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特許実務日記 このページをアンテナに追加 RSSフィード

2011-02-02 ●平成22(行ケ)10105 審決取消請求事件「内燃機関およびその作動方 このエントリーを含むブックマーク このエントリーのブックマークコメント

 本日は、『平成22(行ケ)10105 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟「内燃機関およびその作動方法」平成23年01月25日 知的財産高等裁判所』 (http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20110126132310.pdf)について取り上げます。


 本件は、拒絶審決の取消を求めた審決取消請求事件で、その請求が棄却された事案です。


 本件では、取消事由2(実施可能要件に関する認定の誤り)についての判断が参考になるかと思います。


 つまり、知財高裁(第2部 裁判長裁判官 塩月秀平、裁判官 真辺朋子、裁判官 田邉実)は、


『2 取消事由2について


 そこで進んで取消事由2について判断するに,取消事由2は,審決の理由の要点(2)の認定判断の誤りをいうものである。


(1) 原告は,本願明細書に記載されている「『実質的等容積プロセス』の後に『等温(燃焼)プロセス』を行うもの」として最高燃焼温度3300°Rとするものが具体的に開示されているので,その変形例として等容積燃焼プロセスにおける最大シリンダー圧力を80%や90%の圧力に設定して,「実質的等容積プロセス」の後に,次にその圧力を維持して最高燃焼温度3300°Rまで増加させる「定圧力プロセス」を行い,次に最高燃焼温度3300°Rにおける「等温(燃焼)プロセス」を行うものにつき,「実質的等容積プロセス」を終了して「定圧力プロセス」に移行するときの容積V,圧力P,温度T,及びタイミングクランク角),並びに,「定圧力プロセス」を終了して「等温(燃焼)プロセス」に移行するときの容積V,圧力P,温度T,及びタイミング(クランク角)具体的な条件が一意的に設定することができるなどと主張する。


 しかし,そもそも,本願明細書の「発明の詳細な説明」における「発明を実施するための最良の形態」の項において,発明を具体的に説明している段落【0016】ないし【0052】及び全8図の図面のうち,「等容積プロセス」を経た後の「定圧力プロセス」の後に「等温(燃焼)プロセス」を行うという本願発明に関して具体的に記載している部分は明細書の段落【0050】と図8のみであって,それ以外の部分は「等容積プロセス」の後に「等温(燃焼)プロセス」を行うことを前提としたものについて記載したものであり,本願発明の実施例とはできないものである。そして,本願発明のような「等容積プロセス」を経た後の「定圧力プロセス」の後に「等温(燃焼)プロセス」を行うものと,「等容積プロセス」の後に「等温(燃焼)プロセス」を行うものとでは,燃焼プロセスが異なるものであって,燃料の導入タイミング及び導入量等の条件は当然異なるものになるから,「等容積プロセス」の後に「等温(燃焼)プロセス」を行うものについての条件を,本願発明のような「等容積プロセス」を経た後の「定圧力プロセス」の後に「等温(燃焼)プロセス」を行うものに用いることはできないと考えられる。


 また,本願明細書の段落【0050】には「最大シリンダー圧力を制限することを重んじるような使用法もある。この場合,本発明は別の実施例,すなわち定容積燃焼と定圧力燃焼と定温度燃焼との組み合わせを活用できる。・・・」との記載があるところ,この記載から本願発明が定容積燃焼と定圧力燃焼と定温度燃焼との組み合わせからなることは理解することができたとしても,「等容積プロセス」の後に「等温(燃焼)プロセス」を行う過程に「定圧力プロセス」を組み込み,組み込みに際しては「実質的等容積プロセス」の終了点における圧力を80%あるいは90%に下げることについては記載も示唆もないし,「等容積プロセス」の後に「等温(燃焼)プロセス」を行う過程に「定圧力プロセス」を組み込むことや組み込みに際して「実質的等容積プロセス」の終了点における圧力を80%あるいは90%に下げることが技術常識であったとも認められない。そうすると,「等容積プロセス」の後に「等温(燃焼)プロセス」を行うことの変形例として等容積プロセスの終了点における圧力に対する80%や90%の圧力を設定して,本願明細書に開示されている実質的等容積プロセスの後に等温(燃焼)プロセスの燃焼サイクルに用いられている条件や式を用いて,上記圧力を維持して最高燃焼温度3300゜Rまで増加させる「定圧力プロセス」を行い,次に最高燃焼温度3300゜Rにおける「等温(燃焼)プロセス」を行うための導入タイミングや導入燃料量,各プロセスの開始前,終了後のT(温度),圧力(P),V(容積)といった具体的な条件を設定することが,本願明細書に開示されているということはできない。


(2) 原告が主張するように本願発明の燃焼サイクルの各プロセスにおける容積V,圧力P,温度T,及びタイミング(クランク角)が計算できたとしても,依然として,各プロセスを生じさせる燃焼噴射タイミングや,各噴射タイミングにおける燃料噴射量をどのように決定するのかが不明である。なぜならば,噴射された燃料が燃焼して熱が生じるには時間的なずれが生じており,燃料噴射タイミングと各プロセスの発生タイミングとは必ずしも一致しないことから,各プロセスにおける容積V,圧力P,温度T,及びタイミング(クランク角)が決まっても,各プロセスを行うための各燃料噴射タイミングと各燃料噴射タイミングにおける噴射量を決定することはできないからである。


 すなわち,本願発明の各プロセスでの容積V,圧力P,温度T,及びタイミング(クランク角)については,所望する値を算出することは窺い知ることができたとしても,そのような値となる各プロセスを実現するための各燃料噴射タイミングと各燃料噴射タイミングにおける噴射量を決定することについては,当業者に過度の試行錯誤を強いる。


(3) 以上より,発明の詳細な説明に当業者が容易に本願発明を実施をすることができる程度に発明の構成が記載されているとはいえないとした審決の判断に誤りはない。』


 と判示されました。


 詳細は、本判決文を参照して下さい。