積極的にこれと異なるロ号方法である旨の主張立証は尽くしており,またその補強として,ロ号方法によって被告製品同様の製品が製造されることの立証も尽くしているということができる。


ウこれに対して原告は,再現製品と被告製品とで底部外周部に現れた突条の太さに違いを生じていることから,被告製品底部はロ号方法によって製造されたものではないとして,被告の上記関係証拠の信用性を争っている。


 確かに,上記認定のとおり,安諾靴工業有限公司において被告製品を再現して製造させた靴の底部外周部に現れた突状は,被告製品のそれよりもやや太く,また証拠(乙14)によれば,被告が,それ以前に被告製品の製造工場ではない奈良県内の業者にロ号方法によってベルト体だけを製造させてみたところ,突状部分は,縫製跡が波打っており,その幅も被告製品とは似てもにつかないほど広いものであったことが認められる。


 しかしながら,証拠(甲8,検証の結果)によれば,原告自らが,イ号方法のaないしcの工程,ロ号方法のa’ないしd’の工程をそれぞれ用いてベルト体を製造したところ,いずれのベルト体でも紐状体の側部の近傍に整然とミシン縫製がされており,その状態で現れている突条の幅に違いがあるわけではないことが認められる。


 そうすると,ベルト体に紐状体を縫製した場合に現れる違いは,その作業が手作業であるため,単に縫製をした者の技能の違いが結果として現れていると考えるのが自然である。その上,再現製品が,事業としてされる製造工程そのもので製造されたものはなく,本件訴訟のためにその製造過程を再現したものであることも考慮すると,再現製品と被告製品とで底部外周部に現れた突条の太さにやや違いが見られたとしても,それは担当した製造者の技能の違いや,その製造工程の特殊性が影響していると推認するのが自然であって,その程度の違いが,被告製品底部が,ロ号方法で製造されたとの被告の立証の信用性を左右すべきものということはできない。


エまた,原告は,ロ号方法では,帯体である接着芯地(8)を紐状体(6)を覆うように貼り付けるのであるから,突条(4)となる部分の表皮(3)の裏面の一部にも接着芯地である帯体(8)が張り付いているはずであるが,被告製品の湾曲部(7)となった表皮(3)の裏面には帯体である接着芯地(8)が全く付着していないから,被告製品がロ号方法で製造されたものとは認められない旨も主張する。


 しかし,表皮(3)の裏面に帯体である接着芯地(8)を紐状体(6)を覆うように貼り付けたとしても,紐状体(6)に帯体である接着芯地(8)を完全に密着するように貼り付けない限り,紐状体(6)の両脇には隙間(接着芯地(8)が接着していない部分)ができ,表皮(3)表面から紐状体(6)の両脇を縫製すればその隙間部分が縫製されることになるから,縫製時に帯体である接着芯地(8)が紐状体(6)の裏側に必ず巻き込まれるということにはならず,そうであれば紐状体(6)と表皮(3)との間に接着芯地(8)が張り付くこともないはずである。


 したがって,原告主張の上記問題点を考慮しても,被告製品底部がロ号方法で製造されたとする被告の立証に不自然・不合理な点があるとはいうことはできず,またその信用性が損なわれるものではない。


(3) 以上のとおり,被告製品の製造方法が,イ号方法であることを推認させる事実は認められないではないが,他方で,被告によって,それと異なる被告製品底部の製造方法であるロ号方法が積極的に開示され立証されており,その立証の信用性を疑わせるものはないのであるから,他に,被告製品底部がイ号方法で製造されたことを認めさせるに足りる証拠がない以上,本件においては,被告製品底部が原告主張にかかるイ号方法で製造されたと認めることはできないというほかなく,むしろその製造方法はロ号方法であると認めるのが相当である。

 と判示されました。


 詳細は、本判決文を参照して下さい。

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